作者:2スレ7氏
敗残の兵ほど惨めな存在はざらにない。トゥスクルは大陸の東側に出来た新興の国家
だったが、野心溢れる王に率いられたシケリペチムと正面からやりあえるほどではなか
ったし、その王であるニウェがしかけた鉄砲水の一撃は、かろうじて保たれていた戦線
を崩壊させるのには十分すぎるほどだった。
だったが、野心溢れる王に率いられたシケリペチムと正面からやりあえるほどではなか
ったし、その王であるニウェがしかけた鉄砲水の一撃は、かろうじて保たれていた戦線
を崩壊させるのには十分すぎるほどだった。
ギリギヤナ族のカルラはトゥスクルの武将で、皇女で、女剣奴で、艶のある紺色の髪
を後ろで三つ編みに束ねていて、見るからに意思が強そうで、腕っ節も化け物で、体重
の十倍はあるような分厚い剣をいつでも持ち歩いている、首輪で繋がれた猛獣のような
女だった。
武将で皇女で女剣奴などというのは尋常の経歴ではありえない。過去に滅んでしまっ
た国と自らのただ一人の家族である弟を救うため、「ウィツアルネミテアの契約」によ
ってトゥスクル皇帝に仕えることを選んだ今のカルラは、皇帝の忠実な部下である。ト
ゥスクル軍が敗れた今でも、乱戦の中で見つけた主君のお気に入りの側女であるエルル
ゥを護衛しつつ、出会う兵のことごとくを斬り殺して、敵陣深くにある森に潜伏し脱出
の機会をうかがっていた。すでに包囲網は完成されつつあったが、この森の隘路を潜り
抜けさえすれば強行突破の道のりも開けるはずであった。
樹海の中は暗い。空高く輝いているはずの満月も、生い茂った木々によってその光を
削られている。
周囲のいたるところから生き物の気配がするのは、決して錯覚ではない。動物達はも
とより、もっと小さな微生物と、なによりも一面に満ちた樹木の群れが遠慮なく呼吸し
ている。あたりに漂っている、充満する命の気配。
ただ、彼らは人の言葉を話さない。
だからカルラは思う。
敵だ。
先ほどからずっと、誰かに監視されているような気配がするのは、やはり気のせいで
はなかったのだ。
を後ろで三つ編みに束ねていて、見るからに意思が強そうで、腕っ節も化け物で、体重
の十倍はあるような分厚い剣をいつでも持ち歩いている、首輪で繋がれた猛獣のような
女だった。
武将で皇女で女剣奴などというのは尋常の経歴ではありえない。過去に滅んでしまっ
た国と自らのただ一人の家族である弟を救うため、「ウィツアルネミテアの契約」によ
ってトゥスクル皇帝に仕えることを選んだ今のカルラは、皇帝の忠実な部下である。ト
ゥスクル軍が敗れた今でも、乱戦の中で見つけた主君のお気に入りの側女であるエルル
ゥを護衛しつつ、出会う兵のことごとくを斬り殺して、敵陣深くにある森に潜伏し脱出
の機会をうかがっていた。すでに包囲網は完成されつつあったが、この森の隘路を潜り
抜けさえすれば強行突破の道のりも開けるはずであった。
樹海の中は暗い。空高く輝いているはずの満月も、生い茂った木々によってその光を
削られている。
周囲のいたるところから生き物の気配がするのは、決して錯覚ではない。動物達はも
とより、もっと小さな微生物と、なによりも一面に満ちた樹木の群れが遠慮なく呼吸し
ている。あたりに漂っている、充満する命の気配。
ただ、彼らは人の言葉を話さない。
だからカルラは思う。
敵だ。
先ほどからずっと、誰かに監視されているような気配がするのは、やはり気のせいで
はなかったのだ。
「…………カルラさん?」
松明の炎を地面に投げ捨てて踏み消したカルラは、隣を歩いていたエルルゥを抱きか
かえた。軽い。長い黒髪が、枝毛一つなく地面まで優雅に垂れている。すっと通った眉
の下にある大きな目が不安をたたえて揺れていた。闇を慣らすために目を閉じると、甘
い香水の匂いが鼻をくすぐってくる。我があるじ様のお気に入りだけあって、エルルゥ
は、性別や友情や忠義の心を別にしてもなお、守ってあげたくなるような少女だった。
「エルルゥ、黙って、じっと私に抱かれていなさいな」
「わかりました」
余計な詮索をせずに小声で返事をしたエルルゥを腕に抱き、カルラは夜の森を疾走し
た。バキバキと小枝を踏みしめて耳をそばだて、音の反射でかろうじて樹木にだけは突
っ込まぬように配慮しつつ、夜の森の中にある開けた場所を突っ切っていく。
「…………逃げたぞ!」
「追え!」
「数で囲んで押さえつけろ!!」
人魂の群れを思わせる膨大な数の松明が、闇の中でいっせいに灯された。さすがに地
の利は圧倒的に向こうにあるようで、照らしていたこちらの光を取り囲みつつ罠をはっ
ていたらしい。だが、そんなもの、強行突破してしまえばどうということはない。
カルラはあえて最も多く松明の輝いている正面へと向かって突撃した。歴戦の戦士で
ある彼女にとっても夜の森で狭い道を走るのは危険極まりないことである。他に選択肢
はなかったといっていい。松明の最も燦然と輝くあの場所こそ、障害物の多い森の中に
あっては最も安全な場所なのは間違いない。
「…………しいっ!」
槍衾の前を跳躍し、カルラは眼前に展開している兵の一人へと飛び蹴りを打ち込んだ。
顎を砕いた感触。そのまま着地と同時に腰を回し、脇の敵をガードごと吹き飛ばして、
台風の吹き荒れるように足を動かし、蹴りの嵐を見舞って、瞬く間に正面の敵を征圧す
る。
松明の炎を地面に投げ捨てて踏み消したカルラは、隣を歩いていたエルルゥを抱きか
かえた。軽い。長い黒髪が、枝毛一つなく地面まで優雅に垂れている。すっと通った眉
の下にある大きな目が不安をたたえて揺れていた。闇を慣らすために目を閉じると、甘
い香水の匂いが鼻をくすぐってくる。我があるじ様のお気に入りだけあって、エルルゥ
は、性別や友情や忠義の心を別にしてもなお、守ってあげたくなるような少女だった。
「エルルゥ、黙って、じっと私に抱かれていなさいな」
「わかりました」
