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ふたり暮らし~百合色の日々~_1 - (2006/03/13 (月) 19:30:11) の1つ前との変更点
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*1話『大人になってもおともだち』
今日は彩ちゃんと一緒に、デパートにお買い物に来てるの。
「ねね、このグラス可愛いよ~」
「どれど……ちょ、5万ていくらなんでも」
パジャマがよれてきたから新調するんだ。
彩ちゃんは気にしないって言ってるけど……高級マンションに住んでて
よれよれパジャマだなんて、志穂的にありえないから。
「ほら行くよ志穂」
「は~い」
寝具売り場までもうちょっと。
でもね、ちょっぴり心配な事があるんだよね……
■
寝具売り場に到着、後ろを振り返る……
「はぁ……」
やっぱりね。彩ちゃん、ついて来てない。
おもちゃ売り場まで引き返していく。
うん、いたいた。
「あ~や~ちゃ~ん~?」
「あ、志穂」
あ、志穂じゃないでしょ全く。
「ねぇ彩ちゃん、ウチにみっふ~何匹いるか分かってる?」
「ひぃ、ふぅ、みぃ……20匹」
「これ以上みっふ~増えたらウチ、みっふ~屋さんになっちゃうから」
「うぅ~」
そんな目で見ないの、彩ちゃんのためを思ってなんだから。
「ほら、行くよ」
「うん……ミッフィー、ばいばい……」
*2話『その後三日三晩泣き通したとか』
平日の昼間、家事の合間にトイレに入った時に『それ』に気付いたの。
「は、は、は、は、は」
股間からぴょこんと伸びてる、一本の毛。
「はえてるぅぅぅっ!!!!!」
試しに摘んで引っ張ってみる。
「いててっ」
もういっぺん引っ張ってみる。
「いてててっ!」
本物だ、本物の毛が生えてるぅぅぅっ!!!
これでもう、つるつるなんて言わせないんだから!
見てなさいよ、志穂ぉっ!!
■
「ねね志穂、一緒にお風呂入ろっ」
「うん、いいけど」
仕事から帰ってきたら、珍しく彩ちゃんがお風呂入ろうって言ってきたの。
平日は別々に入る事になってるんだけどね。
「んっふっふ~」
バスタブの縁に腰掛けて、何か勝ち誇った感じで股間を指差してたから見たの。
「あ、生えてる」
つるつるまんこは彩ちゃんのトレードマークだったんだけど、ついに生えてきたんだね。
「ちょっと触ってみてもいい?」
「どうぞどうぞぉ~」
すっごく嬉しそう。よかったね、彩ちゃん。
くいっくいっ、ホントに本物だ。
くいっくい……ぷちっ
「あ」
「あ」
*3話「また三日三晩泣き通したとか」
がちゃっ
「ただいま~」
「にぅ~」
「おかえ……にぅ?」
仕事から帰ってきた志穂を出迎えて玄関を開けた。
そしたら、何やら灰色がかったポワポワを抱きかかえていた訳。
「拾っちゃった」
「にぅ~」
猫ちゃんだー!
「……拾っちゃったってねぇ、世話どうすんのよ」
「ちゃんと志穂がするから、ね、飼ってもいいでしょ?」
「にぅ?」
ちょ、ダブルうるうる光線は反則だからあんたらっ!!
■
鍋の前に立ち、パスタを茹でながら全力で考える。
――う~ん、ディアマンティーナがいいかな、それともエリザベートとか……
シンプルにエリザとかもいいかも。
あとあと、真っ白だから雪菜とか、スノウってのもありかな?
ん~、何て名前付けたげよっ!
はぁ~、猫ちゃん可愛い~っ!!
あ、そろそろ茹で上がったかな。
出来上がったパスタをテーブルへと運んでいく。
「ねぇねぇ志穂ぉ……」
「ほらミルク、彩ちゃん来たよ~」
「にぅ~」
――名前決定済みかよっ!お前も返事するなよっ!
うわぁぁぁぁぁんっ!!!!!
「……パスタ、出来たわよ」
*4話「志穂とチョコレート、再び」
仕事帰りにスーパー寄ってみたの。
今年のバレンタインどうしよっかなぁ?
去年はチョコに香水混ぜ込んで怒られちゃったし……
あ、これ簡単そうだしいいかも。
インパクトもあるし、決めた!これで行こうっ!
