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755 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/08/31(日) 15:37:53


(独立宗教法人柳洞寺の6ターン目です)

イベントが発生しました。

???/冬木土地管理組合陸上部連合の接触

閣下、冬木土地管理組合陸上部連合の幕僚、三枝由紀香氏と閣下のサーヴァントである佐々木小次郎氏
が接触しているとの匿名のタレコミがありました。接触の席には外部顧問である黒桐幹也氏が同席していた事も
付随してあり、黒桐氏本人に確認した所、接触と同席の事実を認めました。
また、佐々木氏は日ごろから閣下に対して反抗の意思を見せており、マスターとしてはっきりとした態度を
見せる必要があると思われます。

(選択1)二人に処罰を下しますか?
Y:二人に罰則を与える
 Y-1:佐々木小次郎氏を罰する
 Y-2:黒桐幹也氏を罰する

 選択後、罰則を決定します(口頭注意から追放まで)

N:言いたいことがあれば匿名ではなく、実名で行うべきだ


諜報部/冬木土地管理組合陸上部連合の偵察

外部顧問の黒桐幹也氏から冬木土地管理組合陸上部連合の幕僚、三枝由紀香氏が柳洞寺の偵察に来たとの
報告がありました。偵察があまりにも露骨であるため、侵攻前の事前偵察なのか、こちらのかく乱を狙った
行為なのか、何の目的も無く行った行為なのか判断できない、との事で閣下の判断を仰ぎたい、との事です。
また、その判断によっては諜報部の警戒態勢を強化すべきとの事です。

(選択2)閣下の判断をお願いします
A:本格的侵攻の前触れである
 A-1:戒厳令を発動を命じる
    通常業務を全て打ち切り、襲撃に備えます。諜報能力、戦闘能力が一時的に大幅に上がりますが、
    入観料、穂群原学園からの給料が発生したしません。
 A-2:第一級警戒態勢への移行を命じる
    諜報部が24時間柳洞寺に待機する事になります。諜報能力は一時的に大幅に上がりますが、
    入館料が得られません。

B:こちらのかく乱を狙った行為である
 B-1:第二級警戒態勢への移行を命じる
    諜報部が24時間柳洞寺に待機する事になります。諜報能力は一時的に上がりますが、食費、
    雑費として毎ターン5の出費が必要になります。
 B-2:諜報部に警戒を促す
    口頭で諜報部に訓示を行い、警戒態勢を強めます。気休め程度の効果です。

C:気にする事はない(何も行わない)


87 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/09/06(土) 18:10:03


「さて、呼び出された理由は分かっているわね」

 メディアさんの言葉に僕は頷く。
 三枝さんとのお茶会が終わり、パンフレットを渡して三枝さんを送り返した後、メディアさんから
急遽呼び出しがかかったため、僕は柳洞寺の客間に来ていた。
 諜報部の皆が掃除をしている中で、部屋に居て座っているのは後ろめたい気がするが、さぼっている
わけではないと自分自身に言い聞かせる。実際、これからの話の展開次第では、柳洞寺の運命が決まる
事になるかもしれない。

 遠坂陣営が何を考えて三枝さんを送り込んできたのか。

 通常、偵察というのは秘密裏に行うものだ。そうでなくても、なるべく尻尾を掴ませない事が
望ましい。理由は簡単。相手に警戒されれば今後の情報収集に支障が生じるからだ。
 単純に考えるだけでも、幕僚に偵察を命じるより『Laきゃ☆すた』に夢中になって柳洞寺を
訪れている大きなお友達に金を渡して、必要な写真を撮るほうがはるかに安全である。何故ならば、
現在その大きなお友達による入観料は柳洞寺の大きな収入源となっており、柳洞寺は彼らを邪険に
扱う事はできない。収入に響くからだ。
 また、そんな事をしなくても、Web上にて『Laきゃ☆すた』『柳洞寺』で画像検索をかければ、
大凡必要な情報は得られる。無論、そこには三枝さんが言っていた「秘密の入り口」や「潜入口」は
存在しないが、それは始めから存在しないので仕方ない。
 そもそも、本気でそれを探索する気であれば、夜間にこっそり探索するか、昼間の人ごみに紛れて
実施するべきで、クッキーを持って散歩がてらに行うものではない。……いや、あのクッキーは大変
美味しかったんだけど。