余計な詮索をせずに小声で返事をしたエルルゥを腕に抱き、カルラは夜の森を疾走し
た。バキバキと小枝を踏みしめて耳をそばだて、音の反射でかろうじて樹木にだけは突
っ込まぬように配慮しつつ、夜の森の中にある開けた場所を突っ切っていく。
「…………逃げたぞ!」
「追え!」
「数で囲んで押さえつけろ!!」
人魂の群れを思わせる膨大な数の松明が、闇の中でいっせいに灯された。さすがに地
の利は圧倒的に向こうにあるようで、照らしていたこちらの光を取り囲みつつ罠をはっ
ていたらしい。だが、そんなもの、強行突破してしまえばどうということはない。
カルラはあえて最も多く松明の輝いている正面へと向かって突撃した。歴戦の戦士で
ある彼女にとっても夜の森で狭い道を走るのは危険極まりないことである。他に選択肢
はなかったといっていい。松明の最も燦然と輝くあの場所こそ、障害物の多い森の中に
あっては最も安全な場所なのは間違いない。
「…………しいっ!」
槍衾の前を跳躍し、カルラは眼前に展開している兵の一人へと飛び蹴りを打ち込んだ。
顎を砕いた感触。そのまま着地と同時に腰を回し、脇の敵をガードごと吹き飛ばして、
台風の吹き荒れるように足を動かし、蹴りの嵐を見舞って、瞬く間に正面の敵を征圧す
る。
「射ろ!」
「逃がすな!」
「撃て! 撃ちまくれ!」
太ももに一撃、スパッツの上から肉を射抜かれた感触があった。一瞬体勢が乱れたと
ころに、二人がかりで左右から斬りつけられる。一人は裸拳を使って地面に殴り倒した
が、もう一人の剣はエルルゥに向かっていたので自らの肩で受けなければならなかった。
斬られると同時に前に出て、傷の浅いうちに敵兵の膝を垂直に蹴り抜いてやる。関節の
砕ける音がした。鍛え抜かれたカルラの全身は武器を帯びていなくても凶器そのもので
ある。たじたじになっている敵に背を向けて、一目散に森の奥へと駆けて行く。
「追え!」
「あわてるな、負傷者の治療を!」
「もう袋のねずみだ!」
背後から聞こえてくる声には耳も貸さず、カルラは全力で樹海の中へと逃げ込んだ。
もはや広い道を選ぶなどという贅沢は望むべくもない。うっそうと茂った森の中へと飛
び込み、獣道をくぐり、手探りで草をかきわけ、手や足が傷だらけになるのもかまわず
に、そま道があればそこを進み、あるいは崖をよじ登り、エルルゥのために必死で進路
を確保し、なんとか水場をみつけ、そこで力尽きたかのように倒れこんだ。
「カルラさん……カルラさん!」
「…………聞こえていますわ。大丈夫ですわよ、エルルゥ」
虚勢を張りはしたが、状態はかなり悪い。満身創痍である。エルルゥがいるとはいえ、
道具もなしでは傷の手当もままならない。水をなみなみ湛えたコップを受け取り、一気
に飲み干して一息つく間にも、エルルゥはなけなしの包帯や薬を使い、あるいは衣服を
切り裂き、老練の軍医も顔負けの手際でカルラに対して応急処置を施したが、傷自体が
かなり深い上に治療も十分ではないので、今夜一杯を回復に費やしたとしても走れるよ
うになるかギリギリのところだろう。
「逃がすな!」
「撃て! 撃ちまくれ!」
太ももに一撃、スパッツの上から肉を射抜かれた感触があった。一瞬体勢が乱れたと
ころに、二人がかりで左右から斬りつけられる。一人は裸拳を使って地面に殴り倒した
が、もう一人の剣はエルルゥに向かっていたので自らの肩で受けなければならなかった。
斬られると同時に前に出て、傷の浅いうちに敵兵の膝を垂直に蹴り抜いてやる。関節の
砕ける音がした。鍛え抜かれたカルラの全身は武器を帯びていなくても凶器そのもので
ある。たじたじになっている敵に背を向けて、一目散に森の奥へと駆けて行く。
「追え!」
「あわてるな、負傷者の治療を!」
「もう袋のねずみだ!」
背後から聞こえてくる声には耳も貸さず、カルラは全力で樹海の中へと逃げ込んだ。
もはや広い道を選ぶなどという贅沢は望むべくもない。うっそうと茂った森の中へと飛
び込み、獣道をくぐり、手探りで草をかきわけ、手や足が傷だらけになるのもかまわず
に、そま道があればそこを進み、あるいは崖をよじ登り、エルルゥのために必死で進路
を確保し、なんとか水場をみつけ、そこで力尽きたかのように倒れこんだ。
「カルラさん……カルラさん!」
「…………聞こえていますわ。大丈夫ですわよ、エルルゥ」
虚勢を張りはしたが、状態はかなり悪い。満身創痍である。エルルゥがいるとはいえ、
道具もなしでは傷の手当もままならない。水をなみなみ湛えたコップを受け取り、一気
に飲み干して一息つく間にも、エルルゥはなけなしの包帯や薬を使い、あるいは衣服を
切り裂き、老練の軍医も顔負けの手際でカルラに対して応急処置を施したが、傷自体が
かなり深い上に治療も十分ではないので、今夜一杯を回復に費やしたとしても走れるよ
うになるかギリギリのところだろう。
「カルラさんだけなら…………私が、いなければ!」
「そんなことを言ってはいけませんわ。私、あなたが喜ぶ顔を見るのがとても好きなん
ですのよ」
「でも!」
「でももにゃももないですわ。あなたを見捨てて逃げたりしたら、あるじ様に合わせる
顔がありません」
「にゃ、にゃも?」
「…………そこは流しなさい」
「は、はい」
「ともかく、二人で逃げるんですのよ、エルルゥ。私もいちいち、治療してもらって悪
いだなんて思いませんし、いいません。あなたはにこにこ笑っていてくださいな。それ
だけで、私、ずいぶん頑張れる気がしましてよ」
「……ありがとうございます」
「いい答えですわ。私はしばらく休みますので、三時間ぐらい経ったら起こしてくださ
いな」
「あ、あの、カルラさん。もしよかったら、この薬を使いますか?」
懐紙を取り出して差し出したエルルゥは、その薬効について語りだした。
「そんなことを言ってはいけませんわ。私、あなたが喜ぶ顔を見るのがとても好きなん
ですのよ」
「でも!」
