(独立宗教法人柳洞寺の6ターン目です)
イベントが発生しました。
商店街:ご依頼の品について
閣下、深山商店街の町内会長からお詫びの手紙が届いております。
先日閣下が依頼したシュレッダーとクーラーの件ですが、何でも、シュレッダーは先日の回収騒ぎの
ため店頭から一斉に姿を消しており、対策品は品薄状態。またクーラーもこの所の猛暑の影響からか
型落ち品すら売れ行きを伸ばし、こちらも品薄状態だそうです。
ただし、購入していただけるなら次のターンまでに何とか在庫を確保する、との事です。
(選択)購入しますか?
Y/商店街の協力に感謝する(資源-10)
N/冬になった頃、クーラーを譲っていただきたい
大河:タイガー
イリヤ:イリヤの
大河&イリヤ:おまけ劇場!
大河:さて、初の資源消費イベントが発生した所で、「
黒桐幹也の結婚」における資源消費イベント
について説明をしておこう!
イリヤ:師匠、何で私達が登場したのか戸惑っている後藤君たちが大半だと思うのでありますが。
大河:知らぬ! この道は修羅の道。仏に会えば仏を斬り、虎に会えば、虎は斬れないから代わりに
獅子を斬るのだ!
まあ、単純に言っちゃうと、説明し忘れた作者がそのままだと面白くないから、という事で
私たちに説明させようと思ったのが原因なんだけどね。
イリヤ:それもいい加減な。
で、ししょー。資源消費イベントって何か問題があるのでしょうか? 黒桐で扱うのは現金、
資源をいくら使っても問題ないと思うのですが。
大河:それが大有りでねぇ。この資源消費イベントは、当たり前だけど本編(HoL)の手持ち資源を
消費して何かをやるイベントなの。だから調子に乗って使ってしまうと……
イリヤ:本編の流れに大きく影響を与えるって事ね。下手すると破産エンドを迎えるのかしら?
大河:さすがにそれは無いけどねー。でも、強化暗殺拳を放ちたいのに放てない、みたいな事には
なるから、そうなったら戦闘ですごくピンチ。
イリヤ:でも、消費一辺倒だと、積もり積もって30ターン、40ターン目辺りで大変な事になるんじゃない?
大河:もちろん、資源入手イベントもあるからそこは大丈夫。ただ、黒桐は妙に出目が悪いのよね。
イリヤ:……奇数・偶数の選択で、ほとんどが偶数。これは何かに祟られるような感じであります。
大河:ま、一回お祓いすると良いんじゃない? 勤め先が勤め先だし、祟りを呼びやすいのかもねー。
そして、寺にとってお祓いは普通だ!
イリヤ:そんなわけで、資源消費のお話はここまで。次に会うのは3~4ターン後かしら。
では、また会うときまで、後藤君たちもお元気で。
Y:全て了解した!
