atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
~新人狼OnlineWiki~
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
~新人狼OnlineWiki~
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
~新人狼OnlineWiki~
ページ検索 メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • ~新人狼OnlineWiki~ | 新人狼wiki
  • テルムの建国物語

~新人狼OnlineWiki~

テルムの建国物語

最終更新:2025年05月18日 17:37

sirokumairoiro

- view
メンバー限定 登録/ログイン
――――――――――【第1章】出発―――――――――――――
 かつて、ドサクイ帝国スターティングラード州カリン市に、一人の男がいた。名はロレックス・テルム。
 この男、ただ者ではない。なぜなら今、命がけでこの町を脱出しようとしているのだ。
 この国は独裁体制のもとに支配されていた。いや、この時代、多くの国がそうだった。だが、ドサクイ帝国のそれは群を抜いて苛烈だった。
 税金は重く、民の暮らしは常に貧困の淵にあった。農家の年収は平均で一千万円イベ――日本円にしてわずか百万円程度。その半分、五百万イベが税として徴収される。加えて、物価は異常に高い。食パン一個が一千万イベ(日本円で千円)という有様だ。
 戦争も多く、徴兵制は十五歳から六十歳までという長期にわたって続く。誰もが不満を抱えていたが、国境には帝国兵と「イルガード」と呼ばれる皇帝直属の護衛兵が常駐しており、脱出はほぼ不可能だった。失敗すれば即、帝国反逆罪で死刑である。
 だがテルムには計画があった。向かう先は、帝国の北に位置する「クローニア公国」。
 なぜクローニアなのか?その理由は明白だった。
 第一に、国境の警備が甘い。ドサクイ帝国とクローニア公国との間の国境は長く、全域に兵を割くことは難しい。
 第二に、クローニアは軍事力が低く、他国からの侵略の対象となりにくい。
 そして何より、クローニアは「サウスイベルト連合」および「世界魔法連合」に加盟している。これは戦争抑止のための平和協定であり、加盟国は互いに守り合うという取り決めがある。独裁体制のドサクイは当然この連合からは外されており、クローニアを攻撃すれば、他国との全面戦争を招きかねないのだ。
夜明け前、テルムは静かに町を発った。クローニアとの国境までは約五十キロ。だが、テルムは「スピードダッシュ」と「ヒール」の二つの魔法を習得していた。疲労を回復しながら高速で移動することができるため、長旅も苦ではない。
 途中、彼は一か月間働いて蓄えた金で、パン三個、トマト五個、そしてクッキーを買い込んでいた。それらを頬張りながら、黙々と歩き続けた。
 そして――国境まで残り二キロという地点で、彼は「何か」の気配を感じた。風を裂くような魔法の音。すぐに伏せたが、それが仇となった。
 背後からの一撃が彼を襲ったのだ。
 視界が揺れ、地面に倒れ込む。かろうじて顔を上げると、相手の腕には「イルポリス」の紋章が輝いていた。イルポリス――皇帝直属の秘密警察。
「何をしている?」
 鋭い声が響いた。だが幸運なことに、その男、サンディカーズ・ルサンもまた、この帝国の体制に嫌気がさしていたのだった。
 テルムは、まだ動かせる口をゆっくりと開いた。
「……俺は、この国を出ようとしていた。」
 ルサンは少し目を細めた。だが、その顔に怒りはなかった。
「ふん、脱国者か……。だが、お前、なぜこの国を出ようと?」
 テルムは深く息を吸い、そして真っ直ぐに彼を見上げた。
「俺は……人が怯えず、誰もが平和に暮らせる国を作りたいんだ。老いも若きも、男も女も関係なく……」
 一瞬、沈黙が流れた。だが次の瞬間、ルサンは大声で笑った。
「はっはっはっ!……いや、すまん、笑って悪かったな。ただな……お前のその夢、面白い。俺も似たようなことを考えていたんだよ。協力してやる。お前に賭けてみるのも、悪くない。」
 テルムは驚いた顔をしていたが、すぐに笑みを浮かべた。
「……ありがとう。仲間がいるだけで、心強いよ。」
 それから二人は、走りながら色々と話を交わした。テルムは自分の生まれについて語り、風の魔法を扱えることを伝えた。ルサンもまた、自分の過去や任務の裏側について少しずつ語ってくれた。
 やがて国境の姿が遠くに見えてくる。兵士の数は少ないとはいえ、完全に無防備というわけではない。
「大丈夫だ、ちゃんと策はある」とルサンが言った。
「変装だよ。俺は秘密警察兼スパイだ。こういうときのために、服も数種類用意してある。お前には、それを着てもらう。あとは堂々と、俺の同行者として通ればいい。」
 ルサンの言葉通り、テルムは用意された軍属風の装いに身を包み、国境の検問へと向かった。
「命令が出ている。通してくれ」とルサンが兵士に告げる。
 兵士は一瞬不審な目を向けたが、ルサンのイルポリスの紋章を確認すると無言でうなずき、道を開けた。
 脱出成功――。
 だが、安堵も束の間、二人が「ザッツブルク」という街に向かおうとしたその瞬間、地面が揺れ、何かが落ちるような音と共に、二人の身体が地に叩きつけられた。
「誰だ!?」ルサンが叫ぶ。
 姿を現したのは、帝国兵だった。
「通すわけにはいかねえだろうが、犯罪者がよ……!」
 テルムに鋭く指を突きつける。
「帝国の役職者名簿に、お前の名前なんて載ってなかったぞ!」
