双子のバースデイ
亜美「そんなわけで!」
真美「わけでー!」
亜美「今日は亜美たちの
誕生日だよーん!」
シン「……何が「そんなわけで」なのかさっぱりわからないんだが」
初っ端からハイテンションな双子に思わずため息を吐くシンだったが、唐突にビシッ!
と亜美に指を突きつけられた。
亜美「シン兄(c)! 今日のライブ成功させる気あんの? なんか全身からダメダメオーラが出ま
くってるじゃん!」
シン「ダメって……いやそれはいいや。けどなんでそんなこと俺に言うんだよ。そういうのは
プロデューサーに言えばいいだろ? というか、今日ライブあったっけ?」
亜美「あったりまえのコンコンチキよ! なんてったって今日は亜美たちのスーパーバースデイ
ライブの開催日だかんね!」
真美「いつもの100倍はりきって行ってみよ→! あ、真美は『謎のアイドル双海真美』って
ことで出るからそこんとこよろ→」
シン「まてまてまて! スーパーバースデイライブ? 聞いてないぞそんなの! だいたい
真美は出たら駄目だろ!? そして亜美、お前ホントに小学生か?」
真美「んー、そいじゃ『謎のボーカロイド鏡鐘リ(ry』」
シン「さらっと問題を広げようとするなっ!」
真美「特別ゲストに焼肉マンこと串田アキr(ry」
シン「コロ○ビア繋がりだからって自重しろよ少しは!」
ぜぇはぁと息を乱すシンだったが、亜美と真美が俯き加減でチラチラとこちらを窺っている
ことに気付いた。
シン「……なんだよいったい。そういえばプロデューサーはどこだ? なんで事務所に誰も
いないんだ?」
今さらながら周囲の様子に違和感を感じてキョロキョロとシンは辺りを見渡す。しかし突然
泣き始めた二人に驚いて思わず言葉を失った。
シン「な、なんで二人とも泣いてるんだよ?」
亜美「ひっく……だって、シン兄(c)亜美たちとぜんぜん遊んでくれないじゃん!」
シン「遊んでって……」
亜美「いおりんとかやよいっちだって一緒にお仕事してるのにさ」
真美「ぐすっ……そうだよ! 真美たちだってシン兄(c)で遊びたいよー!」
シン「それはお前らと仕事する機会が少ないからで……待て、俺『で』ってなんだ。俺『と』
じゃなくて?」
泣きじゃくる二人の言葉に若干嫌な予感がしたシンだったが、このまま放置するわけにもいか
ずしばしの間考え込む。
シン「……わかったよ、プロデューサーのかわりに面倒見てやる」
やがて観念したように大きく息を吐き、シンは二人の頼み引き受けた。
亜美「ホント!?」
真美「ホントにホント!?」
シン「ああ、俺も誕生日は祝ってもらったしな」
正直なところ振って沸いた話に面食らったシンだったが、やたー! と喜ぶ二人を見て
たまにはこういうのもいいか、と苦笑を漏らした。
真美「ありがとー! これでスーパーバースデイライブはメッチャ楽しめるね亜美!」
亜美「うん! シン兄(c)、じってーーんっ!!」
シン「あーはいはい(なんだじってーんって……?)で、場所はどこにするんだ? ってこれは
プロデューサーに相談しないと……」
亜美「別にここでいいジャン?」
真美「うんうん」
シン「は?」
亜美「よーし! それじゃさっそく始めよっか!」
真美「シン兄(c)も準備はいいよね? それでは~」
二人『カモ→ン! 特設ステージ!!』
え? と唖然とするシンの足元で光りが線となって走り、事務所が真っ二つに割れた。
シン「な、なんだなんだぁ~~~!?」
落下による浮遊感は一瞬。着地時に尻餅をついたものの衝撃があまりにも少ないこと、
さらに周囲が真っ暗で状況を確認できないことでシンは何が起こったのか分からず混乱した。
シン「ここはいったい……?」
どこだ? とシンが呟きかけた瞬間、目の前でスポットライトが点った。
暗闇の中浮かび上がったステージ。そしてその上には……
シン「げぇっ、亜美!? 真美!?」
二人『ジャ→ン! ジャ→ン!』
いつの間にかステージ衣装に着替えた亜美と真美(なぜか二人とも銅鑼を鳴らしていた)が
いた。
シン「え? え!? なにこれ!?」
うろたえるシンを他所に亜美たちは銅鑼をポイと後ろに放り捨て、インカムのスイッチを入れる。
亜美「全国100万人のぉ~!」
真美「兄(c)~! 姉(c)~!」
――ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
シン「っ、うおお!?」
突如背後から上がった歓声にシンが振り返った瞬間、視界を埋め尽くすほどのファンが
放つ気迫に圧倒された。
亜美「とー(c)! かー(c)!」
真美「じー(c)! ばー(c)!」
――ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
徐々に高まっていくボルテージ。シンは観客とステージ上の双子を交互に見比べながら
現状把握に努めようとした。
無理だったけど。
二人『チョモルメラーーーン!!』
――ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
シン「なんだそりゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
謎の言葉で一気に爆発した熱気にシンのツッコミはかき消された。
亜美「今日は亜美たちのスーパーバースデイライブだから、最初から最後までクライマックス
でいってみよ→!」
真美「みんな、準備はおっけ→? それじゃいつものやついってみよ→!」
二人『せーのっ!』
――とかちつくちて! とかちつくちて! とかちつくちて! とかちつくちて!
