18-300「キョンの学ラン パラレル」

北高の体育祭。
俺が所属する1年5組は、我らが涼宮ハルヒ団長が体育着の上に学ランを着て、一人応援団を務めていた。
さて、ここで一つの疑問がわいてくるだろう。
涼宮ハルヒという女子高生が、今まで性別を偽って生きてきている、
なんていうどこかで見た漫画みたいな人生を送ってきているわけでもなければ、
何故斯様な男物の学ランを所持しているのか?
答えは簡単。
あれ、俺の学ランだ……
3日ほど前の帰り際、ハルヒが突然、
「体育祭で応援団やるから、あんた学ラン持ってきなさい」
と、声を掛けられた。
そのまま有無を言わさず立ち去られてしまったので、俺は渋々ながらもとりあえず翌日に中学時代の学ランを持参した。
やれやれ……何でいまさら窮屈な学ランに再び袖を通さねばならないかね、と不満に思っていたところ、
ハルヒは俺の手元から学ランの入ったカバンをかっさらうと、おもむろに自分の制服のリボンを外し始めた。
おいおい、久しぶりだなこの展開。
「ちょっと、着替えるから出てってよ」
まあ、最初の頃と違うのは、とりあえず後付でもこういう一言が入るようになったところか。
おれはそそくさと部室を後にした。

そんなわけで現在に至る。
俺は最初、SOS団全員で応援団やるのかと思っていたのだが(だから、俺に自分の学ランを持って来させたと思った)、
ハルヒが俺に学ランを持ってこさせたのは、自分で着るためだったのだ。
なるほど、よくよく考えてみれば、何事にもふいんき(何故か変換できない)を重要視するハルヒらしい考えかな。
それにしても、俺の中学時代、つまり成長前の俺のサイズと今のハルヒのサイズがピッタリというのは、何と言う偶然か。

まあ、そんなこんなで体育祭も終わって、後片付けをしていると、
そのハルヒが俺の学ランを着たまま佐伯や阪中たちと話しこんでいるのが見えた。
「やっぱりそうなんだ……」
とは、声を掛けて来た佐伯の反応。
「やっぱりそうなのね……」
「やっぱりそうなんだ……」
よく見たら、阪中と成崎も一緒に居るが、何が「やっぱり」で何が「そう」なんだ?
話途中ではさっぱりわからん。
俺が近づいていくと、ハルヒはこちらに気付いたようだ。
「あ!キョン!終わったからこれ返すわ」
…………おい。
そういってハルヒが差し出してきたのは、さっきまで汗だくになりながら着られていた俺の学ラン。
ハルヒの汗でじっとりと湿っているのが見ただけでよくわかる。
「おいおい……借りたものは洗って返せよ……」
俺は至極当然の訴えをしたつもりだったが、抵抗虚しくというか、
汗だくの学ランは問答無用で俺の手の中に突っ込まれた。
「とか言いつつ、そのまま受け取るんだ……」
とは、佐伯の弁。
ふん……お前らにはわかるまい、ハルヒには抵抗するだけ無駄だってことがな……
「下も返せよ」
俺はもう抵抗を諦めた。
こうなったら、さっさとカバンに押し込んで、持って帰ったらクリーニングに出してしまおう。
「わかってるわよ、もう」
ハルヒはそう言いながら、そそくさとズボンを脱ぎ始める。
しかし……その……なんだ。
下にブルマを穿いているのがわかっているとは言え、
女子が目の前でズボンを脱ぐ姿というのは……何だかアレだな。
アレって何だ?
しかし、それよりも気になったのは、俺の手元に突っ込まれた学ランに注がれる阪中の視線がやたらと熱かったことだ。
何だ……こいつひょっとして制服フェチか?
俺は汗だくの学ランを抱えて文芸部室へと向かった。
何故なら、元々この学ランを持って来るために使ったカバンが部室に置きっぱなしになっていたからだ。
部室には誰もいない。
というか、おそらく今日は誰も来ないだろう。
さすがに疲れたから、今日は活動無しで帰るんじゃないか?と言うか、そうであって欲しい。
そうであって欲しいからには、さっさと帰り支度をしてしまうに限る。
俺は棚からカバンを取り出すと、もう皺くちゃになってしまった学ランをそこに突っ込んだ。
そのときだった。

パサリ

乾いた音とともに、キョンの学ランのポケットから1枚の紙切れが落ちてきた。
何だこれは?
いつの間に、こんなものが入っていたんだ?
ともかくも俺は、きっちりと四つ折にしてあるその紙切れを開いてみた。


『キョンへ

1年間レスが無かったら、キョンは佐々木の婿

           200X年3月20日 佐々木』


…………
……………………
………………………………何だこれは?
佐々木!忘れもしない、中学三年でもっとも俺とつるんでいたツレ。
くっ……やられたぜ。最後の最後でこんな悪戯を仕込んでやがったとは。
ははは、危ない危ない。
これで1年経ったら、俺のところに来てからかうつもりだったか?
多分、国木田その他中学のときの奴らを連れてきて冷やかすつもりだったか?
まあ、そういう同窓会も悪くないかもしれないが……甘いな、佐々木。
とにかく帰ったらすぐに電話してやる。残念だったな。

しかし、帰ってみてから根本的なミスに気が付いた。
中学の時の連絡網が無い……
佐々木の家の電話番号は……何となくしか覚えていない。
当時、携帯とか無かったからな。
元々、掃除は苦手だ。
この部屋の中から、連絡網という薄い紙切れを探し出すのは困難だ。
というか、面倒くさい。
そもそも、もう捨ててしまったかもしれない。
まあ、いいか。国木田にでも適当なときに聞いてみよう。
1年間経過するまでは、まだあと半年もある。
翌朝。
俺の日常は、いつもの通り訪れる。
「おはよう、キョン」
通学途中、国木田が声を掛けて来た。
はて?俺はこいつになにか聞くことがあったような気がしたが……忘れたな。
まぁ、忘れたってことは、多分他愛も無いことなんだろう。


そのまたある日。
クリーニングに出していた学ランを回収してきた。
そして、そのときに思い出した。
そうだった、国木田に佐々木の家の電話番号聞こうと思ってたんだった。


翌朝。
俺の日常は、いつもの通り訪れる。
「おはよう、キョン」
教室に入ると、国木田が声を掛けて来た。
はてな?俺はこいつになにか聞くことがあったような気がしたが……。
まぁ、忘れたってことは、多分大したことじゃないだろう。


そして、涼宮ハルヒに振り回され、何事もありすぎた俺の高校1年次が終わった。

2年生に進級する前の春休み、俺はふとしたことで、昔の旧友に出会った。
佐々木だ。
こいつとは、中学三年のときに、誰よりもつるんでいたように思う。
その割には、実に1年振りの再会になる。
まぁ、学校が別々になってしまうとこんなものかね?
それにしても佐々木よ。
何でそんなにニヤニヤしてんだ?
俺と再会できたのがそんなに嬉しいか?
「キョン……1年振りだね」
そうだな。
「1年振りだね」
そうだな。
「1年以上経ってるね」
そうだな……なんでそこをそんなに強調するんだ?

おしまい

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最終更新:2007年08月22日 20:59
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