■
『今日の晩御飯は志穂が用意するから、彩ちゃんお出かけしててね~』
……なんて言ってたけど、大丈夫なんだろか。
人間の食べられる物が用意されてればいいんだけど。
「ただいま~」
「おっかえりぃ~っ!」
「にぅ~!」
玄関開けたら2秒で志穂とミルクがすっ飛んで来た。
「ちゃんとご飯作れたの?」
「いいからいいから、ほら来て来てぇ~」
アタシの手をぎゅっと掴んでリビングへと引っ張っていく。
「んふふぅ~」
テーブルの上にセットされた電磁調理器、そして鍋の中でコポコポと茹っている茶色い液体。
「……なに、これ」
「ほらぁ、今日はバレンタインだからぁ~」
そしてお皿に並べられた、バナナやらマシュマロやらクッキーやら。
「これ……ご飯……?」
「うんっ!」
床に転がる箱。『お家でらくらく!チョコフォンデュセット』
――まぁでも去年に比べればマシか、マシよね、マシだよねぇあははははぁ~
「彩ちゃんたらぁ、そんなに感動したの?ほらほら泣かないの」
*5話「つ、疲れた……(マユミ談」
「彩ちゃ~ん、ただいまぁ~」
玄関を開けると、倒れこむようにして志穂が抱きついてきた。
「おかえり、遅かったじゃない」
「うん~、マユちゃんとカラオケ行ってきたんだぁ~」
「カラオケ……?」
不意に数日前の記憶が蘇った。
■
その日、アタシは志穂に洗い物を任せて洗濯機を回していた。
「ふんふんふ~ん……ん?」
そこに白いポワポワがすごい勢いで駆け込んできた。
「ゔに゙ぃ~~~っ!!!」
「ちょ、どうしたのよミルク!」
足にしがみ付いてるミルクをそっと抱き上げる。
ブルブルと震えてアタシの腕にがっしりと捕まっている。
「んにぃ、にぃ~~っ」
「よしよしお母さんが付いてるから大丈夫だよ、ほらいい子いい子」
――こんなに怯えちゃって、一体どうしたって言うのよ……
恐る恐る洗面所から出る。
ドンドンカチャカチャ、イェイイェイ!
台所の方からとなにやら異様な音がする。
「にぃっ!」
「よしよし大丈夫だよ」
ゆっくりと台所へと近づいていく。
――この声、まさか……
廊下から顔をそっと出し、台所を覗き込む。
「ま~わるぅ~ま~ぅわるぅ~ぅうよぉ、せかいぃ~ぃはまわるぅ~イェイッ!」
ドンドンと足を踏み鳴らしてリズムを取りながら、
お玉をマイク代わりに志穂がノリノリで熱唱していた。
しかも、バラードの曲なのに何故かロック調。
その上、どう聞いても音痴です。
「ゔに゙ぃっ!」
放心している私の腕からするりと抜け出し、ミルクが逃げていった。
*6話「まだいじり足りないか」
仕事から帰ってきて晩御飯が出来るまでの間ミルクと遊んでたの。
ほ~ら、フリフリ。
「うにぃっ!」
今度はこっち~、フリフリ~。
「う~、にうっ!」
あ、捕まえた。ミルクすごいすごい。
■
「珍しいじゃない、ネコジャラシだなんて」
「うん、帰り道の公園に生えてたの」
テーブルの上に料理を並べながら、ミルクと遊んでいる志保と言葉を交わす。
ちらっとそちらへと目をやる。
ミルクがひっくりかえって、ネコジャラシを両手でしっかりと捕まえて
ガジガジと噛み付いている。
――ミルミルちゃん可愛いなぁ~、はぁ~ん。
ぽ~っとなってそんな光景に見入っていたら、志保がポツリと言った。
「彩ジャラシもあったらいいのになぁ」
い り ま せ ん 。
*7話「この後ピアノを弾きながら教えてあげたよ」
「ぅぁあ~かりぃいぃをぉつぅけまぁしょぉ~♪」
洗濯物を干そうと台所の脇を通ったら、また志保が何か歌ってた。
多分ひな祭りの歌だよね、うん、多分。
「……」
あら、止まった。
腕組んで考え込んで……歌詞ど忘れしたのかしら?
