『塀についたドア』
彼は、死ぬ前日私に話してくれた。塀についた青いドアのことを。
子供時代、青いドアの向こうで遊んだ日々を。
彼はそれを「異世界への入り口かもしれない。」と言った。
そして、「そこでもう一度ハルヒや長門や佐々木達に会いたい。まだ彼女たちと話すことがあるんだ」とまで
異世界での体験?を彼はそのまま小説にした。
彼の小説は飛ぶように売れてアニメ化までされた。それは諸君もご存知のことだろう。
何故あそこまで売れたのか?それが本当にあった話だったからか?
そして、その体験は「驚愕」の元原稿に書かれたもので終わっていたのである。そこで、彼はこの世界に帰ってきたから。
編集には「もっと続けろ」と言われていたが、彼には想像力でその先を続けることはできなかった。らしい。
「僕には、あの世界では高2の途中までの思い出しかないんだ。だから、ハルヒシリーズを書ける文量は初めから決まっていたんだ。」
彼は、ハルヒシリーズの最初でもそれを述べたのである。
今、2ちゃんねるは彼の死でもちきりだ。俗に言う「祭り」というやつか?
警察の調べによると、彼は、夜中、工事現場に入り、 そして足をすべらせて落ちて死んだらしい。
青いドアは実際に存在したのだろうか。
私にはわからない。
彼は仕事上のストレスから来る幻覚と、偶然と不注意の犠牲者だったのだろうか。
それとも、何か超自然的な力によって異世界を旅することができたのだろうか。
たとえそうだとしても、最後には、それが彼を裏切って殺したと諸君は言うかもしれない。
だが、それは本当に彼を裏切ったのだろうか。
我々には、囲いがあり、穴があるとしか見えない。
我々の感覚では、彼は安定した現実世界から、暗黒へ、死へと歩み出したのだ。
だが、彼はそう考えたのだろうか。
(完)
最終更新:2007年09月08日 10:40