発達障害者基本法では、障害者基本法に準じて、発達障害児(者)の早期発見体制と、学校や職場での支援体制に関わる施策を、都道府県市町村が責任を持って施行することが義務付けられている。

Ⅰ.定義
発達障害者支援法でいう発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」 と定義される。

Ⅱ.概要
①発達障害者支援センター
発達障害児(者)支援は、医療、保健、福祉、教育、労働のすべての分野において施行する必要があり、本法の実施の中心には「発達障害者支援センター」の存在がある。発達障害者支援センターでは、発達障害の早期発見、早期支援、就労支援、発達障害に関する研修を行うとともに、発達障害児(者)にかかわる他領域との調整を行うことが定められている。発達障害者支援センターでは、専門性の高い職員の育成とともに、ボランティアの育成は非常に重要な課題であり、家族同士で相談や情報交換を行うピア・カウンセリングやペアレントメンターの養成についても検討することが必要である。また、連携にあたっては「個別の支援計画」の作成・活用や、関係者による支援会議の開催が必要である。

②早期発見
医療、保健分野では、早期発見、診断、治療においての措置を講じることがうたわれている。都道府県市町村は、そうした医療、保健サービスを行う病院や診療所を確保することも義務付けられ、3歳児ないしは5歳児健診において、高機能自閉症や注意欠陥多動性障害を早期診断する試みが始まりつつある。しかし、地方自治体によって格差があるのが現状である。

③教育
本法の成立と合わせて、発達障害の児童生徒への対応を目的とした校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの設置などを骨子とする「特別支援教育体制」が始まり、幼稚園や学校に在籍する発達障害児の状態に応じた、適切な教育的支援、支援体制の整備が進められているところである。発達障害児の多くは通常の学級に在籍しているが、支援員の配置が進まないという課題がある。

④就労支援
都道府県は、発達障害者の就労を支援するため必要な体制の整備に努めるとともに、公共職業安定所等の相互の連携を確保しつつ、発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めること。また、都道府県及び市町村は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう必要な措置を講じるものとすること。発達障害者の就労の機会が開かれるようになったが、離職率が非常に高く、就職後の支援の在り方も検討していく必要がある。

⑤専門職の確保
国、都道府県及び市町村は、発達障害者への適切な支援を確保していくため、医療、保健、福祉、教育、労働等の分野において発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保することを課題としている。そのため、国においては医師については国立精神・神経センターにおいて、また、行政担当者、保健師、保育士等については国立秩父学園において、教員等については、独立行政法人国立特殊教育総合研究所において、研修を実施することにしている。しかし実際には、小児神経科医など、発達障害を診療する専門家の社会的認知も進んでいない。医師によって診断結果が異なるなどの問題もある。


Ⅲ.課題
発達障害者支援法に明記されているのは、あくまで理念や指針で、それらに対する罰則等がない。そのため、多くの都道府県市町村では、その実行に必要な予算や専門的な人員の確保に苦労しているのが実情である。また、社会では発達障害という概念の認知も、急速に進んできてはいるものの、まだ充分ではない現状も進捗状況に影響している可能性がある。国は、発達障害者支援にとって必要となる支援手法等の開発や研究、専門的な人材の養成、社会全体に対する発達障害の正しい理解の普及啓発を更に進めることが必要である。
さらに、2006年に施行された障害者自立支援法との整合性や現行法の児童福祉法・身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律との関係が明確ではない。
最終更新:2013年03月19日 08:23