392 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/11/22(土) 19:33:52


 海風はひやりとしていて、気持ちよかった。
 横の士郎が風除けになっているから、慎二には少ししか当らないのだ。
「なあ、衛宮。マスターも空の影も、僕には見えないんだけど」
「影はあっちの方だ。マスターらしいのはこっちだ」
 士郎の指す方に顔を向け、慎二は目を凝らした。
 影もマスターの姿も、やはり見えない。
 だが士郎が居ると言うのなら、きっとそこに居るのだろう。
 士郎は目が良い。
 その視力たるや、サバンナで育ったのではないかと思うほどなのだ。
「で、空の影ってのはどんなヤツなんだよ。別に飛行機とかじゃないんだろ?」
「ローブが広がってるように見えるから、キャスターだと思う」
「……ふん。僕らと同じ考えってワケか」
 無防備なマスターとは最も狩るに易い獲物である。
 それを見つけて、黙って見ている筈もない。
「慎二、すぐに行かないと」
「……ハア? まずセイバーとライダーを呼び戻してからに決まってるだろ」
 士郎がむっと顔をしかめる。
 慎二は鼻で笑った。
「安全牌なマスターを狙おうって話なのに、危ない真似をしてどうするんだよ。
 キャスターが来てるなら、なおさら慎重にならないとさ」
「慎二が言うのか、それ」
「……どういう意味だよ」
「別に深い意味は無い。
 いつも振り回される身としては、慎二に一番足りないのが用心深さだと思ってるだけだ」
「ハッ、バカ言え。
 衛宮が何かと突っ走って、いつも僕が巻き込まれるんじゃないか」
「……む」
 士郎は考え込むように眉の根を寄せた。
「話を戻すけどさ、僕はキャスターに先を越されても構わないんだよ。
 キャスターが港のマスターを始末してくれるなら、手間が省けるってもんだろ。
 なら、まずは危険を冒さない方が大事だよ」
「そうか、わかった」
 士郎が頷く。
「じゃあ、慎二たちは後から来てくれ」
「……は?」
 慎二は呆気に取られ、口をぽかんと開けた。
 士郎が素早く立ち上がり、屋根から下りようとパイプに足を掛ける。
 慎二は慌てて、その肩を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待て! わかったんじゃなかったのかよ!?」
「わかってる。けど、それは慎二の考えだろ。俺はそうは思わない。
 キャスターより先に着かないと、話もできない」
 士郎の言葉に、慎二は驚愕した。
 衛宮士郎という生き物は、本当に頑固に出来ていた。
「……衛宮」
「ああ、何だ」
「おまえ、ほんっとにバカだろ」
「…………わるかったな」
「話し合い? 出来るわけないじゃん。
 争うなって言われて止めるなら、そもそもマスターになるかよ」
「無駄な犠牲を出さないようにはできる。無闇に目立ちたくないのは同じなんだからな」
 士郎の言い分には一理ある。
 しかし、それが通用するとは思えなかった。
「……あのな、僕は行かないぞ。そんな無謀なこと、できるもんか」
「わかってる。突っ走るのは俺だけでいい。慎二が付き合う必要はない」
 士郎が肩を掴んでいた慎二の手を外した。
 力は篭っていなかったのに、突き飛ばされたような気がした。
 まるで崖の淵に居るようだ、と思った。
 落ちそうなのは、どちらなのか。
「大丈夫だ。いざとなれば令呪ってやつでセイバーを呼ぶ」
 士郎が降り立ち、走っていった。
 小さくなっていく士郎の背を、慎二はただ見ていた。
 士郎は令呪を身に宿している。傷も治せる。
 慎二とは、違う。
 慎二は、違う。
 慎二はゆっくりと、後から追うべきなのだ。
 舌打ちをした。
 風の冷たさが、慎二の肌を刺した。


遅:士郎を追う。
延:別の方法を考える。
見:追わない。【視点:遠坂桜】


投票結果


遅:4
延:5
見:0


連載時コメント

+ ...
393 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 19:56:30
延:別の方法を考える。


394 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 19:57:08
遅:士郎を追う

いやちょっと待て、むしろ士郎に死亡フラグが立ってるじゃねーかw
いくら鞘持ちで令呪があってもこの話だと主人公じゃない=主人公補正ない士郎だと普通に死ねるぞ
鞘もセイバーが近くにいないと効果薄いし


395 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 20:16:24
遅:士郎を追う。

べ、別に一緒にいくわけじゃなくて、士郎が呼び込む厄介ごとを対策を立てるために確認しておきたかっただけなんだから(違う)


396 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 21:02:49
遅:士郎を追う。

確かに別選択肢だとタイガー道場に直行しかねん。


397 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 21:08:50
延:別の方法を考える。
ヒロイン補正で何か斜め上の作戦を考えてくれるはずw


398 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 21:11:54
延:別の方法を考える。


399 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 21:13:40
延:別の方法を考える。

斜め上……ナニやらかしてくれるか期待ですね


400 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 21:16:59
遅:士郎を追う。

これで同数かな。


401 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 21:18:46
延:別の方法を考える。
これで決定?


402 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 21:50:36
さて、シリアスか尻assか、それが問題だ。


403 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/22(土) 23:39:34
延:別の方法を考える。


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最終更新:2008年11月23日 16:58