4-332「涼宮ハルヒの告白」

4-318「佐々木の告白」(http://www10.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/574.html)から
----

「涼宮ハルヒの告白」

 私は、目の前に寝ている女性、涼宮ハルヒに対して、大きな興味を持っている。
 彼女は私がこれまで出会ったさまざまな人々(その中には自称宇宙人や自称超能力者、
自称未来人なんて変人たちもいたが)の中でも飛びっきりにユニークな存在だった。
 彼女がもつ、傲岸不遜さ、尊大さ、そしてそれに見合った美しさと聡明さを併せ持つ超人。

 涼宮ハルヒ。

 何が彼女を形作ったのか、知りたくないといえば嘘になる。彼女の誘いに乗って恥ずかしい
過去話をしたのも、この瞬間のためなのだ。

「さて、ハルヒ、キミはどんな子だった?」
 バカで頭でっかちなガキだったわ。今思い返しても、恥ずかしくて穴を掘りたくなるわね。
 もし、タイムマシンがあって、過去に戻れるなら真っ先に修正するわ。
「不思議探索を始めたのはなぜ?」
 この世には、絶対に普通じゃないことがあって、そこには普通じゃない人たちが毎日を
スリリングに過ごしているって信じてたから。日本の人口が一億二千万、世界人口なら
約67億。それだけの人生があるなら、あたしの人生は67億分の一のレアな人生でな
けりゃ嘘だわ。
「すごい自信ね」
 それこそ子供の頃から、やろうと思ってできないことなんかなかったわ。できないのなら、
力が足りないか、やり方が悪いのよ。まぁ、問題に対するアプローチの方法だったら、常に
十通り以上考えながら行動していたから、あたし以外の人にはあたしは努力もせずに、軽々
と障害を越えていくように思えてたでしょうね。気分がいいから、そう思わせておくことにしてた。
「そりゃ、敵も多かったろうね」
 敵は多かったわね。でも、あたしは敵を選んでいたし、勝てないケンカを売る趣味もなかった
からね。ああ、もちろん降りかかる火の粉は千倍返しに切って捨てたわよ。恩は倍返し、恨みは
三倍返しがあたしのモットーだから。
「味方はいなかったの?」
 SOS団ができるまではいなかったわね。小学校の頃のツレとは、疎遠になっちゃったし、
中学時代は悪い意味で目立ってたし、小学校の頃のことが軽いトラウマだったのよね。
「小学校のこと?」
 いま、思えばあたしが悪いんだけど。自分の人生が生活が平凡でつまらないって小学生の
あたしは思いこんでた。だから、”本来は”普通じゃないあたしの友達は普通じゃダメなんだって。
そう思ったのよ、だから、ね。
 あ~、やばいマジ自己嫌悪きた。だから、いつの間にか友達はいなくなってた。裏切ったのは
あたしの方。でも、その頃のあたしはそうは思わなかった。あたしを理解できず、受け入れない
のは彼らが”普通”だからだって、そう思ったのよ。
「なんで、SOS団を作ったの?」
 涼宮ハルヒはココでございってのぼりを立てても、誰も来ないどころか敬遠して離れていくっ
てのは中学三年間で学んだほとんど唯一のことだったからね。高校に入って身の回りの環境
が変われば、何かが変わるかなって期待はしてたんだ。
 けど、まぁそんな物はGW明けにはゴミ箱に直行してたわね。
 まぁ、そん時にね、出会ったのよ。
「そうか、”彼”が転機だったのね」
 まぁ、前の席に座ってた背だけはでかいヤツって印象だったからね。黒板見るのに
邪魔だなって、その程度。クラス分けの初日に、自己紹介とかあったはずなんだけど、
印象にも残ってなかったわ。
「キミの自己紹介が印象的にすぎる」
 誰から聞いたの? そんなこと。まぁ、その時点では、なんていうの。
 あたし、王子様のお迎えを待ってるお姫様みたいな電波キャラだったからね。
 うっわ、はっずかしい。
「ククッ、そう卑下するもんじゃないよ」
 笑うな。探して見つける、から自分で作るに発想が変わったのが、その瞬間から
だったのよ。いわゆる宗教的回心、コペルニクス転回があったってわけ。
 それで大分、気分が楽になったのよね。
「気分がラク?」
 ヘンな視点を持てばヘンなものを見つけられる、そう思い、そう行動してた。
必ずある、あたしの前にそれがないだけ、ってのがあたしの出発点だったからさ。
で、三年掛けていろんなアプローチしたけど、それはあたしの前に現われなかった。
だったら、あたしが不思議を作ればいいのよ。あたしがやろうと思ってできないこと
なんかなかった。だったら、不思議を作ることだってできるはずじゃない。
「なるほど。ファインドではなくてクリエイト、その発想はなかったってヤツね」
 それからは面白かったわ。いろんなことがあった一年だった。充実しすぎて、
気がついたら、一年経ってたってくらいにね。
 たとえばさ……。

「それは素直にうらやましい一年ね」
 でしょ、でしょ。あ、お香切れたわね。じゃ、これで終了。
「ちょ、ちょっとまって、肝心なこと聞いてない」
 あら、なんのことかしらね。あたしはあなたの質問に真摯に答えただけよ。
「ずるい、涼宮さん。まだ、彼とのこと聞いてない」
 あ~~あ~~、聞こえませ~~ん。
 質問タイムはおわりよ。自分の浅はかさを呪いなさい。
 それにね、聞くチャンスなら、いくらでもあるわ。

「佐々木、これからの一年はあんたにも付き合って貰うわ。これは決定事項よ」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年02月03日 15:11
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。