450 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA:2008/07/12(土) 13:18:16
(お館様、この者はどういたしますか。我らに従ってはきましたが忌々しき切嗣に
育てられた子、必要のなくなった今、そろそろ切り捨てる時かと)
(私とてそうしたいのは同じ。だが残念な事にこの男は生き残っておる遠坂や
マキリとも親交がある。こいつを消せば御三家の二つを敵に回す羽目になるぞ)
(では、どういたします)
(我らに関する記憶を奪い森の外に置いておけ。今回の件の隠蔽に奔走しておる言峰
あたりが何とかするだろうよ、さあ我らは最後の準備に取り掛かるとしよう)
(上手くいくのでしょうかお館様)
(今回の戦争は前回以上に予想外の展開だった。大聖杯が上手く起動するとは正直私も
思ってはおらんよ、しかし結果として七騎の英霊が倒されるという条件は得た。ならば
やらねばなるまい。アインツベルンの千年間全てはこの日の為にあったのだ、
例え失敗しようとイリヤも本望だろうよ)
エピローグ1 「もしもの事なんて今は考える必要はない」
「さあ、もう帰りなさい衛宮君」
「はい、ありがとうございます神父」
「くれぐれも寄り道せず真っ直ぐ帰るように。それと君に襲われた人を探して謝りに
いこうとか決して考えない様に。いいか、彼らは君を避けて今は遠い所にいる。
もしも、彼らが君と会って話しをしたいと思ったときには私がその場所を設けるから
その時まで待つんだ。君は今は自分の事だけを考えていればいい」
「はい、分かっています」
心地よい夜風が頬を撫でる、こんなに気分がいいのは実に一ヶ月ぶりだ。
俺は衛宮士郎。ごく普通の高校生だった。だった、というのはここ最近の俺は普通では
無かったから。
半年ぐらい前から友人の慎二が病気で学校に来なくなった。
それが切っ掛けになったのだろう、俺の精神は不安定な物となり、夜が来ると無意識の
内に町へ出て喧嘩に明け暮れていた・・・らしい。俺が暴力を振るったであろう人達には
いくら謝っても許されるものではないが、今の俺にはその時の記憶が無い。しかし、
両手の潰れたマメが自分が何者かに対し暴力を振るっていた何よりもの証拠だと訴え
かけてくる。
俺がこの教会で治療を受ける様になった切っ掛けは、慎二の妹で俺と同じ弓道部にいる
桜ちゃんと慎二の友達の遠坂だ。俺が暴れているのを偶然見つけた二人が、こういった
病気の専門家である知り合いの神父の所に無理やり引きずっていったのである。
以来、教会にて神父による治療と説教を受ける日々が続き、最近では慎二の事や学校
での事、記憶がすっぽりと消えている数週間分の夜中の事も余り気にならなくなって
きた。そして、晴れて今日、帰宅してもいいという許可が神父からもらえたのである。
記憶が無かろうが罪は消えない。しかし罪に囚われたままうじうじとしていたら前に
進む事も出来ない。俺は慎二や俺を教会まで連れていった遠坂達の為にも今まで通りに
普通に振舞わなければ。
「って全部あの神父さんの受け売りなんだけどな。ただいま」
誰もいないだろうが、ひさしぶりの我が家につい声を掛けてしまう。これが日本人の
サガか。
「おかえり」
返ってくるはずの無い返事が返ってきた。藤ねえではない女性の声、しかし俺が
割とよく知るこの声。客間の窓からは灯かりが漏れている。
俺は鍵の掛かっていない扉を開け真っ直ぐ客間に向かった。そこには―、
「「「「せーの、おめでとう衛宮士郎!!!!」」」」
皿の上には大量のフライドチキンとおにぎり、テーブルを挟んで左右に二人ずつ拍手で
俺を出迎える最近の俺がよく知る人々。
「先輩ごめんなさい、藤村先生に頼んでここの鍵開けてもらいました」
そう言い、ペロッと舌を出すのは俺の恩人その1間桐桜ちゃん。
「まあ、そんな事より楽しみましょう間桐さん。またこのメンバーで集まれる事は
無さそうだし」
ご飯粒の付いた手で優雅に髪をかき上げる恩人その2遠坂凛。
そして、教会で事務仕事をしていたバゼットさんに、最後の男の人は・・・名前は知らない
けどたしか俺と同じ様な理由で教会に来ていた人だ。
その夜俺達五人は一緒に食事をし、朝まで桜ちゃんが持ってきたカラオケをして楽しんだ。
もし全員が揃っていたらもっと楽しかったんだろうな。病気で来れなかった慎二と、
そして一番一緒にいたかったもう一人―、
皆が帰り、風呂にでも入ろうとした時玄関のチャイムが鳴った。
こんな時間に誰だろうか、いや、もう朝だったな。
「しろー、いるー?おねえちゃんが向かえにきたわよー!!」
「おねえちゃん――ああ、藤ねえか。もうそんな時間か」
懐かしい声を聞き少しだけ目が涙で潤む。
今日からまた元通りの日常が待っている。
俺は風呂に入るのは諦めシャワーで眠気を払い、学校へ行く準備を始めた。
[選択肢]
イ.桜
ロ.凛
ハ.バゼット
ニ.イリヤ
投票結果
最終更新:2008年10月25日 16:21