 終わった――誰もがそう思ったそのとき、帝国兵の身体が、凍りつく音を立てて固まり始めた。
――――――――【第2章】ザッツブルクの夜―――――――――
「……大丈夫か?」
 低く、よく通る声がした。
 そこに立っていたのは、一人の男。氷の魔法をまとい、悠然と帝国兵を見下ろしていた。
「ありがとうございます……でも、あなたは?」と、テルムが尋ねた。
「俺か? 俺はプロスツジオ・ビザン。ピザンって呼んでくれ。クローニア公国軍の大尉だ。で……お前ら、何してた?」
「脱国してきた」とテルム。
 ビザンの顔に警戒の色が浮かぶ。
「なんのために?」
 テルムは、力強く言い放った。
「平和な国を作るためだ! 誰もが安心して生きられる……そんな国を!」
 その瞳に宿る覚悟を、ビザンは確かに感じ取った。
「……面白え。俺も混ぜてくれよ、その国づくりに。」
「もちろん!」とテルムは即答し、三人は拳を合わせた。
「よろしく」と、三人が声を揃えた。
「よし、じゃあまずはザッツブルクまで行こう。そこから鉄道で首都へ向かうのが一番手っ取り早い。」
「でも、歩くには眠気もあるし……さすがに目立つよな」とルサンが言った。
「安心しろ。俺に任せてくれ」
 そう言うと、ビザンは静かに地面に手をかざし、魔力を放出した。すると、三人の足元に冷たい風が渦巻き、瞬く間に氷の板が形成されていく。それはまるでスケート靴のように、足にぴたりと沿った氷の刃となった。
「これで滑っていく。スピードは出るし、移動も静かだ。慣れりゃ楽だぜ」
 初めはふらついたが、テルムもすぐに感覚を掴み、三人は雪を滑るようにして一路ザッツブルクへと向かった。
 そして数時間後――ザッツブルクの街の明かりが見えてきた。風の冷たさに頬を叩かれながらも、三人は無事に街に到着した。
「腹減ったな。飯にしようぜ」とビザンが言った。
「この街で有名な居酒屋があるんだ。『ポーリス』って店なんだが、ザッツ料理が最高なんだよ」
 ルサンも「酒があるなら賛成」と笑い、三人は街の中心部へと向かった。
 居酒屋ポーリスは、石造りの建物の中に温かな灯りがともり、扉を開けた瞬間、香ばしい香りが鼻をくすぐった。時刻はすでに夜の一時を過ぎていたが、店内にはまだ活気が残っていた。
「人気の店なんだな」とテルムが言うと、ビザンは誇らしげにうなずいた。
「ここは地元の連中にも、旅人にも愛されてるからな。何を頼んでも外れはない」
 ルサンとビザンはさっそく酒を注文し、ぐいぐいと飲み始めた。テルムはというと、店の名物「ザッツスープ」を頼んだ。
 ザッツという野菜は、この地方特有の作物で、酸味があり、熱を通すとパリパリとした独特の食感が生まれる。スープには、そのザッツがたっぷりと入っており、さらに「琉肉」と呼ばれる希少な肉が添えられていた。琉肉は、「稿」と呼ばれる動物の肉で、滝にさらして柔らかくされた逸品だ。
 一口含んだ瞬間、ザッツの酸味と香ばしさが舌を刺激し、琉肉のとろけるような食感が喉を滑った。
「……うまい」
 テルムは思わず声に出していた。
 ルサンはすでに酔い始めていたが、「パンもうまいぞー!」と叫びながらトーストを頬張っていた。ビザンも満足そうにグラスを傾けている。
「いい仲間ができたな……」テルムは心の中でそう呟いた。
 彼らの新たな拠点となる宿へ――三人は、また歩き出した。
 腹を満たした三人は、ザッツブルク駅へと足を運んだ。冬の夜気が石畳を冷やし、駅舎の明かりが薄靄に滲んでいた。構内には蒸気の匂いと鉄の軋む音が漂い、旅情を誘う。
「来たぞ、セントラル号だ!」ビザンが声を上げた。
 その姿を見て、テルムは思わず息を呑んだ。
 黒鉄の車体は流線型に磨かれ、まるで獣のようにホームへ滑り込んでくる。先頭車両には黄金の飾りがあしらわれ、「CROENIA CENTRAL」の文字が誇らしげに刻まれていた。蒸気を吐き、ギリギリと金属を鳴らすその姿は、単なる移動手段というより、文明と力の象徴だった。
「こいつに乗れば、三時間で首都だ。あんたの旅は、もう後戻りできねぇってわけだな」ビザンがニヤリと笑う。
「……いいだろう」テルムもまた、その巨大な車体に目を輝かせた。「行こう。クローニアブルクへ」
 ルサンは感極まったように切符を掲げ、「汽車……汽車だ……これほど機能美と夢を併せ持つ乗り物が他にあるか! ロマンだ! 技術の叡智だ!」と叫び、周囲の乗客に怪訝な目を向けられた。
 車内に乗り込むと、重厚な木製の内装に柔らかな魔法灯が灯っており、ふかふかの座席が並んでいた。静音魔法に包まれた空間は、まるで高級サロンのようだった。
 やがて、汽笛が鳴った。
 ――ポォォォォォ……
 その音は深く、空気を震わせ、テルムの胸の奥に火を点けた。旅の始まりを告げるそれは、まるで過去のすべてを吹き飛ばし、未来への扉を開ける狼煙のようだった。
 列車が動き出す。ガタン、と小さく揺れ、次第に速度を上げていく。夜の街が後ろに流れ、窓の外には黒い森が広がっていく。
「……行くぞ。公国の心臓へ」
 テルムは小さく呟いた。彼の目は真っ直ぐ、闇の先を見据えていた。
 列車は加速し、夜の大地を切り裂くように走る。線路のリズムが心臓の鼓動のように響き、車内の灯りが流れる風景を淡く照らし出す。
 1時間ほど経った頃だった。
 ビザンが身を乗り出し、車窓を指差した。「見ろ、あれがベーリンブルクだ!」
 窓の外に広がるのは、光の海だった。無数の工場の灯、蒸気と魔導の融合で発展した機械都市――ベーリンブルク。銀色のパイプが網のように空を走り、空中に浮かぶ魔力灯が市街地を照らしている。
「すげぇ……」テルムは言葉を失った。
「ベーリンブルクはな、クローニアの心臓って呼ばれてる。産業の中心、全GDPの4割を稼ぐ巨大都市だ。だけど……それだけじゃない」