「でももにゃももないですわ。あなたを見捨てて逃げたりしたら、あるじ様に合わせる
顔がありません」
「にゃ、にゃも?」
「…………そこは流しなさい」
「は、はい」
「ともかく、二人で逃げるんですのよ、エルルゥ。私もいちいち、治療してもらって悪
いだなんて思いませんし、いいません。あなたはにこにこ笑っていてくださいな。それ
だけで、私、ずいぶん頑張れる気がしましてよ」
「……ありがとうございます」
「いい答えですわ。私はしばらく休みますので、三時間ぐらい経ったら起こしてくださ
いな」
「あ、あの、カルラさん。もしよかったら、この薬を使いますか?」
懐紙を取り出して差し出したエルルゥは、その薬効について語りだした。
「このお薬は飲むだけで効果のある粉薬で、傷から悪い神様が入ってくるのを防ぐ力が
あります。解熱剤にもなっていますので、使えば、少なくとも傷の化膿と高熱について
は、ある程度抑えることができますが…………」
「何か問題でもありますの?」
「普通の人だとお腹が膨れる程度の副作用があるんです。でも、カルラさんはギリギヤ
ナ族なので。身体を標準状態に保とうとする力が悪い方向に働くかもしれません。私も
話に聞いただけなのですが、場合によっては腹下し、激しい腹痛などが起こることがあ
るそうです」
「なるほど。それは考えものですわね」
「出してしまえばたちどころに腹痛はなおるので、薬効を優先するなら使ってください。
医師としての私は服用をおすすめしますが、あとは戦士としてのカルラさんの判断にま
かせます」
「そうね。使わせてもらいますわ。まあ、様子を見て、腹痛があるようなら直り次第出
発することにいたしましょうか」
「わかりました」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
カルラは薬を飲み、目を閉じた。
疲労は思ったよりも深かったようで、すぐに意識はまどろみ、泥の中に沈むような眠
りへと落ちていった。
あります。解熱剤にもなっていますので、使えば、少なくとも傷の化膿と高熱について
は、ある程度抑えることができますが…………」
「何か問題でもありますの?」
「普通の人だとお腹が膨れる程度の副作用があるんです。でも、カルラさんはギリギヤ
ナ族なので。身体を標準状態に保とうとする力が悪い方向に働くかもしれません。私も
話に聞いただけなのですが、場合によっては腹下し、激しい腹痛などが起こることがあ
るそうです」
「なるほど。それは考えものですわね」
「出してしまえばたちどころに腹痛はなおるので、薬効を優先するなら使ってください。
医師としての私は服用をおすすめしますが、あとは戦士としてのカルラさんの判断にま
かせます」
「そうね。使わせてもらいますわ。まあ、様子を見て、腹痛があるようなら直り次第出
発することにいたしましょうか」
「わかりました」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
カルラは薬を飲み、目を閉じた。
疲労は思ったよりも深かったようで、すぐに意識はまどろみ、泥の中に沈むような眠
りへと落ちていった。
目が覚めたら痛みと熱は引いていた。ありがたいことだ。エルルゥに飲ませてもらっ
た鎮痛剤が効いているらしいが、代わりに腹部に違和感がある。忠告されたとおりに副
作用が出てしまったらしい。生理三日目のような形容しがたい不快さがこみ上げてくる。
「エルルゥ、わ、私、ちょっとお腹に来たみたいですわ。少しこの場を離れますけれど、
心配しないで下さいませ」
「はい。待っていますね」
この時、周囲の状況も確認せずにそさくさと近場の茂みに向かったのは、カルラにと
っては一生の不覚だったといえるだろう。すでに近くに潜んだ敵兵が隙をうかがってい
たことに、迂闊にも彼女は気づかない。
起き抜けの頭がぼんやりしているのがわかる。エルルゥの薬によって、興奮状態を生
理学的に抑えられているのだった。四六時中意識を張り詰めていればあっという間に集
中力は落ちてしまうし、どうにかして休息を取らなければ活動を続けられないのは当然
のことである。しかし、この場合はその油断があだとなった。耐え難い腹痛を消し去る
ために衣服に手をかけようとしたとき、甲冑が鳴り響く音と、軍靴が地面を叩く音と、
そして、エルルゥの悲鳴が聞こえた。
(…………しまった!)
後悔のあまり奥歯も砕けよとばかりに顎をかみ締めたが、もう遅い。カルラは即座に
烈風と化して駆け出した。エルルゥのいる川べりを視界に入れたとき、すでに彼女の首
もとには剣がつきつけられ、五人の武装した敵兵が武器を構えていた。明らかに訓練を
受けた軍人であり、特に中央の男は、トゥスクルの武将達と比べても全く遜色のないほ
どの心気を放っている。
た鎮痛剤が効いているらしいが、代わりに腹部に違和感がある。忠告されたとおりに副
作用が出てしまったらしい。生理三日目のような形容しがたい不快さがこみ上げてくる。
「エルルゥ、わ、私、ちょっとお腹に来たみたいですわ。少しこの場を離れますけれど、
心配しないで下さいませ」
「はい。待っていますね」
この時、周囲の状況も確認せずにそさくさと近場の茂みに向かったのは、カルラにと
っては一生の不覚だったといえるだろう。すでに近くに潜んだ敵兵が隙をうかがってい
たことに、迂闊にも彼女は気づかない。
起き抜けの頭がぼんやりしているのがわかる。エルルゥの薬によって、興奮状態を生
理学的に抑えられているのだった。四六時中意識を張り詰めていればあっという間に集
中力は落ちてしまうし、どうにかして休息を取らなければ活動を続けられないのは当然
のことである。しかし、この場合はその油断があだとなった。耐え難い腹痛を消し去る
ために衣服に手をかけようとしたとき、甲冑が鳴り響く音と、軍靴が地面を叩く音と、
そして、エルルゥの悲鳴が聞こえた。
(…………しまった!)
