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戦鬼

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「戦鬼」

「何だとバスター!」「だから俺には関係ないと言ったのだこの愚か者め!」
アマルフィ村での戦いを終え、ラクロアへと帰還する途中、いよいよあと少しで
ラクロアが見えてくる、といったところまで来て口論を始めるストライクとバスター。
「このー!」「えーい!いい加減うっとおしいっ!」「やめなさいっての!」取っ組み合いに
なりそうな二人の間にフラガが割って入り止める。納得いかない様子で引き下がるストライク。
バスターはどうでも良さそうに歩き出す。フラガがストライクの肩に手を置きなだめる。
「落ち着けって。バスターがああなのはよくわかってるだろう?」
「うん、けどさ・・・それでもちょっとひどくないか?」
「うーん、もう慣れちまったからなぁ・・・まぁ、今までこうやって一緒に移動した事が
なかったお前さんには少々酷かねぇ。」
「全く、俺は正直失望したね!」
「そう言うなよ、仮にもお前さんの」「言うなよ!腹が立つ!」
アマルフィ村にて合流したバスター。心強い味方が増えたと言いたい所ではあったが
種子を全て集めてしまった一行はザフトとの決戦に向けて一度ラクロアに戻るしかなく、
それが面白くないバスターはすっかりやる気をなくし、それが元で何度かストライクと問題を
起こしていたのだった。
「アマルフィ村からラクロアへの帰り道を教えてくれつっても『知らん』だの夜焚き火の番頼んでも
いつの間にか寝てるし、とってきた食材とかつまみ食いするし一緒に旅してるのに戦闘以外じゃ
全然頼りにならねー!」未だ憤るストライク。一方のバスターは一行から少し離れ、辺りを見渡しながらも木の実を見つけ、食べていた。
「ストライク、落ち着きなさい。バスターにはバスターの、貴方には貴方の考え方がある、そうでしょう?彼は少し不器用なだけよ。」
マリューの言葉に、ストライクは多少の落ち着きを取り戻す。
「はぁ・・・俺はただ、礼が言いたかっただけなのにな・・。あんなんじゃそんな気も失せるよ。」
「貴方も彼も、素直じゃないから、そういうところは似ているのかもね。」マリューが笑う。
「だけど、やっぱり助けられたわけだし、きちんと言っておいた方がいいわね。」


「そうだよなぁ・・・よし、言うぞ。」決心をして、バスターの元へ歩いていくストライク。
「バスター、あのさ・・・」言いかけたストライクの口を、バスターの手が塞ぐ。突然の事に驚くも、
怒って騒ぎ出そうとする。そんなストライクを、バスターは殴りつけて大人しくさせる。
(あれは・・・!)痛みに耐えながらよく見ると、すぐ近くにザフト軍の歩哨らしき兵がうろついているのを発見する。
「ナイフを貸せ。」バスターは声をひそめてストライクに言う。さすがに目の前に敵がいるのに喧嘩するわけにはいかず、しぶしぶ渡す。
バスターはフラガ達に静かに合図を送るとザフト兵にこっそり忍び寄る。敵は油断しきっていて、
まさかこんな所に敵がいるとは思っていないようだ。そんな彼の背後から突然現れたバスターが、
首にナイフをつきつける。
「なっ・・・「声を出すな、静かにしろ。警告は一度だけだ。命が惜しかったら騒ぐんじゃない。一言言うたびにナイフを近づけ黙らせた後、
「こんなところで何をしている?」質問を投げかける。兵士は刃物の恐怖とバスターの威圧感に観念したのか
「ぐ・・俺たちはただ、兵糧の補給のために、村を・・・。」
「襲っているのか?」バスターの言葉に頷く兵士。
「なんだと!」ストライクが怒りをあらわにするも、
「お前も黙れ。」バスターが睨みつけると納得がいかない様子で引き下がった。
その後バスターは村がどこにあるか、本隊の人数、編成など一通りの情報を聞きだし、
マリューに頼んで天馬AAに積んである袋の中から取り出した縄を受け取り、兵士をキツく縛って地面に転がした。ストライクにナイフを返すと、
「あれ、持ってかないのか?」ストライクが兵士の剣を指差す。バスターの装備はアマルフィ村の戦いでボロボロになり、
使い物にならなくなっていたのだ。バスターは一応剣を拾い、しばらく眺めて何度か振った後
「この程度なら、ない方がマシだな。」気に入らない様子で茂みの中に投げ入れた。