 にも関わらず、三枝由紀香はクッキーを持って散歩がてらに柳洞寺を訪れた。
 クッキーや散歩がてらの気楽さは三枝さん個人によるものかもしれないが、三枝さんに偵察を命じた
時点で遠坂凛はこうなる事を予想しているはず。
 つまり、遠坂凛は始めからこの事態を予想した上で三枝さんを送り込んできている。必要な情報が
得られなくても良い、と判断した上で。

 これは何を意味しているのか?
 一度、柳洞寺諜報部を罠に嵌めた事でこちらを見くびっているのか、それとも三枝さんをこちらが
捕虜にすると考え、宣戦布告への大義名分を作るつもりだったのか、あるいはこちらを警戒させ、
不要に緊張を強いて緊張に耐えられなくなった辺りで襲撃するつもりなのか、またはこちらの動きを
封じた上で大ブリテン衛宮邸連合と共同で対峙している古代アルスター我様激辛麻婆帝国に全力で
当たるつもりなのか。
 その判断は僕にはできない。できるのは、最高責任者であるメディアさんだけだ。

 そんな覚悟で席に着いた僕に対し

「そりゃぁ、私も生前はかなり悪い事をしてきたわよ。コルキスの魔女メディアと言えば、悪女の
代名詞みたいなもんよ。幼い弟を殺し、イオールコスの王ペリアースを謀殺し、イアソンの不倫相手を
殺し……。
 だけどね、私だって好きでやったわけじゃないのよ。ヴィーナスが私に呪いをかけて、好きでもない
相手を好きだと思い込ませて。その挙句が『嫉妬に狂った女は怖い』ですって? 女神の都合で人の
人生もて遊んで、そんな言い方は無いでしょう!」

 と、メディアさんはまったく違う方向の話をしてくれた。

「宗一郎様とラブラブな日々を送って何がいけないのよ! せっかく第二の生を受けたからには、
本気で好きになった人と幸せな人生を歩みたいと思って何が悪いの!
 バツ1に人権はないとでも言いたいのか!」

「メディアさん、バツ3だって話もあるんですが」
「昔の事は忘れたわ」

 ……ならそういう事で。
(ソースはウィキペディアです)


「とにかく、私が宗一郎様とどんな日々を過ごそうとも、貴方がたに何か言われる筋合いはありません!」

 どん、と机を叩き、反論は許さない、と言いたげな態度をメディアさんは見せた。
 それに続けて、「だいたいあの男は普段から私に対して」とか「人が幸せになるのがそんなに気に
食わないの」とか色々言っている辺り、メディアさんも相当うっぷんが溜まっているようだ。

 冬木の土地で予期せぬ戦いが始まってまだ一ヶ月半だが、慣れぬトップの地位にいささか疲れている
のだろう。そしてだからこそ、余計に葛木氏との仲を深めようとしている気がする。

「あの、メディアさん」
「何、坊や」

 ぎろりと鋭い目で睨みつけられた。なまじ美人なだけに、こう睨みつけられると一瞬で血の気が
引いてしまう。
 僕がもし橙子さんくらい腹が座っていれば、そんな表情でも綺麗だな、と思えるのだろうが。


【選択肢】
A:「どうせなら、『宗一郎様』ではなく『宗ちゃん』って呼んでみてはどうでしょうか?」
B:「遠坂陣営が寺に偵察に来た件で、メディアさんの指示を仰ぎたいのですが」


213 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/09/07(日) 20:40:02


 どうもメディアさんが僕を呼んだのは、先日から度々冷やかす佐々木さんに対する苦情、というか
本人が言うとおり「ラブラブな日々を送って何が悪い!」という事を言いたいがためのようだ。
 この分だと次のときには「一緒に風呂に」とか「たまの休みは朝から晩までチュッチュ、チュッチュと」
という話が加わり、また「余計なお世話よ!」となるのだろう。
 ……寺で生活する修行僧にとって、これ以上の苦行はないんじゃないのだろうか。


