404 :遠坂桜 ◆0ABGok2Fgo:2008/11/23(日) 20:50:05


 士郎の背が遠くなっていく。
 慎二が屋根から降りたときには、もう見えなくなっていた。
 このまま士郎が突き進んでキャスターと遭えば、士郎は死ぬ。
 そう感じた。
 令呪がある。危なくなる前にセイバーを呼び出せる。
 魔術師なのだから、パスを通じて既にセイバーを呼び寄せているかもしれない。
 普通なら、そうする筈だ。
 なのに、慎二は否定の余地なく、士郎の死を直感していた。
 だとしても、自分に何が出来るのか。
 魔術師でもない慎二が付いていっても、何も出来はしない。
 やはりライダーの帰還を待つしかなかった。
 直接話さなければ、複雑な意思疎通は不可能だ。
 ライダーたちは撤収のために偵察に出ている。かなり遠くまで行っているだろう。
 慎二の許に戻り、それから士郎を追わせるまでにどれだけ時間がかかるのか。
 せめて危急の事態だと報せられれば。
「くそ……っ」
 慎二は吐き捨てた。
 今、何が出来るのか。
 どうしてなのか、諦めは頭を掠めることもない。
 ただし、苛立ちはあった。
 いつもこうだ、と。
 最初は慎二に主導権があった筈なのに、いつの間にか士郎に振り回される。
 もう一度、慎二は悪態をついた。
 出来ることは何なのか。
 注意を惹く。
 慎二が思いついたのはそれだった。
 このまま秘密裏に士郎とキャスターが接触するのが一番まずい。
 それでは士郎が逃げることもできない。
 ならば、ライダーたちや第三者の目を惹けばどうか。
 悪くないアイデアだと思えた。
 慎二は辺りを見回した。
 必要なのは光と音だ。
 閃光弾でもあればいいが、それを探す時間はない。
 路地裏にあった、一抱えのガスボンベに手を伸ばした。
 理由もなく、このサイズなら大したことにはならないだろうと思った。
 動転していて、冷静な判断ができなかったのだ。
 栓を開いて、精一杯の力で放り投げる。
 火種。慌てて探した。
 あまりに都合よく、マッチ箱が路地の闇から転がってきた。
 実に不審な話だったが、疑うこともなく拾い、火を点けた。
 灯りが慎二を照らす。
 一瞬、慎二は迷った。
 騒ぎを起こせば、キャスターや港のマスターも警戒する。
 士郎は助かるかもしれない。
 けれど、そうなったら奇襲は不可能だ。
 それは慎二たちに勝ちの目がないことを意味する。
 そして今夜のように敵の入り乱れた、慎二たちに可能性のある戦場はもうあるまい。
「……ちっ」
 舌打ちした。
 慎二自身が不思議になるぐらい、自然にマッチを投げつけていた。
 マッチが弧を描き、ガスボンベの側に落ちる。
 ごん、と音が走った。
 巨大なスポンジに正面衝突したような衝撃。
 気付くと、地面に転がっていた。
 音が遠い。視界が揺らいでいる。
 頭の中で、金ダライがぐわんぐわんと鳴っていた。
 馬鹿なことした。今さら、そう思った。
 ぼんやりと、向こうで燃え盛る火が見えていた。
 赤。凶暴な色だった。
 普通は近づこうとは思わない。灯りに惹かれても、近くを舞うだけだろう。
 違うといえば、そこが士郎と慎二の最大の違いなのか。
 士郎は光に近づくのではなく、火の中に飛び込んでいく。
 あれはバカだ、と思う。慎二には、出来ない。
 不意に、慎二の体がふわりとした感触に包まれた。
 ライダー。恐ろしい剣幕で、何か言っている。
「衛宮が」
 言い切る前に、世界がぐらりと揺れた。
「……しろ。セイバーが……」
 ライダーの言葉が断片だけ聞こえた。
 慎二は息を吐いた。
 目の前に、ふっと幕が下りた。


一:襲撃。【視点:キャスター】
二:迎撃。【視点:遠坂桜】
三:選択。【視点:衛宮士郎】


投票結果

一:5
二:2
三:3


連載時コメント

+ ...
405 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/23(日) 21:14:51
二:迎撃。【視点:遠坂桜】

この話のワカメはきれいなワカメだなぁ


406 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/23(日) 21:17:52
二:迎撃。【視点:遠坂桜】


407 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/23(日) 21:19:13
一:襲撃。【視点:キャスター】


408 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/23(日) 21:21:43
一:襲撃。【視点:キャスター】


410 :エルメロイ物語 ◆M14FoGRRQI:2008/11/23(日) 21:49:01
一:襲撃。【視点:キャスター】

コテ間違えたスマソ。最近私こんな失敗ばっかだな。


411 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/23(日) 22:27:54
三:選択。【視点:衛宮士郎】

ワカメの支援をどう感じてたりのか気になる的に
ここの慎二は絶望的に魔術師らしい妹が居ので、ある意味腹をくくれてるのかなー?


413 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/23(日) 23:51:13
三:選択。【視点:衛宮士郎】
沙条綾香:縦ロル子と剣聖ハボリム

ルヴィアの可能性があると聞いては選らばざるを得ない。


414 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/24(月) 04:22:58
三:選択。【視点:衛宮士郎】
沙条綾香:縦ロル子と剣聖ハボリム

前者はともかくハボリムは誰?


415 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/24(月) 07:48:34
一:襲撃。【視点:キャスター】
沙条綾香:縦ロル子と剣聖ハボリム。


416 :僕はね、名無しさんなんだ:2008/11/24(月) 12:42:48
一:襲撃。【視点:キャスター】
これで決定。

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最終更新:2008年11月28日 19:45