「あれか・・・。」フラガが双眼鏡片手に呟く。人数は先ほど兵士から聞いた通りでそれほど多くは
なかった。村の中央で食糧を広げ物色している。
「よし、行くか。」と勇んで立ち上がるストライクの足をバスターが掴む。
「ぶげっ!!」当然ストライクはこけ、地面に熱いキスをする事になる。
「何すんだ!」ストライクが顔を真っ赤にして抗議する。
「お前はバカなのか?」バスターが冷ややかに言い放つ。
「バッ・・・!?」アンタだけには言われたくない、と言いかけてまた殴られそうなので黙るストライク。
「あれを見ろ。」バスターが指すのは兵士達が集まる広場の北、倉庫のような建物に数人の兵士。
「多分あの中に村の人達がいるのね。」マリューの言葉でストライクが気付く。
「人質をとられちゃ戦えないって事か・・・!」
「そういう事じゃな。」メビウスゼロが頷く。
「じゃあ俺が人質を助けに行くか。」と勇んで立ち上がるストライクの足を再びバスターが掴む。
「ぶげっ!!」当然ストライクはこけ、再び地面へとダイブする。
「何すんだ!」
「ちょっと待て。俺にいい考えがある。」


「へへ、これだけあればしばらく戦えるな。」
「しかし隊長、これはこの村の半年分の食糧では・・・?」
「何、構う事はない。これからの戦いは激しいものとなる。多少の犠牲はつき物だ。」
そんな会話をしているザフトの兵達の前に現れる4つの影。
「何者だ、貴様ら!」
「我々はラクロア騎士団!」フラガが叫び、
「そして俺は、闘士ストライク!種子の力、見せてやる!」ストライクが名乗りをあげる。
「何、ラクロアのストライクだと!?」
「知っているのですか隊長!」
「うむ、ヤツは現在我が国の最重要危険人物に指定されている。ヤツの種子を持ち帰れば大手柄だ!」
「おおぉぉおおお!!」盛り上がる兵士を尻目に、ストライクはエールドラゴンと融合し、騎士へと姿を変えた。
「兵を集めろ!」
「さぁ、来い!」(うまくやれよ、バスター…!)


「何だっ「大声を出すな」ムググ」バスターに口を押さえられるストライク。大声を出しかけたのは
その作戦の内容が自分の考えとは全く違っていていたからだ。
「とにかく、これで行くぞ。」
「大丈夫かよ・・・。」
「大丈夫だ、信じろ。」
「信じろだって・・・?」ストライクが不満そうな言葉を漏らす。都合のいい時だけそんな事言いやがって。
「無理か?」急にバスターが悲しそうな顔を見せる。まるでショックを受けたかのような顔にストライクは驚く。
「ここはバスターを信じてやってよ。こういう事に関してはバスターが一番なんだからさ。」
「・・わかった、信じるよ。」フラガの助け舟でようやく了承するストライク。
「俺はお前を信じてる。だから、お前も俺を信じてくれ。」そう言うとバスターは一人別ルートで村へ向かった。
「よし、予定通りだな。」突然の襲撃、しかも種子の使い手が現れたとなれば敵の目は確実にあちらに向けられる。
案の定、見張りの兵士も含め全てが中央の広場へ向かっていた。広場では騎士となって戦うストライク。先ほどのやりとりを思い出し、拳を握り締める。