あ、思い出したみたい。
「だぁんべぇるぅにぃぃ~♪」
ガタンッ
思わず洗濯カゴ落としちゃったじゃないっ!
■
「はぁぁなぁをぉ……いけまぁしょぉぉ~♪」
惜しい惜しい、でもダンベルに比べたら……あ、また止まった。
「……どぉどぉごぉばぁばぁぁ~♪」
ズガシャァンッ
「あ、彩ちゃんどうしたの?大丈夫?」
すっころんで尻思いっきり打ったじゃないっ!
あ~もう尻割れそう。
*8話「これでもちょっとは大きくなってますっ!」
今日はお休み、彩ちゃんと一緒に洗濯物畳んでるの。
「ほらミルク、タオルで遊ばないの」
「にうにう~」
志保困っちゃう、でも可愛いから許してあげるね。
「もぅ、ダメでしょミルク」
「うにぃ」
あ、彩ちゃんタオル取り上げちゃった。空気読めないんだからまったく。
■
「あら?」
「ん、どしたの彩ちゃん?」
「アタシの方に紛れ込んでたわよ、これ」
レース地のピンク色のパンツを志保に手渡す。
「だって彩ちゃんも似たの持ってるんだもん」
「まぁ確かにそうだけど……」
「あ、でもでも」
志保がこっちに身を乗り出しながら……こらこら襟元から谷間見えてるぞ。
「ん?」
「ブラは間違えないよっ!絶対にっ!!」
「……」
どうせアタシはぺたんこでつるつるですよウワァァァァンッ!!
*9話「30時間の遠距離恋愛」
「それじゃ、気をつけてね」
「うん。ミルク、また明日ね」
「にうっ」
行ってらっしゃいのキスを交わし、志保を見送る。
「今夜は、んっ、一人かぁ~」
ぐ~っと伸びをしながら独り言をこぼす。
「うなぁっ!」
「ゴメンゴメン、ミルミルも一緒にお留守番だね」
一泊二日で山梨の工場に視察に行くんだとか。
とりあえず、洗濯機回しながら掃除しちゃおっと。
■
勢い良くネコ缶を食べているミルクをぼんやり眺めつつ、
スーパーで買ってきたおつとめ品のお惣菜をノロノロとつまむ。
「はぁ……七時かぁ」
無意識に時計をチェックしてしまう。
ご飯を食べ終わったミルクが、いつものように玄関の方へと歩いていく。
「ミルク、今日は志保帰ってこないよ」
「うにぃ?」
志保も今頃ご飯食べてるのかなぁ……はぁ……
プルルルル、不意に鳴った電話の音に釣られてミルクが戻ってきた。
「はい、もしも……志保っ!?」
思わず声が弾む。
「うん、うん、こっちは大丈夫。
もぅ、そんな子供じゃあるまいし……寂しくなんて無いってばぁ~」
正座しているひざの上にミルクが乗っかり、にうにう言いながら手を伸ばしてくる。
「あ、待って、ミルクも出たいって。ほらミルク、志保だよ~」
片手で抱き上げて受話器に顔を近づけてやる。
「うん、二人とも元気だから……え、あ、うん分かった……それじゃ、帰る前にでもまた電話ちょうだい」
ミルクを下ろし、両手で受話器をしっかりと持つ。
「ん、なぁに?……もぅっ……アタシも、愛してる……それじゃ、おやすみ。また明日ね」
そっと受話器を下ろし、目を閉じにやけながらしばし余韻に浸っていた。
■
「ほらミルク、一緒に寝よ」
ダブルベットの中へとミルクを連れ込み、背中を撫でてやる。
「にぃ~」
が、布団からするりと抜け出し自分用のクッションの上で丸まってしまった。
「はぁ……」
真っ暗なリビングのソファの上から、ふわふわした物体を抱き上げ寝室へと連れて行く。
「久しぶりに一緒に寝よ、ミッフィ」
そしていつも志保にしているように、横向きに横たわりながらぎゅぅっと抱きしめる。
「ねぇミッフィ、早く明日にならないかな……」
*10話「30時間寝ても覚めてもべったり(彩ちゃんが)」
「――分かった、お昼はもう……あ、うん。それじゃ用意しとくね。じゃ、帰り道気を付けてね」
