佐々木「やあキョン、くっくっ」
キョン「どうした佐々木、えらくご機嫌だな」
佐々木「くっくっ。いやキョン。そうではないんだ。くっくっ。橘さんがハイキング土産に持ってきてくれたキノコを食したら、
笑いが止まらなくなってしまってね。くっくっ」
キョン「ワライダケってヤツか。フィクションじゃよく見るが、まさか本当にそうなるとはな。
にしてもあのバカ、なんてもの佐々木に食わせやがる」
佐々木「くっくっ。いやそうともいえないんだ。成分の働き方は人によって違うらしい。
あれを見てくれたまえ、くっくっ」
??「--ゲ-ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ--」
キョン「なんか不気味なうなり声を上げて黒い物体が高速で通り過ぎていったが、何だありゃ?」
佐々木「くっくっ。あれは九曜さんだよ。ご丁寧にドップラー効果まで実演してくれたね。くっくっ。
あとはほら、アレとか」
藤原「さあ過去の原始人達よ! 今日は特別サービスだ! さあ、我が名を存分に呼びたまえ!
もっと愛を込めて! はい、ポン☆……」
九曜「--ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ--」
キョン「なんか変態タイツが約1名、高速でうごめく黒い物体に轢かれてふっ飛んでったが」
佐々木「くっくっ。まああまり気にしないでいいんじゃないかな。ああいった具合に、人の精神に
何らかの作用は与えているのだが、その作用は一人ひとりで異なるようなんだ、困ったものだね。
くっくっ」
キョン「いや、まあなんつーか、毒じゃなきゃ別に良いんだけどな。
にしても、この効き目がいつまで続くのかとか分かるのか? 何だったら長門の所でもいくか?」
佐々木「くっくっ。いや、彼女の力を借りるのは業腹なのだが、実は既に橘さんが向かっているんだ。
自分の土産物で、皆がおかしくなった事に非常に恐縮してね。くっくっ。
この際贅沢は言っていられないと、いの一番に長門さんの所に助力を頼みにいったのだよ。
くっくっ。どの面下げて頼むかと想像すると、ちょっと本当に笑い出したくなるね。くっくっくっ」
キョン「……佐々木、何だかお前、黒くなってないか? お前の場合、キノコの影響って、
笑い上戸だけじゃないみたいだな」
佐々木「くっくっ。さあ、どうだろうね、キョン。君が僕のことを、どれだけ理解しているというのだろうね?」
キョン「さ、佐々木。何か顔近いぞ」
佐々木「くっくっ。君にとって僕は何だい。おかしな話題が豊富な中3の同級生かい。
男性めいた言葉づかいで、色恋沙汰など縁がないような奇矯な人となりの過去の知人かね?
くっくっ。僕が本当は、年頃の女子高生らしく、身近にいながらちっとも振り向いてくれない友人への思慕の思いで、
胸を焦がす苦しみに耐えていたり、その人の周囲にいる女性陣に対して、言い表せない嫌な気持ちを抱いていたり、
そんな感情を持て余しているかどうかを断言できるほど、君は僕を理解しているだろうか」
キョン「さ、佐々木さん?」
佐々木「くっくっ。これはいい機会だ、この際、僕の君に対する気持ちを全部ぶちまけて……」
橘「さーさーきさーんっ! 分かったのです!!」
キョン「佐々木、橘がこっち目がけて駆けてきたぞオイ」
佐々木「くっくっ。この期に及んで邪魔に入るとは、いい度胸だよ橘さん。くっくっ」
キョン「やっぱり黒いぞ佐々木」
橘「長門さんに頭下げまくって聞き出したのです。このキノコの影響は、一度精神に大きなショックを与えてやれば、
その衝撃で元に戻るそうなのです!
その証拠にほら、九曜さんに轢かれた藤原くんは、もう正気に戻ってるのです」
キョン「肉体的なダメージは深刻そうだけどな」
橘「ですから、こうやって脅かしてあげれば、佐々木さんも……ってうわ!!」
佐々木「きゃぁ!」
キョン「うぉっ」
……ちゅっ……
キョン「あ痛た。おい、気をつけてくれよ。ダイナミックに転んで、見事に俺達を巻き込んでくれやがって。
大丈夫か佐々木。思いっきり顔面同士ぶつけちまったな。怪我ないか?」
佐々木「……」
橘「むきゅう、なのです」
キョン「どこか打ったか佐々木? おい、本当に大丈夫か?」
佐々木「き、きききキョン。大丈夫。大丈夫だから。私は気にしてないから。今のは偶然だし別に君なら」
キョン「? いや、大丈夫ならいいんだが」
佐々木「いいい今ので完全に正気に戻ったから。めめ迷惑かけたねキョン。
今日のことは、全部、綺麗さっぱり忘れてほしい。いや、最初だから忘れてもらうと困るけど、
あの、そうじゃなくて、とにかく今日は帰るよ。邪魔したね、キョン! 行くよ橘さん!」
キョン「おい、佐々木。おーい。……走って行っちまった。
しかし佐々木よ。手をもって橘引きずるのはやめた方がいいぞ。顔面もろに地面で擦ってるぞ」
九曜「--ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ--」
キョン「あと九曜も一緒に連れ帰ってやれよ。藤原はどうでもいいけど」
後日
佐々木「まったくヒドイ目にあった。橘さんには抗議をしておいたよ。
これからは気をつけておいてほしいと。まあ、本人に悪気はなかったし、解決法も聞き出してくれたし、
なぜか透明人間みたいに顔面中包帯巻くほどの怪我してたから、あまりきつくは言わなかったけど」
キョン「いや、その顔面の怪我は……。
そういや佐々木、あの土産のキノコって、橘は食わなかったのか」
佐々木「いや、彼女が持参した七輪で焼いて、皆で一緒に食したよ。効果が出たのは10分ぐらい後だったからね」
キョン「の割りにはあいつ影響なかったな」
佐々木「そういわれてみれば」
キョン「精神に影響及ぼす効果でいつもどおりってのは、たまたま毒にあたらなかったか、
あるいは、あのハイで変になる効果が出て、いつも通りってことは、
普段のあれは演技で、「地」は別ってことだったりして……」
佐々木「……はて、どうなんだろう……」
……おしまい
最終更新:2007年09月12日 14:57