後悔のあまり奥歯も砕けよとばかりに顎をかみ締めたが、もう遅い。カルラは即座に
烈風と化して駆け出した。エルルゥのいる川べりを視界に入れたとき、すでに彼女の首
もとには剣がつきつけられ、五人の武装した敵兵が武器を構えていた。明らかに訓練を
受けた軍人であり、特に中央の男は、トゥスクルの武将達と比べても全く遜色のないほ
どの心気を放っている。
「貴様らあああっ!!」
人間離れした脚力によって地面を爆発的に蹴りつけ、カルラは彼我の距離を一瞬でゼ
ロにした。雑魚ならともかく、腕利きの五人を相手にしては今の状態では勝ち目は薄い。
弱いやつから一人ずつ潰してやる。そう決めたカルラの前に、鉄の塊がおそるべき速度
でもってひらめいた。かわすのがやっとだった。とっさに飛びのいたその耳に、あざや
かな風斬り音が剣に遅れて響いてくる。
強い。
ギリ、と歯を噛み、カルラは眼前の男を見た。太い腕。ざんばらに切りそろえられた
黒い髪。無駄の無い引き締まった筋肉と、手入れの行き届いた実用的な武具。オボロや
クロウと比べても、なんら遜色ない使い手なのは一目で見て取れた。万全の状態ならと
もかく、今の状態のカルラに勝ち目があるかどうか。
背中に冷たい汗が流れるのが感じられた。恐怖もあるが、それ以上に先ほどからの腹
痛がひどくなっている。何もかも投げ出して逃げ出してしまおうか。いや、そんな無様
をさらすぐらいなら死んだほうがましだ。ねじふせろ。こんな腹痛、全身の気を張って
いればどうということもない。
「…………見事な腕だな、名前を聞いてやろう」
「カルラですわ。しかし、最近の男のかたは決闘の作法も心得ていませんのね」
そういって、カルラは腰に差していた細剣を抜き放った。怪力を身上とする彼女にと
っては、あまりにも頼りない武器である。いつもの大剣を川に落としてしまったのが悔
やまれた。トウカのように骨を抜いて剣をすべらす程の悪魔じみた技の冴えがあれば別
だが、相手の武器や骨ごと砕くような戦いを得意とするカルラにとっては、こんな脆い
剣は素手と大差ない武装には違いない。
人間離れした脚力によって地面を爆発的に蹴りつけ、カルラは彼我の距離を一瞬でゼ
ロにした。雑魚ならともかく、腕利きの五人を相手にしては今の状態では勝ち目は薄い。
弱いやつから一人ずつ潰してやる。そう決めたカルラの前に、鉄の塊がおそるべき速度
でもってひらめいた。かわすのがやっとだった。とっさに飛びのいたその耳に、あざや
かな風斬り音が剣に遅れて響いてくる。
強い。
ギリ、と歯を噛み、カルラは眼前の男を見た。太い腕。ざんばらに切りそろえられた
黒い髪。無駄の無い引き締まった筋肉と、手入れの行き届いた実用的な武具。オボロや
クロウと比べても、なんら遜色ない使い手なのは一目で見て取れた。万全の状態ならと
もかく、今の状態のカルラに勝ち目があるかどうか。
背中に冷たい汗が流れるのが感じられた。恐怖もあるが、それ以上に先ほどからの腹
痛がひどくなっている。何もかも投げ出して逃げ出してしまおうか。いや、そんな無様
をさらすぐらいなら死んだほうがましだ。ねじふせろ。こんな腹痛、全身の気を張って
いればどうということもない。
「…………見事な腕だな、名前を聞いてやろう」
「カルラですわ。しかし、最近の男のかたは決闘の作法も心得ていませんのね」
そういって、カルラは腰に差していた細剣を抜き放った。怪力を身上とする彼女にと
っては、あまりにも頼りない武器である。いつもの大剣を川に落としてしまったのが悔
やまれた。トウカのように骨を抜いて剣をすべらす程の悪魔じみた技の冴えがあれば別
だが、相手の武器や骨ごと砕くような戦いを得意とするカルラにとっては、こんな脆い
剣は素手と大差ない武装には違いない。
「なるほど、お前がカルラか。しかし俺はおまえのような化け物と尋常の決闘をするつ
もりはない。黙って武器を捨てろ。それ以上一歩でも近づけば、この女を刺す」
「…………わかりましたわ」
「ダメです! カルラさん!」
「いいのです、エルルゥ。大人しく捕虜になれば再起の道が開けることもあるでしょう」
言葉通りに、カルラは帯びていた剣を川の水底に投げ捨てた。
もちろん、黙って捕虜になるつもりなどはない。
あと三歩。
あと三歩だけ近づければ、こんな男の首ぐらい、素手でねじ切ってやれる。
「それで、どうしますの?」
「手を挙げろ」
「これでよろしいかしら?」
「その場でゆっくりと、一回転しろ」
「……しましたわ。隠し武器などは持っていなくてよ」
「まだわからん。服を脱げ」
「…………っ!!」
「聞こえなかったか。服を脱げ、と言ったのだが?」
「ずいぶんと下種ですのね」
「…………」
「ま、待ちなさい! 脱ぎます! 脱ぎますわ!」
エルルゥの首に当てられた剣が白い皮膚に食い込み血が流れるのを見て、カルラは顔
を青くして叫んだ。
もりはない。黙って武器を捨てろ。それ以上一歩でも近づけば、この女を刺す」
「…………わかりましたわ」
「ダメです! カルラさん!」
「いいのです、エルルゥ。大人しく捕虜になれば再起の道が開けることもあるでしょう」
言葉通りに、カルラは帯びていた剣を川の水底に投げ捨てた。
もちろん、黙って捕虜になるつもりなどはない。
あと三歩。
あと三歩だけ近づければ、こんな男の首ぐらい、素手でねじ切ってやれる。
「それで、どうしますの?」
「手を挙げろ」
「これでよろしいかしら?」
「その場でゆっくりと、一回転しろ」
「……しましたわ。隠し武器などは持っていなくてよ」
「まだわからん。服を脱げ」
「…………っ!!」
「聞こえなかったか。服を脱げ、と言ったのだが?」
「ずいぶんと下種ですのね」
「…………」
「ま、待ちなさい! 脱ぎます! 脱ぎますわ!」
エルルゥの首に当てられた剣が白い皮膚に食い込み血が流れるのを見て、カルラは顔
を青くして叫んだ。
「早くしろ」
「……くっ!」
腰布をはずし、上着を脱ぎ、具足を上下共に地面へ放り投げ、カルラは薄い肌着を着
ているだけの姿となり、男達の遠慮のない視線を一身に浴びながら半裸で堂度と胸を張
った。