きちっと掃除の行き届いたリビングで電話をそっと切る。
軽やかな足取りで洗面台へと行き、再度メイクをチェックする。
「んにぃ?」
「もうすぐ志保帰ってくるよ、ミルミルぅっ」
そして台所でお昼の用意を始める。志保の好物、ミートスバゲティ。
「んっふふふふんふん~♪」
鼻歌を歌いながらパスタを茹でる。
予定時間五分前、パスタをザルにあげミートソースを鍋へと入れる。
もう一方のコンロにフライパンを置き、皿を用意して備える。
「にぅっ!」
タッタッタとミルクが玄関に向かって走っていった。
数秒後、呼び鈴が鳴るのと同時に私も玄関に小走りで向かう。
ドアに両手をついて立ち上がっているミルクを抱き上げ鍵を開ける。
「ただいまぁ~」
「おかえり、お疲れ様っ」
「ミルクもただいま、いい子にしてた?」
「にゃぅっ!」
顔の前に伸びてきた、滑らかな指先目がけミルクがじゃれつく。
「お昼、すぐ出来るから」
「うん、ありがとぉ~……あ、彩ちゃん」
「ん?」
かがんで荷物に手をかけたまま、顔だけを上に向け答える。
だが、見つめるばかりで一向に次の言葉が出てこない。
「何よぉ~」
「……綺麗だよ、とても」
「……バカっ」
志保もしゃがみ、にやけているアタシの顔へと顔を近づけてきた。
そして互いに目を閉じ、唇を重ね合わせた。
■
ん~と、お布団に入ったのが十時でぇ~……
え~と、今が午前二時でぇ~……あんっ!
「もぅ、彩ちゃんの甘えん坊……んっ……」
そんなに吸ってもおっぱい出ないから、はぁん……
……あ~もう四時~
「ねぇ志保ぉ」
「ん~」
「今度は口で……ね?」
オッケーオッケー、ちゅるちゅるくちゅくちゅ。
「あぁんっ、志保やっぱり上手ぅ……」
……なんか外でチュンチュン言ってる気がするぅ~
「あむっ、ん……」
「んちゅ……志保ぉ……」
確かに彩ちゃんの事愛してるけど……志保、疲れてるから。
「志保、愛して……あら?」
「ぐぅ~、ぐぅ~」
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*1話『大人になってもおともだち』
今日は彩ちゃんと一緒に、デパートにお買い物に来てるの。
「ねね、このグラス可愛いよ~」
「どれど……ちょ、5万ていくらなんでも」
パジャマがよれてきたから新調するんだ。
彩ちゃんは気にしないって言ってるけど……高級マンションに住んでて
よれよれパジャマだなんて、志穂的にありえないから。
「ほら行くよ志穂」
「は~い」
寝具売り場までもうちょっと。
でもね、ちょっぴり心配な事があるんだよね……
■
寝具売り場に到着、後ろを振り返る……
「はぁ……」
やっぱりね。彩ちゃん、ついて来てない。
おもちゃ売り場まで引き返していく。
うん、いたいた。
「あ~や~ちゃ~ん~?」
「あ、志穂」
あ、志穂じゃないでしょ全く。
「ねぇ彩ちゃん、ウチにみっふ~何匹いるか分かってる?」
「ひぃ、ふぅ、みぃ……20匹」
「これ以上みっふ~増えたらウチ、みっふ~屋さんになっちゃうから」
「うぅ~」
そんな目で見ないの、彩ちゃんのためを思ってなんだから。
「ほら、行くよ」
「うん……ミッフィー、ばいばい……」
*2話『その後三日三晩泣き通したとか』
平日の昼間、家事の合間にトイレに入った時に『それ』に気付いたの。
「は、は、は、は、は」
股間からぴょこんと伸びてる、一本の毛。
「はえてるぅぅぅっ!!!!!」
試しに摘んで引っ張ってみる。
「いててっ」
もういっぺん引っ張ってみる。
「いてててっ!」
本物だ、本物の毛が生えてるぅぅぅっ!!!
これでもう、つるつるなんて言わせないんだから!
見てなさいよ、志穂ぉっ!!
