Re;Re;私しかいない街
海辺の近く。
塩辛い匂いが心静まる波音と共に漂う。
真っ白な満月が映える心安らぐスポットだ。
ここに桃色の長髪の若い娘が一人、彼女は結束バンドのギター・
後藤ひとり。
彼女が何故こんなところにいるのか。それは、殺し合
「あ、あ、…も、もういいですよ?じ自分で話進めますカラ……」
…
それは、殺し合いによ
「あ、あ、ちょっと…私がその、か、語り手する、て…ていうか」
…………
殺し合いによって集められた哀れな被害
「な、なぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!
いやいやいやーーーっ!!もう本当に意味意味意味が分からないよーーーー!!!
私的にはあんなに人が集まる場にいただけでも精神的ゲージが限界なのにーーーーーーーーー!!
な、ななななんなの???殺し合いってーーーーーーーーーーーーーー!!!
しかも、虹夏ちゃんとか知り合いが一緒にいたらまだ楽だったけどーーー!…いや、いてほしくはないか……。
ともかく!!知人とかいてくれたらまだなんとかなりそうみたいな感じだったけど0じゃん!!!!
周り他人しかいないじゃんーーーーー!!!!!そ、そそ、それってつまり」
簡単に殺されちゃうじゃん…。
ナ、ナンデ私ガバトロワ参戦デスカァァーアアアアーーーー。
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…
……
ハッ…!
妄想に入っちゃってた…
この状況で現実逃避はまずい、まずすぎるよ…。
とにかく人目つかない場所に隠れないと。
あ~っ!どっかにないかな~!フナムシが家族団らんしてそうな岩陰は…。
…あっ!あった!
あそこに速攻退避だ!
…はぁ。
普段から思ってる事だけども、人に絶対会いたくない。
この状況においてはほんとに会いたくない。
陽キャな人なら好戦的な人にあっても話し合いとかでワンチャンできそうだけど、私コミュ障だし。
多分命乞いとかすらできないよ、どもっちゃって。
今までインドアだったことが深く悔やむ…。
波音、癒される…。
そういやこんなきれいな海、殺し合いで連れてこられなきゃ絶対見ることなかったなぁ。
そう思えばファイナルウォーズ?ってのも悪くなかったりして。…って何無駄なポジティブ思考してんだ私はー!
あっ!そうだ!
110番しちゃえばいいじゃんか!
なに殺し合いに流されちゃってんだ。通報したらそれで解放されるじゃん。
幸いにも私ポケットにスマホいれっぱだったんだよな~。
警察24時とか見る限りちょっぴり怖いイメージあるけど、今はそう言ってられないよね。
どもるの我慢してさあ通報!ピポパ♪っと
『ーーーーーーーー…もしもし』
「ひっ…!」
[通話終了。]
…あれ?
え、え、な、なんで私、通話終了を押しちゃったんだ…?
やっぱ人と話すの怖かったから?こんな状況でなんでそんな…
…あああっ、待て。
いや間違いない…。
私は感知したんだ…!「危険」を…!通報して得る「ハイリスク」を…!
だって、冷静に考えてみてよ。冷静に…。
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そもそも私おまわりさんと上手く対応できるか?って話だし…
警察「もしもしー、あっ殺し合いですね。分かりましたー」
私「ア、ア、アウ、で、できれば早めでほんとに、は、早く…………!!」
警察「あw関係ないけどキミなんか面白いしゃべりだね」ニヤニヤ
私「あ、あ、うぐぐ~~~…な、ななんでもないでひゅ…」ガチャッツーツーツー
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それは置いといたとしても、仮に取材なんかされちゃったら…絶対…
ニュースキャスター「殺人教唆で
メガネセールスマン容疑者を逮捕しました。中継です。」
リポーター「生存者の後藤さんですよね?現在のお気持ちは。」
私「あ、あ、あ、あ、あの…その、あ!あう…サイアクデス…………」シドロモドロ---
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で、そんな人絶対SNSで晒されちゃうわけで…
「【悲報】昨日の取材受けてた殺し合いの被害者女WWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWW」
1 名前:名無しざろっく 20xx/xx/xx(月) 15:21:26.58 ID:AniroWaIFww
放送事故だろ
2 名前:名無しざろっく 20xx/xx/xx(月) 15:21:40.34 ID:JfdJfreh561
目合わせないのガチ草
3 名前:名無しざろっく 20xx/xx/xx(月) 15:23:42.67 ID:JHIhfedwn7
一生ネットのさらし者決定wwww
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そのあと待ち受けるのは交友関係完全崩壊しかないでしょおお?
