199 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA:2008/03/22(土) 05:12:34


「奇想奇館(ザバーニーヤ)」

ハサンを名乗る者に必要不可欠なもの、それが「ザバーニーヤ」。
歴代のハサン達は技の姿形は全く違えど、奥義には必ずこの名を付けた。

暗殺者として生まれ育った人生を否定するために今日までを生きてきたハサンの
ザバーニーヤの本質は工房。床に置いた指から伝達される情報により宮殿内の全ての
拷問器具がたった一人に向かい牙を剥く。その間は僅か一瞬。

「妄想心音(ザバーニーヤ)」

そして、暗殺者として戦場にあり続けさらなる戦いを望んだ新たなるハサンの
ザバーニーヤの本質は単なる暗殺の手順。拷問器具が自分を標的とするまでの一瞬で
彼はすでに相手の心臓を握りつぶしていた。

断末魔の声さえあげずに今日までハサンだった老人は床に手を置いた体勢からその場に
崩れ落ちる。同時に、命令を失った拷問器具も活動を停止し、新たなるハサンに頭を
下げるかのごとき姿で床に転がった。

「ハサンよ、私は―――」

ハサンは老人の骸に何かを伝えようとしたが、

「いや、言うまい」

聞く耳も返す口も持たなくなった相手に己の感情を吐露する無意味に気付き、
その場を後にした。

(思い出してみると本当にひどいですねえ、秒殺じゃないですか生前の私。相手は私の
教育した最強の兵であり、しかも私の知らぬ間にさらに成長していたんですから、
拷問に没頭し暗殺者でありながら暗殺を忘れた私が勝てるわけ無いじゃないですか)

暗闇の中、期を待つまでの暇つぶしに過去の回想をしていたハサンは生前の自分の最後の
戦いを思い出して自嘲気味に嗤っていた。

(さて、こうしてこのまま時間が過ぎるのを待っていたかったのですが、状況が変わり
ましたね。外へ出なくては)

ふと、忘れ物に気付いたかの様に立ち上がりハサンは下水道を逆走し地上に這い出る。
もちろん、まだ逃げ出してから一日も経ってはいない、それどころかまだ日が高く昇り
始めた時刻である。当初描いていた作戦からしてみればこれは完全な失態である。
しかし、ハサンは人目を避けつつも己の出せる限界速度で逃げた道を戻っていた。

「お帰りハサン」

奇想奇館を展開した廃墟へと戻ってきたハサン。そこには不敵な笑みを浮かべる神父、
言峰が左手の甲をハサンに見せ立ちはだかっていた。

「迂闊でした、私の負けですか」
「ああ、お前の負けだ。あの時逃げるべきではなかったな」

言峰の左手の甲に浮かぶ二画の令呪、そして彼の傍に立つかつてのマスター達の中に
片腕に血の滲む包帯を巻いた痛々しい姿のバゼットを見てハサンは全てを理解し絶望した。

「私が逃げた後、貴方はそこにいるバゼットさんの腕を治療した。私を従える令呪を
再度有効とせんが為に」
「その通りだ。幸運にも令呪の機能は回復した。が、バゼットの腕自体の神経の接続が
上手くいかなくてな、そこで合意の元彼女の令呪を私に移植した」

無理も無いとハサンは思った。あの凍りついた腕を無理やり強化し、サーヴァントで
ある自分を数十回に渡り殴りつけてきたのだ。普通の人間なら腕が肩からもげ、
あるいは砕けた肉と血と骨が混ざり合い腕がシャーベットに変化していてもおかしくは
無い。

「・・・で、私をここに呼び寄せるのに一回使い、残った令呪は二回分。それで自害を命じて
全て終わりですか」

[選択肢]
イ.「そうだな」
ロ.「いいや」


投票結果


イ:5
ロ:1


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最終更新:2008年10月25日 16:19