「どうにもうまくいかんな・・・」そこまで考えて、ハッとする。俺は何をやっているんだ。今は仮にも『戦い』の最中だぞ。
今は集中しろ。気を持ち直し、倉庫へ向かう。扉を開け気付かれないように静かに、ゆっくりと村人を逃がす。広場を見ると兵の数は大分減っていた。そろそろか。
「おのれェ・・・!」
「どうした、もう終わりかい。」息を切らしながらストライクが笑う。旅の疲れがピークに達している時の種子装着はやはり体に応えるようだ。
「ええい、村人は我々の手の中よ!それ以上動けば私の命令一つで・・・」
「どうなるんだ?」背後から現れたバスターに隊長の騎士ゲイツが驚く。
「なっ貴様・・・!?」
「お前達が手柄に夢中になっている間に村人はすべて助け出させてもらった。」
「おのれ!こうなれば貴様だけでも・・・!」斬撃を放とうとしたゲイツが吹っ飛ぶ。
「な、何故・・・!丸腰の貴様に・・・。」自分を吹っ飛ばした拳の主を睨む。
「甘いな・・・アイツに闘術を教えたのは他の誰でもない、俺だ。」
「ぐっ、そんな事、知るわけ・・・」気絶するゲイツ。


「終わった・・・。」融合を解くストライク。
「バスターに任せておいて、正解だったろう?」フラガの言葉にストライクは頷く。
「うん、まぁ・・・確かにうまくいった、な・・・。」
「普段は何事にも無関心に見えるけど、バスターは戦いに関しては凄いヤツなんだよ。常に戦いに意識を向けてるからな。」
「そういえば、歩哨に気付いたのもバスターだっけ・・・。」思えば常に離れて歩くのは不測の事態に備えるためだったのだろうか。
「そういう事。だから俺たちは多少の事で文句は言わないの。」フラガが笑う。
「だから、ストライクもそんなに彼を見損なわないで。」マリューが優しく語り掛ける。
「うん・・・やっぱり俺、礼言ってくるよ!このままじゃダメだよな!」
「そうね。」「行って来い!」
バスターの元へと近づくストライク。バスターは何かを考えているようで、呆然としていた。
「バスター、あ、あのさ・・・。」
「・・・ストライクか。」バスターは振り向くと真剣な表情で言葉を続ける。
「さっきは信じてくれて、礼を言わねばならんな。」
「いや、実際バスターの言うとおりにして良かったと思うよ!戦いに関してはバスターには叶わねえや。」
「そう、か・・・・・・やはり俺は不器用だな。言葉では通じ合えず、戦いでしかお前に何かを示す事ができん。
最も、戦いの中でしか生きられない俺にはこうする事しか出来ないんだが。俺は、本当はこの世界には必要のない存在なのかもしれんな・・・。」
「そんな事ねえよ!今回だって別に戦いたくてやったわけじゃないだろ?」ストライクが指差すのは
村の中へ帰ってきてフラガ達に礼を言う村人達の姿、そして笑顔。
「・・・そう、だな。」まさかお前に教えられるなんて。その言葉は口に出さない。
「そ、それにさ・・・。」
「どうした?」
「俺が今こうして生きてるのもバスターのおかげなんだからなっ!」それだけ言うとフラガ達の元まで駆けていくストライク。
取り残されたバスターはきょとんとして、
「・・あぁ、あの時のことか。」『あの日』のことを思い出す。そんなことも忘れていたのか、俺は。
(デュエルの代わりとまではいかんが、俺は俺でアイツに教えられる事がある。そう思っていたが・・・。)
「俺も、まだまだだな。」今まで戦う事でしか自分を表現できないと思っていた男は、
一筋の光明を見出す。ゆっくりではあるが、少しずつ少しずつ新たな可能性へと歩き出していた。
新たに生きる理由となる種が、蒔かれたのだ。

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