610 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2006/10/06(金) 23:19:15

 空は半月。
 雲ひとつ無い星空が宇宙の広さを感じさせる。
 屋敷の周囲に人通りは無く、物音一つ無い静寂が夜をより一層深く思わせる。
 文句の付け所の無い絶好のロケーション。
 いつもなら家庭団欒の場となっている衛宮家の居間は、しかし。
 下座に正座させられた被告と、それを三方向から囲む各役人によって、ギチギチの宗教裁判の場と化していた――。




「ふむ……被告、その証言に嘘偽りはないのね?」

 裁判官兼死刑執行人である藤ねえが重々しく頷く。
 その手に持った虎竹刀は、いまやエグゼキュージョナーズソードとなるのを今か今かと待ち構えているようにも見える。
 やだなあ、死刑前提で進められる裁判って。

「はい。
 氷室を抱きかかえていたのは人道上、救命上の措置であって決して疚しい理由ではありませんタスケテ」

 なるべくはっきりと、身の潔白を証言しようとしたのだが、四方から送られてくるプレッシャーに思わず語尾が震える。
 ふふふ、このプレッシャーはバーサーカーにも劣らないぜ……!

「検事、ガイシャからの証言は?」

 もう一度頷いた後、藤村裁判官が検事席に話を振る。
 席に座っていた遠坂検事が、手元の資料を見ながら――いつ作ったんだ、それ?――発言した。

「未だ意識が戻らないので何とも。
 しかし被害者の衣服はところどころ引き裂かれたかのように破れており、さらに肌にはなにやら縛られた痕のようなものが」

「な、なんですとぉー!?」

 藤村裁判長、絶叫。
 ……すごい。
 裁判長の迫力もすごいが、それよりも遠坂の奴、顔が怒ってるのか笑ってるのかわからない。
 一流の魔術師になるとあんな器用な顔芸が出来るというのか。

「ふふふ。これが怒ってないように見えるの衛宮君?
 あと顔芸って言うな」

「すっごくごめんなさい」

 うっかり口に出していたらしい。
 正座のまま平謝りな俺に、ばしばしと木槌代わりに竹刀を振るう裁判長。

「それよりも被告!!
 なんつー特殊なプレイを実践しようとしてたのよコラー!?
 上訴すっとばして宇宙最高裁判所の判決を下すわよ!?」

 すいません10秒で判決が下るような司法機関は勘弁してください。
 そこへ、俺から見て左手から勢い良く手が挙げられた。

「異議あり! 弁護側は被告のどんな要求にも応じられる構えが……!」

「桜、それは論点がずれています」

 勢い込んで異議を申し立てる桜弁護士だが、隣に座るライダーに窘められている。
 桜が何を言っているのかよくわからないが、俺もライダーと同意見です。

 ……俺から見て正面に藤村裁判長。
 右手に遠坂検事。
 左手に桜弁護士と付き添いのライダー。
 これが衛宮家家族会議という名の宗教裁判の構成である。
 ちなみにこの場にいないセイバーとイリヤは、いまだ意識を取り戻さない氷室の付き添いで別室に待機中だ。
 ……激しく作為的な人員割り振りだと思うのは俺だけなのかなぁ。

 さて、今、被告席で座らされているのは俺一人である。
 氷室は先ほど言ったとおり、別室で眠っている。
 では、水銀燈と雛苺はどうしたかと言うと……。


α:ギリギリでnのフィールドに退避させた。言い訳もしやすいだろう。
β:俺の横で人形の振りをしてくれている。まだ言い訳の余地はある。
γ:「危ないわ、くんくん!!」ちょ、なにテレビ見てくつろいでるのあの自動人形。

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最終更新:2006年10月06日 23:31