■
「ねね志穂、一緒にお風呂入ろっ」
「うん、いいけど」
仕事から帰ってきたら、珍しく彩ちゃんがお風呂入ろうって言ってきたの。
平日は別々に入る事になってるんだけどね。
「んっふっふ~」
バスタブの縁に腰掛けて、何か勝ち誇った感じで股間を指差してたから見たの。
「あ、生えてる」
つるつるまんこは彩ちゃんのトレードマークだったんだけど、ついに生えてきたんだね。
「ちょっと触ってみてもいい?」
「どうぞどうぞぉ~」
すっごく嬉しそう。よかったね、彩ちゃん。
くいっくいっ、ホントに本物だ。
くいっくい……ぷちっ
「あ」
「あ」
*3話「また三日三晩泣き通したとか」
がちゃっ
「ただいま~」
「にぅ~」
「おかえ……にぅ?」
仕事から帰ってきた志穂を出迎えて玄関を開けた。
そしたら、何やら灰色がかったポワポワを抱きかかえていた訳。
「拾っちゃった」
「にぅ~」
猫ちゃんだー!
「……拾っちゃったってねぇ、世話どうすんのよ」
「ちゃんと志穂がするから、ね、飼ってもいいでしょ?」
「にぅ?」
ちょ、ダブルうるうる光線は反則だからあんたらっ!!
■
鍋の前に立ち、パスタを茹でながら全力で考える。
――う~ん、ディアマンティーナがいいかな、それともエリザベートとか……
シンプルにエリザとかもいいかも。
あとあと、真っ白だから雪菜とか、スノウってのもありかな?
ん~、何て名前付けたげよっ!
はぁ~、猫ちゃん可愛い~っ!!
あ、そろそろ茹で上がったかな。
出来上がったパスタをテーブルへと運んでいく。
「ねぇねぇ志穂ぉ……」
「ほらミルク、彩ちゃん来たよ~」
「にぅ~」
――名前決定済みかよっ!お前も返事するなよっ!
うわぁぁぁぁぁんっ!!!!!
「……パスタ、出来たわよ」
*4話「志穂とチョコレート、再び」
仕事帰りにスーパー寄ってみたの。
今年のバレンタインどうしよっかなぁ?
去年はチョコに香水混ぜ込んで怒られちゃったし……
あ、これ簡単そうだしいいかも。
インパクトもあるし、決めた!これで行こうっ!
■
『今日の晩御飯は志穂が用意するから、彩ちゃんお出かけしててね~』
……なんて言ってたけど、大丈夫なんだろか。
人間の食べられる物が用意されてればいいんだけど。
「ただいま~」
「おっかえりぃ~っ!」
「にぅ~!」
玄関開けたら2秒で志穂とミルクがすっ飛んで来た。
「ちゃんとご飯作れたの?」
「いいからいいから、ほら来て来てぇ~」
アタシの手をぎゅっと掴んでリビングへと引っ張っていく。
「んふふぅ~」
テーブルの上にセットされた電磁調理器、そして鍋の中でコポコポと茹っている茶色い液体。
「……なに、これ」
「ほらぁ、今日はバレンタインだからぁ~」
そしてお皿に並べられた、バナナやらマシュマロやらクッキーやら。
「これ……ご飯……?」
「うんっ!」
床に転がる箱。『お家でらくらく!チョコフォンデュセット』
――まぁでも去年に比べればマシか、マシよね、マシだよねぇあははははぁ~
「彩ちゃんたらぁ、そんなに感動したの?ほらほら泣かないの」
*5話「つ、疲れた……(マユミ談」
「彩ちゃ~ん、ただいまぁ~」
玄関を開けると、倒れこむようにして志穂が抱きついてきた。
「おかえり、遅かったじゃない」
「うん~、マユちゃんとカラオケ行ってきたんだぁ~」
「カラオケ……?」
不意に数日前の記憶が蘇った。
■
その日、アタシは志穂に洗い物を任せて洗濯機を回していた。
「ふんふんふ~ん……ん?」
そこに白いポワポワがすごい勢いで駆け込んできた。
「ゔに゙ぃ~~~っ!!!」
「ちょ、どうしたのよミルク!」
足にしがみ付いてるミルクをそっと抱き上げる。
ブルブルと震えてアタシの腕にがっしりと捕まっている。
「んにぃ、にぃ~~っ」
「よしよしお母さんが付いてるから大丈夫だよ、ほらいい子いい子」
――こんなに怯えちゃって、一体どうしたって言うのよ……
恐る恐る洗面所から出る。
ドンドンカチャカチャ、イェイイェイ!
