153 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/06/01(日) 13:03:59
「お願い、ボクを匿ってほしいんだ!」
蒼星石が両手を合わせて、拝むように頭を下げてきた。
「……かくまう?
私が蒼星石を?」
蒼星石が逃げ隠れする理由っていえば、アリスゲームくらいしかない。
で、わざわざ私のところまで来たってことは……。
「……貴女まさか、戦いの途中で逃げてきたの?」
「えっ?」
なによその意外そうな顔は。
というか、貴女ってそんなきょとんとした表情をするような子じゃあなかったでしょうに。
そんな顔されたらこっちのほうが意外よ。
「違うの?
私はてっきり、そっち戦いに巻き込もうとしてるんじゃないかって思ったんだけど……」
蒼星石のリアクションを見る限り、どうやらそういうことじゃないみたい。
だとしたら余計にわけが解らないけど。
「ああ、違うよ水銀燈。
ボクは別に、他のドールに追われてるわけじゃない」
「じゃあ一体、何から匿えって言うの?
野良猫にでも追いかけられているわけ?」
真紅じゃあるまいし、と、半分以上冗談で言ってやる。
……って、なんであからさまに視線を逸らすのよ蒼星石。
「……マスター」
「は? ミーディアムがなんですって?」
小さな声でポツリと呟くものだから、危うく聞き逃すところだった。
眉を顰めつつ聞き返すと、蒼星石は自棄になったように、はっきりと言った。
「だから、マスターからボクを匿ってほしいんだ」
「…………はぁ?」
私が間の抜けた声を上げるまで、実に4秒もかかってしまったのも、仕方の無いことだと思わない?
え、なに?
これってつまり、蒼星石が……亡命要請してきたってことぉ?
「……貴女、実は翠星石が変装してるんじゃないの?」
「しっ、失礼な!
ボクは正真正銘、薔薇乙女《ローゼンメイデン》第四ドール、蒼星石だよ!」
だって、ねぇ。
あの人見知りの翠星石だったら、人工精霊の選定にケチをつけるのもわかるけど。
真面目なのがとりえの蒼星石が、自分の契約者から逃げ出してくるなんて。
「とにかく、頼むよ水銀燈。
ボクは、マスターのところには帰りたくないんだ」
「って、言われてもねぇ……」
蒼星石にとっては切実な問題らしいけど、私にとっては他人事よね。
……どうしようかしら?
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最終更新:2008年10月25日 16:04