八神家のお昼は、時間の関係上守護騎士達しか家にいないことが多い。
だが、そこで時たまヴォルケンリッターによる極秘会議が開かれていることはあまり知られていない。
シンが来た後もそれは変わることがなく、むしろ数を増やしていた。
シグナム「では、『第37回主はやてのための守護騎士会議』を開催する」
リインⅠ「・・・・・・?」
シグナム「む、リインフォースは初めてだったな。シャマル、説明を頼む」
シャマル「えっと、平たく言うとはやてちゃんを陰ながら守っていこうって会議なんです」
ヴィータ「闇の書事件でも後手に回りかけたからな。何か気づいたことがあったらみんなで相談しようってことに決まったんだ」
リインⅠ「そうなのか?まったく気付かなかったが・・・」
シグナム「厳重に秘匿していたからな。さて、今日も題材はこの男だ」
突然部屋が暗くなり、閉めたカーテンにでかでかと『シン・アスカ』の写真が写りこむ。
セル画の中のシンは、はやてと楽しそうに笑っていた。もっとも、いつの間に撮ったのかわからないが、これは完全に盗撮だ。
シグナム「これは武装隊にいるヴァイスという部下に協力してもらい撮った写真だ」
リインⅠ「この間の一件から、主はやてとシンはずいぶん仲が良くなったようだな。微笑ましい限りだ」
シグナム「問題は二枚目にある」
ザフィーラが機械を操作すると、別の写真が映し出された。
ところ変わってこちらは浴室。シンとはやてが仲良く背中を流し合っていた。
リインⅠ 「こ、これは・・・。」
ヴィータ 「は、はやて!おい、どういうことだよ、これは!」
ザフィーラ「見てのとおりだ。シンが間違えて主はやてのお風呂に乱入したことがきっかけで、時々一緒に入っているそうだ。主はやてはまだ子
供、シンも妹とお風呂に入ることに慣れていたとはいえ・・・」
シグナム 「これは由々しき事態だ。今はどちらも兄妹感覚でいるが、主はやてはまだ九歳。もし一線を越えるようなことになれば、我らヴォル
ケンリッターの名折れだ!いざとなればシンの【オロチ】を叩き切ってでも・・・」
ザフィーラ「Σ(゚Д゚ ) !・・・・・・・・・・・・))ガクガクブルブル」
シャマル 「あの~、いくらなんでもそれはないと思うんですけど・・・。はやてちゃんはまだ九歳ですし、シン君にもそんな度胸があるように
は・・・」
リインⅠ「私もシャマルの意見に賛成だ。それに主はやてが決めたことなら、我らにはどうする事もできんだろう」
リインフォースの反対意見に、守護騎士たちも頭を悩ませた。
今まで、姉という存在はいても兄という存在はいなかったはやてだ。
リインフォースの言うとおり無理やりシンと引き離して悲しませたくはない。かといって、このままでは万が一ということも・・・。
リインⅠ 「ふむ、ようは主はやてがお風呂に入っている間中、シンを見張っていればいいのだろう?」
シグナム 「何かいい案があるのか?」
リインⅠ 「ああ、それなら答えは簡単だ。もう一人誰かが一緒に入ればいい」
シグナム 「!!!」
ヴィータ 「!!!」
シャマル 「!!!」
リインⅠ 「ただしザフィーラ、お前は駄目だ」
ザフィーラ「な、何故私だけ!!!」
はやて「むむ!(ピキ―ン!)」
キャロ「どうかしたんですか?八神部隊長」
はやて「なんか過去の自分に激しく遅れをとってる気がするんや。今ここで挽回しなければ永遠に追いつけないような・・・」
エリオ「気のせいじゃないんですか?」
はやて「おまけにリインフォースにも裏切られそうな予感が・・・」
リインⅡ「あの、はやてちゃん?」
はやて「こんなことしとる場合やない。今行くで、マイダーリン♡」
エリオ「や、八神部隊長!どこへ・・・・行っちゃった。」
そのときのスピードは便乗のソニックフォームどころか、冥王の砲撃スピードをも超えていたらしい。
ティア「八神部隊長、報告書です。・・・ってあの関西狸は?」
キャロ「マイダーリン♡って叫びながら、何処かへ走っていっちゃいました。」
ティア「・・・またいやな予感がするんだけど」
はやてが一度や二度の失敗で諦めるはずがないと考えた起動六課の穏健派たちは過激派との次なる戦いに備えるため、着実に準備を整えていた。
