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惑いの白 ◆Vj6e1anjAc




 『どうしたらいいのだろうか?』
 美国織莉子の頭の中では、ひたすらにそんな疑問が渦巻いていた。
 全てを失った彼女にとって、ただ1つ残されていた生きる意味は、彼女の目の前で消えてしまった。
 鹿目まどか――いずれ最悪の魔女となる少女。
 彼女を未然に殺害し、世界を脅威から救うことこそが、織莉子の存在意義だった。
 しかし、織莉子が殺すべき敵は、この訳の分からない殺し合いが始まる前に、あっさりと殺されてしまった。
 彼女が直接手を下す前に、世界はとりあえず救われてしまったのだ。
 さて、そうなるとどうするべきか。美国織莉子は思案する。
(常識で考えるなら……)
 普通に考えるのならば、他の参加者達を守り、殺し合いからの脱出を図るべきだ。
 過激な思考の持ち主ではあるが、彼女は基本、正義の人である。
 不要な人殺しの強要など、到底許せるものではない。
 しかし、この手は血に汚れている。
 まどかを殺害するために、多くの魔法少女達を、巻き添えに殺させてしまった。
 そんな自分が素知らぬ顔で、ぬけぬけと人道を歩むことは、果たして正義と言えるのだろうか?
 人を殺したいわけではない。
 それでも、濃すぎる良心の靄が、彼女の思考を鈍らせる。
(どうすればいいのかしら)
 最早何度目ともしれぬ疑問を、胸中で呟いた瞬間だ。
「……?」
 背後に何者かの気配を感じ、織莉子がそちらへ振り返ったのは。
 正確には、気配を感じたのではない。
 彼女の持つ固有魔法――未来予知で見た未来に、自分に近づく影があったからだ。
 果たして、視線の先にあったのは、1人の青年の姿だった。
「………」
 白い砂丘に佇む彼は、全身白一色の服に身を包んでいた。
 俗に言う細マッチョというやつだろうか。身体にフィットした布地からは、筋肉のラインが盛り上がっている。
 夜風にこげ茶色の髪が揺れ、その下から青い目が覗く。海の深さを思わせる、吸い込まれるような瞳だった。
 どこか儚げな印象を覚えたのは、彼の纏うその白が、砂に溶けて見えたからかもしれない。

「……貴方は、この殺し合いに乗っているのですか?」
 相手は無言だ。話しかける気があるようにも見えない。 
 であれば、こちらから話しかけるしかない。
 とりあえず、織莉子はそう尋ねる。殺し合いに乗る気があるなら、相応の対応をしなければならないからだ。
「いや……どうすればいいのか、分からないんだ」
 低く、されど、よく通る声で。
 青年は言葉を選ぶように、ゆっくりと織莉子に向かって返す。
 こちらを見据えていた瞳が、少し、右の方へと逸れた。
 視線を相手から逸らすのは、自信のなさの表れだ。どうやら本当に、行動を決めあぐねているらしい。
「奇遇ですね」
 こんなこともあるのか、と。
 口元に苦笑を浮かべながら、織莉子が青年へと言った。

◆

 白服の男――キャシャーンもまた、この場での行動を決めあぐねていた。
 第一に、彼には過去の記憶がない。行動を決定する裏付けがない。
 もちろん、殺し合いに乗ることは論外だ。
 これまでにも多くのロボットを殺し、心を通わせたロボット達にも、目の前で死なれてきた男である。
 できることなら、これ以上、命が消えるところは見たくない。
 だからといって、その先に、具体的なビジョンが見えるかというと、否だ。
 要するにキャシャーンとしては、殺し合いに乗らない以上は、沈黙せざるを得なかったのだ。
 もちろん、何もせずにいることも、それはそれで歯がゆいのだが。
「とりあえず、移動しましょうか」
 美国織莉子と名乗った少女が、西方を指差しながら言った。
 人間と話したのは、アコーズの時以来だろうか。彼が逝ってしまった時も、ここと同じ砂漠だった。
 砂漠の夜風は、人間にとっては、相当肌に染みるらしい。
 断る理由もなかったキャシャーンは、提案に頷き、歩みを進めた。
「行くあてはあるのか?」
「ひとまず、私の友達を探してみます。無事でいてくれるといいのですが」
 どうやら織莉子は、友人と共にここに飛ばされたらしい。
 難儀な目に遭ったものだ、と、キャシャーンは内心で同情する。
 こんな状況だ。残念ながら、命の保障はできそうにない。
 それでもできることならば、再び巡り合えることを祈りたいが――

          て   / ,,-",-''i|   ̄|i''-、  ヾ   {
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     ;;;;;;:::::;;;;;;;;;;:::::;;;;;;;;:::/;;;;;;:::::::::;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::;;:;;;;:::ヽ
                        ↑
                    このへんにかみ

「……!?」
 その時だった。
 突如、遥か遠方に、とてつもないキノコ雲が立ち込めたのは。
「あれは……」
 織莉子の声に被さるように、追って爆音が聞こえてくる。
 ネタばらしをしてしまうと、それはF-6で起きた核爆発だ。
 それでも、記憶のないキャシャーンにとっては、そんなことが分かるはずもない。
 それこそ謎の巨大な雲が、まるで龍か何かのように、天へと昇っていくようにしか見えなかった。
「……本当に、何が起きているんだ」
 全く分からない。
 これまでも分からないことずくめだったが、今回は特に意味が分からない。
 半ば呆れたような口調で、キャシャーンは小さく呟いていた。

◆

「おい全然戦わねぇぞ」
「早くしろよ」
「すいませぇ~ん、まぁ~だ時間かかりそうですかね~」


【F-9 砂丘/一日目 深夜】

【美国織莉子】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[基本方針]:どうしたらいいか分からない。とりあえずキリカと合流したい
※第3話にて、キリカがマミと戦っている最中からの参戦です

【キャシャーン】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[基本方針]:とりあえず、死人が出てほしくはない
※第12話開始直前からの参戦です


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最終更新:2013年01月21日 02:56