佐々木団は夏休みだ
「―――お弁当―――?」
「そうです。女を磨くために、これから何日間かあたしがお弁当を作るので、佐々木団の皆に食べてほしいのです。」
「佐々木団の活動に、何で俺まで呼び出されるのだ?」
「キョンさんも佐々木団の一員なのです。」
「僕も親友のキョンといっしょだと楽しいよ。」
「そうか、まあ親友の佐々木がそう言うのなら」
「佐々木さんとキョンさんラブラブなんですね。」
「―――夫婦―――」
「橘さんと九曜さんたら」
「だが、SOS団の活動もありるのだが」
親友、あの言葉完全スルーかい。ええおい。ってもう慣れたよ。
「何かというと罰金取るような団長と、何かと面倒をみてくれる団長のどちらが良いですか?
キョンさんは朝比奈さんのお弁当が目当てじゃないのですか?朝比奈さんの代わりにあたしがお弁当を作ります。」
「盛り上がっているところすまんが、未来人の僕は明日から1週間は現地調査のために、バイトしなければならないのだが。」
「そうでした。藤原さんはバイトでした。藤原さんのお弁当はバイト場に届けてあげるのです。」
「いや、わざわざやってもらわなくても。」
「遠慮することないのです。」
結局、藤原さんも橘さんの好意を受け入れた。橘さんの料理の腕は、高校生の女の子として中の上ぐらいかな。
私は、夏休みにキョンにお弁当を作ってあげて好感度を上げようと思ったが、橘さんの好意に甘えることにした。
そうだ、橘さんを休ませる口実で、明後日あたりに私がキョンたちにお弁当を作ろう。
キョンと2人きりの帰り道
「キョン。あの2人好きあっていると思わないか?」
「そうか?いつも喧嘩ばかりしているのだが」
「喧嘩ばかりだけど仲が良い夫婦もあるもんなんだよ。僕達とは正反対の形だが」
まるでキョンと涼宮さんみたいに
「キョンはどちらの形が好きかな?僕達みたいに穏やかで仲が良い夫婦と、仲良く喧嘩する夫婦」
「うーん、そうだなー。穏やかなのが好みかなー」
「キョーン。あんた、また佐々木さんとデートしているわね。団長をほったらかしにして何やっているの!」
「俺と佐々木はそんな関係じゃないぞ、腐れ縁というか、何というか。」
「罰として今度何か奢りなさい。」
「何で俺がお前に奢らなければならないのだ。」
キョンも強くなったな。以前は、言われるまま罰金はらっていたのだが、今は対等に喧嘩している。
まるで高橋留美子女史の描く主人公とヒロインみたいに。
「橘と藤原が相思相愛なんじゃないかと話あっていたんだ」
「あの2人?あまり知らないけど、いつも喧嘩ばかりしていて仲が悪いのじゃないの?」
「佐々木の言うには、喧嘩ばかりだけど仲の良い夫婦もあるということなんだ」
「そうなの?佐々木さん?」
「そういうカップルや夫婦もいるね。喧嘩するほど仲が良いとも言うし。」
「そういえば、うちの両親もそうね。
ねえ、キョンはあたし達みたいに喧嘩ばかりだけど仲の良い夫婦と、まったりして仲が良い夫婦のどちらが良い?」
「うーん、そうだなー。喧嘩ばかりだけど仲の良い夫婦が好みかなー。退屈しなくて良いから」
おい、親友。さっきと答が違うぞ。
それに、僕が『僕達みたいな』とか涼宮さんが『あたし達みたい』と言ったのを聞いてないのか?
それとも、全て知っていて二股かけているのか?
数日後
「えーん、藤原さんがあたしのお弁当に不味い不味いと連発するのです。」
「え?そうなの?」
「せっかく作ったのに酷いと思いません?」
バイト場での昼食。藤原は生あたかかく見守られる中、橘さんのお弁当を食べていた。
「いつもあんな感じなのです。佐々木さん。とっちめてやって下さい。」
「不味い、不味いなー、橘の作る弁当は本当に不味い。」
「もう我慢できません。文句言ってきます。」
「ちょっと待って」
「離して下さい佐々木さん。藤原さんに文句言わせて下さい。」
「橘さん、あの顔が不味そうに見えるの?」
藤原さんのあの顔は、どう見ても美味しくて喜んでいる顔。
それがわかってぱっと明るくなる橘。
晴れ晴れとした顔で帰る私たちだった。
「あたし、明日も皆さんのためにお弁当作ります。」
藤原のミドルネームがイワキとなったのはそれから少し後のことだった。
(終わり)
最終更新:2007年09月22日 23:00