「…………これで、よろしいかしら。まさか全裸で森を動き回れとはいいませんわよね?」
「ああ、いいだろう。おい」
名指しされた部下の一人が、手に縄を持ってゆっくりと近づいてきた。
最後のチャンスだった。
両手を突き出して神妙に縄につくと見せかけたカルラは、近づいて来た男の身体を使
って敵兵との間に影を作り、そして、瞬間的に動いた。
ズム、と、腹に拳をめり込ませて一人を沈黙させる。即座に敵の剣を奪い取ったカル
ラは先ほどまで会話をかわしていた男へ向かって剣をひるがえした。恐らくこの男がリ
ーダーだ。この男の首さえ取ってしまえば、残りの敵が四散してしまう可能性は、決し
て低くはない。
カルラが決死の覚悟を秘めて振るった鉄剣は、しかし空を斬った。
遠い、と、カルラは思い知った。天馬のごとき脚力を持ったカルラにとっても達人相
手に間合いを制圧するのは容易なことではない。距離をとった敵リーダーの横から槍が
突き出された。かろうじて避けたカルラだが、鉄の穂先によって脇腹の肉を持っていか
れてしまう。
「……くっ!」
腰布をはずし、上着を脱ぎ、具足を上下共に地面へ放り投げ、カルラは薄い肌着を着
ているだけの姿となり、男達の遠慮のない視線を一身に浴びながら半裸で堂度と胸を張
った。
「…………これで、よろしいかしら。まさか全裸で森を動き回れとはいいませんわよね?」
「ああ、いいだろう。おい」
名指しされた部下の一人が、手に縄を持ってゆっくりと近づいてきた。
最後のチャンスだった。
両手を突き出して神妙に縄につくと見せかけたカルラは、近づいて来た男の身体を使
って敵兵との間に影を作り、そして、瞬間的に動いた。
ズム、と、腹に拳をめり込ませて一人を沈黙させる。即座に敵の剣を奪い取ったカル
ラは先ほどまで会話をかわしていた男へ向かって剣をひるがえした。恐らくこの男がリ
ーダーだ。この男の首さえ取ってしまえば、残りの敵が四散してしまう可能性は、決し
て低くはない。
カルラが決死の覚悟を秘めて振るった鉄剣は、しかし空を斬った。
遠い、と、カルラは思い知った。天馬のごとき脚力を持ったカルラにとっても達人相
手に間合いを制圧するのは容易なことではない。距離をとった敵リーダーの横から槍が
突き出された。かろうじて避けたカルラだが、鉄の穂先によって脇腹の肉を持っていか
れてしまう。
「…………くうっ!」
四対一である。ましてや、その内の一人は自分に匹敵するかもしれない使い手だ。防
具も脱がされているし武器も悪い。カルラの敗北は確定していたといってよかった。そ
れでも彼女は絶望せず奮闘したが、あっという間に剣を砕かれ、腹を切られ、地面に引
き倒されてしまう。
「……ふんっ!」
「ぐあっ! うっ! …………うあっ、ああああああああああああああああっ!!」
光の速さで振るわれた剣は、カルラの両腕の腱を鮮やかに切断した。
カルラは絶叫した。
感じたことのない苦痛が脳髄に突き抜けて、ぶざまにも涎と涙をたらして悲鳴を上げ
てしまう。
「馬鹿が……てこずらせおって」
「…………大将、このままじゃおさまらねえよ」
「そうそう。こいつには仲間もずいぶん殺されてるし」
「もっといたぶってやらねえと」
「なあ…………こいつ、よくみれば、すげえ美人じゃねえか?」
敵兵たちは緊張した表情から一転、だらしなく表情をゆがめて、そして笑い出した。
四対一である。ましてや、その内の一人は自分に匹敵するかもしれない使い手だ。防
具も脱がされているし武器も悪い。カルラの敗北は確定していたといってよかった。そ
れでも彼女は絶望せず奮闘したが、あっという間に剣を砕かれ、腹を切られ、地面に引
き倒されてしまう。
「……ふんっ!」
「ぐあっ! うっ! …………うあっ、ああああああああああああああああっ!!」
光の速さで振るわれた剣は、カルラの両腕の腱を鮮やかに切断した。
カルラは絶叫した。
感じたことのない苦痛が脳髄に突き抜けて、ぶざまにも涎と涙をたらして悲鳴を上げ
てしまう。
「馬鹿が……てこずらせおって」
「…………大将、このままじゃおさまらねえよ」
「そうそう。こいつには仲間もずいぶん殺されてるし」
「もっといたぶってやらねえと」
「なあ…………こいつ、よくみれば、すげえ美人じゃねえか?」
敵兵たちは緊張した表情から一転、だらしなく表情をゆがめて、そして笑い出した。
76 :スレの7 :sage :2008/05/21(水) 22:40:03 (p)ID:EsbM5Qg6(19)
「へえ……ほんとだ。殺すのはもったいねえな」
「ああ、後でいいよな」
「殺すにしても、楽しまねえと損だしな」
「こっちの女はどうする?」
見ると、エルルゥは敵兵の一人に不必要なほどがっしりと身体を抑えられ、肌を愛撫
されている。
「お、俺はこっちのほうで楽しみてえな」
「いっしょにやっちまうか」
「やろう」
「やろうぜ」
「……大将、いいですかい?」
「…………好きにしろ。ただし、ここで野営の準備をするから、明日の朝までだ。それ
以上は待てん」
兵たちは顔を見合わせて、そして歓声を上げた。
「おおおっ!! ひゃっほー! 話がわかるぜ、大将!」
「いいんですね! うわ、すげえ燃えてきた!」
「やっぱあんた、最高だ!」
手を叩いて喜んでいる男達に、リーダーらしき男は眉をしかめ、そして釘をさした。
「へえ……ほんとだ。殺すのはもったいねえな」
「ああ、後でいいよな」
「殺すにしても、楽しまねえと損だしな」
「こっちの女はどうする?」
見ると、エルルゥは敵兵の一人に不必要なほどがっしりと身体を抑えられ、肌を愛撫
されている。
「お、俺はこっちのほうで楽しみてえな」
「いっしょにやっちまうか」
「やろう」
「やろうぜ」
「……大将、いいですかい?」
「…………好きにしろ。ただし、ここで野営の準備をするから、明日の朝までだ。それ
以上は待てん」
兵たちは顔を見合わせて、そして歓声を上げた。
「おおおっ!! ひゃっほー! 話がわかるぜ、大将!」
「いいんですね! うわ、すげえ燃えてきた!」
「やっぱあんた、最高だ!」
手を叩いて喜んでいる男達に、リーダーらしき男は眉をしかめ、そして釘をさした。