「…………」
目覚ましが鳴る少し前に、僕は目を覚ました。
目覚ましを止め、そのまま洗面所に行き、顔を洗う。水道の蛇口から吐き出される水は
生ぬるく、目を覚ますのには不十分だったけど、洗顔料をつけて顔を洗ったらさっぱりした。
さっぱりした所でコーヒーメイカーをセットし、その後冷蔵庫へ。冷蔵庫の中身は相変わらず
寂しい限りだけど、未開封のジャムパンが一つあるのでこれを取り出す。
賞味期限は……なんだ、昨日か。まだまだ大丈夫だな。
とりあえず、コーヒーが出来上がるまでの時間を無駄にしないために、メモ帳と筆記用具を
取り出し、今日の予定を考える。
柳洞寺に8時半頃ついたとして、そこから諜報部かメディアさんの所に行き、諜報部の場合は
そのまま午前の業務、お昼、午後の業務。場合によってはそこから継続任務となっている
ミスター陳関連の業務を。
メディアさんの所の場合は、メディアさんから諜報関係の話を聞き、緊急の仕事があれば、
それを。そうでないのなら、諜報部に行って業務をこなした後にその業務を。
そうか。メディアさんの所に定時前に行くか定時後に行くかという話か。
定時後は、何も無ければ深山商店街かこっちの商店街で買い物をして帰り、居残りになったら
コンビニでパンと牛乳でも買って帰ろう。それとも、式が泊まりに来る土曜日に全力を
傾けるべく、今日、明日は備蓄で済まし一円も使わないか。
うん、せっかく式が泊まりに来る事になったんだから、やっぱり出来る限りの事はして
あげたいな。
とは言え、僕に何が出来るのかさっぱり思い浮かばないわけだけど。
朝食を食べた後、財布の中身を確認する。現金が24150円。そしてテレホンカードが一枚。
思った以上に現金が減っていないな。ご飯をあれだけ他人から恵んでもらうとそうなるか。
忘れ物が無いのを確認して、僕はアパートを出て、柳洞寺に向かった。電車の中は相変わらず
凄い人だが、冷房が効いているため、それほど暑くは無い。しかし、一歩電車の外に出ると、
日陰にいてなお、熱気がくる。今日も暑くなりそうだ。
駅を出て、しばらく歩くと柳洞寺の階段に来た。柳洞寺の周辺は木が生い茂っている事もあり、
まだ涼しい。もう少し時間が経過すると、蒸し暑くてたまらなくなるのだけれど。
階段を一歩一歩、確かめながら歩く。まだ掃き清められていないのか、階段には汚れが目立って
いた。やはり、毎日の清掃が大切なようだ。
「おや、黒桐殿」
下から見えていたが、本日も山門には佐々木小次郎氏がいて、不審者の侵入を阻止している。
「おはようございます。佐々木さん」
「おはよう。本日は出勤かね」
「ええ。佐々木さんもずっと警戒中ですか」
どんな事情があるのかは分からないんだけど、ずっと山門に張り付いて見張るというのは
かなり大変だと思う。
「なに、この身はそれに特化した存在。それに」
そう言うと、佐々木さんは懐から何かを出し、僕に投げた。
「たまにはこうして息抜きをする事も許される」
渡されたものを良く見ると、それは竹で出来た水筒だった。竹を節で切って、穴を開けて
栓をしただけの水筒だが、丁寧な処理をされてるのが分かる。
「これは佐々木さんが?」
「さよう。暇に任せて剣を振るっていたら、あの雌狐が『暇だったら、そこらの木の枝打ち
くらいしなさい!』と言うのでな。素直に従うのも癪だったので、変わりに竹を打った次第」
愉快愉快、と佐々木さんは付け加える。
何と言うか、色んな面で凄い人だな。
「その水筒は黒桐殿に差し上げよう」
「どうも」
何となく、これをもっているとメディアさんに目をつけられそうな気がしたが、断るのも
何なのでありがたく頂く。素人仕事ながら、割と良い出来みたいだし。
「では、これで」
「ああ。雌狐に化かされぬよう注意されたし」
佐々木さんにお辞儀をして山門を後にする。しかし、メディアさんに対して、あそこまで
言える佐々木さんって何者なんだろうか?
