321 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/11/02(日) 18:22:13


 遠く、ガードの白い影が夜空から落ちてゆく。
 キャスターは意識のないイリヤを抱え、悠然と舞っている。
 桜は歯噛みした。
 必殺サーヴァント投げを避けられた今、次の手が必要だ。
 だが、遠すぎる。桜では届かない。
 最も近いのは、やはりガードだ。しかし落ちている。
 地上に居る桜に出来ることは何か。
 『影』では届かない。ただ追っては間に合わない。他の魔術は碌に使えない。
 握り締めた右拳に自分の爪が食い込む。
 その痛みに、閃きが頭の中に走った。
「……いける」
 桜は呟いた。根拠は直感だけだが、確信があった。
 すぐさまパスを通じて、ガードに態勢を整えるよう指示を出す。
 返ってきたガードの疑問は、無視した。
 事はガードが空中に居る間、地上に落ちる前に為さねばならない。
 傷を負わせたという申し訳なさも、今は蚊帳の外だ。
 むしろ今の桜はガードに対して怒っている。
 いや、拗ねていると言うべきか。
 二人で戦う。公園で聞いた言葉を信じていたからこそ、屈辱的だった。
「準備を」
 再度、告げた。
 ガードは了承の言葉だけを返した。
 闇夜のとばり。そこに羽ばたく魔女へ届かせる。
 落ち行くガードを、上へ。
 イリヤをキャスターの手から取り戻す。すべき事はそれだけだ。
 桜は小さく息を吐いた。
 右手に感覚を集中させる。
 形を思い浮かべ、紐を解く。
 初めての行使である。桜は丁寧に知識をなぞった。
「――聖杯の誓約に従い、我が衛兵に命じる」
 束の間、発する言葉に迷った。
 大事のものは何なのか。思い返し、決めた。
「キャスターよりイリヤを奪還する――――飛べ!」
 右手から、痛みと共に何かが引き抜かれる。
 魔力が弾けた。
 夜空から転げ落ちて行く白星が、反転する。
 矢の如く、ガードが夜闇を裂く。
 向かう先はキャスター。
 魔力を感じ、空を舞う影が揺れた。
 だが対処はできない。
 予期しない事態。
 油断を衝かれ、キャスターは硬直する。
 漂う黒と、跳ね上がった白が交錯した。
 一瞬、静寂が闇夜に広がった。
 星が、落ちる。
 その腕から、銀の砂のように煌く輝きが零れていた。
「やった……!」
 桜は破顔した。
 次の瞬間、ほころんだ頬を叩き、頭を振った。
 イリヤは助けた。
 これからは、イリヤとバーサーカーへの対処をしなければならない。
 バーサーカーはイリヤを取り返すためだけに動いていた。
 理性のないバーサーカーがこれからどう出るか、それは予測の外にあるのだ。
「とにかく合流しないと……」
 新都の外れへ向かって、桜は駆け出した。
 白い影の行く手を目で追う。
 その視界の端に、泰然と高度を下げていくキャスターの姿があった。
 掌中から勝利を零しながら、何故ゆるりと構えていられるのか。
 不吉な悪寒が、桜の首筋に走った。
 その疑問に応えるかのように、バーサーカーの咆哮が夜の街に轟いた。


普:このままガードと合流を目指す。
強:『影』を先行させる。
詳:兎狩り。【視点:キャスター】


投票結果


普:1
強:5
詳:0


連載時コメント

+ ...
322 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/02(日) 18:59:57
強:『影』を先行させる。

桜の影、思ったより強いみたいだし


323 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/02(日) 19:13:30
強:『影』を先行させる


324 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/02(日) 19:25:08
普:このままガードと合流を目指す。
影がいないと丸腰になりそうなのでこれで


325 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/02(日) 21:18:48
強:『影』を先行させる。

バーサーカーの次の動きが、キャスターに変わってガードがイリヤ奪った→デストロイ、しか思い浮かばない。
どう考えても桜が行ったら巻き込まれて死亡、のフラグです、本当にありがとうございました。


326 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/02(日) 21:56:16
強:『影』を先行させる。

先がどうなるかよめないなー
この選択だと影はつぶれそーなきはするけどまだ被害が少なそう


327 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/02(日) 22:06:54
強:『影』を先行させる。

これで決定


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年11月03日 10:47