台所の方からとなにやら異様な音がする。
「にぃっ!」
「よしよし大丈夫だよ」
ゆっくりと台所へと近づいていく。
――この声、まさか……
廊下から顔をそっと出し、台所を覗き込む。
「ま~わるぅ~ま~ぅわるぅ~ぅうよぉ、せかいぃ~ぃはまわるぅ~イェイッ!」
ドンドンと足を踏み鳴らしてリズムを取りながら、
お玉をマイク代わりに志穂がノリノリで熱唱していた。
しかも、バラードの曲なのに何故かロック調。
その上、どう聞いても音痴です。
「ゔに゙ぃっ!」
放心している私の腕からするりと抜け出し、ミルクが逃げていった。
*6話「まだいじり足りないか」
仕事から帰ってきて晩御飯が出来るまでの間ミルクと遊んでたの。
ほ~ら、フリフリ。
「うにぃっ!」
今度はこっち~、フリフリ~。
「う~、にうっ!」
あ、捕まえた。ミルクすごいすごい。
■
「珍しいじゃない、ネコジャラシだなんて」
「うん、帰り道の公園に生えてたの」
テーブルの上に料理を並べながら、ミルクと遊んでいる志穂と言葉を交わす。
ちらっとそちらへと目をやる。
ミルクがひっくりかえって、ネコジャラシを両手でしっかりと捕まえて
ガジガジと噛み付いている。
――ミルミルちゃん可愛いなぁ~、はぁ~ん。
ぽ~っとなってそんな光景に見入っていたら、志穂がポツリと言った。
「彩ジャラシもあったらいいのになぁ」
い り ま せ ん 。
*7話「この後ピアノを弾きながら教えてあげたよ」
「ぅぁあ~かりぃいぃをぉつぅけまぁしょぉ~♪」
洗濯物を干そうと台所の脇を通ったら、また志穂が何か歌ってた。
多分ひな祭りの歌だよね、うん、多分。
「……」
あら、止まった。
腕組んで考え込んで……歌詞ど忘れしたのかしら?
あ、思い出したみたい。
「だぁんべぇるぅにぃぃ~♪」
ガタンッ
思わず洗濯カゴ落としちゃったじゃないっ!
■
「はぁぁなぁをぉ……いけまぁしょぉぉ~♪」
惜しい惜しい、でもダンベルに比べたら……あ、また止まった。
「……どぉどぉごぉばぁばぁぁ~♪」
ズガシャァンッ
「あ、彩ちゃんどうしたの?大丈夫?」
すっころんで尻思いっきり打ったじゃないっ!
あ~もう尻割れそう。
*8話「これでもちょっとは大きくなってますっ!」
今日はお休み、彩ちゃんと一緒に洗濯物畳んでるの。
「ほらミルク、タオルで遊ばないの」
「にうにう~」
志穂困っちゃう、でも可愛いから許してあげるね。
「もぅ、ダメでしょミルク」
「うにぃ」
あ、彩ちゃんタオル取り上げちゃった。空気読めないんだからまったく。
■
「あら?」
「ん、どしたの彩ちゃん?」
「アタシの方に紛れ込んでたわよ、これ」
レース地のピンク色のパンツを志穂に手渡す。
「だって彩ちゃんも似たの持ってるんだもん」
「まぁ確かにそうだけど……」
「あ、でもでも」
志穂がこっちに身を乗り出しながら……こらこら襟元から谷間見えてるぞ。
「ん?」
「ブラは間違えないよっ!絶対にっ!!」
「……」
どうせアタシはぺたんこでつるつるですよウワァァァァンッ!!