「先ほど、冬木土地管理組合陸上部連合--長いので今後は遠坂陣営と省略しますが、そこの幕僚が
偵察に来ました。話の内容はメディアさんも聞いておられたと思いますが、首からカメラをぶら下げて、
余すことなく写真を撮るつもりだったと。あまりにも露骨な偵察です」

 しかし、僕が客間に来たのはメディアさんと葛木氏の日常生活の話を聞くためではない。

「三枝さんがイマイチ偵察の意味を理解していない、いやそもそも偵察を命じられた事を
理解していたのか疑問です。ですが、遠坂凛が何を考えて三枝さんに命じたのか、そこを考えて
対応を決める必要があると考えます」
「で、坊やはどう考えるの?」
「正直に言って、混乱しています」

 遠坂凛という女性については、柳洞寺仏教諜報部の外部顧問就任を決めた時に一応調べてある。
 名門の生まれ、ロンドンへの留学が決まっている、あの若さで冬木市の土地管理者に正式に
任命されているなど、優秀である事は間違いない。
 また、普段は沈着冷静で一般的な意味における常識人であり、金に細かい(はっきり言うと汚い)
以外は取り立てて欠点のない人物のようだ。夏でも冬でもミニスカートとニーソックスを愛用している
ため、ミニスカートを履く女性は「開放」を求めているという話が本当ならば、彼女も何かしらの
「開放」願望の持ち主である、という事になる。

「例えば、露骨な偵察に来た三枝さんを柳洞寺は拘束し、捕虜にする事も出来たわけです。それを
承知で送り込んできたのか、それともその危険に気がつかなかったのか、こちらが拘束しないと
読んで送り込んできたのか。その判断がつきません」
「判断がつかないというのは、坊やの能力がそこまで、という事かしら?」

 メディアさんがやや挑発的な視線と口調で僕に言う。
 まあ、この手の話は予想の範囲内だけれども。

「僕は遠坂凛に会ったことがないですからね。調べて分かる事には限界があります」

 遠坂凛は普段は沈着冷静だが、一度冷静さを失うと自爆に向かって突き進む人物であるという。
こちらが何か工作を仕掛けて冷静さを失った結果があの行為ならば問題なく判断を下せるのだが、
何かした覚えはまったくないし、寧ろ前ターンまではこちらが追い詰められていた状況だ。
 では、冷静な状況であの判断を下したとすると、かなりややこしい話になる。

 あの偵察は露骨すぎた。

 従って情報を得る気がないのは明らかであり、情報を得る以外の目的を考えると最終的には
疑心暗鬼に陥る。
 少なくともこちらを警戒させるのが目的であるが、かと言って警戒しなければ隠密偵察に
よって貴重な情報を盗まれてしまう可能性がある。しかし、警戒を厳重にしすぎる事は諜報部にも
幕僚にも過度の負担をかける事になる。その状態を長期間続ける事は困難なため、どこかで解かねば
ならず、解いた瞬間に情報を盗まれる可能性がある。
 だからと言って、長期に渡って警戒態勢を続ける事は柳洞寺の国力を大いに削ぐことになり、
疲弊した状態で戦闘を迎えては勝てる戦いにも勝てなくなる。

 あの偵察はそんな疑心暗鬼を生み出すのだ。


「ま、あの子の考えは単純だわ。幕僚を遊ばせておくのが嫌だったんでしょ」
「え?」

 それは僕の予想外の答えだった。

「坊やはね、難しく考えすぎなの。
 たまたま三枝由紀香の手が空いていたから、柳洞寺の偵察を命じた。実際はそんな所よ」
「はぁ」

 言われて見れば確かにありそうな話だとは思う。しかし、そう断言する根拠は何だろうか?

