23-597「消したい3行目もっとアフター 」

昨日の日曜は妹といっしょに佐々木の家に行った。
妹よ、女の子がネズミ持ち込むなよ。俺は妹の未来が心配だ。
今日も筋肉痛で、朝から空腹だ。そして、食べても食べても腹が減る。
土曜日のテニス以降ずっとこうだ。長門は俺に何かしたのか?

いつもより早く起きた俺は、普段はしないお代わりを3回もして、気づいた頃はいつもより遅い時間だった。
「もうこんな時間だ。行ってきます。」
ヤベー、遅刻する。でも走ればぎりぎり間に合う時間かな。
これまで一度も遅刻した事が無いのが、俺のちょっとした自慢だが、今日はキツい。

「おー、谷口、おはよう。追い抜くぞ」
「ちょっと待てキョン。走らなくても間に合う時間だぞ。」
谷口ですらギリギリセーフだったので、別に急ぐ必要なかったな。

「おはよう、キョン」
「おう、国木田」
「いつもギリギリに来るのに、遅刻したこと無いんだね。中学時代から」
走っている時は気にならなかったが、今、疲れがどっと押し寄せてくる。
よく休み無しであれだけ走れた。これは土曜日に長門が俺の体に何かしたな。まったく

教室で、黄色いカチューシャつけた団長様は真夏の向日葵のような顔でこう言った。
「キョーン。今日は重大発表があるわよ」
その時、笑顔の団長様とは裏腹に、俺達の行く末を暗示するかのように雨が降り出した。

重大発表とはハルヒ御謹製の創作ダンス『ハルハル愉快』をSOS団でやろうということであった。
ずっと前から構想自体はあったが、日曜の午後をつぶして長門といっしょに完成させて映像まで撮ったらしい。長門かわいそうに。
いつかの映画と違って、振り付けもオリジナル曲もかなり良い出来だった。あの映画監督が作ったとは思えないくらい。
ただ、高度なんだなーこれが。
「今日から練習して、週末にはストリートダンスに乱入よ。ダンスで世界制服よ」
「ちょっと待て、朝比奈さんも入っているのだな」
「当たり前じゃないの。みくるちゃんがいなければ見栄え良くないじゃないの」
朝比奈さんの方を見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「ひえー、無理でしゅー」
こんな高度な技は俺なら最低2,3週間は必要で、朝比奈さんには一生無理かもしれない。
ハンサムな超能力者と俺による必死の説得の末、発表は3週間後に延期され、朝比奈さんはイージー・バージョンをやることになった。

「それにしても、今日も下級生は2人だけ?たるんでいるわね」
我がSOS団ではなく、文芸部に部員が何人も入ったが、来るのは多くて2、3名だ。
「ほとんどは部費獲得の人数水増しのための幽霊部員ですし、掛け持ちしている方も多いですから。ある程度は仕方ありませんね」
「そういう時はまじめに来る奴を褒めるんだ。ボロクソに貶された奴は二度と来ないかもしれないぞ」
「わかったわよ。そろそろ始めるわよ」

ダンスを始めたが、団長様の怒号が気になって実力の半分も出せない。俺程度の実力が全部出せても大したものじゃないが。
ジャイアンといっしょに野球をやる野比のび太の心境だよ、全く
「キョン、そうじゃないわ。ちゃんとしなさい」「駄目駄目、そんなんじゃ」
無理言うなよ。即興でできるダンスじゃないぞ。
「あたしがやるから皆よく見ているように」
さすがにうまいな。しかし、
「悪いけど一言、言って良いか?」
「何よ」
「パンツ見えてたぞ」
バキ。良いパンチが俺の顔にヒットした。
「先輩のパンツ、今日は青でしたね」
バキバキバキ。お前なー、火に油を注ぐなよなー
「下級生の教育がなってないわね、キョン。罰として、キョンは最初の所ができるまで、一人でやりなさい」
教育係まかされてたっけ?
練習は辛かったが、最後にできるようになった達成感はなかなか良いものだった。

依然としてアヒル顔で不機嫌な神様の機嫌をとるかのように、終わりの時、2人しか来ていない下級生の1人が言った。
「えーと、覚え切れないのでDVDに焼いて下さい。家で練習したいです」
「えらい、やる気だね。皆もこれを見習いなさい。キョン、DVDに焼きなさい」
そうそう、その調子で褒めれば部員は付いて来る。

帰る頃には雨が止んでいた。
古泉が話があるというので、男2人で帰ったが、そんな重要な話だったかな?
相変わらずのポーカーフェイスで、副団長はこう言った。
「涼宮さんは、これからは自分の気持ちに正直になるらしいですよ。あなたは涼宮さんに優しくしてあげて下さい」
今までも好き勝手に生きていたじゃん。これまで以上に好き勝手するのか。やれやれ
「それから、鶴屋さんが知恵を貸して欲しいとおっしゃるので、今度3人で相談しましょう」
あの方にも悩み事があるのだろうか。
金持ちは金持ちなりの苦労があるのかなー。それとも想い人に渡すプレゼントの選定とか。
そういや長門に話をするのを忘れた。明日で良いや

家に戻ってしばらくすると佐々木がやって来た。
「通信教育の採点係の内職をいっしょにやろう」
採点は、結構じゃなくてすごく楽しかった。中学時代の復習にもなって一石二鳥だった。やっぱり佐々木といっしょに勉強すると楽しいな。
2時間ほど採点やって、その後、佐々木と2人でダンスの練習をした。

「今度は僕1人でやるから君はよく見てくれ」
佐々木のスカート長いからパンツは見えないな、残念。じゃなくて、えーと、えーと
ダンスをしている佐々木は高校生とは思えない無邪気な笑顔で、そのまま見続けていると何か変な気分になりそうだった。
「どうだった?」
「ここの部分が少し違っていたと思う」
「ありがとう。今度は僕が見ているから君一人でやってくれ」
正直、ダンスがこんなに楽しいとは思わなかった。

「なかなか良いダンスだね。涼宮さんすごいねー」
「奴は何でもできるからなー、勉強もスポーツも歌でも」
「僕も文化祭での涼宮さんの歌が聞きたかったよ。そうだ、SOS団に混じって僕も一緒にダンスして良いかな?運動不足解消にはちょうど良い」
「今度、ハルヒに聞いてみる」
採点すべき解答用紙はまだ沢山あるので、明日も佐々木は来ることになった。
こんな時間の女の子の一人歩きは危険なので、当然俺が送ることになっている。当然だな。

「もう着いたか、早いなキョン」
「お休み、また明日な。佐々木」
佐々木は合格通知を見る時のような不安な顔で俺に聞いてきた。
「前から聞きたかったのだけど。キョン、君は、涼宮さんと」
「何だ」
「いや、しばらく見ないうちに急に運動能力ついたのは何故かなって。毎日坂を登って涼宮さんに振り回されているからか」
「多分な。今日は佐々木といっしょで楽しかった。明日の夜も楽しみだな、またいっしょに内職とダンスしよう」
佐々木が不安な顔から一転して幸せな顔に変わり、少し頬を赤らめたような気がしたのは、夜の闇による錯覚だったと思う。
佐々木を送った帰り。雨上がりの天然プラネタリウムは、都会で見た中では生涯で5指に入るくらいに美しかった。
(続いたら良いね)

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最終更新:2007年10月24日 20:52
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