虹夏ちゃん「あー、ぼっちちゃん…ひ、ひさしぶり~^^」
リョウ「ぼっち、テレビ見たよ。あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、」
虹夏ちゃん「wちょ、ちょっとリョウったら!!…あ、気にしないでよねぼっちちゃん!www」
私「…ムググ…むぐぐぐごごおおおおおおぉぉお」
\(6д9)/人 生 オ ワ タ 確 定\(6д9)/
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「ずヴぁああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
絶対こうなるんだ!ずヴぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
はあーーーーーーーー~~~…っ!危ないっ危ないっ…。
反応したんだ…!
考えるより先に体が通話終了を押した!性<さが>で…!危険な気配…!
警察に電話なんてしなくてよかった…
…んじゃあ、これからどうすればいいんだ?
黙って殺し合いに流されるしかないの?うう…。
~♪
…なんで私ギターなんか弾いちゃってんだろ。
自暴自棄。もうおしまいだから好きなことして逝こうって思考なのか。
酷過ぎる。
なんでこんな目にあってんだ私は。
あんまりだよ。
「フフン~♪あんまりだ~♪気づいたら死亡確定イベント~♪こんな不幸な人間ワタシ以外にいるのかな~~♪」
~♪
帰りたっい~♪帰りたぁい~♪あったかホームに帰りたいぃぃ……♪
帰りたい…。
もういいから誰か楽に殺っちゃわないかな…。はぁあ…。
「いい音!それなんていう楽器なのかな?」
「ヒッ、う゛おおわっ!!!」
わ、わわっ、ビックリした…!!
私はゆっくりと頭を上げ、声がした方向を見上げる。
ちょうど岩場の真上にて、声の主は金髪で
メガネをかけたちっちゃな女の娘だった。
ちびっ娘の透き通った声が響いていく。
「わたしリコっていうの!あなたの名前はなんていうのかな?一緒にこのファイナルウォーズを止めましょ!」
「ふ、ふへっ…ふへぇえっ!?わ、わたしはご、後藤ひちょり…だ、だけど皆からぼっちて呼ばれてて…と、止めるってあ、あのちょっと…私は無理っていうか…っていうかていうか~~~~~…」
「…??」
ふ、ふへえ~~~…。
初対面の人と話すの久々すぎて変なこと言っちゃってたらごめんない、って感じですぅぅ…。
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…
「へぇーーーっ!ギターっていうんだ、その楽器!なんだか心が高まる?っていうか独特な音してるよね!」
「ふ、ふひっ…!…あはは、そうだよ…ギター最高だよね…リコちゃん。…へへへ………」
ひょんなことから…私はこのちびっ娘リコちゃんと行動を共にすることになった。
私はソロプレイで行動したかったんだけども…。
まあ「私的出会いたくない参戦者の特徴ランキング下位」に入る『人畜無害なキッズ』に遭遇したのは不幸中の幸いかな。
にしても、リコちゃん、テンションたっかいなぁ…。
「ぼっちさんって音楽家なんだ!わたしたちの町ではそういう音楽活動家さんは祭りの時でしか見ないから興奮しちゃうなー!!ねえその楽器どこで売ってるのかな?なんか弾いてみてよ!」
「ふへ、へぇ…。リコちゃん元気だねぇ…ふへ…」
いくらキッズといえど、こういう陽キャタイプは心底波長が合わないース。
波長が合わない人とは疲れるから付き合うの大変…。ふっへえ…。
ところで、さっきからどこ進んでるのかな…。
リコちゃん先頭切ってどんどん歩いて行ってるし。
「ん?どこ目指してるって?ほら、ぼっちさん森を抜けた遠くに城あるでしょ!あそこ!」
えー?城…?