少年少女が叫ぶ。中年が叫ぶ。主婦が叫び、老人老婆が震えながら絶叫する。
シン「――なにこれ」
ただ一人、シュールさすら覚えるこの狂気じみた熱を異常なものとしか見れないシンは自分に
すら届かないほど小さく言葉を漏らしていた。
亜美「んっふっふ~。ファンみんな、じってーん!」
真美「それじゃさっそく一曲目、『ポジティブ!』いっくよ→!」
――ワァァァァァァァァァァァァァァァ!
シン「ってちょっと待てお前ら! 何平然と二人でやってるんだよ! バレるだろ!?」
亜美「うん、カクジツにバレるね。だから……」
真美「ちゃーんと責任とってね、『一日プロデューサー』のシン兄(c)☆」
シン「お前らはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ってげぶあっ!?」
二人を引きずりおろそうとするシンだったが、ステージを登る前に殺到したファンの波に飲まれ
て消えた。
亜美「つーか教科書忘れたぁ~!」
真美「な~やんでもち~かたない! ま、そんな 時もあるさ あしたはちがうさ!」
シン「…………もう、なんでもいいや」
無数の足に踏みつけられ、シンは亜美と真美の歌声を聞きながら意識を手放し……
そして、浮上した。
シン「――う~ん、て~くにっくヴぇ、とかちつくち……ハッ!?」
ビクリと身体を震わせながらシンは目を覚ました。
あたりを見渡す。場所は事務所、自分はソファーの上に座って毛布がかけられている。
まわりにはパーティーの名残である空の菓子袋やペットボトルなどが散乱し、そこでようやく
シンは亜美と真美の誕生パーティーの途中で寝入ってしまったことを思い出した。
シン「……真っ暗じゃないか、今何時だ?」
呟きながら立ち上がろうとするが、近くで小さく上がった声にシンは慌てて動きを止め両側
に目を向ける。
亜美「くー……むにゃ」
真美「すー……うぅん」
シン「これって……」
シンは亜美と真美に両側から挟まれるように寄りかかられていた。あまつさえ両肩に頭が
乗っているため、動くに動けない状態だった。
自分の周りの状況を確認し終え、シンはようやく今日の流れを思い出した。
今日は亜美と真美の誕生日ということで特別ライブが開催されたのだ。まだEランクなので
当然ながら大きな会場を取ることもできず、しかも都合上ライブは交互に入れ替わりながら行う
しかなかったため、二人が満足できるほど盛り上がることのないままライブは終了した。
落ち込む二人を見かねたシンが「じゃあ、帰ったらパーティーでもやるか」という鶴の一声
――地雷を踏んだとも言う――により、半ばヤケ気味に活気を取り戻した二人に振り回される
こととなったのだ。
――おかげで変な夢まで見たな……
思い返せば凄絶極まりないシュールな夢を思い出し、シンはヒクヒクと唇を振るわせた。
シン「おい、起きろよ二人とも」
声をかけてみるが返事はない。実に心地良さそうな寝息がゼロ距離で耳に届いてきた。
亜美「シン、にいちゃ……」
真美「いっしょに、あそぼー……」
無邪気な寝言にふ、とシンは小さな笑みを漏らす。
夢の中で言われたように、二人とはあまり仕事でも付き合いがあったとは言い難い。
こういう時間をもっと作れればいいのだが……
シン「……ま、今は考えなくてもいいか。おつかれ、亜美、真美」
小さくかけられた言葉を聞いたわけでもないのだろうが、二人の寝顔に笑みが宿った。
亜美「んっふっふ~、シン兄(c)おもしろーい……ワンちゃんのモノマネ?」
真美「半裸でイヌ耳に首輪なんてチャレンジャーすぎだよ~……あ、おまわりさんだ」
シン「とっとと起きろこの悪ガキどもがぁぁぁぁぁぁ!!」
労いと懺悔の意を綺麗サッパリ吹き飛ばされたシンは、がー! と叫びながら勢いよくソファー
から立ち上がった。
――グッド・コミニュケーション?
最終更新:2008年09月22日 02:55