725 :Fate/式神の城 ◆v98fbZZkx.:2008/08/15(金) 14:46:41
→美綴の制服の一部が裂かれていることに気付いた。
「なあ、美綴。その制服、どうした?」
「え? ……あ」
美綴は俺の言葉を聞いて最初は戸惑った様子だったが、制服の破損部を指で示すと「しまった」と表情を変える。
どうやら、美綴本人も制服の破損に気が付いていなかったようだ。
もっとも、俺の指が示した制服の破損はけして目立つものではなく、俺自身も美綴が対面に座って、破損部が捲れていなければ気がつかなかっただろうから、無理もない。
「衛宮、よくこんなのに気がついたな」
「なにが、あったんだ?」
制服の破損は、まるで刃物で切られたように見える。
刃物で衣服を切られる理由。それに対する悪い予感を振り払えないままに、俺は美綴に言葉を向けた。
「ん、ケガはないんだけどね」
そう前置きをすると、迷うように自らの髪に触れてから美綴は口を開いた。
「昨日、ちょっと帰りが遅くなってさ。それで急いでたら、いきなり気絶させられて、気がついたら助けられてた」
「気絶……襲われて、助けられた?」
俺が聞くと、美綴はうなずいて、襲ったのは二人組みで、助けてくれたのは同年代の学生だと説明した。
ここで、俺は少し考える。
美綴を襲った犯人。
その『二人組み』が、マスターとサーヴァントだと考えるのは早計だろうが、そう仮定するならば、犯人の目的は人を食わせることでサーヴァントを強化することにあるはずだ。見過ごせるものではないし、調べてみるべきだろう。
一方で、気になるのは美綴を助けたという学生だ。制服は俺たちとは別の学校らしいが、仮に犯人がサーヴァントである場合、英霊を相手にして生き残れるだけの何かを持っていることになる。
危険とは言い切れないがそれだけに不気味であり、こちらはこちらで調べる必要があるかもしれない。
それに、せっかく外に出たのだから情報の一つでも持ち帰りたいところだが―――。
「美綴、その場所って」
「教えない。衛宮が無茶するから」
「むう」
とりあえず行ってみるつもりで襲撃の現場を聞いたところ、美綴にあっさりと断られた。
普段なら反論の一つでもして食い下がるところだが、無茶ばかりをした昨日の今日では自覚があるだけにそれもできない。
「だいたい、衛宮はなんでも一人でやろうとしすぎるんだよ」
「そんなことはないって、よく一成とかに手伝ってもらうしな」
さすがに今度は言葉を返すが、美綴は「違う違う」と手を振った。
「衛宮さ、明らかにできないことはともかく、そのギリギリまでは一人でやろうとするだろ? それが危なっかしいんだよな」
俺は、美綴の言わんとすることがよく分からずに首をひねった。人並みには協調性があるつもりだが、周囲からはそんな風に見えているのだろうか。
「仲間を頼れ……うーん、これ以上は上手く言えないけど、あたしからのアドバイスかな」
「ああ、よく解らないけど、ありがたく受け取っておくよ」
そうして美綴と過ごしている内に、午後の時間はゆっくりと過ぎていった。まるで、終わりゆく平穏な時間を惜しむように。
投票結果
最終更新:2008年10月25日 16:24