【選択肢】次の行動を決めてください
A:メディアさんに会いに行く
B:諜報部に向かう
佐々木さんと別れた後、僕は直接諜報部に向かった。
前回はメディアさんに会ってから諜報部に行った為、10時を過ぎる事になった。
それはそれで必要な時間であったわけだけれども、やはり定時前に席に着いている方が印象は
良いだろう。
「おや、おはよう」
「あ、おはようございます、顧問」
僕が部屋に着いたとき、すでに7~8割のメンバーは席に座っていた。
と言っても、ほとんどの者は隣と話しているか、本を読んでいるかで、学校の休憩時間を思い
出させる。考えてみれば、彼らはまだ高校生なんだよな。
そう思って見回すと、重要な人物が二人とも居ない事に気がつく。
「部長と霧島さんは?」
「部長はトイレじゃないですかね。霧島は……ギリギリにならないと来ないタイプの人間なので」
「ああ、了解」
確かに、「遅刻、遅刻」と言いながらパンをくわえて走る姿が絵になる子だとは思っていたが。
しばらく経つと部長は戻ってきたので、昨日の活動内容について報告書での提出をお願いした。
口頭で言ってもらっても良いのだけれど、こういうのは文章に残しておいた方が後々見直す時に
便利だ。
フォーマットはいつもの通りで良いと言ってあるので大丈夫だろう。始めて会った時には、
本人の能力を把握する意味も込めて、詳しい説明をしないで「昨日やった事を書いてくれるかな」
と言ったら、要点も何も無く本当にただ行動を書いただけだったのにはびっくりしたが。
やはり、このくらいの年齢だと一から十まで教えて、徐々に覚えてもらうしかないのかなぁ。
「おはよーございます!」
そうこうしているうちに、霧島さんが滑り込むような形で部屋に入ってきた。
「おはよう、霧島さん」
「あ、黒桐さん。おはようございます!」
時計を見ると、8時58分。遅刻ではないし、くどくど言うのは止めよう。とは言え、
「間に合っているけど、もう5分早く、できれば10分前に席に着いてくれていると嬉しいかな」
とだけ言っておく。霧島さんは、「あはは。分かってはいるんですけどねぇ」とまあ、最もな
反応を示してくれた。
まあ、元気なのは良いことだという事にしておこう。
「顧問、書けましたが」
「ああ、ありがとう」
そしてこっちは融通の利かないタイプの人間と。分かってはいるけど、大変だな。
お昼と違い9時の鐘は鳴らないが、部屋の壁掛け時計と僕の腕時計は正確に9時を刻んでいた。
「おはよう、みんな」
「おはようございます」
【選択肢】業務(?)開始です
A:今日は海岸までピクニックに行こうか
B:まず、境内の掃除をしようか
C:まず、復習も兼ねて座学を行うか
なお、Aは今日一杯の業務、B、Cは午前中の業務となります。
「それじゃ、まずは復習も兼ねて座学を行おうか」
色々とやる事はあるけど、やはり座学は朝の涼しいうちの方が良い。お昼ごはんを食べた
後でやると、多分半分くらいは寝るし、起きている者も睡魔や暑さと戦いながらになって、
やっぱり効率が悪い。
室温が25℃から1℃上がる毎に2%作業効率が悪化する、という話もある。もちろん、
風通しを良くしたり、扇風機や団扇(うちわ)、あるいは風鈴などを置くことで改善できる
んだろうけど。
「さて、諜報部の役目は主に『情報を集める』事、そしてその集めた情報を分析し、使える
状態に加工する事が主任務だ。
情報は大量に集まる場合もあれば、ほとんど集まらない場合もある。
大量に集まった場合は、その中から重要なものを取捨選択し、処理できるように簡易化させる
必要があるし、ほとんど集まらなかった場合はその限られた情報の中から、自分なりのストーリーを
描いて、捕捉する場合もある」
大量の情報を簡略化させる方法は、物理学の公式をイメージすると分かりやすい。
20数年前の物理学の教科書を見ると、複雑な現象をいかに簡易モデルで解くかに腐心している。
いかに正確な情報を集めた所で、計算するのは人間なので、その情報を処理する能力には
おのずと限界がある。従って大量の情報を集めるよりは、より簡略化したモデルで正解に
近い解を出せる方法が重視されたのだ。
現在はコンピューターにより大量の情報を処理する事が可能になったため、より正確な式を
導き出す方が重視されているけど。
「ただし、自分なりのストーリーを描くと言っても、自分の願望を描いてはいけない。
十分な根拠に基づいた、ただの願望でないストーリーでなくてはいけない。本人は冷静な分析の
