18-406「佐々木とプール」

水泳の授業中、自由時間になったので、佐々木とプールに素潜りなんぞをしていた。
「ぷはぁ!」
佐々木は先に顔を上げたようだ。意外と根性無いな。
しかしまぁ、このプールと言うヤツは何故か強制的に童心に帰らされる。
中三にもなって何をアホなことを、と思われるかもしれないが、
ついつい心がはしゃいで、妙な悪戯心が芽生えてくる。
俺は、背丈ギリギリで爪先立ちしている佐々木の背後から忍び寄り、
後ろから佐々木の股間に頭を突っ込んで、そのまま立ち上がってやった。
「うわぁあっ!」
俺の強制肩車で、視界が急に舞い上がったであろう佐々木が素っ頓狂な声を上げる。
これは面白い。俺の肩の上の佐々木の太股が、微かに身震いしている。
そんなに驚いたか?普段クールなヤツが慌てる姿がこれほど笑えるものとはな。
「ハッハッハ。俺の勝ちだな」
「むぅ……」
俺の勝ち名乗りに、佐々木は珍しくイラついているようだった。
「ふっふっふ、やってくれたね、キョン……でも甘いよ」
そう言いながら、佐々木は肩車されている状態のまま、自分の足で俺の脇腹をロックしてきた。
さらに、内股で俺の頭を窮屈に挟み込んでくる。どういうことだ?
佐々木の内股は、スベスベしていてなかなか良い感触なのはいいとして、
ちょっと脅かして、すぐに降ろしてやろうと思っていたのに、これでは俺が身動き取れない。
「くっくっ……キョン……このまま僕がおしっこをしたらどうなると思う?」
な……何だって!
「長時間プールに入っていると身体が冷えてきてね……ちょっと催してきたところだったのさ」
ちくしょう、何て恐ろしいことを考えやがる!というかその前に、お前は小学生か!?
「先に小学生みたいなことしてきたのはそっちだろう?それにしても、これはベストポジションだ」
くっ……確かにこのままブチ撒けられたら……想像だに恐ろしいぜ。
何だか、まだ見ぬ危ない世界が見えてしまいそうだ。
「こうして僕の股間を密着させておけば、他からは僕が何をしているか見えないだろう?」
さすが佐々木だ。よく考えてやがる。
「もっとも、ここは何処もかしこも水だらけ……いまさら少々の液体が加わったところでバレやしない」
くそう!そうはさせるか!
俺は佐々木のロックを振りほどくべく暴れた。
「くっくっ……いいよキョン……君がもがけばもがくほど、君の後頭部が僕の下腹部に心地良い刺激をくれるよ」
なっ……そんな……どうすれば……
「はぁぁ……もう……出そう……」
俺の頭を掴む佐々木の手が震えている。
まさか、こいつマジでやる気か……

「そうはさせるかぁ!!」
俺は、佐々木の足を掴むと、佐々木の身体ごと、後ろへ向けて倒れこんだ。
ザバーーン!!という激しい水飛沫とともに、俺と佐々木の身体は水中に放られ、
遂に佐々木の身体も離れてった。
「ぷはっ!!」
「はぁっ!!」
ほぼ二人同時に顔を上げる。
「ははははは!!あっははは!!」
そして、佐々木の笑い声が聞こえてきた。
こいつがこんなに声を上げて笑うなんて珍しいかもしれない。
「キョンってば、すっかり焦っちゃって」
ちくしょう。確かに今回はやられたな。
「佐々木よ……トイレいきたいなら、さっさと行って来い」
こうして、相手を気遣う余裕を見せることが、俺のせめてもの抵抗だ。
「いや、実はそのことなんだがね、キョン」
何だ?まだなにかあるのか?
「本当のこと言うと、もう手遅れなんだよ」
「は?」
「実は、君に最初に担ぎ上げられた瞬間に、少々漏らしていてね」
「な……何……」
「君が悪いんだよ。ちょっと寒いかなと思っていたときに、突然あんなことするから……」
マ……マジですか?佐々木さん。
「おい……ウソだろ?」
「くっくっ……」

「キョンも佐々木さんも、いつまでじゃれあってんのー?いくよー」
国木田が呼んでいる。
そろそろ授業も終わりのようだ。
授業が終わって着替えた後の休み時間、佐々木がトイレに入っていくのが見えた。
それを見て、俺は少し安心した。

おしまい

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最終更新:2007年08月22日 21:01
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