詩歌藩国 @ wiki

竜の自己進化

最終更新:

rilyuuguu

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L:竜の自己進化 = {
 t:名称 = 竜の自己進化(イベント)
 t:要点 = 新しい姿に,繭,登場
 t:周辺環境 = 街



登場は唐突だった。

imageプラグインエラー : ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (繭.JPG)
巨大な繭である。
羽を休めていた水鳥が飛び立ったが、ぴくりとも動かない。

見上げてみると、首が痛くなるほどだ。影が出来たら、すっぽり入ってしまうだろう。


場所は街に程近い海岸、浪飛沫を浴び潮風に吹かれていた。
それは夏の気配を感じる雨が止んだ日。青嵐が吹くと心地よい。満月は薄く、空は濃紺から蒼へと色を変えていく。

発見したのは早朝、パトロールしていた王犬シィである。
竜士の紋章エプロンに洒落た羽付帽子、そして赤いマフラー。腰には剣型銃。

場所からもしや水竜かと当たりをつけたが、断言できなかった。
聡明な王犬であるが、ドラゴンシンパシーではない。

即座に政庁に戻り、机で眠る藩王九音・詩歌並びに摂政星月典子を叩き起こす。

眠い目を擦る2人を海岸まで引っ張って行き、目を見開くのを眺める。

10秒ほど経った。

藩王詩歌は繭の調査を開始。
この王は、ドラゴンシンパシーであった。
だが、どうにも上手くいかない。繭の中から応答がなかった。

あぁ、竜宮さんがいればなぁ。

藩王の述懐である。
もう一人の摂政竜宮司はこの国指折りのドラゴンシンパシーであった。
ただ、彼は今この国にはいない。
吏族として編成チェックに出向していた。

うんうんと唸る藩王を尻目に、摂政星月典子は砂浜に腰を下ろしコーヒーを啜っている。
近くにパン屋でもあったのか、おいしそうなベーグルサンド(具はサーモン)を片手に持っている。
表面はパリパリ、噛めばモチモチ、ソースと玉ねぎの刺激とサーモンの旨みが胃を刺激する。

「あ、シィ様の分もありますよ」と言って横に置いてある紙袋に手を突っ込む。
「はいどうぞ」と手渡した。王犬シィ、器用に受け取り食べ始めた。
具はチキンらしい。甘辛いタレと良くあっている。


藩王詩歌が3度目のため息をついた頃、一匹の若い水竜がやってきた。
こんな朝早くになにやってるんだろうと小さな好奇心からだろう。

藩王、狂喜する。やった、話が聞ける。

長い銀髪を揺らし、海に入っていく。濡れることをさっぱり気にしていない。

かようかような訳でして・・・と話を初めておよそ5分後。

ありがとうーと手を振り水竜を見送る。笑顔が眩しい。


「で、どうでした?藩王様。」

コーヒーとベーグルを手渡し、星月は紙袋をくしゃくしゃと丸めポケットに押し込む。

「うん、どうやら水竜の新しい姿が拝めそうだよ。」
「新しい姿に?」
「なんとも楽しみだね。」

海から上がり、浜に座り込んだ。
受け取ったコーヒーを啜り、はぁと息をつく。コーヒーもなかなか上手いな。
ベーグルの具はなんだろうと思いながら齧る。

「じゃ、私は政庁に戻りますね。皆が起き出す前に事態の説明と対処を出さなきゃいけないので。」
「うん、よろしくね。」

冗談のような速さで走り出す星月典子。
スーパー摂政ここにありと思う一人と一匹。

あ、上手いな。チーズ、ハム、玉ねぎ、レタスか。
藩王九音・詩歌は優しく微笑んだ。

善王ここにありと思う一匹だった。



進化論に拠れば……
生物は普遍不朽の存在ではなく、長い期間を経て変化を続ける存在だという。

原始的な単細胞生物が多細胞の生物となり、水棲生物が陸に上がって陸上生物となるように。
鳥が空を飛ぶのも、肉食動物が鋭い爪や牙を持つのも。
種としての生存戦略が働くのか……環境に適応し、種族を分化し、代を経るごとに形質を変化させる。
いずれにせよそれは単なる突然変異ではなく、親から子へ受け継がれる中でゆるやかに広がる変化だ。
事実として人間もまた、東西南北やはてない、森という環境に適応し、また藩国ごとに人種の違いが見られることは知っての通りだろう。

成長という概念もある。
赤子が幼児になり、少年になり、やがて大人になる。
人間はまだ比較的緩やかだが、おたまじゃくしから変化する蛙、あるいは脱皮を繰り返す蛇……
自然界には様々な成長をする生物がいる。

そして、竜はそれらには当てはまらない。
竜の自己進化……それは成長でもなければ一般的な進化とも異なる。
その最大の違いは“意思”。
自ら望み、新たな姿を得る……故にこう呼ぶのだ、“自己進化”と。


かつて詩歌藩国にはアルトドラゴンという竜がいた。
生体金属で構成された地上を走る竜。
竜らしい竜、武装を除けばシンプルな姿の竜だ。

今詩歌藩国にはソットヴォーチェという竜がいる。
海に住まう竜、海洋哺乳類に似た姿をした巨大な水竜。
ソットヴォーチェはアルトドラゴンの中から現れた。

けれど両者には連続性がない。
アルトドラゴンが徐々に水に適応していったわけではなく……ある日、ソットヴォーチェはそこにいた。
この広い海を泳ぐ事を欲した時、アルトドラゴンはソットヴォーチェに自己進化したのだ。

(※この際、須藤 鑑正の手になる設計データが竜に提示されている)

竜は自らが望むように、あるいは望まれるように姿を変えていく。
光の繭に包まれた竜が再び姿を現す時、果たしてどんな姿を見せるのか……。
その答えは竜だけが知っている。



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士具馬 鶏鶴
九音・詩歌


竜宮・司・ヒメリアス・ドラグゥーン

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竜宮・司・ヒメリアス・ドラグゥーン