 ルサンが眼鏡をくいっと上げる。
「ここの鉄道駅は、クローニアで最初に鉄道が走った場所なんだ。あのホームの像が見えるか? あれは“鉄道王”べパス・クロム。クローニア中を鉄の道で繋いだ男だ」
 車内が一時停車のベルでざわめき、乗客がドアに集まる中、テルムたちは席に座ったまま、その煌びやかな都市を眺めていた。どこか別世界に来たような、不思議な感覚だった。
 そして再び汽笛が鳴り、列車が動き出す。
 今度は海沿いを走るルートだ。波が岩を砕き、月が海面を照らす。銀色の光が車窓を撫でるたびに、テルムの心に未来の景色が浮かんでくる。
 ――自由な国。笑う人々。安心して眠れる夜。
「……俺は、絶対に作ってみせる。そんな国を」
 思わず声に出た言葉に、隣のルサンとビザンが頷いた。
「その意志がある限り、世界は変わる。なあ、ビザン」
「おうとも。クローニアブルクは、その第一歩になる場所だ。しっかり見ておけよ」
 そして、30分後。
 ベルが鳴った。首都・クローニアブルクへの到着を告げる音。
 列車がゆっくりと速度を落とし、灯りが次第に鮮明になる。整然と並ぶ建物、広々とした街路、威風堂々と立つ王宮――その全てが、テルムの目に焼き付いた。
「ここが……クローニアの首都……!」
 テルムは拳を握った。夢に見た地が、ついに目の前に広がっている。
「ここからだぞ、俺たちの物語は」
 ビザンもまた、前を見据えた。
 3人は、駅のプラットホームに足を踏み出した。新しい物語が、ここから本格的に始まろうとしていた。
 プラットホームに足を下ろした瞬間、テルムの胸に風が吹き抜けた。クローニアブルク――それは、これまでの人生で触れたことのない空気だった。
 人々は活気にあふれ、道行く者たちの顔には恐れも怯えもなく、代わりに、生活への自信と誇りのようなものが滲んでいる。建物の造りは重厚でありながら華美で、独特の都市景観が眼前に広がっていた。
 ルサンが目を細めて言う。
「イルブルクよりは劣るが……この自由な空気、悪くないな」
「久々の首都だ……この匂い、懐かしいぜ」
 ビザンが深呼吸するように呟いた。
テルムは言葉も出ないまま、ただ都市の中心を見据えていた。
イベルトとクローニアでは通貨の価値が異なる。彼らがまず行ったのは、換金所での両替だった。イベルトの通貨はクローニアのものよりも価値が高く、紙幣を差し出した瞬間、手元の金額がわずかに増えたような錯覚を覚えた。
「得した気分だな」と、テルムが小さくつぶやいた。
だが、それで旅の目的が終わるわけではない。ビザンには、軍を正式に離れるという重要な手続きが残っていた。クローニア公国陸海軍本部へと向かい、退軍届を提出する必要があったのだ。軍人が突然姿を消すことは許されず、それ相応の手順が求められる。
軍本部の建物は重厚で、一般の民間人が中へ入ることは許されていない。テルムとルサンは、入口の前で足を止めるしかなかった。時間をつぶすには、ちょうどよい場所が近くにあった。通りを挟んだ向かいに、小さな食堂「ぽるもん」がある。二人は朝食をとることにした。
メニューに目を通したテルムの目に留まったのは、「朝ごはん定食」。サウスイベルト大陸では珍しい「米」を使った一膳だった。白く光る米の隣には、香ばしく焼かれた鮭の切り身と、ふんわりとした卵焼きが添えられている。値段も手頃だった。
一方、ルサンは「トースト定食」を選んだ。こんがり焼かれたパンに、湯気の立つコーヒー、そして「カジル」と呼ばれる果実が添えられている。カジルはやわらかく、プチプチとした食感にほのかな甘さがあり、この地方ではちょっとした人気の果物だ。
口にした瞬間、テルムは思わず目を細めた。
「この米……粘りがあって甘い。鮭の皮も香ばしくてうまいし、卵焼きの出汁がしっかりしてる……」
ルサンも、トーストをひとかじりして満足そうにうなずいた。
「パンの風味がしっかりしてて、ここのコーヒーも悪くない」
食事を終えるころ、ビザンが本部から姿を現した。すべてが整い、彼の新しい旅路がようやく始まったのだった。
 だが、やがて現実に戻る。――そう、今はまず、休息だ。明日から始まる新たな行動に備え、英気を養う必要がある。
「まずは……一泊、だな」
 テルムが静かに言った。
 「お、だったらオレのおすすめがあるぜ」
 ビザンはそう言って、二人を導いた。
 案内されたのは、街の中心から少し外れた小高い丘の上にある宿だった。名は《星空亭》。街の明かりが遠くに見え、夜空の星々がまるで手に届きそうなほど近い。木造の温かみのある建物で、窓からは優しい光が漏れている。
 受付の老婦人がにこやかに迎えてくれる。「いらっしゃいませ。旅のお疲れ、ここで癒してくださいな」
 中に入れば、暖炉の火がパチパチと音を立て、木の香りと香草の匂いが柔らかく鼻をくすぐる。テルムの疲れた身体が、自然と緩んだ。
「ここ、すごく……落ち着く」
 テルムの声が思わず漏れる。
 「だろ? オレが本部所属の軍時代によく泊まった場所なんだ。ここで一度、覚悟を決めたこともあってな」
 ビザンの目に、少しだけ過去の重みが宿った。
 各自の部屋に荷物を置いた後、三人はロビーの暖炉前の席に集まった。
 「……なあ、テルム」
 ルサンがマグカップを回しながら言った。
 「これからお前は、この国で何をする? 夢を見るだけじゃ、動き出せないぜ」
 テルムは、目を閉じ、そして静かに答えた。
「――仲間を集める。まずは、俺と同じ夢を見てくれる人間を探す。強くなくてもいい。知恵がなくてもいい。けど、諦めてない奴がいい。そういう人と……新しい国をつくりたい」