「ま、策士策に溺れるのがあの子だから、複雑な事を考えていた可能性もあるわ。それでも
対応は簡単。警戒態勢をやや高めて、相手の出方を見れば良い。シンプルに対応しましょう」
「では、諜報部に警戒を促します」

 僕がそういうと、メディアさんは少し顔を俯き加減にして、考え始めた。

「いえ、第二種警戒態勢へ移行しましょう。今、諜報部の防諜能力が落ちている事だし、
やや高めておいて損はないわ。それにこれから先、戒厳令を発動して厳戒態勢を取る事もあるから、
そのための訓練も兼ねて移行しましょう」
「分かりました」

「というわけで、本日これから諜報部は第二種警戒態勢へ移行します。24時間、柳洞寺に待機して
もらうので、一度家に帰って着替えとかを取ってきてください」

 掃除が終わり、全員が戻った部室で僕がそういうと、「えー」とか「何でいきなりー」という声が
上がる。まあ、当然だろう。みんなこれで今日は帰れると思っていたんだし。

「はいはい、騒がない。
 色々と事情はあるんだけど、遠坂陣営の襲撃が予想されるので、念の為警戒しておこうって話です。
まあ、合宿のようなものだと思ってくれたら良いかな。
 TVが見たい子はこの部屋のTVを見て良いし、インターネットがしたい子もこの部屋のPCを
使ってくれれば良い。あまり遅くまで騒ぐのはいけないけど、明日の業務に支障が出ない範囲での
夜更かしは認めます。枕投げは禁止、それから……」
「顧問、晩御飯はどうなりますか?」

 部員の一人がそんな質問をする。確かに御飯は大事だ。

「零観さんの許可を取ったので、裏山の近くで飯盒炊爨(はんごうすいさん)をやろう。皆で一緒に
作る御飯は美味しいよ」

 皆で楽しく作る御飯は、例え失敗してもそれはそれで貴重な体験となる。まあ、連日になると厳しいが
初日ならば楽しく作る事で、士気を上げる事もできるだろう。肉類もOKとの事だし。

「買出し部隊はまた後で指示するんで、まずは家に帰って荷物を取ってきてくれるかな」  


【選択肢】そして、今日の晩御飯は
A:カレーだ!
B:ハヤシライスだ!
C:シチューだ!
D:ジンギスカンなのだ!




247 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/09/08(月) 22:54:33


「顧問、準備できましたよ」
「よし、じゃ、そろそろ作り始めようか。」

 今の時刻は午後の7時。自宅に戻った部員たちも全員寺に戻ってきており、別途出撃させた
買出し部隊も無事に帰還した。
 今日の晩御飯は、こういうキャンプでは定番のカレーである。 飯盒炊爨=カレーというのは
やや安易な発想と言えなくもないけど、定番というのはそれだけ皆で楽しむのに向いているという
事でもあるし、屋外で調理する、という雰囲気もあって皆、楽しそうだ。

「楽しみですね、黒桐君」
「大丈夫ですよ、シエルさん。カレーは逃げませんから」

 諜報部の中で一番わくわくしているのは、このシエルさんだろう。なにせ、自宅からスパイス
ミックス(分かりやすく言うと自作のカレー粉)を持ち込んできたくらい、気合が入っている人だ。
 さっきも竈(かまど)を作るために石を集めてきて下さいと言った所、城の石垣にでも使うような
大きな石を運んできて、僕たちを唖然とさせた。
 僕がそれは大きすぎて使えないと言うと、いきなり武器を取り出して破砕したりと、豪快すぎる
くらい豪快な一面も持ち合わせている。
 シエルさんは穂郡原学園に交換留学生としてきており、たまたま新聞部に所属していたため、柳洞寺
諜報部の一員になった人だ。色んな事情があって二十歳を越えているという話で(詳しい年齢は聞いて
いないので、分からないんだけど)、年上の人にさんづけで呼ばれるのは苦手なのでそう言った所、

「では黒桐君と呼ばせてもらいます」

という事で君付けで呼んでもらっている。
 ……さっき、石を集めてもらう時に何故か名前が出てこなかったんだよな。気をつけないと。 

 ちなみに、何で竈を作るのかというと、直火だと火傷をする可能性が高い、とか風で火が
消えてしまう可能性があるためである。さらに竈を作って煮炊きすると燃料が少なくて済む。
 というか、「燃料が少なくて済む」=「鍋に熱が集中する」(効率が良い)という事であり、
熱があっちこっちに散らばらないため、火傷や火事の危険が少ないのである。
 竈を作らないという事は、焚き火の上に直接鍋を置いているようなもので、四方八方に熱が
伝わっている(逃げている)という事は分かると思う。