はずが、ただの願望に過ぎなかった場合というのは歴史上、いくらでもあるからね」
もっとも、歴史上いくらでもあるという事は、それを防ぐことがいかに難しいかという事も
同時に物語っている。
人間は機械ではないため、どうしても本人の思考や願望が混じる。それを排除するために
集団で相互管理を行うのだが、今度はそれにより「集団の願望」(分かりやすい言葉を使う
ならば組織の利益)が混じる。そうすると、今度は「集団にとって最も都合の良い話」が
重視されてしまう。
かと言って、組織性を排除すると、今度はひたすら小さな集団になって、やれる事が限られる。
無理に小規模集団で連合を組めば、やはり個々の利益を巡って対立が起きる。
この辺りは本当に難しい。
「それから、ここでは『空気を読め』という言葉、態度は厳禁」
僕がそう言うと、皆が「え?」という顔をする。
「『空気を読む』ってのは集団生活を行う上での知恵で、そしてそれは集団の利益を守り、
集団を維持する上では有益だと思う。明確にルールを決めると必ずグレーゾーンが存在する。
そして、そこを巡って紛糾する。それよりは集団で『場の雰囲気』を大事にし、みんな仲良く
する方がきっと楽だし、居心地も良い。
だけれども、諜報部に必要なのは諜報部の利益じゃない。例え諜報部にとって利益にならない
事であっても、柳洞寺にとって利益になる、いや柳洞寺にとって利益とならなくても、それが
正しい情報であるのならば伝えなければいけない」
僕個人としては日常生活において、空気を読むという事は必要だと思う。空気を読むと一言で
言っても、状況は様々。この場で何を求められているのか分析する能力も必要だし、判断する
能力も必要になる。そして、その上で自分自身の考えに反しない範囲で、その場の雰囲気に
なじむ意見を言わなければならない。また、言いたくない場合は、黙っているのがベストという
事になる。
しかし、諜報部としては敵の過小評価も過大評価も避けなければならない。例えるなら、
大ブリテン衛宮邸連合だからと言って過大評価する事も、間桐慎二暫定政権だからと言って
過小評価する事も避けなければならない。
何が正しい情報なのかを見抜くことは難しい。しかし、諜報部はそれを見抜くのが仕事なのだ。
「まあ、そう簡単に何が正しいかなんて分からないと思う。まだまだ始まったばかりだし、
ゆっくり経験を積んで理解していけば良いよ」
実際、世界的に有名な諜報機関でも数多くの失敗があるのだ。再建途中の柳洞寺仏教の諜報部に
いきなりそんな事を求めるのは酷に決まっている。
時間が有り余っているわけではないが、こういうのはじっくり教育していくしかないだろう。
「さて、では僕の話はここまで。残りの時間はディベート(教育ディベート)を行おうか。部長」
僕が部長を呼ぶと、部長はすっと立ち上がった。うん、こちらの意図を読む能力は優れている
のかな。
「僕は審査員を行うので、司会をお願いする。議題は……任せて良いかな?」
彼がどんな議題でも良いですか、と聞いてきたので、僕はかまわないと答えた。僕が期待して
いるのは、自由な議論を行える雰囲気を作る事、あとは想像力を働かせる事で、それ以上の事は
望んでいない。言ってしまえば、頭の体操と変わらないものだ。
なお、教育ディべートとは、討論会の一種であるが一方的に役割を振る事、「話術、説得力」の
優劣を競う(それが結論として正しいかどうかは別である)事が大きく異なる。
「では、これよりディベートを行います」
部長が出した議題は
【選択肢】
A:セイバーとギルガメッシュのどちらが王として優れているか
B:遠坂凛と間桐桜ではどちらが優れているのか
(又の議題を乳は小さいのが良いのか、大きいのが良いのか)
C:柳洞寺仏教が目指すのは統一エンドか生存エンドか
「では、これよりディベートを行います。議題は、遠坂凛と間桐桜ではどちらが
優れているのか。具体的に言うならば、乳は小さい方が良いのか、大きい方が良いのか」
そう部長が言った途端、(一部の)男子部員が叫びだした。
「間桐桜に決まっているだろ! hollowの『櫻の日々』を見よ。あの、盛り上がった乳。
巨乳にして、垂れぬ乳こそ、間桐桜の最大の魅力!」
「異議あり! 桜の乳は『間桐家の人々』で、ワカメの語った『……なんだ、このサイズ。
桜のやつ、まだ育っているのかよ』こそ最大の魅力! あのサイズでありながら、まだまだ
発展途上というその余裕こそ、間桐桜の最大の魅力である!」
「異議あり! 間桐桜の乳は『キビシスの裡』で見せるやや前かがみの体勢が最高である!