うわ、遠っ…。
「ふへぇ…あ、あそこに行きたい、と…。リコちゃんどうしてそこに…?あんまり動いたら怖い参戦者さんたちに、あ、会っちゃうかもよ?」
「そう!それが目的なの、ぼっちさん!道中で出会う他の人と話をして、私たちの仲間に引き入れるのが本質なのよ!」
「…え、えーーー?あ、あんまり出くわさない方がいいんじゃないかな~…?わ、私みたいに人畜無害無抵抗人間ばっかじゃないと思うよ…?」
「大丈夫!たとえ攻撃的な人に会ってもちゃんと話し合えばなんとかなるよ!
それに、わたし友だち作るの得意なんだよね!レグに
ナナチにプルシュカ!元居た町にもたくさん友だちいるんだもん!」
…私、有害であれ無害であれもう人と関わりたくないんだけども……。
そんな考えなんて全く汲み取ることなく、リコちゃんは好奇心を宿したキラキラした目で暗い森の中へと入っていった。
やたらでっかいツルハシをブンブンと振り回しながら歩いてくリコちゃん。
アレがリコちゃんの支給武器かー。不相応な…。っていうかこんな状況でよく陽キャな人らはテンション上がれるよなー…。
…はああ……。
にしても、支給武器…ねぇ…。
「あっ!ところでぼっちさんは何の武器貰ったのかな?さっき
メガネのおじさんが説明してたよね!」
「…武器、私の武器ねぇ…。」
「…?」
「あっ、なんてか、ふへへ…、無いんだよね。私の武器………。」
「えっ!えーーーーーーーーーーーーーーっ!!無いのー!!?」
そう。
ここに着いた当初、粗方探してみたがディバックには食料以外全くないのだった。武器、なしだよ…私。
他の人も無いんだろうな、さっきの説明は誤りなんだろなー、なんて最初は思ったがリコちゃん思いっきりやばいの持ってるし。
やっぱ私だけなんだろな…。武器0は。
「可哀想…あんまりだねぼっちさん…。この森の中、猛獣とか出るかもしれないから武器あったほうがいいのに…!」
「うぅ…リコちゃん、わ、笑えるよね…。殺し合いで武器0って…ふへへへぇ…」
「いや全然笑えないよ!本当に気の毒で哀れで悲劇なぼっちさん!武器なしなんて信じられない!これからどうするのか考えた方がいいよ!」
「な、そこまで言わなくても………リ、リコ」
「もしもわたしとはぐれちゃったりしたら…、そしてぼっちさんが凶悪な人に襲われでもしたらグチャグチャに…、
あー本当にかわいそう…、神様哀れなぼっちさんをお救いお願いします…!」
「そ、そんな怖い仮定言わないでよおっ!!う、うぐぐう、う、……あぁあ…」
ズヴァヴァヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!
わ、私殺されちゃうんだあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!ええひゃああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
せめてお玉とかでも支給してよおおおおおおおー!!!!!!!!!!!!
うわあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!
「うわっ!ぼ、ぼっちさん大丈夫!?急に倒れちゃって!」
「ずヴぁっヴぁっヴぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!死にたくながやあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」
……
意識が遠のいていく………。
あぁそうだこれは夢なんだ。夢に決まっている。
………
目が覚めたらわたしは校舎裏の誰もいないところでギターの創作をするんだぁぁ…。ふへへ…ふへ…。
………
……
…
※|^∀^|ギター「説明しよう!ぼっちちゃんはすーぐ現実逃避しちゃうクソ雑魚ツチノコなメンタルなぁ~んだ!」
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ぼっちさん、いきなりうずくまっちゃってどうしたんだろう。
微動な痙攣を起こしてるし、お経みたいにうーうー唸って苦しそうだし…。
…~っというわけで、わたしリコは今薬草探しをしています!
