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ふたり暮らし~百合色の日々~_3 - (2006/10/08 (日) 19:56:11) の編集履歴(バックアップ)


21話「近所にあの魚介類の名前の一家が住んでいるとか(いないとか)」


  ふふふんふ~ん♪

「どうしたの志穂ちゃん、鼻歌なんて歌っちゃって」
「ん~、何でもないよ。あ、ラットの実験結果戻ってきてるんじゃない?」
「はいはい、取ってきますね」

  今日は彩ちゃんの誕生日なんだ。
  でも部下の子達には結婚してる事内緒にしてるから、適当にごまかしておかないとね。
  ……いくらウチのチームメンバーと仲が良くったって、理解してもらえるとは限らないから。

「志穂ちゃ~ん、戻ってきてたよ」
「うん、ありがと~。それじゃ、上岡さんに回しておいて」
「それとお客さんですよ、人事の花柳課長」

  花柳……あ~、男だ。

「うん……えっと木村さん、一緒に来てもらえる?」

  はぁ……さっさと用件済ませられるといいけど。

「すいませんね河部チーフ、お忙しい所を」
「いえ、どういったご用件でしょうか……」

  やだ、背筋ぞわぞわしてきちゃった><
  ふぅ……リラックスリラックス……木村さん隣にいるし、大丈夫よ。志穂ふぁいと!


                    ■


「よかったね志穂、早く帰ってこられて」
「うん、彩ちゃんの誕生日だし、大急ぎで仕事片付けたよ」

  なんだかんだ言ってこういう可愛い所あんのよね、この子。

「それにしてもすごいご馳走だね~」
「んっふふ~、腕によりをかけましたからっ」

  前菜のディップにシーザーサラダ、トマトソースの煮込みチキンロールキャベツ添え、
  デザートに志穂が買ってきてくれたケーキ。
  ミルクの晩御飯も奮発して高級猫缶「ネコまっしぐら」。

「じゃ、乾杯しよっか」
「うん……飲みすぎちゃダメだよ、彩ちゃん」
「はいはい、分かってます……かんぱーい!」
「かんぱ~い!」

「それにしても、アンタと出会ってもう16年になるんだね……」
「えっ、違うよ彩ちゃん。15年だよ」
「へ?でも始めてあったのが17の時で、今日33に……」
「……彩ちゃん大丈夫?今日の誕生日で32歳でしょ」
「え、そ、そうだっけ?」

  やだ、ボケでも始まったんだろか……ん?
  待て待て、志穂は今32歳のはず……うん、今度の5月で33だ。
  アタシの歳はともかく志穂の歳を間違えるはずがない!

「志穂ぉ……アンタ今32でしょ」
「うん、そうだよ」
「じゃ、やっぱりアタシ今日で33じゃん」
「……ハァ」

  ん?どうしたのよ志穂、いきなり席立って……
  え、何、保険証?

「ほら見て、彩ちゃん」
「やだなも~、こんなの見なくたって……あら?」

  え~とちょい待て、アタシが生まれたのが昭和の……で、今年が……あれ?

「え?アタシが32で、志穂が32で、え?え??」
「もぅ、ご飯冷めちゃうよぉ~彩ちゃ~ん」

  あ゙~もういいや、グビッ!

「とりあえずぅ、アタシが32で志穂も32って事なのねぇ~」
「うんうんそうそう」
「そんで来月の志穂の誕生日で……」
「32歳になるの」
「ありゃ……まぁいっかぁははははぁ~」

22話「ピンクのたわし」


「じゃ、行って来るね」
「ほい、行ってらっしゃい」

  いつものように行ってらっしゃいのキスを交わして志穂を見送る。

「今日もいっぱい出してるね、ミルク」
「にぃっ」

  そして洗濯機を回しつつミルクのトイレを掃除。
  こらこら、新聞紙の上乗っからないの。
  ん~と、洗濯物干し終わって掃除機かけて……
  よしよし、美容院の予約時間には余裕で間に合うわ。

「お母さん後でお出かけしてくるから、いい子でお留守番しててね」
「にぅっ!」


                    ■


「そう言えば先週誕生日だったんですよね、おめでとうございます」
「う~ん……ぼちぼち誕生日がめでたいって歳でも無いんだけどねぇ~」

  家から電車3駅分の所にある美容院、OL時代からずっとお世話になっている。
  ……それにしてもやっぱり33歳になったような気がするんだけどなぁ。

「そんな事無いですよぉ、神戸さん肌だって綺麗ですし」
「そ、そう?」

  やっぱり志穂の作ってる化粧品のおかげかなぁ?
  相性いいし、もしかしてアタシに合わせて……?
  うふふふ~……

「……あっ」
「ん?」
「あ、いや、何でも無いです。
えっと、たまには髪型変えてみません?こう、短めに……」
「ん~……じゃ、ちょっとお願いしてみよっかな?」

店員の心の中”よかった~っ!さっき神戸さん動いた時に髪切りすぎちゃったのよね~”


                     ■


  んっふふぅ~、店員さん大絶賛のこの髪型!
  志穂が見たらなんて言うだろっ!
  自分でこんな事言うのも何だけど、モード系?
  パリのファッションショーのモデルさん風?
  にひひ~……っと、ぼちぼち魚焼けるな。

「にぅ~」

  お、帰ってきたな。
  ピンポ~ン。

「おっかえり~!」
「ただい……」

  どさっ。

「……彩ちゃん、頭、どうしちゃったの?」

23話「夢の中へ」


「やっぱりこれぐらいの長さがいいよ彩ちゃん。うん、素敵だよ」
「ん~、そっかなぁ~」

 彩ちゃんの頭が元通りに戻ったの。
 仕事から帰ってきて、ピンク色のボウズ頭になってたの見た時はホントどうしようかと思っちゃった!><
 あれから数ヶ月経って、むしろ前よりちょっぴり長くなってますますキレイになったよ。

