328 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/11/03(月) 19:54:32
『影』が進む。
『影』の大きさは徐々に小さくなっている。
風船と同じだ。大容量を維持することはできない。
早く合流することだった。
そうすれば、注ぎ込んだ魔力も無駄にはならない。
ガードとイリヤは新都の中央から少し外れた再開発地区に落ちたようだった。
鉄骨の露出したビルに、ガードの姿が見えた。
『影』が鉄骨を這い上がる。
獣じみた映像を見せられていると、桜まで獣になったような気がした。
「彼女は無事です」
『影』の姿を認めると、ガードは言った。
腕の中のイリヤは安らかな寝息をたてている。
「呪縛は解けていますので、遠からず目が覚めると思います」
桜はそれを聞き、胸を撫で下ろした。
ガードが小さく笑みを浮かべた。
同調した『影』が、同じ動作をしていたらしい。
これだから感覚の共有は嫌なのだ、と桜は思った。
「ここまでは成功と言えます。
尤も、成功であろうと、そもそもの行為に言いたいことは幾らでもありますが」
ガードは言葉を切り、刺のある視線を『影』に送った。
「ですが、今は置いておきましょう。
まずはバーサーカーを止めねばなりません」
ガードが息をつく。
ビルの側まで、バーサーカーが迫っていた。
理性のないバーサーカーから見れば、ガードは立派な攻撃対象となるだろう。
主を助けた相手ではなく、主を人質に取った相手だと受け取ることは想像が付く。
イリヤが目覚めるまで、どうにか凌ぐしかない。
「御自身で来られなかったのは、正しい判断です。
彼女と貴女を同時に守るのは難しいでしょうから」
ガードはビルの外に目を向けて、言った。
腹は立ったが、文句を言うのは止めた。
館に戻ってから、たっぷりと聞かせてやればいい。
バーサーカーに備え、ビルから地上を見下ろした。
不意に、ガードが声を上げる。
「あれを」
地上に変化は無い。
ガードの視線を追い、空を見上げた。
夜空から、一つの影がゆったりと下りてくる。
「まさか、令呪を使うとは思わなかったわ。
その娘、貴方たちの敵だったと思ったけれど」
黒いローブ。キャスターだった。
声には、消しきれない静かな怒りが篭っている。
ビルに近づこうとはせず、空中に浮かんでいた。
ガードがイリヤを片腕に抱き、剣を構えた。
「キャスター。貴女の目的は彼女、バーサーカーのマスターでしょう。
私とバーサーカーを共に相手にしたいのでなければ、撤退すべきだと思いますが」
「生憎だけど、その娘にはまだ用があるの。
私、聖杯を前にして、指を咥えて見ているほど無欲ではなくてよ?」
「聖杯……?」
「ええ。偶然だけれど、見つけた以上は放っておけないわ」
キャスターの指に光が灯る。
下半分だけが見える顔が、歪んだ。
不敵な笑み。
バーサーカーを相手取ることに恐怖が無いのか。
「撤退は、しないということですか」
「傷も癒えていない貴方を殺せば、それで済む話ですもの」
桜は舌打ちした気分だった。
イリヤの目覚めまで、どのぐらいかかるのか。
それまで、バーサーカーとキャスターから逃れられるのか。
轟音が響いた。
バーサーカーがビルの下に居た。
腕の一振りで、鉄骨を一つ、容易くへし曲げている。
ビルが揺らいだ。
それを合図に、キャスターの指が翻った。
投票結果
魔:0
防:0
捜:5
連載時コメント
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329 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/03(月) 20:02:19
捜:逃走経路を探す。
まあ、キャスターと戦うのも、援護する腕も無いので外堀埋める作業でも
しかし、このメディアさん鋭いなー
330 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/03(月) 20:02:59
捜:逃走経路を探す。
331 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/03(月) 21:27:50
捜:逃走経路を探す。
332 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/03(月) 22:18:46
捜:逃走経路を探す。
キャスターの相手をしたいんだが、どう考えてもやられるだけだよなぁ
333 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/03(月) 22:22:51
捜:逃走経路を探す。
キャスターさんが桜にヤられちゃうんですね、ネタ的な意味で
334 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/03(月) 22:32:14
ストレートか、でもまぁ妥当なところだな
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最終更新:2008年11月11日 22:32