腹痛と頭痛の効能があるツウナンワ科の植物を宛にしているんだけども、
…中々見つからないな。
うーーーん…。というかこの辺り知識にない野草や花しかないんだよなぁ。
よく見渡せば周りの木々も図鑑で見たことない種のものだし…。
ここって一体アビスの何層付近なんだろう…?
あっ、そうそう、レグに
ナナチ!
2人とも絶対わたしのこと心配してるよー…。
急にいなくなってどうしたんだ、って聞かれたら困っちゃうなぁ。
ヘルメットの電灯が暗闇の森を照らす。わたしはいろんなことを考えながらしばらく捜索を続けた。
…
……
………
ふぅ…。だめだ。
薬草どころか見知っている植物が全然ないや。
多分ここは未知の層、もしかしたら最深部なのかもしれない。
どうしてそんなとこにわたしいるんだ?って考えちゃうけど、とにかく一旦ぼっちさんの様子を見に行くか。
もう20分くらいほっぽりだしちゃってるしね…。
「おいクソガキ、飯持ってるかあ?」
「え!」
ビックリしたあ。背後からの野太い呼びかけにわたしは振り向く。
赤い着物でボサボサ頭の大男が苛立たしそうにこちらを見ていた。
第二の参戦者さん、遭遇!
「まぁー…飯持ってるよなそりゃ。ちょっと貸せ」
「え!!ちょ、ちょっと!わたしのバッグ!」
うわっ、ディバッグ鷲掴みにされた!
勝手に中身漁ってるしー、
あ、でも多分この人飢えてて礼儀どころじゃないんだろな。ちょっと気持ちわかる、ていうか仕方ないよね。
男の人は缶詰を抜き取るとガツガツと瞬く間に食べ干しちゃった。
右手に持ってる真黒な剣はあの人の支給品かぁー。嗚呼ぼっちさんますます気の毒。
「食べ終えたようだし自己紹介!わたしはリコ、あなたもファイナルウォーズを止めるべく一緒に行動しましょ!
向こうにもわたしの友達いるから今紹介…」
「んじゃ、食ったことだしとりあえず」
っっ!!!!痛ぁっ!
右手の先の激痛に顔を歪めた。
え…?わ、わたしの指が、斬れ落ちてる……?
鮮やかな血が川のように流れていく…。痛い、痛い…。
「死ね、ガキ」
目の前から発せられた野太いその声にわたしは背筋が凍った。
今、その男の人は自分の真っ黒い刀を振り下ろさんばかりに掲げている。
嘘……?この男の人、わたしを殺そうとしてるの…?
そんな、顔見知りでもない人に「殺し合いをしろ」って言われてそんな簡単に実行しちゃうの…?
有り得、有り得ない…。
こんなことで。
こんなことでわたしの人生が終わるなんて、
…あり得ないよっ。
「…どうしてっ!!どうして簡単に殺しなんてしちゃうのよ!!!
ご飯もあげたし、一緒に冒険する雰囲気だったじゃない!!
ねえっ!どうして!どうして一緒に協力できないの!!ねえ!」
「…あーーーっ、喧しい。俺はそういうガキが大嫌いなんだよ。ガキはいつでも必要以上に喚く。うるさくて鬱陶しいぜ」
「そんなの答えになってないじゃない!
ねえ、殺し合いなんてやめてっ!考え直して!!!」
人を傷つけて何が愉しいというの?その刀でわたしを斬って満足するの?
みんなで提携すれば、協力すればこの悲惨な状況も打開できるというのに!
涙が急に溢れてとまらなくなってきた。
それは切断された指の苦痛によるものじゃない。この男の人への憤怒が転換されて起きた作用だっ。
「わたしはこんなところで死ぬわけにはいかないの!!お母さんのいる場所に行かなきゃいけないんだから!