「やっぱ志穂の方が髪キレイだって、ふわふわのさらさらで」
「うん、そうだね。でも彩ちゃんもキレイだよ」

 お布団の中で向かい合いながら、お互いの髪をナデナデしあってるの。
 指先がさわさわ心地よくて、頭もなんかほわわ~んってなっちゃって、すっごく心地いいの。彩ちゃん大好き。

「彩ちゃん大好き~、ちゅっ」
「アタシも、志穂の事大好きだよ」

彩の心の中”あ~志穂の機嫌が直ってよかった。ここ数ヶ月どんよりムードだったもんな……ふわ、あぁ……ねむ……”

 柔らかくて、いーにおいで、すべすべで、あやちゃんしゅきしゅき~むにゃむにゃ……
 ZZZ……

                          ■

 いつものように志穂を送り出し洗濯機を回していると、視界の端にミルクが大慌てで走り抜ける姿が映った。

「どうしたの、ミルク?そんなに慌てちゃって」
「にぅにぅっ!寝過ごしちゃったにぅっ!」

 そしていつものように1人ごとっぽくミルクにはなしか……
 ちょっと待て。

 ネ コ が し ゃ べ っ た ! ?

 びっくりしてガバッと廊下に身を乗り出し、ミルクが走っていった方向を眺める。
 ミルクが、走っていた。
 2本足で、なんかタキシードっぽい服着てしっぽをぴょこぴょこさせながら。

――ありえない、何かの間違いではないか?

 まばたきしながらそのちっちゃい背中を呆けて眺めていると、唐突にその姿が消えてしまった。

「ちょっ、ミルミル!?」

 アタシも慌てて廊下に飛び出し、ミルクが姿を消した玄関の方へと向かった。
 まさか、1人で外に出ていっちゃったんじゃないだろうか……!
 一目散に廊下を駆け抜け、玄関に足を踏み込み、フローリング部から石造りの床へと飛び込んだその時……


                  *おおっと おとしあな!*


 目の前が真っ暗になり、奇妙な浮遊感と加速度に身を包まれてしまった。

「なんでこ~~~~~~なるのっ!?」

24話「夢の国の住人」


「ぅぉぉぉおおおちいいぃぃぃるうぅぅぅぅぅ~~ッ!!!」

 ってかなんでアタシは朝っぱらから、落とし穴絶賛落下中なんだろか。
 洗濯機も回しっぱだし……ぼちぼちすすぎだってのに。

 真っ暗闇の中を超スピードで落下しながら――かれこれ5分くらい落下してるんだろか――
 色々と考えを巡らせているうちに、下の方がかすかに明るくなり、
 うっすらとだが下の様子も見て取れるようになった。
 もっとも、落下の風圧がすごくて目を開けるのも一苦労なんだけども。

 どうやら今落下しているこの空間は円筒状になってて、底の部分が家になってるらしい。
 真ん中には丸いテーブル、端の方に並んでいる壺の乗っかった四角いのはタンスか何かだろうか?
 人は……いないっぽい。

 おや、筒の外から誰か入ってきた。
 黄色い毛むくじゃらで、ピチピチの赤いTシャツを着ていて、あれはクマ……
 と言うよりむしろ、プーさ……

「アッーーーーーーッ!!!」

 ズガシャァァァンッ!

                        ■

 すさまじい勢いでプーさんの家に落下したアタシは、多分じゅうたんなんだろうか、
 柔らかく暖かいふわふわの上でうつぶせになって伸びてい……あら?ちょ、このじゅうたん動いてる!?

 唐突にじゅうたん?の一方がぐわーっと持ち上がり地面が傾いた。
 一気に70~80度ぐらいの急斜面になったもんだから、アタシも見事にゴロゴロと転がって
 床?の上に仰向けになって放り出されてしまった。

 吸い込まれるかのような、どこまでも突き抜けていく天井の見えない暗闇を眺めていると、
 横の方からやたらにハイテンションなダミ声が響いてきた。

「アイゴー、なんてこった!俺のテーブル!俺の!ぶっこわれやがった!アーッ!!」

 なんとも異様なテンションが気になり、体を起こしざまに横を向いてそちらを伺うと、
 真ん中から折れて逆への字になったテーブルの横で、
 プーさんが得体の知れない言葉をわめき散らしながら、足をドタドタさせたり頭を抱えたりしていた。

「おい!こら!女!」
「え、アタ……」
「貴様は俺に損害を与えた!謝罪しろ!賠償しろ!お前の孫の代までだ!」

 その様子を眺めていたアタシの視線に気付いたらしく、プーさんが目を般若のごとく吊り上げ、
 こっちに振り向きながら歩み寄るのと同時に、変な癖のあるダミ声で一気にまくし立てて来た。

「ち、ちょっ、落ち着いてよプーさ……」
「アオーッ!」

 突然、プーさんの表情が驚いたような怯えたようなものに変わった。
 そして首をぷるぷると左右に振り奇声を発しながらアタシの口を妙にキムチ臭い手で塞いできた。

「やややあ!ボボクくっくくまのプサン!辛味噌舐める?」

 さっきまでとはうって変わった、妙に甲高い声でどもりまくる声が何とも気色悪い。
 しかも何か目が黒い棒線で隠されてるし。

 そんな胡散臭さ全開のプーさん?が壺をアタシの方へと差し出してきた。
 その中には、はちみつでは無く、赤いドロっとした味噌っぽい物が入っている。

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