あの体勢こそ、桜の巨乳の威力が最も発揮される姿勢であり、その他は全て魅力を
損なっているに過ぎない!」
「異議あり! 間桐桜の乳の魅力は未だ発揮されていない。遠坂凛では絶対に出来ぬ特技を
持ちながら、未だ衛宮士郎に対して一度も実施されていないのだ。これは何たる不始末!
あの巨乳を生かさずしてどうする? きのこのこだわりは間違っている。
若い男性ならば、頭でっかちで求める事こそ普通なり!」
あー、確かに一度もそういうシーンはないねぇ。何のための設定なのかと言いたくなる気持ちは
分からないでもない。
「あのー、遠坂凛にも乳の魅力は……」
「「「「コインを通り越してナインの遠坂の乳のどこに魅力があると?」」」」
……おっぱいの大きいのがボインなら、ちっちゃいのはコインやでぇ。もっとちっちゃいのは
ナインやでぇ。
「でも、実際は遠坂凛って多分普通くらいでは」
「「「「イメージの問題です!」」」」
さいですか。
「ちょっと男子! あんたら、人が黙っていたらさっきからなんて事を大声で言ってるのよ!」
諜報部男子(のごく一部)が盛り上がっている最中、当然というか女子部員はすごく冷めた目で
見ていた。ただ、流石に堂々と何か言い出す事は出来なかったのだが、霧島さんが口火を切ると、
一斉に他の子も言い出した。
「そうよ! そういうのはセクハラって言うのよ!」
「変態!」
「すけべ!」
「あなた方は何か勘違いをしている。何故女性の胸の胸のみが膨らむのか? これは人が猿から
進化し、二足歩行を確立した際、オスにアピールするために胸を膨らませたのです。
考えていただきたい。女性にしか出来ない事は子を産むこと、そして、全ての生き物は少しでも
強い遺伝子を残そうという本能がある。
猿の尻は常に赤いが人間は赤くない。これは両手をついて移動する猿の視線は尻に向くのに対し、
二足歩行の人間は目線を下げない限り尻に向かないからです。
猿は尻を赤くする事でオスにアピールし、人間は胸を膨らませる事でオスにアピールする。
よって、これはこれは生物学的にもごく普通の話をしているに過ぎません」
「そういうのを女性の前で堂々と言うのがセクハラだって言っているのよ!」
冷静に反論する部長であるが、霧島さんがそんな理屈に耳を貸すはずがなく、その冷静ぶりは
かえって女子の反感を買う事になった。
「はいはい。二人とも冷静に。
どんな議題でも良いと言った以上、止めはしないけど、女性がいると中々本音で語ることが
難しい話題だろうし、女子は自習にしよう。
ここに残るもよし、寺を散策するのも商店街に行くのもよし。ただし、午後イチには戻っている
のが条件だけど」
仕方が無いので僕は妥協案を出す事にした。
実際、女子がいる前でこういう話題はやりにくい。あの4人のように堂々と
「○○の乳が良い」と叫ぶことが出来る人間は少数だろう。後で女子部員に白い眼で見られて
ぎくしゃくするのも困る。
……もう手遅れかもしれないけど。
僕の言葉を受けて、女子部員のほとんどは部室を出て行った。「まったく、これだから男子は」
とか「女性の前であんな話をするなんて信じれない!」という声もちらほら聞こえる。
まあ、そうだろうなぁ。
「あれ? 霧島さんは残るの?」
「当然ですよ、黒桐さん。意地でも残って、男子の本音を覗いてやります!」
意気込む霧島さんだが、残るのは彼女の他数人であり、どちらかというと豊かな側の女性だった。
霧島さんがどっちかというと……ノーコメントという事で。
「では、議論を再開いたしま」
「間桐桜の乳こそ魅力的! 垂れぬ巨乳こそ、最強である!」
「異議あり! 未だ成長し続ける(以下略)」
「異議あり! 巨乳を最も魅力的に写す前かがみ(以下略)」