だからあなたも刀を下ろしてっっ!!」
「だからうるせえっつってんだろうがゴラアッ」
その怒号と共に刀が一気に振り下ろされる。
わたしは思わず目をつぶった。
どうしてこんなことに…。嫌だ、絶対にこんなところで終わらせたくないのに…。
リコさん隊は最深部まで絶対に不滅のつもりなのにっ…。
レグ、
ナナチ……。
それに、ぼっちさ…。
ガガガガガガアアア―――――――――――――――――――――ッッ
ガガアアアアアアアアアアア―――――――――――――――――――――――――
ガガアアアアアアアアアアア―――――――ガガアアアアアアアアアアア―――――――――――――――――――――――――
大音量の【ライブ】がそれまで静かだった森中を響かせた。
騒然たるその【ライブ】の音が。
この騒音はほんの数十分前に間近で耳にしたあの【ギター】の音。
「ああぁっ?!うるせえっっ!!!」
死が間近だったわたしを救ったのは、遅れてやって来た英雄…
“ギターヒーロー”だった――――。
「この音、ぼっちさん!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆―――演奏開始。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
♪
In the city where the neon lights shine,
Underneath a moon that hides the secrets of time,
We're rebels with a cause, we break the chains,
In this concrete jungle, where nothing remains.
ガガアアアアアアアアアアア―――――――ガガアアアアアアアアアアア―――――――――――――――――――――――――
「うっせんだよゴラアアアァアアァッッ、どこにいやがるッ、出てこいやあッ!」
森中に、ロックの爆音が響き渡る。
その轟音は、古い木々を揺らし、真っ暗な樹海を震わせる。
漆黒の夜空に広がる星々も、その響きに呼応するかのように輝きを増していく。
このファイナルウォーズの離島にて、Bocchi The Live【第1部】が始まったのだ。
♪
We are the renegades, the wild and untamed,
The heartbeat of this nation, where dreams are reclaimed,
With our fists in the air and the passion we share,
We'll rock this world, we won't disappear.
「見つけ次第ぶち斬ってやるっ、探してやっからなゴラアアアアッ!」
リコちゃんを殺そうとした大男は、その轟くギターの悲鳴に耐え切れず音のする先へと走っていった。
短絡にも、獲物を放置して。
♪
From the outskirts to the heart of the crowd,
We sing our anthems, we shout it out loud,
The melodies we weave, the stories we tell,
Through every verse and chorus, we rebel.
ガガガガガガアアア―――――――――――――――――――――ッッ
このギターの主は、もちろん私。
指は痛覚をあっという間に通り過ぎ感覚がなくなった。それでも私は弦を弾くのを止めない。
私はまだ、演奏をやめられない。
それは、リコちゃんをあの男から遠ざけたい、っていう思いがあるから―。
「とっにかくその喧しい音やめろやああっ、てめぇえええええっ、バカかゴラアアアアアア!」
幸いにもこれは自殺行為にはならない。
何故なら、ここは無数の木々が立ち並ぶ森。
しかも、真っ暗な深き闇で包まれている大樹海。
いくら大音量を鳴らそうとも、そう簡単には見つかりっこない。
私は移動しながら弾き鳴らしているし、絶対とは言えないけども鉢会いはしないはずだ。
♪
In the shadows, we find solace and grace,
With every chord we strike, we leave a trace,
In this symphony of rebellion, we find our release,
Through distorted riffs, our souls find peace.
「見つけ次第絶対切り殺してやるっ、だから出てこいやああっ、うっっっせんだよテメェエエエエエッッ」
ヒッ…、チンピラのような男の怒鳴り声が近くから聞こえる。
怖い…、怖くて仕方ない…、
だけれども。
――リコちゃん、さっき武器がないって私言ったよね…。
でもようやく見つけたんだ、私の武器。
この『ギター』が。このギターこそが私の武器なんだ――。
最悪な殺し合いを、劣悪な現状を、
私はこの武器から奏でる『音』で変えてやるんだ――――!
