16-490「佐々木を送っていく」

 興味がある、の一言でSOS団の不思議探索についてきた佐々木の引率を
ハルヒ直々に承った俺は、何故だか家に送り届けるところまで面倒をみる
羽目に陥っていた。
 小学生じゃあるまいし、そんな必要なんぞないような気がしてならな
かったが、ハルヒ曰く、
『何かあってからじゃ遅いんだから!』
 だそうだ。まあ、確かにそうなんだが。
 ならお前はいいのか、そう聞いてみると、ぽかんとした顔をしたハルヒ、
なんぞという世にも珍しいものが見られた。この先一生見ることもない
だろうな、あれは。ついでに、一部始終を見ていた佐々木がずっと笑いを
こらえているようだったんだが……まあいいさ。ともあれ、そんなすった
もんだのやりとりがあって――


 月明かりの下、並んで歩く。
 ひどく懐かしいような気分を味わいながら、気がつけば俺はなんともなしに
佐々木の横顔をながめていた。
 ――変わってない、か。
 春先に聞いた、こいつ自身のそんな台詞が思い出される。
「うん? どうかしたのかい、キョン」
 いや、なんでもない。
「そうか。僕はまた、てっきり他人様には言えないような独り言を垂れ流して
 いるんじゃないかと心配になってしまったよ」
 お前、そんな癖があるのか。俺はまだ一度もお目にかかったことがないが。
「それはそうだろうね。残念ながら僕にはそんな癖はない」
 冗談だよ、と佐々木は小さく笑った。どんな冗談だ。
「キョン、キミがあんまりこっちを見てくるからだよ。冗談の一つも言いたく
 なるというものさ」
 あー……そんなに見てたか、俺。
「放っておけば、そのままウチまで着いてきそうなくらいには、ね」
 そう言って、いつもとは違う、どこかの誰かさんがよくやるような、獲物を
見つけた肉食獣めいた笑みを浮かべた佐々木に、念のため俺は聞いてみた。
 冗談だよな?
「さあ、どうかな?」
 くつくつと、今度はいつものように笑う佐々木は、やはりハルヒに似ている
ような気がして、溜息混じりに俺はそう告げた。
「それはそれは。褒め言葉として受け取っておくよ」
 どうしてそうなる。
「やれやれ、それを聞くのかい?」
 しょうがない、そんな顔して佐々木が言う。
「キョン、キミにとって涼宮さんの存在がどんなものか、を考えれば自明の
 ことじゃないか」
 さて、俺はこの台詞にどう返せばいいんだろうね。まったく、やれやれだ。
「今のは僕が悪かった、そんな顔をしないでくれないか」
 でもね、と佐々木は続ける。
「こんなことを言わせるキミもどうかと思うけどね、まったくさ。でもキョン、
 僕自身もこれで驚いてるのさ。自分にそんな感情があったんだってね」
 そして、くすりと楽しそうに微笑んだ佐々木は、最後をこう締めくくった。
「ありがとう、キョン」
 これからもよろしく、と――

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2007年08月07日 23:50
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。