「では、まずは火をつけて暫くは鍋を過熱させよう」

 カレーというのは人気があるだけに、人それぞれの拘りがあったりする。というわけで、揉めない
ために僕が仕切らせてもらう事になった。今回は人数分をこの大鍋一つで作るから、という理由もある。

「手をかざして、ある程度熱せられたのを確認したら、油を入れます。今日は鶏肉だから、鶏脂ね」

 ステーキほど段違いに味が変わるわけではないので、ひまわり油でもコーン油でも良いんだけど、
気分の問題もあるので、鳥脂を使う。この辺りは商店街の精肉店からのご好意だ。牛や豚と違って
鶏は小さいので脂も小さく、塊で取り出すような事は難しい。
 自宅でもし使いたいのなら、鶏皮を買ってきて、弱火でじっくり焼いて脂を取り出すと良い。
もちろん、鶏皮は塩を振って食べると美味しい。この場合は脂を抜きすぎないようにしないと、美味しく
ないけど。

「で、鍋が十分に熱せられたのを確認したら、肉を入れます」

 さて、カレーで一番揉めるのは「肉の数」である。「あいつには肉が2つも入っていたのに、俺のは
一つしかなかった」というのはよくある話で、しかも食い物の恨みは恐ろしい。ならば、きっちり数を
数えて入れれば良いんだけど、今度は「あいつの肉は大きい、俺のは小さい」という話になる。
 究極の解決策は挽肉カレーにしてほぼ均一に混じるようにするか、そもそも肉を使わない、海老や
ホタテを使ったシーフードカレーにしてしまう(何故か、肉の時ほど揉める事がない)という手も
あるんだけど、やはり魚介類、挽肉よりは普通の肉が良い。という事で、今回は骨付きモモ肉を用いる
事にした。。
 よく唐揚げに使う部位であるが、「一人二本」という風に決めてしまう事が出来るし、入れる際も気を
つけやすい。それに、骨からもダシが出て、かなり美味しいカレーになる。

 一気に骨付き肉を入れると、すぐさま肉の焼ける良い音が聞こえる。流石に鍋を振る事はできないので、
馬鹿でかいヘラを使って丁寧に、だが力強くかき混ぜる。

「全体の表面がある程度焼けたら、野菜を入れる。ジャガイモ、人参を入れて、玉ねぎは……形が
残った方が良いって子が多かったから後で入れようか」

 カレーでもシチューでも一緒なんだけど、ジャガイモも人参も大きめに切るのがポイントである。
あと、あまり強くかき混ぜないのも重要だ。形が崩れても気にしない、肉以外の具材なんて見えなくて
良いってのなら別だけど、そうでないのなら、この段階で崩れやすくするような行為は避けた方が
無難である。玉ねぎを入れないのも、この段階で入れるとどうしても形が残りにくいから。そっちの方が
美味しいという人もいるので、これは好みで決めれば良いんだけど。

「で、野菜を軽く炒めたら、水を加える」

 今回は贅沢にも柳洞寺の清水が使えるので、それだけでも美味しいカレーが出来そうな気がする。
美味しい水はそれ自体にミネラルを含んでいるため、「最大の調味料」という人もいるくらいだ。
なお、ジャガイモの形を残したいと思った場合、ここで水と共に少し酒を加えてみても良い。これは
味醂で煮崩れを防ぐのと同じ要領である。

「今日は丁寧にアクを取るから、水は少し大目に入れてね」

 特に今日は骨付き肉を使うので、余計に多く出そうだ。
 家庭で作る時はアク取りシートなどを使うと、ずっと鍋についていなくても良いので便利である。
まあ、アクの全部が全部取れるわけじゃないので、アク取りシートを使っても、その後でアクを取った
方が確実だけど。
 なお、脂もある程度は取った方が良いんだけど、あんまり取りすぎると美味しくないと思う。
「味が濁る」という人もいるが、澄まし汁や潮汁ならともかく、カレーで濁るというのはよほどの脂だ。
適当な所で止めるのが良いだろう。

「あとは、弱火にして30分ほどかき混ぜながら煮込めば良いんだけど……」
「お任せください。準備万端です」

 そう言うシエルさんは、軍手に火傷防止の腕袋、火掻き箸という完全スタイルを整えていた。
 ……貴方、薪で火加減を調整するのに慣れてませんか?