 ルサンとビザンはしばらく黙っていた。だが、やがて二人とも、言葉ではなく、拳を差し出した。 「……なら、俺たちはその“はじめの三人”ってわけだな」
ルサンが小さく笑った。
「夢を笑われたら、笑い返せばいいさ。――そうだろ、王様」
ビザンが軽く笑う。
拳と拳が、再びぶつかった。
 その夜、テルムは深い眠りについた。だがその夢の中には、血と涙の未来ではなく――
 星空の下で笑う人々、そして、自分がその中心に立っている光景があった。
そして、朝が来た。
朝霧がゆっくりと晴れゆく中、クローニアの街に陽光が差し始めたころ、ビザンが提案した。
「せっかくここまで来たんだ。少し観光でもしていかないか?」
その言葉に、ルサンとテルムは顔を見合わせた後、うなずいた。
ルサンが問いかける。
「で、どこに行くんだ?」
ビザンは目を細め、口元に笑みを浮かべる。
「“ミルクスピア”って島に行こう。離島なんだが、古代遺跡がたくさん残っているらしい。ちょうど軍の退職金も入ったところだしな、こういう機会じゃないと行けないだろ?」
ルサンとテルムは一気に興味を引かれた。
「面白そうだ。そこにしよう!」
ミルクスピア島まではおよそ七時間の航海となる。
彼らが乗るのは“魔動船”と呼ばれる、風の魔法を動力源とした船だった。そしてその船の名もまた——「ミルクスピア」。これは偶然ではない。この航路を行く定期船には、島の名が冠されていたのだ。
船内は豪華で快適だった。柔らかなカーペットが敷かれ、居心地の良いソファが並び、長旅を感じさせない空間が広がっていた。
しかし、テルムにとってそれは地獄のような時間となった。彼は重度の船酔い体質だったのだ。後にこう振り返っている。
「最初は楽勝だと思ったんだ。けど、まさか自分の魂まで吐き出す羽目になるとはな……」
旅の途中、船は“プロス諸島”と呼ばれる島々に寄港した。そこは多種多様な動物たちが生息する、魔法動物の保護区のような場所だった。
彼らはその島で、「稿(こう)」の亜種、「柔(やわ)」に出会う。ぷにぷにとしたその生き物は、触れるだけで癒されるような感触を持ち、見る者すべてを虜にする。攻撃性はなく、非常に穏やかな草食動物だった。
だが、あまりに多くの観光客が触れすぎたのか、「柔」は体を固くして防御反応を示した。まるで「もうやめてくれ」と訴えるかのように。
再び航路に戻ってから約四時間後、ついに目的地・ミルクスピア島がその姿を現した。
その島は想像以上に発展しており、サウスイベルト大陸に属する島々の中でも、サンカルル領サウスイベルト島に次ぐ第二の規模を誇っていた。
上陸してすぐ、彼らの視界に飛び込んできたのは、島の名の由来となった巨大な石像「ミルクスピア」だった。
それは、あまりにも神々しい存在だった。
風に吹かれることも、時に削られることも許さぬような、圧倒的な気配。まるでその場の空気までもが静まり返るかのようだった。
この石像は、「世界魔法平和連合」によって「世界魔法遺産」に認定されている。
しかも、四年に一度、3月9日になると石像は突如として強大な魔力を放出するという。
理由はいまだ不明で、「世界三大不可解現象」のひとつとしても数えられている。
その異変の際には、島の住民すべてが一時的に島を離れるという徹底ぶりだ。
石像を目の当たりにした瞬間、ルサンとテルムは思わず息を呑んだ。
「……こんな、神聖な雰囲気を放つ石像があるのかよ」
2人はそう呟きながら、しばしその巨大な遺産の前に立ち尽くしていた——。
そうして、地元の観光協会「ミルクピアの会」の方が、私たちを内陸部へと案内してくれた。
 道を進むにつれて、海風の匂いは次第に薄れ、代わりに深い森の香りと、遠くから聞こえる水の轟音が耳に届くようになってきた。やがて目の前に現れたのは、高さおよそ二三〇〇メートルから豪快に水が流れ落ちる壮大な滝——「ジュボンスの滝」だった。その名の由来について、案内人が静かに語ってくれた。
 昔々、「ジュボンス」という名の水の魔法使いがいたという。ある日、恐ろしい魔物に追われた彼は、逃げ場を求め、この滝を魔法のはしごのようにして駆け上がったという。その伝説から、この滝は「ジュボンスの滝」と呼ばれるようになったそうだ。
 さらに内陸へと足を進めると、静かな森の奥にひっそりと佇む建物が現れた。「聖海石博物館」だ。そこには「クローニア公国重要保存物」に指定された「聖海石」が展示されていた。聖海石は、古来より神聖な力を宿すとされ、ミルクスピアに残る石像とも深い関係があると言われている。
 神話と歴史が交錯するこの土地には、まだ語り尽くせぬ物語が眠っているようだった。
島の反対側へと足を運ぶと、岩肌にぽっかりと口を開けた洞窟が姿を現した。その名は「ワルポルス洞窟」。かつて凶悪な魔物「ワルポルス」が封印されたという、忌まわしい伝承の残る場所だった。
洞窟の周囲には、封印の力に引き寄せられるように魔物が群れを成しており、内部へ立ち入るには攻撃系の魔法スキルがLv50以上であることが条件とされている。これは、魔法協会によって定められた厳格な規則だ。
ビザンは「アイスフォーク」の魔法をLv50以上で習得していたが、ルさんとテルムはその基準に届いていなかった。そのため、ビザンが単独で洞窟に向かい、会社から支給された記録用魔導具——通称「マドウ(魔道カメラ)」を使って、内部の様子を撮影してくることになった。
洞窟周辺は、危険回避のために半径100メートル以内が封鎖されていた。それでも、ビザンは「アイズーム」という遠隔視の魔法を駆使し、内部の様子を詳細に観察することができたという。
ワルポルス洞窟の調査を終えた一行は、島の中心部を抜けて、ふと開けた場所へと辿り着いた。そこに広がっていたのは、「クローバー畑」と呼ばれる、不思議な光景だった。