その中において、買収され敵側に寝返ったり、わざと敵側に入り情報を流すといった、いわゆる裏切り者が出てくるのは戦場の常である。
彼らの戦いもまた、例外ではなかった。
クラウディアが修理中のため、アースラに移っていたクロノは『裏切り者』の極秘通信を受け取っていた。
リインⅡ「やはり、はやてちゃんは諦めてなかったようです。すでに時間跳躍システムの奪還に動き出しました。」
クロノ 「やはりそうか。あれからまだ三日しか経っていないというのに、なんて、立ち直りの早さだ。」
リインⅡ「動力の回復にはおそらくレリックを使うつもりでしょう。こっちは命がけなんですから。例のアレ、忘れないでくださいよ?」
クロノ「心配するな、提督の言葉に二言はない!また何かあったら連絡してくれ」
クロノが通信をきるのとほぼ同時にユーノとアルフが部屋に入ってきた。
ユーノ「大変だクロノ、数時間前から全次元総合2ch『
Dちゃんねる』にID:yagamiがスレを立て始めた!」
クロノ「さすがははやてだ。他次元の猛者たちに応援を頼むとはな。スレの数は!」
アルフ「現在全次元合計して約72スレ。消しても消しても立ててくるよ!」
クロノ「こちらも急いでスレを立てるんだ。それから腕に覚えのあるものを数名呼んでくれ!どうしても潰しておかなきゃならない奴がいる!」
みんなが寝静まったはずの牛の刻、アースラの倉庫にひとつの人影が揺らめいていた。
???「・・・ええ、やはりそちらにも裏切り者がいます。その女の名は・・・」
クロノ「そこまでだ、ヴェロッサ!悪いがしばらく拘束させてもらう!」
どこから現れたのか、武装局員数十名をつれたクロノが怪しい影にライトを向けていた。
もっと驚きだったのはスポットライトに照らされたその姿が、本局の査察官であり、クロノ提督の友達であるヴェロッサ・アコースだったことだろう。
ヴェロッサ「ひどい濡れ衣ですねぇ、僕はただ散歩の途中に電話をかけていただけですよ?」
ユーノ 「ではこう言い直そうか。八神特製シンの生着替え写真二十枚セットにつられたヴェロッサ査察官?」
そこまで調べられてはもはや言い逃れできないと思ったのか、以外にもヴェロッサはあっさり諦めて投降した。
ヴェロッサ「やれやれ、すべてお見通しというわけですか・・・。捕虜の扱いは保障してくださいよ」
アルフ 「それはあんた次第だよ」
ヴェロッサ「そうそう、参考までに聞かせていただきたいんですが、いつから僕が裏切り者だと気づいたんですか?」
クロノ 「お前がシンを熱いまなざしで見つめていたときからだ」
ヴェロッサ「ほとんど初めからじゃないですか・・・」
連行されていく元友人の姿を見てクロノは肩をすくめる。
クロノ「これだからガチホモは信用できん」
ユーノ「でも、はやて達もだんだん狡猾になってきてる。油断はできないね」
アルフ「それに戦力も圧倒的に足りないよ。どうするのクロノ!」
クロノ「大丈夫、俺には奥の手がある」
過激派どもめ、今度こそ決着をつけてやる!
エイミィ達のためにも、これ以上俺の給料を下げられてたまるか!
ライズ 「ヴェロッサが捕まったようだな」
なのは 「奴では所詮あの程度なの」
フェイト「そうだね♪あの程度だね♪」
アティ 「重要な情報も知りませんし、ほっておいても問題はないでしょう」
リインⅡ「でも、これでスパイがいることはわかりましたね♪」
朝倉 「意外と近くにいたりしてね?」
水銀燈 「二人ともそこらへんにしときなさぁい」
レミリア「いいから、早く始めましょう。このままじゃつまらないわ」
はやて 「ふふふっ、これだけの面子がそろえば穏健派の殲滅など簡単や!」
これが、後に『第二次シン争奪大戦』と呼ばれる泥沼の戦いの始まりだった。
シン「当事者をほっといて、どんだけ大ごとにしてんだ!あんたらって人達はーーー!!!」
デス子「うわわ! いきなり叫ばないでくださいよ~」
シン「はぁはぁ、ま、また夢か・・・・。」
な、なんだったんだ今のビジョンは・・・・。唯の夢にしては、否定しようがないくらい現実的だったけど・・・。
ま、まさかこれは正夢?い、いや、俺一人がいなくなっただけで、世界崩壊の序曲が流れるはずがない!
そうだ、そう信じ込むんだ!!