【選択肢】
A:カレーはシエルさんらに任せ、飯盒班の様子を見に行く。
B:この際なので、カレーが完成するまでずっとここにいる。


264 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/09/12(金) 21:57:44


「じゃ、少し火を弱めてください」

 炒めるのは強火、煮込むのは弱火というのは料理の定石で、カレーもまたその例に漏れない。
……漏れないのだが、薪で火加減を調整するのは難しい。この辺りはガスやIHクッキング
ヒーターといった市販の調理器の有利な所である。
 普通、キャンプなどで調理する時は火加減は諦めて、火を熾した後は火が消えないように、
ひたすらその火を維持する事だけに専念するのだが、「多ければ掻き出し、少なければくべる」
気満々のシエルさんに火の調整を任せる事にした。 

 火を弱めても、うっかり鍋の底に具材がひっついたたまになると確実に焦げるので、馬鹿でかい
ヘラで慎重に、だが腰を入れて力強くかき混ぜる。気分は湯揉みのお姉さんと言った所だが、
予想以上に重たい。
 柳洞寺は高台にあるという事もあって、やや涼しいんだけれども、火の側で重労働に勤しむと
体中から汗が吹き出ているのが分かる。

「黒桐君、月桂樹入れましょう。家から持ってきたんです」
「あー、どうぞ」

 こういう時のシエルさんは止めても無駄だという事は知っているので、あえて止めない。

 月桂樹、厳密にはローリエ(月桂樹の葉を乾燥させたもの)なんだろうけど、これは煮込み
料理で良く使うスパイスである。清々しい芳香があり、また臭い消しの効果もあるので香り付けと
臭い消しを兼ねて入れる事が多い。
 こういうスパイスを入れると、良くも悪くも味が高級になる。これが生姜だと、途端に庶民的な
味になるのだけれども。
 どちらが良いかはやっぱり好みの差だったりする。

 月桂樹を放り込んだ後は、また丁寧にかき混ぜ続ける。ただし、月桂樹はカレー粉を入れる前に
取り出すので、鍋の底に沈めないよう気をつけてかき混ぜなければいけない。さすがに食べると
苦いので。
 まあ、タコ糸で縛ってあるので、まず見つからないという事はないので、皿に盛る際に除いても
良いんだけど。

「顧問、交代しましょうか?」
「ごめん、お願い」

 鍋をかき混ぜる事、20分。あと10分から20分ほど煮込んで、カレー粉を入れてさらに
煮込めば完成なんだけど、腕が棒の様になりそうなので、男子部員の申し出をありがたく受ける事に
した。
 元々筋肉質な体質ではないんだけど、最近は特に事務仕事中心だったので、体が鈍っている
みたいだ。やはり、体は鍛えておかないと駄目だね。明日、筋肉痛で辛いかもしれない。


 交代してもらって、少し余裕が出来たので辺りを見ると、シエルさんは熱心に鍋の煮立ち具合を
見て、火加減を調整し、霧島さんは熱心にアクをとっていた。

 そうか、霧島さんがアク代官をやってくれていたのか。全然気がつかなかった。

 一方、飯盒班は飯盒班で部長が中心になって、指揮を取っている。
 もっとも、飯盒の御飯というのは
「御飯を洗って(厳密には研ぐ)、定量の水を入れて、炊き上がるまで放置」であるので、
火にかけた後は炊き上がるまで暇だ。
 だから、普通はそのまま調理班に加わるんだけど、(元文科系クラブの新聞部とは言え)
男子高校生が多い、今日の午後に徹底して掃除を行った、という理由で飯盒は大目に用意し、御飯も
大目に炊くことにしている。
 人数を多く配置しているとは言え、一人当たりの受け持ち数も多いため、各自、微妙に時間を
ずらして飯盒を火にかけて、炊き上がり時間もずらさないと飯を焦がす可能性は高い。
 そうなると、やっぱり食い物の恨みは恐ろしい、という事で、飯盒班は飯盒班で一瞬たりとも気の
抜けない作業を繰り広げているようである。

「でも、良いよな。こういう風景」

 久しく、こういう風景を忘れていたような気がする。
 式が倒れてからの僕は、式の回復を願う事で一生懸命だったし、それまでの僕はこういう風景に
身を置いていていても、どこか物足りなさを感じていたような気がする。
 今ならその理由が分かる。