「だから、間桐桜の乳の魅力は未だ発揮されていないと小一時間」
「えーと、遠坂凛さんの魅力は上げ底のボインをやって、『一周回ってチチカエル』を
やるような所が魅力だと思います」
「ならば、間桐桜は黒い所が魅力である! 腹の立つ事、嫌な事、遠坂凛は衛宮士郎にガンドを
ぶつけて憂さ晴らしができるが、間桐桜は胸に溜め込む。
だからこそ黒くなり、そしてあの巨乳なのだ!」
「……あの、黒桐さん。彼らの言っている事、分かります?」
「分かるよ」
そうか、霧島さんは分からないのか。うーん、年齢の差を感じるなぁ。「嘆きのボイン」なんて、
もう知らない人の多いだろうし。
さて、そんなこんなで激論が交わされては時間となった。しかし、こう声が大きいと外に
丸聞こえだな。防音工事も追加……するには流石に金がないか。
「では、顧問。判定をお願いします」
「うん」
僕は軽く頷き、彼らを見渡した。どの顔も満ち足りた顔つきをしており、言いたいことは全て
出し切ったという、満足感があるようだ。
「全員失格! 教育ディベートを基礎から学びなおしてこい!」
そういうと、部長は流石にしまった、という顔になったが、他の部員は何故だか分からない
様子だ。やれやれ。この前行った説明は何だったのか。
「いい? ディベート、特に教育ディベートと呼ばれるものは、一方ともう一方に別れ、
テーマに沿って議論をぶつける。今回の場合は『間桐桜と遠坂凛のどちらが優れているか』だから、
間桐桜が優れている側と遠坂凛が優れている側に別れ、お互いにどう優れているか、を議論しあう
必要があった。
ここには『本来、己がどちらの立場を支持するか』というのは関係ない。置かれた立場に従って、
それを支持する行為を行うのが本来の教育ディベートというものなんだ」
だからこそ、『この場における勝敗と本来の結論は違う』という事を強く言っておかなければ
ならないのだ。
「所が、君達は間桐桜に対する思いをぶつけただけで、全然ディベートになっていない。部長も
誰がどちらの陣営という決め方をせず、各々が自由に話すように任せていた。これではただの
雑談で、議論でも何でもない。今後、ディベートを行う際は、この事を肝に銘じるように」
とは言え、まったく収穫が無いわけではない。
「ただ、今回の話で分かったと思うけど、ディベートというのは、テーマによっては一方に
かなり有利な状況を作り出す事ができる。
一周回っては、遠坂凛の性格を現すもので、今回の議題では関係ない話として除外されるし、
不満を溜めない、溜めるによる対比はテーマに沿うものとして間桐桜に有利に働く。
それ以前に一方のアピールポイントを取り上げてそこに話題を限定すれば、一方が極端に
有利になる、という事は分かると思う」
間桐桜と遠坂凛ではどちらが優れているか、ならばここまで一方的にならなかったと思うが、
ポイントを限定したためこうも一方的になったと言える。アピールポイントが違うからな。
「あと、歌と対比させた所は、知らない人を置いてきぼりにしたわけだから、どうかな。
内輪で楽しむ分なら良いだろうけど、一般的な場合は減点対象となる事が多いので
気をつけるように」
まあ、今回はそれ以前の話だったんだけど。
「さて、午前中の講義はここまで。午後からはまた別の講義をやるので遅れないように。
では、解散」
収穫になったのかならなかったのか、よく分からないディベートを終え、昼休みに入る事に
なった。
【選択肢】お昼ごはんをどうしようか?
A:水だけ飲んで、諜報部の書類を見ておく
B:商店街に買い物に行く
C:水を飲んだ後、軽く一眠りする
最終更新:2008年11月13日 19:17