デス子「マスター、顔が真っ青を通り越して土気色ですよ?そんなにこわい夢だったんですか?」
シン「デ、デス子、ハルマゲドンの始まりを見たって行ったらお前は信じるか?」
デス子「???」
シン「いや、いい。あの恐怖は見たものにしかわからない。」
忘れよう。今は気にしたらだめだ。
一階から階段を上がってくる音が聞こえた後、唐突に俺の部屋のドアが開いた。
はやて「シン兄、いる~?」
シン 「おう、いるぞ。って、答える前に開けるな」
この時間にはやてが来るなら、用事はいつものあれだろう。
はやて「シン兄、また一緒にお風呂は入らへん?」
この間の一件から、はやてとは本当の兄妹のように笑い合えるようになった。それ自体は嫌じゃないんだが、今回のように時々どうも行き過ぎてる様な気がする。 俺自身はマユとよく一緒に入ってたし、ロリコンでもないからいいんだが・・・。
これって世間的にはかなりまずいんじゃないか? とはいっても、散々心配をかけた俺がいまさら断れるはずもない。
シン「いいぞ。(う~ん、まあしかたないか) 」
これは俺なりの罪滅ぼしでもあるからな。
デス子「コード:運命からコード:烈火へ。ターゲットはそちらへ行きました」
シグナム「こちらコード:烈火、了解した。ポテチは後日改めて送っておく。きたぞ!準備はいいな、ヴィータ!」
ヴィータ「いいわけないだろ! 何であたしなんだよ! 」
シャマル「私達じゃあ、絵的にかなり問題があるんです!ほら、ヴィータちゃんはその、色々ちっちゃいですし・・・。」
ヴィータ「全っ然、納得いかねー!」
リインⅠ「・・・・・(私は別にかまわないんだが)」
シグナム「ヴォルケンリッターの名誉はお前の双肩にかかっているんだぞ、鉄槌の騎士ヴィータ。いいかげん覚悟を決めろ!はやてがどうなって
もいいのか?」
ヴィータ「う、わかったよ、やればいいんだろやれば・・・」
リインⅠ「・・・・・・(主はやてやシンと一緒にお風呂、楽しそうだな)」
以下、ヴォルケンリッター視点でお送りいたします。
シャマル 「暇ですね」
リインⅠ 「・・・・・・(うずうず)」
シグナム 「特にすることもないしな」
リインⅠ 「・・・・・・(うずうずうず)」
ザフィーラ「どうした、リインフォース?」
リインⅠ 「いや、私は主達と入ってみたいなどとは思ってないぞ!」
シグナム・シャマル・ザフィーラ「「「・・・・・・・・」」」
リインⅠ 「・・・あ」
以下、シンの視点でお送りいたします。
シン 「しかし、ヴィータが『あたしも一緒に入る』なんて言い出したときには驚いたぞ」
はやて 「最近かまってやれへんかったから、寂しくなったんかな~♪」
ヴィータ「な、きょ、今日はそんな気分だったんだよ!シンも笑うな!」
ひとしきり皆で笑いあった後、シンは急に悲しそうな顔になった。
シン 「ははは、しかし懐かしいな」
はやて 「えっ?それってもしかして・・・・」
ヴィータ「お前の・・・妹さんのことか?」
シン 「・・・自分でも情けないと思うんだけどな。悪かったな、変な事言って」
はやて 「ううん、ええんよ。シン兄がマユさんのことを引きずってるのは、それだけ大切に思ってるからやもん」
シン 「そう・・・・なのかな」
ヴィータ「ああ、お前は優しすぎる。そんなんじゃ、いつか潰れちまうぞ」
一瞬、レイの顔がシンの頭に浮かんだ。まさか別次元の十年前に来てまで、同じことを言われるなんて思わなかったな。
シン「似たようなことを、親友にも言われたよ。大丈夫だ、昔の俺ならまだしも、今の俺には支えてくれる人がたくさんいるからな。さて、湿っ
ぽい話は終わりだ!お詫びに二人とも背中を流してやるよ!」
ヴィータの目から見ても、その言葉に迷いは内容に見えた。今のシンはちゃんと信念をもって行動している。
彼女には、シンがはやてを傷つける姿など想像できなかった。
ヴィータ「いや、のぼせてきたし、あたしはもう上がるよ(これは、余計なお世話だったかも知れねえな)」
一方、ヴォルケンリッターはシンとはやてがお風呂に入っている隙に、『第38回主はやてのための簡易守護騎士会議』を開催していた。
シグナム「ヴィータ、任務ご苦労だったな。二人の様子はどうだった?」
ヴィータ「とても楽しかっ・・・・い、いや、まあまあだったな」
シグナム「???」
ザフィーラ「意味がわからんぞ」
ヴィータ「う、うるせぇ。つまり、あたしが言いたいのは・・・」
そのときヴィータの頭に、一つの考えが浮かんだ。
シンは問題無しと報告する→自分が一緒に入る理由がなくなる→素直に一緒に入ろうと言い出せない
→シンとはやてはお風呂タイム→ヴィータ=寂しい_| ̄|○
ヴィータ「・・・・シンはその、あ、危ねえな。ロリコンかも知れねぇ。だから、まだまだ監視が必要だ。(ごめん、シン)」
シグナム「な、なんだと!それは本当か!だとすると主はやてが危ない!」
ヴィータ「い、いや、その」
基本的にヴィータの嘘はすぐにばれる。今回もそのはずだったのだが、
はやての事を思うあまりシグナムだけは嘘に気付いていなかった。
シャマル「ヴィータちゃん、それ私の目を見て言える?」
ヴィータ「・・・ごめん、実は・・・。」
さらに、状況を悪化させるように洗面所から悲鳴が聞こえてきた。
シグナム 「これは悲鳴!主、今参ります!」
頭に血が上っていたのか、シグナムはすぐさま洗面所へ飛び出していく。
シャマル 「あ、ちょっと、シグナム。」
ヴィータ 「いけねぇ、止めてこないと・・・」
シャマル 「ほっときなさい。シン君はああみえて頑丈だし、あとで謝っておけば大丈夫よ。それからもうこんな嘘はつかないって、約束して
ね?」
ヴィータ 「・・・うん、わかった。」
ザフィーラ「ん、リインフォースはどこに行った?」
最終更新:2008年07月03日 23:56