634 :龍ちゃん「ちょっと本気だす」 ◆M14FoGRRQI:2009/02/11(水) 20:24:49
『第二回』
間桐の屋敷に少年が二人と少女が一人いた。そして今は少女が四人になっていた。
「士郎の場合問題だったのはイリヤという存在が手の届かない所に
いってしまった事によるショック、慎二の場合は心臓に存在する魔術に慎二の体が
適応できない事。まあ、結果として症状は全く違ったけど同じ原因から生じた
ものが同じ治療法で解決となった訳ね」
眼鏡を掛けここまでに至った流れ説明をする凛。
椅子に座って聞いていた桜と赤い髪の少女がうんうんと頷き、ベッドの中で聞いていた
青い髪の少女はずっと顔を背けていた。
昨日まではここにはいなかった二人の少女、彼女らはどちらも凛の説明に何度も出てきた
少女・イリヤと同じ顔をしていた。
「兄さん、ちゃんと聞いてないとだめですよ」
「そうだぞ慎二、遠坂が人形師やアインツベルンに頭を下げて回って、さらにこれまで
溜め込んだ財産を殆ど使い切ってまで俺達を助けてくれたんだからちゃんと座って話し聞けよ」
青い髪の少女、いや間桐慎二は頭から布団を被り外の情報を遮断しようとする。
まあ、すぐに三人掛りで布団を剥ぎ取られ無駄に終わるのだが。
「慎二、現実を見ろよ」
「お前が落ち着きすぎなんだよ衛宮。僕の現状を考えてみろよ!ある日目が覚めたら
健康な女の子になっていましたってどこのライトノベルだよ」
「加えて俺の場合、目が覚めたら記憶が1ヶ月ぐらい飛んでいて、桜の口から
昨日までの恥ずかしいエピソードとか桜に失礼な態度を取っていた事を延々と聞かされた。
でも俺はもう立ち直ったから慎二も頑張れ、なっ!」
「そこは立ち直るなよ人として!せめて数日間は僕と仲良く悩んでおけよ!
何サムズアップして歯を光らせてるんだよ!」
すっかり元気になっただけでなく現状も受け入れ、むしろ楽しんでいるかに見える士郎。
体力は戻ったが現状を頑なに受け入れようとしない慎二。
人として正しいのは慎二、だがこの場に求められているのは士郎の状態である。
「凛、桜、ちょっと二人とも席を外してくれないか?慎二は俺が何とかするから」
「は、はい。それじゃあ後は若いものに任せましょうか姉さん」
「桜、あんたがこの中じゃ一番若いでしょ。衛宮くん、貴方たちは昨日まで重症だったん
だしあんまり無茶しちゃだめよ」
凛と桜が出て行った後、士郎は突然慎二の前で上着を脱ぎだした。
たちまち貧弱な胸板が露になる。
「な、何やってんだよ衛宮!」
「慎二、これは必要な事なんだよ。俺はイリヤの分まで生きなきゃならないんだ。
イリヤが楽しめなかった事、イリヤが将来やるはずだった事、それをやる事がこの体になった
俺がやらなきゃならない事だと思っている」
脱いだ上着を投げ捨て士郎は慎二のベッドに乗り込んでくる。
以前の両者には魔術抜きでの筋力に差は無く、今の体の機能も両者に変わりは無いが、
ずっと体を動かしてなかった慎二はとっさの判断ができずたちまち乳首が目の前まで迫る。
「吸ってみてくれよ。イリヤがどんな風に感じるか俺も知りたいんだ」
「衛宮、お前実はまだ頭おかしいままだろ!降りろっ、離れろ!桜、遠坂、戻ってこーい!」
助けを呼んだが二人は来ない。いや、すぐそこまでは来ていたのだが。
慎二の助けを呼ぶ声は届いていたが二人は士郎を信用し、扉の前で待機していたのだ。
「桜、ガラスコップ持ってきて」
「中の音を鮮明に聞きたいのなら魔術を使えばいいじゃないですか」
「様式美よ」
最終更新:2009年04月04日 17:06