草原一面に、世界中のあらゆる種類の草花が、それぞれ一株ずつ、整然と咲き誇っている。四つ葉のクローバーや月草、灼熱の地でしか咲かないとされる紅花に、氷原の花・銀雪草まで——その全てが、まるで誰かが意図して並べたかのように、静かに風に揺れていた。
「……なんで、こんなとこに全部あるんだろうな」
テルムがぼそりと呟いたが、誰にも答えられる者はいなかった。
やがて空が茜色から群青へと変わりはじめ、一行は帰路につくことにした。帰りの船は、行きに乗った「ミルクピア」号ではなく、「クローニアセントラル」という名の船だった。船体の装飾や揺れ具合などはほとんど変わらなかったが——もちろん、テルムの船酔いも健在だった。
「うぅ……まじでこれだけは慣れねぇ……」
と唸りながら甲板に突っ伏していたテルムだったが、ふと顔を上げると、夜空いっぱいに星が広がっていた。
「すげえ……」
ただその一言だけで、彼の心がどれほど動かされたかは、誰の目にも明らかだった。
やがて、船は無事クローニア港へと到着した。時計の針はすでに夜の7時を回っていた。前日泊まった「星空亭」へ向かうことも考えたが、港からは少し距離があるため、その晩は港近くの「港青宿(こうせいじゅく)」に泊まることにした。
その宿は、中世の時代には贅を尽くしたとされる建築で、壁一面には当時は貴重だった「ガラス」がふんだんに使われていた。窓辺に立てば、クローニア港が一望でき、星と港灯が交じり合う幻想的な夜景が広がっていた。
もちろん、その景色に見合うだけの宿泊費も請求されたが、それでも一行はその価値をすぐに理解した。
宿では、豪華な夕食が待っていた。白く艶やかな「米」の上に、港で獲れたあっさりとした魚「まふ」が丁寧にのせられた丼。黄金色に輝く「いくら」が散りばめられた海宝丼。そして、脂の乗った肉「膏(こう)」の炙り。仕上げには、キンキンに冷やされた「氷葡萄」がデザートとして供された。
料理が並んだ瞬間、テルムは目を輝かせ、思わずよだれを拭いながらこう言った。
「……これ、夢だったらどうしような」
笑いながらも、一行はその夜、心から満たされたひとときを過ごしたのだった。
翌朝。まだ朝靄が残る港町に、鳥のさえずりが微かに響いていた。
テルムがようやく目を覚ましたとき、ルサンの声が、ありえないほどの即効性で耳に飛び込んできた。
「んで、これからどうする?」
唐突なその問いに、テルムはまばたきを数度繰り返してから、ため息交じりに起き上がる。
「さすがに、ここでずっと待機してるわけにもいかないだろ?」
テルムは頷いた。
「ああ、だからさ。俺、昨日からずっと考えてたんだ。次はどこへ行くべきかってな」
ルサンとビザンが同時に反応した。
「ほう?」
「聞こうじゃねえか」
テルムは椅子に深く腰を下ろすと、真剣な表情で語りはじめた。
「正直に言うけどさ、俺たちだけじゃ——この戦力だけじゃ国なんて作れっこない。まずは、仲間を増やすことと、俺たち自身がもっと強くなること。それが先決だと思う」
ビザンが腕を組んでうなずいた。
「確かに。その通りだな」
ルサンも、口の端を上げながら言った。
「はっきり言ってくれるじゃねえか。嫌いじゃないぜ、そういうの」
勢いを得たテルムは、テーブルに地図を広げながら続けた。
「んで、俺が考えたルートなのだけど——まずはドワスを経由して、ロードノンに向かうってのはどうだ?」
ビザンが眉を上げる。ルサンも少し驚いた様子だ。
テルムは指を地図上の二国に滑らせながら説明を続けた。
「ドワス王国は、ドワーフの国。鍛冶技術にかけちゃ、世界で三本の指に入るって言われている。武具を整えるにはうってつけだ。そしてロードノン王国。剣士が多くて、軍事国家。南部地域の覇権をドサクイ帝国と争っているだけあって、実力者がゴロゴロいる」
ルサンは勢いよく手を叩いた。
「いいじゃねえか、そのプラン! 乗ったぜ!」
ビザンもニコニコしながら指を立てた。
「ルサンに同意~。じゃ、それで決まりだな。さっそく出発と行こう」
彼はすぐに出発手段を検討し始めた。
「移動手段は、船か鉄道か……船なら7時間で着く。ただ、鉄道は前の“地震”の影響で、この首都から3km離れたベルメルンブルクまでしか通ってなくて、トータル10時間以上かかるからな。普通に考えりゃ船だが……」
そう言ってから、ビザンはちらりとテルムの顔を見た。そして、くすりと笑った。
「……テルムがその顔じゃ、船はやめといた方が良さそうだな」
テルムはギョッとして身を乗り出した。
「な、なんで分かった!?」
その瞬間、ルサンが大笑いしながら肩を叩いた。
「お前な、顔に“頼むから船はやめてくれぇぇぇ”って書いてあんだよ。読めるわ、そんなもん! なあ?まあ俺も船よりかは汽車の方が圧倒的に良いけどな」
テルムは真っ赤になりながら頭をかき、「くそっ……」と小さくつぶやいたが、どこか安心したような笑みを浮かべていた。
こうして、一行の次なる旅路——ドワス、そしてロードノンへ向けた冒険が、また一歩動き出した。
朝の空気はまだ冷たさを残していたが、クローニア駅のホームには旅に出る者特有の静かな熱気が漂っていた。ルサン、ビザン、テルムの三人は、ベルメルンブルクへ向かう汽車を待っていた。