「…………長い黒髪の無力そうなほうは、殺すなよ。ニウェ様への捧げものにする。こ
れだけ美しければ後宮の一人に取り上げられるかもしれん」
「え、それは、手をつけちまっていいんですかい?」
「戦場のならいだ。ニウェ様も笑ってお許しになる。カルラのほうは、まあ、強姦の末
に殺害されるということでもいいだろう。生きていたら生きていたで、連れて行けば多
少の手柄にはなる」
「へへ、じゃあ、こっちもなるべく優しく犯すことにしやすぜ」
「大将の出世は俺達の出世ですからね」
「おいカルラ、これから可愛がってやるぜ。いい声で鳴いてくれよ…………でないと、
お前もその女も殺すぜぇ」
男は我慢できないといった表情でカルラの顎を掴み、強引に唇を合わせて舌を入れて
きた。
「……ぁ……う…………」
無遠慮に生臭い唾液を入れられて、カルラは吐気を催した。こんな下種に唇を奪われ
ているという事実が途方もなく悔しくて情けない。たわわな胸を触れられて身体をもて
あそばれる。白い太ももからスパッツの中に指を入れられ、服の上からも同時に、陰部
をねちねちとかき回され、指でいじられてしまう。
「や……やめ、な、さいっ。い、今は…………駄目なのぉっ!」
「へへ、今じゃなけりゃ、いつやるんだよ」
「ち、違う。お、お腹が…………お腹が、苦しいのっ! 本当に苦しいのっ!!」
恥辱に満ちた告白をしているのはわかっていたが、それでももう、我慢は限界を超え
ていた。全身に纏わせていた気力もとうに尽き、排泄感は腸自身が肉体とは別の意思を
持ってうごめいているように感じるほどに大きい。このままでは、行為の最中に相手の
上にぶちまけてしまうことにもなりかねない。勝敗は兵家の常だが、そのような恥辱は
カルラの限度を超えている。
れだけ美しければ後宮の一人に取り上げられるかもしれん」
「え、それは、手をつけちまっていいんですかい?」
「戦場のならいだ。ニウェ様も笑ってお許しになる。カルラのほうは、まあ、強姦の末
に殺害されるということでもいいだろう。生きていたら生きていたで、連れて行けば多
少の手柄にはなる」
「へへ、じゃあ、こっちもなるべく優しく犯すことにしやすぜ」
「大将の出世は俺達の出世ですからね」
「おいカルラ、これから可愛がってやるぜ。いい声で鳴いてくれよ…………でないと、
お前もその女も殺すぜぇ」
男は我慢できないといった表情でカルラの顎を掴み、強引に唇を合わせて舌を入れて
きた。
「……ぁ……う…………」
無遠慮に生臭い唾液を入れられて、カルラは吐気を催した。こんな下種に唇を奪われ
ているという事実が途方もなく悔しくて情けない。たわわな胸を触れられて身体をもて
あそばれる。白い太ももからスパッツの中に指を入れられ、服の上からも同時に、陰部
をねちねちとかき回され、指でいじられてしまう。
「や……やめ、な、さいっ。い、今は…………駄目なのぉっ!」
「へへ、今じゃなけりゃ、いつやるんだよ」
「ち、違う。お、お腹が…………お腹が、苦しいのっ! 本当に苦しいのっ!!」
恥辱に満ちた告白をしているのはわかっていたが、それでももう、我慢は限界を超え
ていた。全身に纏わせていた気力もとうに尽き、排泄感は腸自身が肉体とは別の意思を
持ってうごめいているように感じるほどに大きい。このままでは、行為の最中に相手の
上にぶちまけてしまうことにもなりかねない。勝敗は兵家の常だが、そのような恥辱は
カルラの限度を超えている。
「あ、あの、本当なんですっ! カルラさんは、今…………お、お腹が下りやすくなる
薬を飲んでいて! だ、だから、少しだけ、て、手洗いに…………お願いします!」
組み伏され、胸を愛撫されながらも、エルルゥはカルラの身を案じている。その気遣
いにカルラは泣きそうになったが、心にはもはや一片の余裕もない。見栄も外聞も、精
神が安定している状態ではじめて気にすることができるものである。今のカルラにそれ
は望むべくもない。腱を切られた腕でひじをつき、はいずるように地面を進みながら懇
願する。
「…………お、お願い! 逃げないから、少しだけ待って! すぐに帰って来るから!
絶対に逃げないから!」
カルラはかつて敵だった相手に恥ずかしくて死にそうになるような懇願をしなければ
ならなかった。もはや強気だった頃の凛とした面影は見る影もない。目に一杯の涙をた
たえ、汗を玉のように流しながら、口から唾液を垂れ流して、敵兵の足元にすがりつく。
「あ…………う、ううっ、も、もう駄目なの……本当に駄目なのぉっ!」
「……おい、どうする?」
「なんか本気っぽいし、それぐらい許してやってもいいんじゃね?」
「出してる間にされたら興ざめだしなあ」
「…………いや、待て。せっかくだし、こいつのやってるとこを見てみねえか?」
「はあ!?」
「こういうプライドの高そうな女ってさあ、たぶん、人に見られたりしたらすげー屈辱
なわけよ。こいつの仲間も一緒だし、やっぱそれぐらいしねえと、腹の虫がおさまらね
えっていうか」
「げー、ついていけねー」
「あ、俺は協力してもいいぜ。おまえ、あっちの黒髪のほうに行けよ。こっちは俺達が
やっとくからさ」
「えー、俺もこっちのほうが締まりよさそうでいいんだけどなあ…………ま、いいか。
ちょっとションベンくせーけど、あっちはあっちで上物だしな」
そういって、男の一人は挿入されている最中のエルルゥのところへと去って言った。
彼女の悲鳴が聞こえるたびにカルラの胸は張り裂けそうになったが、今はそれより、腹
の異物感が発狂しそうなほどに大きくなっている。
薬を飲んでいて! だ、だから、少しだけ、て、手洗いに…………お願いします!」
組み伏され、胸を愛撫されながらも、エルルゥはカルラの身を案じている。その気遣
いにカルラは泣きそうになったが、心にはもはや一片の余裕もない。見栄も外聞も、精
神が安定している状態ではじめて気にすることができるものである。今のカルラにそれ
は望むべくもない。腱を切られた腕でひじをつき、はいずるように地面を進みながら懇
願する。
「…………お、お願い! 逃げないから、少しだけ待って! すぐに帰って来るから!
