彼の背中と私の胸の間にある小さな距離。
手を彼の胸に回してゼロにしたら、私たちの関係はどうなるのだろうか?
「ねぇ、キョン。君は・・・」
・・・僕のことをどう思っているのかな?
自転車に乗せてもらうたびに言いたくなる。
けどいつも言えなかった。
なんだよ、と彼は言う。
「・・・僕を重いとは思ってないだろうね」
誤魔化した。
そうでもねーよ、軽いほうじゃねーか?
その誤魔化しに気付かずに、いつもの、やや投げやりな口調で返事をしてくれる。
・・・これでいい。
これでまだしばらくはこのままでいられる。
彼の背中と私の胸の間にある本当に小さな距離。
彼に届かなかった、届くかもしれなかった距離。
その距離を越えてくる彼の汗の匂い。
私だけが知っている匂い。
しばらくはこの幸せで満足しておこう。
私と彼は遠くに離れた。
そして傍には"彼女"がいた。
背中と胸の間にあった届くかもしれなかった距離は、
今ではもう届かない距離になっていたことがわかった。
だから私は、彼にも彼女にも
「親友」
としか言えなかった。
そして彼はその言葉に何の反応もしなかった。
最終更新:2007年09月20日 08:20