263 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/10/26(日) 11:17:17
完勝。
そう言って差し支え無いだろう。
イリヤもバーサーカーも無傷。
ガードとそのマスターは呻きと共に地に伏し、止めを甘受するしかない。
広がる光景には何の不思議もない。
今次の儀式において、イリヤは最高のマスター性能を誇るだろう。
バーサーカーもまた、最強のサーヴァント。
一組の敵が彼らと戦い、敗れた。
この先もあるだろう当たり前の風景に、感傷など不要だ。
ただ止めを刺して、凱旋すればいい。
しかし、イリヤは止めを刺させなかった。
バーサーカーは命令を待ち、イリヤを見つめた。
戦闘の影響か、周囲の電灯が点いては消え、消えては点いていた。
イリヤの表情は、灯りが照らす度に変わって見えた。
バーサーカーは彼女自身が決めるまで待つだけだ。
襲い掛かる敵から彼女を守る。それがバーサーカーの為すべきことだ。
理性の有無など超えたところで、そう決めていた。
風が吹いた。
海風がバーサーカーの髪を揺るがす。
イリヤはまだ動かない。
猶予はある。ガードたちが反撃を可能とするには、今しばらくの時が必要だ。
そもそも、真正面から戦って自分たちに勝てる者はいない。
イリヤが凡百の魔術師に後れを取ることはない。
バーサーカーは文字通り最強の英雄だ。第六感は危機の匂いを素早く嗅ぎ取る。
どんなものからも、イリヤを守りきれると信じていた。
どんなものからも、バーサーカーが守ってくれると信じていた。
それが冬の森で培われた二人の絆だ。
その信頼の前には、あらゆる事象が霞んで見える。
光が僅かに途切れた。
瞬間、首筋に針で刺されたような痛みが走った。
不吉さが意識を埋め尽くす。
イリヤのすぐ後ろに、黒いわだかまりが現れていた。
正体を見極めるより早く、バーサーカーは走った。
イリヤに辿り着くまでの三秒足らず。その時間が絶望的に長かった。
理性が残っていれば、事前にイリヤの近くへ戻っていた。
イリヤに戦場の経験があったなら、バーサーカーを側に寄せていた。
どちらも起きなかった。
無垢な信頼が、その死角を気付かせなかった。
「油断、したわね」
黒い影が、魔女の形を成した。
その唇はバーサーカーを嘲笑うかのように歪んでいる。
魔女の指がイリヤに向けられる。
イリヤが振り返る。
その体が、糸の切れた人形のように倒れこんだ。
小さな呻き声が、確かに聞こえた。
とうに失っている筈の理性が、もう一度かき消されたような気がした。
咆えた。
イリヤに手を伸ばす魔女へ、剣を振り下ろす。
手応えはない。魔女の姿も消えている。イリヤも、居ない。
黒いローブが、ゆらりと空に舞った。
まだ届く。本能がそう告げている。
行く手を遮る木っ端を蹴散らした。
生じたタイムロス。狙いすまされた最悪の事態。
魔女は既に空高く、如何にバーサーカーといえど届く距離ではなくなっている。
それでも、まだ届く。
言葉にならない声が、バーサーカーの中に響いている。
理性はない。だから、それは本能だ。本能が届くと告げているのだから、絶対に届く。
戦場において、本能が誤ったことはない。
届く。
届かないことはありえない。
届かないと告げる直感など、間違っている。
守ると決めたのだ。どんなものからも、イリヤを守りきる。イリヤはそう信じているのだ。
遠ざかっていく影を見失いはしない。追い続ければ、必ず届く。
そうして、バーサーカーは暴風のように荒れ狂った。
波間に、咆哮が響いた。
投票結果
議:5
犠:4
連載時コメント
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264 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 11:27:59
犠:信頼の結末。
どうせなら、最後までこっち視点で。
265 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 13:06:09
議:行くか、戻るか。【視点:遠坂桜】
桜にはそろそろ格好いいところを見せて欲しい。
266 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 13:20:06
犠:信頼の結末。
267 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 14:04:04
議:行くか、戻るか。【視点:遠坂桜】
268 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 16:26:52
犠:信頼の結末。
269 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 16:41:05
議:行くか、戻るか。【視点:遠坂桜】
270 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 17:33:40
犠:信頼の結末。
「犠」の文字が不吉な感じだけど、これで。
271 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 17:44:47
議:行くか、戻るか。【視点:遠坂桜】
これで同数
272 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/26(日) 18:12:11
議:行くか、戻るか
273 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/10/27(月) 00:05:38
議:行くか、戻るか。【視点:遠坂桜】
272が微妙なので入れておこう。
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最終更新:2008年10月28日 08:54