絶対に逃げないから!」
カルラはかつて敵だった相手に恥ずかしくて死にそうになるような懇願をしなければ
ならなかった。もはや強気だった頃の凛とした面影は見る影もない。目に一杯の涙をた
たえ、汗を玉のように流しながら、口から唾液を垂れ流して、敵兵の足元にすがりつく。
「あ…………う、ううっ、も、もう駄目なの……本当に駄目なのぉっ!」
「……おい、どうする?」
「なんか本気っぽいし、それぐらい許してやってもいいんじゃね?」
「出してる間にされたら興ざめだしなあ」
「…………いや、待て。せっかくだし、こいつのやってるとこを見てみねえか?」
「はあ!?」
「こういうプライドの高そうな女ってさあ、たぶん、人に見られたりしたらすげー屈辱
なわけよ。こいつの仲間も一緒だし、やっぱそれぐらいしねえと、腹の虫がおさまらね
えっていうか」
「げー、ついていけねー」
「あ、俺は協力してもいいぜ。おまえ、あっちの黒髪のほうに行けよ。こっちは俺達が
やっとくからさ」
「えー、俺もこっちのほうが締まりよさそうでいいんだけどなあ…………ま、いいか。
ちょっとションベンくせーけど、あっちはあっちで上物だしな」
そういって、男の一人は挿入されている最中のエルルゥのところへと去って言った。
彼女の悲鳴が聞こえるたびにカルラの胸は張り裂けそうになったが、今はそれより、腹
の異物感が発狂しそうなほどに大きくなっている。
「…………さあて、カルラちゃん、粗相の時間ですよー」
「やめて…………い、いやよっ! いやだっ! やめてぇっ!!」
スパッツに指を入れられ、ゆっくりと脱がされていく。むき出しになった白い腹に生
臭い舌が這った。後ろからは両腕を抱え込むようにして胸を愛撫している男が、やはり
首筋に舌を伸ばしてなめてくる。生理的嫌悪感から涙があふれ出るのが抑えられなかっ
たカルラだが、断続的に襲い掛かってくる刺激に腸をおびやかされているという事実は、
それよりもさらに耐え難い。
「…………ふうっ! ふぁああ……や、や……やめて。お願い……します…………お願
い、だからっ!」
「へへ…………好きなだけお願いしろよ」
「おい、そろそろ入れちまうか?」
「まあちょっと待てよ。出させてやって、拭いてからでもいいだろ」
「理屈はそうだが…………あんまり耐えられてもつまんねえぞ」
「大丈夫だって、ほら、こーやって」
「あ、俺も揉む揉む」
「…………あっ! あううううああああっ! だめっ! だめよ! やめなさい……や
めてえええええええっ!」
カルラの白い脇腹が、男の手によって愛撫された。
腹をてのひらで圧迫される。
へそに指が入れられる。
乳首が、ころころと舌先で転がされていく。
舌で舐められ、指でつかまれ、噛みつかれ、背中に、汗をかいた脇に、腕に、次々と
刺激が送り込まれ、そのたびに強くなる排泄欲を必死でこらえながら、カルラは髪を振
り乱して絶叫した。
「はあああっ! う……ああっ! あっ! ああああっ! いや……あっ…………ああ
あああああああっ!!」
そして。
死ぬまで呼吸を止められる人間が、絶対にいないように。
カルラの必死の努力もまた、そのとき、終わりを告げた。
「やめて…………い、いやよっ! いやだっ! やめてぇっ!!」
スパッツに指を入れられ、ゆっくりと脱がされていく。むき出しになった白い腹に生
臭い舌が這った。後ろからは両腕を抱え込むようにして胸を愛撫している男が、やはり
首筋に舌を伸ばしてなめてくる。生理的嫌悪感から涙があふれ出るのが抑えられなかっ
たカルラだが、断続的に襲い掛かってくる刺激に腸をおびやかされているという事実は、
それよりもさらに耐え難い。
「…………ふうっ! ふぁああ……や、や……やめて。お願い……します…………お願
い、だからっ!」
「へへ…………好きなだけお願いしろよ」
「おい、そろそろ入れちまうか?」
「まあちょっと待てよ。出させてやって、拭いてからでもいいだろ」
「理屈はそうだが…………あんまり耐えられてもつまんねえぞ」
「大丈夫だって、ほら、こーやって」
「あ、俺も揉む揉む」
「…………あっ! あううううああああっ! だめっ! だめよ! やめなさい……や
めてえええええええっ!」
カルラの白い脇腹が、男の手によって愛撫された。
腹をてのひらで圧迫される。
へそに指が入れられる。
乳首が、ころころと舌先で転がされていく。
舌で舐められ、指でつかまれ、噛みつかれ、背中に、汗をかいた脇に、腕に、次々と
刺激が送り込まれ、そのたびに強くなる排泄欲を必死でこらえながら、カルラは髪を振
り乱して絶叫した。
「はあああっ! う……ああっ! あっ! ああああっ! いや……あっ…………ああ
あああああああっ!!」
そして。
死ぬまで呼吸を止められる人間が、絶対にいないように。
カルラの必死の努力もまた、そのとき、終わりを告げた。
「あぅっ! くぁあああっ!! …………あっ! ……うっ、くあああああっっ!!
あ……あ、ああああ…………いやあああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!??」
ブシュッ! ブシュッ!! ブジュウウウッッッ!!
頭の中に火花が散って、尊厳の全てを打ち砕かれるように思考が真っ白になった。悲
しすぎるほどの快感とともに排泄物を菊座から放出して、カルラは絶望的な快楽を味わ
いながら、唇をかみ締めて羞恥の時を耐えていた。
「オオオオオッ! やった! やりやがったぜ!」
「ははは。あのカルラがよぉ! 人前でやりやがったっ!!」
「あ……ああ…………み、見ないで…………いやっ、見ないでええええええっ!!!」
嘲りと嘲笑を一身に受けながら、カルラは涙の溢れる目を閉じて必死に顔をそむけた。
腕を押さえられ、太ももを開くことを強制され、尻を拭かれる屈辱を感じながらも、心
は苦痛から開放された恍惚に、どうしようもないほど安心して緩んでいた。
「へへ…………さあ、やっと本番にいくか」
「俺前! 絶対前!」
「……しゃーねーな。貸しだぞ、貸し。じゃ、俺は後ろでいくかあ」
「これだけ耐えたんだ、きっと後ろの締まりは抜群だぜ」
「じゃあ代われよ」
「いやだ! これは譲れねえ。絶対俺が最初に、中にひりだしてやるんだ!」
「病気か、お前は。まあいいさ。ほら、さっさとやろうぜ」
「ああ、やろう」
蛙のように足を開かれ、カルラは性器をずぶずぶと犯されていった。ほとんど男を知
らない秘所が切り裂かれ、望みもしない痛みを強制されてしまうが、身体を動かして抵
抗するような気力は、屈辱にまみれたカルラには、もう、残されてはいない。
あ……あ、ああああ…………いやあああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!??」
ブシュッ! ブシュッ!! ブジュウウウッッッ!!