だから…、
「ふへえっ…あっ、リコちゃん、ごめん正直一人で逃げようか迷った…。」
「わっ!ぼ、ぼっちさん!!!」
「さ、早く奥まで走るよ!リ、リコちゃん!」
♪
I was born care of you...
演奏終了…――。
私は周りを見渡す。ヤクザのような罵声が響くものの、追手はいないようだった…。安心…。
ふとリコちゃんを見る。
ううっ、ふへえ…。血にまみれた指がかなり痛々しい…。
とりあえず今は、リコちゃんの指が切断されてない方の手を握りしめ、森の奥へと足を速めた。
私たちは暗闇の中で迷路のような道を進んでいく――――…。
【H8/1日目/深夜】
【
ムゲン@サムライチャンプルー】
[状態]:憤慨
[装備]:絶刀鉋@刀語
[道具]:食料一式(未確認)
[思考]基本:皆殺し
1:爆音を鳴らすバカを見つけて殺す
2:クソガキを殺す
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ぼっちさんと一緒にひたむきに進んでいく。
進むほどに、周囲はますます密林と化していく。
幾重にも重なった枝葉が夜風に揺れ、足を進めるごとに目の前が漆黒になる。
……助けられたんだ、わたし、ぼっちさんに…!
ほんと感謝しきれないくらいだ!なんて頼りになる参戦者の人と巡り会えたんだろう。
お礼の言葉今のうちに言わないと!
「ね、ねえ!ぼっちさ…あっ!」
彼女の顔を見たわたしは思わず見開いた。
ぼっちさんのその目には『緑色の螺旋』が――。
形容するのなら、まっすぐな意志と閃光のような命の輝き。そしてその螺旋は<天を突き、無理を押し通す。>
そう言い表していい物が眼に宿っていたのだ。
「ハァハァ…、ん?リ、リコちゃんなにかな…?」
「あ、なんでもないよ!うん!なんでも!」
「…?あぁ、そう…。ゼェハァ、ゼェ…」
わたしたちはいまだ走り続けている。
ふと考察する。
あの目の螺旋はもしかして。さっきの演奏によって未知なる力を宿した証なのでは…?
この殺し合いの現状を打破することができる、そんな覚醒能力が。
歓喜と期待に似た感情にわたしは思わず、身震いをしつつ走り抜けた。
「リコさん隊、いっくぞぉーーーーーーーーーーっ!!」
【――螺旋力、覚醒確認】
【H7/1日目/深夜】
【シン・リコさん隊】
【
後藤ひとり@ぼっち・ざ・ろっく!】
[状態]:健康、螺旋力覚醒(?)
[装備]:エレキギター@実在の楽器
[道具]:スマホ、食料一式(未確認)
[思考]基本:とにかく帰りたい…
1:とにかく今は走る。
2:城を目指して進む。
3:リコを守りたい。
4:ほかの参戦者に会いたくないなァ…。
【リコ@メイドインアビス】
[状態]:健康、右人差し指・中指・薬指欠損
[装備]:無尽鎚@メイドインアビス
[道具]:食料一式(未確認)
[思考]基本:殺し合いの打破
1:とにかく今は走る。
2:城まで進む。
3:参戦者と会ってリコさん隊に入れる。
※
ムゲンを危険人物と認識。
※かなりの広範囲でギターの音が響き渡りました。
↑リコ「見てぼっちちゃん!状態表っていうのよコレ!面白いね!」スタタタ
ぼっち「ふ、ふへへえ?! ふへ!?思考までか、書いてるし!!」スタタタ
ぼっち「こんなんじゃヤらしいこととか考えたら筒抜けじゃないですかァーーー!ヤダァッーーー!!!6д9;;」
リコ「へ?そんなこと考えてるのっ…?」
最終更新:2024年01月16日 22:35