21-257「佐々木と国木田」

あの日は2月某日だった。僕はそれを一生忘れないだろう。
あの日の前日、佐々木さんをみかけた。有名新学校に行った彼女は中学時代が嘘のように寂しそうな目をしていた。
そして、あの日、いつものように北高に登校すると、違和感を感じた。
「おす、国木田」
「今日は、キョン」

今日はやけに静かだ。特にキョンの後ろが。え?キョンの後ろは佐々木さん?どういうこと?
確か、キョンの後ろは涼宮さんだったはず。
あの二人を見ていると中学時代にタイムスリップしたような気分になった。
これは夢?それとも平行世界とかいうものに迷い込んだのか?
「国木田君、気分が悪そうね」
「いえ、ちょっとね」
「国木田、無理するなよ」

「よう国木田、大丈夫か?」
「大したことないよ」
「無理するなよ」
「ねえ、谷口。キョンと佐々木さん付き合ってるのかな」
「そんなのお前の方が良く知ってるだろ。中学の時から付き合ってるのバレバレじゃないか。」
「そうだったね」
「キョンの奴は否定しやがるんだが、全く素直じゃない。」
キョンの傍にいる佐々木さんは楽しそうだった。中学時代のように。
キョンにとって、涼宮さんの傍にいたとき、佐々木さんの傍にいたとき。どちらがより楽しいかは僕にはよくわからなかった。

「もし、キョンと佐々木さんが違う高校に行ってれば。それでも二人は恋人どうしのままなのだろうか。谷口はどう思う?」
「さあな。だが俺個人の意見では別れていた可能性が高いと思う。」
「谷口もそう思う?」
「違う高校でめったに会えないのはハンデだからな」
「そうか、そうだよね」
「さては、お前中学時の彼女を思い出したな」
「そういうわけじゃないけど」
「どんな奴だったか教えろよ」

昼休みに調べたが、北高には長門さんも古泉君も朝比奈さんもいなかった。
「谷口、唐突だけど涼宮ハルヒさんって知ってる?」
「あいつか、俺が中学でいっしょだった。もしかして一目ぼれか? 忠告しておくけど、あいつはやめておけよ、あんな変人」
谷口の話の涼宮さんは、北高にいた涼宮さんと同じだった。
そして、その日、僕が会話した佐々木さんは、中学時代の佐々木さんと変わらなかった。
佐々木さんの傍にいるキョンもキョンのままだった。
帰り道、偶然見た涼宮さんは不機嫌だった。まるで北高に入学した直後のように。

次の日はいつもどうり?の日常に戻った。
「おい、国木田。昨日佐々木、佐々木と言ってたのは何だったんだ。おかげで俺は」
「いや、ちょっと思い出してね。キョンは佐々木さんを思い出さないの?」
「お前が佐々木のことを言い出すから、ハルヒが罰ゲームとかほざいて、昨日はひどい目にあった。」
「キョンは佐々木さんと涼宮さんどっちが良い?どっちと結婚したい?」
「おい、急に何を言い出すんだ。お前、熱病でもかかっているのか」
「じゃ、どっちといた時がより楽しかった」
「楽しいのはハルヒだが、その分疲れるんだな」
「それじゃ甲乙つけがたいということか、優柔不断だね」

多分、キョンはどっちでも良いのだろう。どちらもいなかった北高入学直後はキョンも寂しかったように見えたが。
でも佐々木さんも涼宮さんもキョンしかいないんだ。多分
ねえ、キョンは佐々木さんと涼宮さんどっちが良い?
(終わり)

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最終更新:2007年09月13日 21:44
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