頭の中に火花が散って、尊厳の全てを打ち砕かれるように思考が真っ白になった。悲
しすぎるほどの快感とともに排泄物を菊座から放出して、カルラは絶望的な快楽を味わ
いながら、唇をかみ締めて羞恥の時を耐えていた。
「オオオオオッ! やった! やりやがったぜ!」
「ははは。あのカルラがよぉ! 人前でやりやがったっ!!」
「あ……ああ…………み、見ないで…………いやっ、見ないでええええええっ!!!」
嘲りと嘲笑を一身に受けながら、カルラは涙の溢れる目を閉じて必死に顔をそむけた。
腕を押さえられ、太ももを開くことを強制され、尻を拭かれる屈辱を感じながらも、心
は苦痛から開放された恍惚に、どうしようもないほど安心して緩んでいた。
「へへ…………さあ、やっと本番にいくか」
「俺前! 絶対前!」
「……しゃーねーな。貸しだぞ、貸し。じゃ、俺は後ろでいくかあ」
「これだけ耐えたんだ、きっと後ろの締まりは抜群だぜ」
「じゃあ代われよ」
「いやだ! これは譲れねえ。絶対俺が最初に、中にひりだしてやるんだ!」
「病気か、お前は。まあいいさ。ほら、さっさとやろうぜ」
「ああ、やろう」
蛙のように足を開かれ、カルラは性器をずぶずぶと犯されていった。ほとんど男を知
らない秘所が切り裂かれ、望みもしない痛みを強制されてしまうが、身体を動かして抵
抗するような気力は、屈辱にまみれたカルラには、もう、残されてはいない。
「はあああっ! う……ああっ! あっ! あああっ! う……あっ…………うあああ
ああああああっ!!」
「へへへ……これだから落ち武者狩りはやめられねえ。こんな極上の女が犯し放題なん
だからなあ!」
「カルラちゃーん、入ってますよー」
「……ううううっ! くっ…………ふあっ! うっ、あうっ……ああああああああっ!!」
脇腹を掴んでいる手を、ふりはらうことさえできない。
足を閉じようとしても、それを上回る力で、あっさりと押し込まれてしまう。
痛い。
剣で斬られる痛みとは全く違う、えぐりとられるような、屈辱を伴った痛みがある。
目の前の男達は、覇気に満ちた嗜虐的な笑みを浮かべている。
それがたまらなくて、カルラはせめてもの抵抗として、必死で足を閉じようとする。
しかし、それは男達を喜ばせただけだった。
「うっ…………ああ、なんて締め付けだ。鍛えてるだけはあるよなあ」
「こんな名器、今まで出会ったことねえぜ」
「あ、ああああ…………」
「へへ、あっちもお楽しみだなあ。後で交換してもらうか?」
「今夜限りだしな。そうしようぜ。ほら、カルラよぉ、もっと鳴けよ! でないと、後
でエルルゥがひどいぜ!!」
「ぐっ……かはっ……! ああっ!……ん、あ……ぎっ……あうっ! ああああああっ
……うあああっ!」
二つの穴に押し込まれた肉棒に連動して、カルラは必死で声を上げた。
エルルゥの悲鳴が、まだ聞こえる。
首を少し横に向けるだけで、泣き叫び、黒髪に精液をこびりつかせ、服をはだけさせ
られて腰を突かれている彼女の姿が、嫌というほどに目に焼きついてしまう。
……自分の、せいだ。
自分が、あまりにも敵に対して不注意だったから、こんなことになってしまったのだ。
ああああああっ!!」
「へへへ……これだから落ち武者狩りはやめられねえ。こんな極上の女が犯し放題なん
だからなあ!」
「カルラちゃーん、入ってますよー」
「……ううううっ! くっ…………ふあっ! うっ、あうっ……ああああああああっ!!」
脇腹を掴んでいる手を、ふりはらうことさえできない。
足を閉じようとしても、それを上回る力で、あっさりと押し込まれてしまう。
痛い。
剣で斬られる痛みとは全く違う、えぐりとられるような、屈辱を伴った痛みがある。
目の前の男達は、覇気に満ちた嗜虐的な笑みを浮かべている。
それがたまらなくて、カルラはせめてもの抵抗として、必死で足を閉じようとする。
しかし、それは男達を喜ばせただけだった。
「うっ…………ああ、なんて締め付けだ。鍛えてるだけはあるよなあ」
「こんな名器、今まで出会ったことねえぜ」
「あ、ああああ…………」
「へへ、あっちもお楽しみだなあ。後で交換してもらうか?」
「今夜限りだしな。そうしようぜ。ほら、カルラよぉ、もっと鳴けよ! でないと、後
でエルルゥがひどいぜ!!」
「ぐっ……かはっ……! ああっ!……ん、あ……ぎっ……あうっ! ああああああっ
……うあああっ!」
二つの穴に押し込まれた肉棒に連動して、カルラは必死で声を上げた。
エルルゥの悲鳴が、まだ聞こえる。
首を少し横に向けるだけで、泣き叫び、黒髪に精液をこびりつかせ、服をはだけさせ
られて腰を突かれている彼女の姿が、嫌というほどに目に焼きついてしまう。
……自分の、せいだ。
自分が、あまりにも敵に対して不注意だったから、こんなことになってしまったのだ。
(エルルゥ…………ごめん……ごめんね………………)
時間の感覚は、既にない。
いつのまにか、兵士達が入れ替わり、新たな方法でカルラを玩弄していることさえ、
意識の外で起こっている悪い夢のように感じる。
白い液体が、ごぽごぽと体内に注がれる。
後ろから、まるで粗相をしているかのように、精液が溢れてくる。
カルラは、三つ編みの結び目に剣を入れられ、肩に滝のようにこぼれおちている黒髪
で顔を覆いながら、ぼんやりと穴を犯され、唇をすぼめておしゃぶりをして、性の道具
として動いていた。
そのことに疑問を感じるほどの力は、今はない。
もしかすると、これからも。
かわるがわるに回されて、連れさらわれて、どこかに売り飛ばされて、一生をこのよ
うにして生きるのかもしれない。
エルルゥも、同じだろうか。
同じなのかもしれない。
時間の感覚は、既にない。
いつのまにか、兵士達が入れ替わり、新たな方法でカルラを玩弄していることさえ、
意識の外で起こっている悪い夢のように感じる。
白い液体が、ごぽごぽと体内に注がれる。
後ろから、まるで粗相をしているかのように、精液が溢れてくる。
カルラは、三つ編みの結び目に剣を入れられ、肩に滝のようにこぼれおちている黒髪
で顔を覆いながら、ぼんやりと穴を犯され、唇をすぼめておしゃぶりをして、性の道具
として動いていた。
そのことに疑問を感じるほどの力は、今はない。
もしかすると、これからも。
かわるがわるに回されて、連れさらわれて、どこかに売り飛ばされて、一生をこのよ
うにして生きるのかもしれない。
エルルゥも、同じだろうか。
同じなのかもしれない。
敗残の兵ほど惨めな存在は、ざらにはないのだから。
戦に負けたことの悲哀をかみ締めながら、今はもううずかなくなった腹に力を入れ、
カルラは腰を動かし、目を閉じて、今はもう失われてしまった未来を思い、静かに涙
を流した。
カルラは腰を動かし、目を閉じて、今はもう失われてしまった未来を思い、静かに涙
を流した。