371 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/11/15(土) 20:46:24
爆音が弾けるのと同時、『影』が部屋から飛び出す。
吹き飛ばされたのではない。
桜は、明確な意思で『影』を部屋から逃れさせた。
そのままビルの表面を滑るように駆け下りる。
背後に、ガードとイリヤを残して。
後ろめたさが汗となって、桜の背筋を伝った。
間違ってはいない。桜は自分にそう言い聞かせた。
桜の『影』では、英霊まで昇華した魔術師の相手はできない。
現にキャスターも『影』を放置している。ただ、妖しい瞳で一瞥しただけだ。
ならば桜がすべきことは、退路の確保だ。あの場に留まるよりずっと役に立つ。
ガードにもパスを通じて伝えてある。
迷うな。呟いた。これも戦いのうちだ。
令呪まで使ってイリヤを奪い返した。そのときから、逃げることが戦いになっている。
イリヤの奪還は、即ちキャスターとバーサーカーの追撃を意味していた。
その危険を承知の上で、桜はイリヤを助けた。
どんな危険よりも、助けたいと思ってしまったのだ。
『影』が地上に降り立った。
バーサーカーの叫びが、ビルの中から轟く。
声の主はひたすらにイリヤの許へ向かっているようだった。
巨人の目には、イリヤを抱えるガードが敵としか映らない。
時間がなかった。
傷の癒えないガードが二体同時に相手取るのは無謀の極みだ。
『影』の視界が意識に流れ込む。
さも自分がするように、周囲を見回した。
壁。小さな倉庫。どれもバーサーカーには僅かな障害に過ぎない。
道は論外。バーサーカーに追いつかれ、宙のキャスターから狙い撃たれる。
外れかかったマンホールの蓋が目に入った。工事で外して、戻し忘れたのか。
理由はどうでもよかった。これが最善の逃げ場だと、桜は直感した。
ガードに呼びかける。
ビルから白い影が身を躍らせた。
キャスターの魔術を剣で弾き、ガードが壁を跳ね下りる。
着地。狙い澄ましたようにバーサーカーが襲い掛かった。
初撃の振り下ろしを避け、二の払いを刀身で受ける。
ガードは踏み止まらず、後方に跳んだ。
最強の狂戦士と最強の魔術師。
その二体に襲われるなど、悪夢と呼ぶより他にない。
だが片腕にイリヤを抱きながら、ガードは確実に攻撃を防いでいた。
その見事さに、桜は息を呑んだ。
防戦という但し書きはある。
防戦ならば盾のサーヴァントたるガードが長じていても不思議は無い。
バーサーカーに理性がないことが有利に働いているのも確かだ。
だとしても、信じ難い技量だった。
あれだけの力を持ちながら、不敗であったことを恥じていたのか。
「マスター!」
ガードが『影』の側を駆け抜けた。
『影』の腕を伸ばし、一瞬だけバーサーカーとキャスターの動きを止める。
腕が消し飛ぶと同時、ガードがマンホールの蓋を蹴り飛ばし、下水へ滑り込む。
ガードの後を追い、『影』も下水へと降りる。
下水道の窮屈さに、バーサーカーは遅れていた。
巨人が栓となり、キャスターは追って来れない。
駆けた。
僅かな優位、数十秒の猶予だけでも十分だった。
一区画、二区画と走り抜ける。
バーサーカーは下水道を破壊しながら突き進んでいるようだった。
キャスターは来ない。
それが気になった。追撃が緩すぎる。
イリヤを奪うなら、目覚める前でなければならない筈だ。
ガードの腕の中で、小さな呻き声がした。
イリヤの瞳がゆっくりと開いていった。
投票結果
難:1
簡:0
外:5
連載時コメント
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372 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/15(土) 20:49:30
外:慎ちゃんと正義の味方。【視点:間桐慎二】
373 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/15(土) 21:07:32
外:慎ちゃんと正義の味方。【視点:間桐慎二】
ワカメが出てきたら選ぶしかないじゃないか!
374 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/15(土) 22:06:09
外:慎ちゃんと正義の味方。【視点:間桐慎二】
久しぶりのヒロイン登場に期待する!
375 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/15(土) 22:13:39
外:慎ちゃんと正義の味方。【視点:間桐慎二】
そろそろ正ヒロインと準ヒロインのおでましかな!
376 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/15(土) 22:34:14
難:イリヤにバーサーカーを止めてもらう。
選択肢が不吉だがこれっ!
377 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/15(土) 22:34:45
外:慎ちゃんと正義の味方。【視点:間桐慎二】
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最終更新:2008年11月19日 22:08