717 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2008/08/15(金) 04:58:04
かくして両者の間で閃光が走った。
閃光の一つは桜の腹部を貫き、もう一つの閃光は骨の体、その胸部を貫く。
「あ」
桜は『貫かれた』、という事実を痛みよりも早く認識し、その場に倒れ伏す。
「ッ……!」
一瞬、桜に気をとられた正に一瞬だった。
衝撃がライダーの背後から叩き付けられた。
それによるライダーへのダメージは皆無である。
だが予想外の位置から放たれたその衝撃は、ライダーの体を一瞬浮かび上がらせ、自由を奪い取った。
その一瞬で、桜を貫く閃光を放った刃が再びコントロールを取り戻す。
そうして着地よりも早く、マタドールの刃がライダーの胸部を貫いた。
「ぐっ……」
鮮血が渦となって空中に舞い、ライダーが手に持つ鎖剣を取り落とす。
それと同時、貫かれたマタドールの肋骨が高速で背後の壁に突き刺さった。
骨となったマタドールに表情は無い。
だが意識が残っているならば『勝った』と考えただろう。
そしてその勘違いは、ライダーの口元に浮かぶ笑みを見るまで続いただろう。
貫いた刃に手をかける。
それと同時、貫いた刃に自らの体を固定し、残る左腕を振り上げる。
マタドールがカポーテを振り、頭部を防御しつつ衝撃弾を打ち出す。
地に足がつかぬ状況、それでもなお、振り下ろされたライダーの拳はマタドールのカポーテを二つに裂き、頭骨を粉砕し、頸骨までを
破壊した。
それでも尚刃を掴んだまま、マタドールが後ろ倒れていく。
「が、っは……」
自らを固定していた刃から手を離し、引き抜くに任せたライダーが吐血し、膝を付く。
「ライ、ダー……無事?」
顔を僅かに上げ、桜が問うた。
「サクラ……貴女こそ、無事ですか?」
「私は……大丈夫、内臓を全体的にやられただけ……こういう直接的なのは、経験無かったから」
そういうと傷口を押さえて身を起こす。
出血から見て取れるほどの重傷ではないらしい。
無論、内臓がダメージを受けている以上まともに動くのは難しいだろうが。
「それよりもライダー、貴女の方は大丈夫なの?」
貫かれた胸部は、霊核を貫いているように見えた。
「ええ、これ以上の戦闘は難しいでしょうが、普通に動く程度なら問題はありません」
同様に胸部を貫かれたライダーも同様、霊核こそ破壊はされなかったが、ダメージはあった。
「シロウをつれて、戻りましょう、後のことは、彼女たちに」
「……ええ」
互いの手を取る。
ダメージは深く、戦闘を終えて気は僅かに抜けていた。
故にこそ、その光景は絶望的だった。
振り返ったとき、そこにはマタドールが立っていた。
首は失せ、マタドールの象徴である帽子もカポーテをも失い、それでも剣を握り立っていた。
そしてその立ち姿は完全なもの。
「ばけ……ものっ」
魔力傷によるものか、力を込めると内臓が酷く痛む。
それでも背後に桜をかばい、戦闘態勢をとる。
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最終更新:2008年10月25日 16:13