 目的地まではわずか二十分。急行に乗るまでもない距離だ。彼らはあえて各駅停車を選んだが、それが後に“事件”を呼ぶことになるとは、誰も思っていなかった。

 列車がホームに滑り込んでくる。ルサンはその姿を見た瞬間、目を見開いた。
 「……まさか、旧型のK48型か。メンス式、120系……!だな」
 その声は興奮と驚きが入り混じっていた。彼の鉄道知識がスイッチを入れたのだ。
 「急行はKN10型のN100系だったのに、これは完全に別物だ……造りも音も、全然違う」
 彼の“鉄道オタク魂”が完全に目覚めてしまった。
 車内に乗り込むと、彼はきょろきょろと辺りを見回し、すぐに座席に目を留めた。
 「セミクロスシートだ。急行と比べると簡素だけど、これはこれで味がある」
 さらに天井を見上げて、ニヤリと笑う。
 「T-10ベル、ちゃんとある。テーブルも小さいけど、完備されている。実に良い……」
 呆れ顔のビザンとテルムは、ただ黙って彼の語りを受け止める。すでに何度も見てきた光景だ。鉄道に関することになると、ルサンの目は輝き、話は止まらない。
 列車が動き出すと、彼は窓から耳を澄まし、ふと呟いた。
 「……やっぱりM-29モーターだな。時代遅れだが、この音、この振動……記録しなきゃ」
 ルサンはポケットから録音機を取り出した。
 「イルレコード」、ドサクイ製の精密機器。音鉄御用達の名機だ。
 その姿を見たビザンは思わず吹き出しそうになるが、ぐっと堪えた。テルムも同じだった。
 「……好きだなあ、本当に」
 彼らの中で、ルサンの鉄道愛はすっかり風物詩になっていた。
 ルサンが車内の録音に夢中になっているうちに、列車は「ベルメルンブルク」駅に到着した。ホームに降り立つと、そこからは徒歩での移動になる。
 「歩きか……体は疲れないのに、なぜか精神的に削られるんだよな」
 ルサンは肩をすくめて呟いた。
 その横で、テルムが申し訳なさそうに視線を落とす。
 「……俺が船に弱いばっかりに、すまん」
 「まあ、俺たちは王の決定に従うだけですよ」
 ビザンは軽く肩をすくめて答える。
 「じゃ、行こうか」
 テルムの声とともに、三人は再び旅路に足を踏み出した。
 目的地までは、およそ六十キロ。長い道のりだ。
 最初の数キロは、復興の手が比較的行き届いていた。地面は整備され、倒壊した家屋もいくらか修復が進んでいる。しかし、ベルメルンブルクを出て五キロほど過ぎたあたりから、風景が一変した。
 地震の爪痕が、生々しく残っている。
 舗装された道は、裂け目や亀裂でぐちゃぐちゃに割れていた。小さな丘のような山が、真っ二つに裂けている光景も目にした。
 「……危なっ」
 足を踏み外しかけたルサンが叫ぶ。
 「ここの裂け目、デカいな……」
 ビザンは地面を覗き込み、眉をひそめた。
 まるで冗談のように荒れ果てた風景のなか、彼らの会話も自然と無口になっていく。
 しばらく進むと、道が二手に分かれていた。古びた木製の案内板があるにはあったが、地震で折れ、風雨に晒され、完全に判別不能な状態になっていた。
 「どっちだ……」
 誰ともなくつぶやき、一同はなんとなく右の道へ進むことにした。
 だが、運命は三人に味方しなかった。
 しばらく進んだその先に――異様な光景が広がっていた。
 巨大な裂け目。
 それは、地平線の先まで続くかのような深く、長い断裂。およそ二キロにも及ぶ、黒く口を開けた地の裂け目だった。
 「……戻るしかないな」
 ビザンが呟いた。
 だがその瞬間、足元の土が崩れた。
 乾いた音とともに地面が崩落し、彼らは咄嗟に後ずさった。
 「くそ、あの時の地震のせいで地盤が緩んでる……!」
 テルムが歯噛みする。
 「ビザン、氷で橋を作れないか!? 向こう岸まで!」
 「無理だ。距離がありすぎるし、こんな環境じゃ魔力の消耗が早すぎる。持たない」
 追い詰められた。崖の向こうにも、後ろにも道はない。完全に袋小路だ。
 だが、次の瞬間――
 「よお」
 乾いた声が、崖の向こうから響いた。
 三人は目を見開いた。
 その声は、ルサンでも、ビザンでも、テルムでもない。完全に見知らぬ人物のものだった。
 「誰だ……?」
 ルサンが声のする方へ目を凝らす。
 足元の土が崩れ、後退もままならない状況のなか、どこからともなく声が響いた。
 「よう。」
 一同が驚いて振り返ると、裂け目のすぐ傍らに、一人の男が立っていた。風に揺れる外套に覆われた姿は、どこか見覚えがある。
 「……お前……っ、あの時の帝国兵……!? なぜここに!?」テルムが警戒心をあらわに叫ぶ。
 男は口元に皮肉めいた笑みを浮かべ、肩をすくめた。「お前らを取り逃がした責任を問われて、逮捕された。あわや死刑ってとこだったよ。でもな……それが、逆に幸運だったとってる。」