 式に出会ってから、僕はいつも式を求めていた。

 きっと、学校に居ても、家に居ても、友達と話している最中でも。僕は式を求めていたんだと思う。
 でも、何となくなんだけど、式が眠っていたあの頃でも、起きた今でも、この光景を見た僕の願いは
同じだと思う。

 あの中で、笑っている式が見たい。

 そんな、他愛も無い、でも中々実現しない願いだな。

「黒桐君、カレー出来上がりましたよ」
「顧問、御飯も完了しました」

 ぼぅっとその光景を眺めていたからだろう、気がついたらカレーも御飯も出来上がっていた。

「じゃ、盛ろうか。お替りは一人2回、肉は一回につき2本。それでもまだ御飯もカレーも余って
いたら、三杯目は協議の上決める事にしよう。ただし、肉は一人4本しか無いので、それを承知の上で
行う事」

 この辺りは不公平な部分と言えなくも無い。きっと、2杯目も食べられない女子から、3杯目の分の
肉を分けてもらう男子、という光景が見られるはず。
 まあ、世の中とは常に不公平に出来ているので、それを知るには良い機会とも言える。

「はい、黒桐さんの分です。どうぞ」
「ありがとう」

 霧島さんは何も言わなくても、配膳を買って出てくれたようだ。霧島さんに感謝し、入れてくれた
カレーを手に取る。
 カレーは、見た目では辛そうな、本格的な色をしていたが、食べてみるとどうだろうか。
あまり辛くないと良いんだけど。

「そうそう、早く持って行かないと」

 きっと待ちわびているはずだ。


【選択肢】
A:佐々木小次郎の所にカレーを持っていく
B:葛木夫妻の所にカレーを持っていく


821 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/09/18(木) 23:25:57


「こんばんは、佐々木さん」
「これはこれは黒桐殿。どうなされた?」

 すでに日が落ち、月明かりと星の明かりが支配する時刻になっても、佐々木さんは山門に立ち、
柳洞寺を守っていた。
 それが役目だとは言え、雨の日も風の日も、多分槍が降ろうが変わらずに門前に立ち、柳洞寺を
守るというのは頭が下がる。

「おすそ分けです。諜報部の皆でカレーを作ったので」
「それはありがたい。食わずに済むこの身とは言え、食う事の喜びを知らぬわけではない。ありがたく
頂こう」

 そういうと佐々木さんは、零観さんがやるように両手を合わせて拝むような形をとった後、僕から
カレー皿を受け取る。

「スプーンは使えますか?」
「使うのは初めてだが、何、匙は匙だ。箸ほど技量は要らぬ」

 流石に立って食べるのは行儀が悪いと思ったのだろう。石階に腰掛けたので、僕も腰を掛ける事に
した。
 食材をかき混ぜるという、言葉だけではまったく重労働に感じられない重労働をこなした後である
ため、穏やかな風が心地よく感じる。

「では」
「はい」

「「いただきます」」

 言った後、思わず笑ってしまったが、この言葉を合図に食事は開始された。


「ふむ」
「どうです?」

 味付けまでやったわけではないのだけれど、調理に関わった人間としては感想が気になる。
 個人的にはやや辛めだけど、美味しいと思うのだけれども。

「美味しい事は美味しいのだが……味が本格的過ぎる気がするな」
「本格的ですか」

 インド風とか、そういう事だろうか。

「これを作ったのは、どなたかな?」
「煮込むまでは僕がやりました。その後は詳しく見ていないんですが、月桂樹やら自作の
スパイスミックスやらを……」

 ……あれ? 持って来てくれたのは誰だ? 自慢げに見せてくれたのは覚えているんだが。
カレーに対しては凄まじい信念を持っていて、一歩も譲らない人だったんだけど。

「すいません。ちょっと名前が出てこないんです」

 いや、名前どころか顔形までぼやけている。

「はは。先ほど、肉付きが良い割には飢えた狸がいてな。駆るかどうか悩んだのだが、敵対する
意思がないので見逃した次第。大方、その狸にでも化かされたのであろう」
「はぁ」

