9-391「ラブレター」

「先輩、これ、渡してもらえますか」
と、可愛らしい便箋を渡された。
いわゆるラブレターだ。宛先は―――キョン。

「キョン、はい、これ。」
と、国木田がピンクの便箋をキョンに手渡した。
「国木田………お前………」
キョンの顔が引きつっている。
明らかにラブレターと分かるそれを男から貰うなど誰だって遠慮したいからな。
「勘違いしているようだけど、僕からのわけないよ。以前キョンが―――」

「ほう、キョンにラブレターだと?」
中河君の驚いた声がした。なにやら男子が騒がしい。
どうやらキョン君にラブレターが届いたみたい。
キョン君意外ともてるんだなあ。ねぇ、佐々木さん。
「………そうみたいね」
気にならない?
「なんで私に聞くの?」
さて、どうしてでしょうね?

「私には関係ない」
そんなこと言ってもムダムダ。佐々木いつもキョン君見てるくせに。

「ほらほら、正直になっちゃいなさい」
岡本が佐々木に詰め寄っている。
そうだ。佐々木といい、ラブレターの主といいなんでキョンなんだ?
「須藤、勘違いするな。佐々木とはそんなのではないぞ」
その言葉は聞き飽きた。では、その子と付き合うのか?

「悪い今日はちょっと野暮用がある」
放課後、いつものごとくキョンと共に帰宅の徒に誘ったが断られた。
十中八九、野暮用というのは件のラブレターの子に関することだろう。
私はおとなしく引き下がった。
私が彼に何かを強制出来ることなど何もない。
だから彼の自転車の後ろに乗れることはもうないかもしれない。

「早かったね。もういいのかい?」
交際を申し込まれたが、断ってしまった。
受験生たる我が身にはそんな余裕はないからな。
しかし……なんでまだ佐々木がいるんだ?先に帰っていいと伝えたはずだが。
「………未練………だろうね」
未練?ふむ、質問の答えになってないぞ。
「くっくっ、分からないならそれでいいさ。キミはそのままでいてくれ」
いつにも増して分から。
俺は理解する努力を放棄した。
それより佐々木に言うべき言葉がある。
「一緒に帰るか」


おわり

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年01月27日 08:10
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。