558 名前: Fateサスペンス劇場 ◆7hlrIIlK1U [sage] 投稿日: 2006/08/12(土) 11:20:45
夏の踊る太陽に名探偵金田一任三郎スペシャル THE MOVE
東北特急連続家政婦不倫殺人事件で暴かれる密室の秘密 ~湯煙のむこうにクラウザーさんを見た~
ロンドンの夏も暑い。
照りつける陽射しを遮る木陰のなか、木漏れ日が風に揺れていた。アイスティーで冷えたカップの表面を水滴が覆う。どこか遠くで鳥の声。見上げれば遥かな青い空。公園の芝生に敷いたシートの上で食べる弁当は、少し贅沢な気分にさせてくれる。
「……バカンス、ですか?」
俺の自信作な卵焼きを手にしながら、ルヴィアはぱちぱちと瞬きをした。フランス人形のような容姿でその仕種は掛け値無しで可愛いのだが、夏場にそのドレスはどうにかならんのか。せめて袖ぐらい外したらどうだろう。せっかく着脱式なんだから。
「そう。故郷の、冬木のみんなと一緒にね。せっかくの夏なんだし、最近、連絡もあまりとってなかったし。丁度いいからしばらく羽を休めてこようかなって。ね? 士郎?」
「本当ですの? シェロ?」
「ああ。イリヤが南の島に招待してくれたんだ。何でもアインツベルンが島一つもってるらしくてさ。せっかくだからって」
遠坂の言葉に頷くと、どうしてだろう、不思議とルヴィアの表情が厳しくなった。怒っているのか、拗ねているのか。遠坂は遠坂で妙に上機嫌に勝ち誇ったような笑みを浮かべるし。全くもって訳が分からない。
「へー。さぞかし楽しそうですわねー」
「ええ。いいでしょ」
羨ましくなんてないですわ、とそっぽを向くルヴィア。それはそうだろう。彼女は自分の故郷、フィンランドを巡る豪華旅行を計画しているんだから、俺たちなんて羨ましいはずがない。どれくらい豪華かというと、一人旅のはずなのに飛行機からホテルまで全部二人分というブルジョアっぷり。予算も当然二人分。専属の執事もつれていきたいですわ、とは彼女の弁。
「まあ、今回はそういうわけで別々だな。お互い楽しんでくる事にしよう」
「そうね。ルヴィアも寂しがらないで、たまには孤独を満喫してきなさい。お土産に惚気話をたっぷりしてあげるからね」
遠坂の言葉で悲しそうに目を伏せてしまったルヴィアは、しばらくして俺と目が合うと猛然と真っ赤になってまくしたてた。
「だっ、誰が寂しがっているですって!? 私はただ心配して差し上げてるだけですわっ。ミスタ・エミヤ、あなたは私が目を離すとすぐ無茶をするんですからっ!」
「ルヴィア……」
一、心配するなって。無茶はしないさ。この旅行が終わったら故郷で恋人と結婚するんだから。
二、ちょっと今回の旅行について大切な話があるんだ……。あとで俺の部屋に一人できてくれないか……。
三、今から遠坂といい事するんだから邪魔しないでくれないか?それじゃあ遠坂、悪いけど先に帰ってシャワー浴びてるな。
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最終更新:2006年09月04日 16:31