*9話「30時間の遠距離恋愛」
「それじゃ、気をつけてね」
「うん。ミルク、また明日ね」
「にうっ」
行ってらっしゃいのキスを交わし、志穂を見送る。
「今夜は、んっ、一人かぁ~」
ぐ~っと伸びをしながら独り言をこぼす。
「うなぁっ!」
「ゴメンゴメン、ミルミルも一緒にお留守番だね」
一泊二日で山梨の工場に視察に行くんだとか。
とりあえず、洗濯機回しながら掃除しちゃおっと。
■
勢い良くネコ缶を食べているミルクをぼんやり眺めつつ、
スーパーで買ってきたおつとめ品のお惣菜をノロノロとつまむ。
「はぁ……七時かぁ」
無意識に時計をチェックしてしまう。
ご飯を食べ終わったミルクが、いつものように玄関の方へと歩いていく。
「ミルク、今日は志穂帰ってこないよ」
「うにぃ?」
志穂も今頃ご飯食べてるのかなぁ……はぁ……
プルルルル、不意に鳴った電話の音に釣られてミルクが戻ってきた。
「はい、もしも……志穂っ!?」
思わず声が弾む。
「うん、うん、こっちは大丈夫。
もぅ、そんな子供じゃあるまいし……寂しくなんて無いってばぁ~」
正座しているひざの上にミルクが乗っかり、にうにう言いながら手を伸ばしてくる。
「あ、待って、ミルクも出たいって。ほらミルク、志穂だよ~」
片手で抱き上げて受話器に顔を近づけてやる。
「うん、二人とも元気だから……え、あ、うん分かった……それじゃ、帰る前にでもまた電話ちょうだい」
ミルクを下ろし、両手で受話器をしっかりと持つ。
「ん、なぁに?……もぅっ……アタシも、愛してる……それじゃ、おやすみ。また明日ね」
そっと受話器を下ろし、目を閉じにやけながらしばし余韻に浸っていた。
■
「ほらミルク、一緒に寝よ」
ダブルベットの中へとミルクを連れ込み、背中を撫でてやる。
「にぃ~」
が、布団からするりと抜け出し自分用のクッションの上で丸まってしまった。
「はぁ……」
真っ暗なリビングのソファの上から、ふわふわした物体を抱き上げ寝室へと連れて行く。
「久しぶりに一緒に寝よ、ミッフィ」
そしていつも志穂にしているように、横向きに横たわりながらぎゅぅっと抱きしめる。
「ねぇミッフィ、早く明日にならないかな……」
*10話「30時間寝ても覚めてもべったり(彩ちゃんが)」
「――分かった、お昼はもう……あ、うん。それじゃ用意しとくね。じゃ、帰り道気を付けてね」
きちっと掃除の行き届いたリビングで電話をそっと切る。
軽やかな足取りで洗面台へと行き、再度メイクをチェックする。
「んにぃ?」
「もうすぐ志穂帰ってくるよ、ミルミルぅっ」
そして台所でお昼の用意を始める。志穂の好物、ミートスバゲティ。
「んっふふふふんふん~♪」
鼻歌を歌いながらパスタを茹でる。
予定時間五分前、パスタをザルにあげミートソースを鍋へと入れる。
もう一方のコンロにフライパンを置き、皿を用意して備える。
「にぅっ!」
タッタッタとミルクが玄関に向かって走っていった。
数秒後、呼び鈴が鳴るのと同時に私も玄関に小走りで向かう。
ドアに両手をついて立ち上がっているミルクを抱き上げ鍵を開ける。
「ただいまぁ~」
「おかえり、お疲れ様っ」
「ミルクもただいま、いい子にしてた?」
「にゃぅっ!」
顔の前に伸びてきた、滑らかな指先目がけミルクがじゃれつく。
「お昼、すぐ出来るから」
「うん、ありがとぉ~……あ、彩ちゃん」
「ん?」
かがんで荷物に手をかけたまま、顔だけを上に向け答える。
だが、見つめるばかりで一向に次の言葉が出てこない。
「何よぉ~」
「……綺麗だよ、とても」
「……バカっ」
志穂もしゃがみ、にやけているアタシの顔へと顔を近づけてきた。
そして互いに目を閉じ、唇を重ね合わせた。
■
ん~と、お布団に入ったのが十時でぇ~……
え~と、今が午前二時でぇ~……あんっ!
「もぅ、彩ちゃんの甘えん坊……んっ……」
そんなに吸ってもおっぱい出ないから、はぁん……
……あ~もう四時~
「ねぇ志穂ぉ」
「ん~」
「今度は口で……ね?」
オッケーオッケー、ちゅるちゅるくちゅくちゅ。
「あぁんっ、志穂やっぱり上手ぅ……」
……なんか外でチュンチュン言ってる気がするぅ~
「あむっ、ん……」
「んちゅ……志穂ぉ……」
確かに彩ちゃんの事愛してるけど……志穂、疲れてるから。
「志穂、愛して……あら?」
「ぐぅ~、ぐぅ~」
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