 雌狐の次は狸なのか。狸は黄金を意味し、黄金には再生の精霊の意味もあるそうなので、
もしその狸という表現が適切ならば相当しぶとい気がする。

「まあ、その狸が作ってくれたカレーだが、高級すぎると言うべきか。美味しいがどこか
違和感を感じるだろう。例えるならば、オーダーメイドのスーツを着た庶民と言うべきかな」
「言いたい事は何となく分かります」

 名前も顔も思い出せないのだけれども、その狸はきっと張り切りすぎたのだと思う。張り切り
すぎて、拘りすぎて、本格的な味にしてしまった。
 本格的な味が悪いわけじゃないんだけれども……。

「分かるんですが、表現が難しいですね」
「なに、料亭の味噌汁は毎日飲めば飽きるが、家庭の味噌汁は毎日飲んでも飽きない。
余所行きの味と家庭の味の差だ」

 もっとも、これはセイバーのマスターからの受け売りだが、とは佐々木さんは付け加えた。

 その話を聞いて、なるほど、と思う。
 ただ、式の料理は本格的な料亭の板前でも敵わない味だと思うのと同時に、毎日食べたいと
思う味でもある。手間隙を考えれば、とても毎日作る事ができる料理じゃないのだろうけれども。
 式の事だから、本気になったら猟銃や刀を持って獣を狩る事から始めそうだからなぁ。

 本格的過ぎる味だと言いつつも、お互いに二杯目を完食し、そこで二人揃ってごちそうさまと
なった。
 お腹が一杯になると眠たくなるのが生理現象。というわけで、行儀は悪いがそのまま寝転がり
大きく伸びをする。
 空は雲ひとつ見えない星空だが、月は見えない。まだ水平線の下に潜るには早い時間なので、
きっと木の陰にでも隠れているのだろう。
 月の無い夜は30日に一度しかないが、月がいつまでも出ている夜もまた30日に一度しかない。
特に月がいつまでも出ている夜は晴れた日限定である。
 誰かの言葉ではないが、だからこそ、人は文明により闇を削って生きてきたのだろう。

「そうそう、黒桐殿。川中島の戦いの話はご存知かね?」
「謙信の突撃を信玄が軍配で受けた、という話のある川中島であれば知っていますが」

 突然の佐々木さんの言葉に戸惑うが、僕は正直に答えた。

 川中島の戦い。厳密には第四次川中島の戦いというべき戦いは、上杉謙信と武田信玄という
戦国武将を語る上で外すことのできない戦いだろう。
 武田勢が軍を二手に別け、別働隊が妻女山に篭る上杉軍を攻撃し、上杉軍を平野部に引っ張り
出してそこに待ち構えた本隊と挟み撃ちを仕掛けるという作戦を考えたものの、上杉軍は全軍を
率いて山を降り、平野部に降りていた武田本隊を総攻撃。最終的には別働隊が戻り、挟撃される
形となった上杉軍が撤退させて合戦は終了した。

 武田騎馬隊は実在しない、車懸りの陣形はありえない、濃霧の遭遇戦であり啄木鳥戦法
そのものが捏造、など様々な説はあるが、上杉謙信と武田信玄という戦国時代を代表する両者の
激突だけあって、両者がドラマ化される際には、まず間違いなく映像化されるシーンである。

「川中島の戦いで、上杉勢は炊事の煙で武田軍の攻撃を予測したという。
 この寺は高台にあり、下の町からはよく見える。今日は屋外で炊事を行ったため、炊事の煙も
よく出ていた。
 我が寺と敵対する他勢力は、この炊事の煙を見て、何を思うのだろうか」
「遠坂陣営が大攻勢に出る可能性があると?」
「さて、そこまでは私には分からぬ。ただ、今日の炊事の煙を見ていて、ふと思っただけだ」

 そう語る佐々木さんに一礼をし、食器を持って僕は山門を後にした。

 やれやれ。今日は徹夜になりそうだね。


【選択肢】敵の襲撃です
A:迎え撃つ

下一桁の合計を6で割り、1~2であれば先制攻撃を受けるも即座に反撃、
3~5、0は完全な迎撃に成功します。



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最終更新:2008年11月13日 19:25