 一同は困惑しながらも黙って耳を傾けていた。
 「もう死と隣り合わせの軍務なんてごめんだ。命令ばかりの世界で生きるより、いっそ自由に生きたいと思った。それに……軍という名の檻より、警察の檻の方がまだマシだ。」
 男は言葉を切り、懐から青白く光る小さな瓶を取り出す。
 「……魔力玉。魔力を増幅し、補充もできる。これがあれば、裂け目を越えるだけの魔法も使えるだろう。ただし――交換条件がある。」
 テルムが目を細めて問う。「……なんだ?」
 男は一歩前に出て、真正面から三人を見据えた。
 「……俺を、お前たちの仲間に入れてほしい。」
 一瞬、空気が凍ったような沈黙が流れた。自分たちを追っていた敵が、今や仲間になりたいと言っている。それも、死刑寸前まで追い詰められた過去を持ちながら。
 ビザンは険しい表情を崩さぬまま、テルムに目配せした。ルサンも目を伏せて思案に沈む。
 しかし、男の目は真っ直ぐだった。利害や打算を超えた、決意の光がそこにはあった。
 やがてテルムが口を開いた。「……名前は?」
 男は静かに答えた。「アーネスト。」
 ルサンが小さく息をつき、ビザンも肩の力を抜く。
 「じゃあ、頼むぜ――アーネスト。」テルムはそう言って、手を差し出した。
アーネストが言った。
「よし了解。ビザンっていうのか? ほら、魔力玉だ」
「お、おう、ありがとう。じゃあ……食べるぞ」
ビザンが魔力玉を口にすると、すぐに体の奥から魔力が溢れ出す感覚が走った。
「これが……魔力玉か。噂には聞いていたが、食べるのは初めてだ。力がみなぎってくるな……!」
アーネストがうなずく。
「じゃあ出してみろ、氷を」
「ほいきた」
ビザンが気合を込めた。
「はぁぁぁぁぁぁ……ふんッ!」
次の瞬間、氷の平らな橋が谷に架かる。しっかりと柵までついていて、安全にも配慮されている。
ルサンとテルムは思わず声を揃えた。
「すごい……」
こうして一行は無事に谷を越えた。そこから先、地形はなだらかになり、やがてドワス国境が見えてきた。
そのときルサンが突然声を上げる。
「しまった! ドワスには入国許可証……つまりパスポートが必要だった!」
だがビザンは落ち着いた様子だった。
「心配するな。クローニア公国軍に手配してもらってある。ロードノンの分も含めてな」
ルサンは慌てて確認する。
「でも、人数分あるのか?」
ビザンは笑って言った。
「スパイがパスポートの用意を怠ると思うか?」
ルサンはバツが悪そうに頭を掻いた。
「あ……完全に忘れてた。悪い……」
アーネストが確認する。
「俺とテルムの分もあるのか?」
「もちろんだ」
テルムは安堵したように息をつく――その直後、腹の虫が「グー」と鳴いた。
「……失礼」
頬を赤らめるテルムに、アーネストが豪快に笑う。
「はっはっは! じゃあ、ドワスに着いたらまず飯だな。たしかドワスは鉄が豊富で、鉄道もしっかりしてる。国境から駅まですぐだろう」
「その通りだ」ルサンが得意げに言った。
そして、早口になりながら語り出す。
「まず、クロムクローニア駅でクロムクローニア線に乗る。で、そのままD-N500型の新型――1200番台急行《ハーベスト号》に接続できるんだ。今期の増備車で、制御装置が最新。走行音も静かになってる。終点は首都パームの《ドワステーション駅》。だいたい所要時間は2時間半。しかもな、新型の食堂車が編成に入ったって情報もある。これは乗るしかないだろ!」
アーネストは苦笑しながらテルムたちに尋ねた。
「……いつもこんな感じか?」
テルムは笑いながら答えた。
「ああ。でも、まあ面白いだろ?」
アーネストも小さく笑う。
「確かにな」
「おい、何笑ってんだ。さっさと行くぞ」
照れ隠しのようにルサンが声をかけ、一行は国境へと向かう。全員分のパスポートを見せ、無事に入国を果たした。
「駅までの経路は、国境の警備兵に聞いておいたから大丈夫だよ」テルムが報告する。
「どうする? ここで飯にするか?」ビザンが尋ねる。
「いや、せっかくだから車内で食べてみたい。どんな食堂車か、ちょっと気になる」
「了解」
それを聞いたルサンは満面の笑みを浮かべた。
「テルム……ようやく分かってくれたか、食堂車の魅力を……!」
アーネストは吹き出した。
「わっはははは!」
そうして、食堂車のある急行列車「ハーベスト号」に乗ることに。換金所でしっかりと換金してからハーベスト号に乗る。ハーベスト号は豪華車両で、食堂車以外にも魅力的なものがあり、まず個室に座れ



続きは頑張って書きます
「テルムの建国物語」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
~新人狼OnlineWiki~
記事メニュー

目次

  • 目次
  • お知らせ
  • 検索
  • おすすめの記事
  • 人狼系
  • 情報系
  • このwikiの詳細
  • その他

トップページに戻る

お知らせ

  • Mr.しろくまがXを開設しました!「https://x.com/Mr4996745121560」←リンクはこちら

  • Mr.しろくまがブログを作りました!!「https://mrsirokuma.blog.fc2.com/」←リンクはこちら

検索

検索 :

おすすめの記事

  • 人狼onlineとは?
  • 人狼onlineの用語
  • コメント広場1.0

人狼系

  • 人狼onlineとは?
  • 人狼onlineの人と世代
  • 人狼onlineの村と村の種類
  • 人狼Onlineの役職
  • 人狼onilineの配役
  • 人狼onlineの用語
  • 人狼onlineの仕様
  • 人狼online村の掟テンプレート
  • 人狼onlineでのマナー
  • 人狼Onlineでの禁止事項
  • 人狼onlineのトリップ
  • 人狼onlineログ保管個
  • 人狼onlineの進行
  • RM(ルームマスター)をやる方に
  • 初心者が上手くなるためにすべきこと

情報系

  • 人狼Onlineに関するサイト
  • 人狼Onlineの噂 ←フリーページ(自由に編集出来るページ)です。
  • 人狼onlineのニュース
  • 人狼onlineの荒らし
  • お知らせ
  • 人狼online民をインタビューする
  • 他wiki紹介
  • 投票室
  • コメント広場1.0
  • 宣伝室(管理人用)
  • 宣伝室 ←フリーページ(自由に編集出来るページ)です。

このwikiの詳細

  • このwikiはどういうもの?
  • 編集者紹介
  • wiki更新の情報
  • wiki情報室

その他

  • コメント欄返信コーナー
  • しろくまの日記
  • しろくまの小説記録所
  • ブログ
  • ネタの種
  • しろくまの人狼メモ
  • らくがきコーナー
記事メニュー2

更新履歴

取得中です。


ここを編集
人気記事ランキング
  1. 人狼onlineのコマンド
  2. 環状線(自己紹介)
  3. 人狼onlineの人
  4. 人狼onlineの人たち
  5. らくがきコーナーにようこそ!!思う存分にらくがきしてね
  6. 人狼Onlineの荒らし一覧
  7. 人狼onlineとは?
  8. 人狼onlineの用語
  9. 最近のプレイヤー
  10. 人狼Onlineの世代
もっと見る
最近更新されたページ
  • 13時間前

    招待を明かさないLunie
  • 13時間前

    常連部
  • 16時間前

    佳奈
  • 16時間前

    硫黄S
  • 1日前

    編集者紹介
  • 1日前

    らくがきコーナーにようこそ!!思う存分にらくがきしてね
  • 2日前

    人狼onlineの人たち
  • 2日前

    環状線(自己紹介)
  • 3日前

    人狼onlineとは?
  • 3日前

    トップページ
もっと見る
人気記事ランキング
  1. 人狼onlineのコマンド
  2. 環状線(自己紹介)
  3. 人狼onlineの人
  4. 人狼onlineの人たち
  5. らくがきコーナーにようこそ!!思う存分にらくがきしてね
  6. 人狼Onlineの荒らし一覧
  7. 人狼onlineとは?
  8. 人狼onlineの用語
  9. 最近のプレイヤー
  10. 人狼Onlineの世代
もっと見る
最近更新されたページ
  • 13時間前

    招待を明かさないLunie
  • 13時間前

    常連部
  • 16時間前

    佳奈
  • 16時間前

    硫黄S
  • 1日前

    編集者紹介
  • 1日前

    らくがきコーナーにようこそ!!思う存分にらくがきしてね
  • 2日前

    人狼onlineの人たち
  • 2日前

    環状線(自己紹介)
  • 3日前

    人狼onlineとは?
  • 3日前

    トップページ
もっと見る
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!

  1. デジタルモンスター まとめ@ ウィキ
  2. 神様コレクション@wiki
  3. ストグラFV まとめ@非公式wiki
  4. MADTOWNGTAまとめwiki
  5. Last Z: Survival Shooter @ ウィキ
  6. ディズニー データベース
  7. 戦国無双4シリーズ  総合攻略 @ Wiki
  8. テイルズオブ用語辞典
  9. SQ用語辞典
  10. GUNDAM WAR Wiki
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  3. MADTOWNGTAまとめwiki
  4. 初音ミク Wiki
  5. ストグラ まとめ @ウィキ
  6. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  7. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  8. 発車メロディーwiki
  9. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  10. 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
もっと見る
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  2. MADTOWNGTAまとめwiki
  3. まどドラ攻略wiki
  4. ちいぽけ攻略
  5. シュガードール情報まとめウィキ
  6. 戦国ダイナスティ攻略Wiki@ウィキ
  7. Last Z: Survival Shooter @ ウィキ
  8. Shoboid RPまとめwiki
  9. ソニックレーシング クロスワールド 攻略@ ウィキ
  10. SurrounDead 攻略 (非公式wiki)
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. 参加者一覧 - MADTOWNGTAまとめwiki
  2. 白狐 - MADTOWNGTAまとめwiki
  3. 参加者一覧 - MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  4. angler - MADTOWNGTAまとめwiki
  5. XVI - MADTOWNGTAまとめwiki
  6. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  7. ソーシャルゲームに関する都市伝説 - アニヲタWiki(仮)
  8. 参加者一覧 - ストグラ まとめ @ウィキ
  9. 鬼レンチャン(レベル順) - 鬼レンチャンWiki
  10. ミャクミャク - アニヲタWiki(仮)
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.