フィギュアスケート男子4回転ジャンプのことを、クワドループルジャンプ(quadruple jump)、一般にクワド(クアドとも)と呼びます。
クワドをクリーンに着氷できるスケーターは、クワドジャンパー。
現クワドキングは、USAのティモシー・ゲーブル。ゲーブルは、助走なしでも軽々クワドを決めるとんでもない人でした。
男子の見所と言えばクワド、というくらいクワドは高難度であり、男子らしいジャンプでもあるわけですが、
氷上は決して柔らかいスポンジではありませんし、足下はグラグラのエッジがついています。
腰や内太股、股関節を痛める選手も非常に多い技です。
ソルトレイク金メダリストのアレクセイ・ヤグディンは、「皇帝」と呼ばれながらも、股関節などの怪我に悩まされ、若くして引退しました。
元々競技人生の短いスポーツですが、それだけ選手には負担がかかるのだということです。
しかし、それでも選手たちはクワドへ挑戦します。
それは彼らがアスリートだからです。
アスリートは技術の向上を目指して挑戦を続けます。
困難だからと言って、先人が達成してきた技から逃げるのは、アスリートとは言えません。
クワドは、彼らがアスリートたる証であるのです。
現在のクワドジャンパーの少なさから、このジャンプが非常に困難で、かつ希少なジャンプだと思っている人は多いかもしれません。
しかし、クワドはほとんどお目にかかれないような希少なジャンプでは決してありませんでした。
トップ選手の多くは跳べるものだったのです。
以下の歴史に示すように、数々の選手が挑戦し、成功させています。
ソルトレイクでは、ショートプログラムで4-3を跳べなければ、フリーでは最終グループに入ることすらできませんでした。
これだけの選手が挑んできたクワドが、今、窮地に立たされています。
かつては決めるとジャッジの印象がぐっと良くなったものですが、現在では点数的にさほど利点がないためです。
クワド、クワドからの連続ジャンプを決めても、3回転以下のジャンプとあまり差がつかないからです。
・旧採点のジャンプの評価は、
4T-3T>>4T-2T>>>4T>>>>>>>>>>3A-3T>>>3A-2T>>>>3A>>>3Lz-3T
・新採点のジャンプの点(基礎点)は、
4T-3T>>3A-3T>4T-2T>3Lz-3T>>4T>3A
更にGOE(出来栄え加点減点)がジャッジによってつけられます。
基礎点の差があまりないので、GOE次第では簡単に低難度ジャンプが高難度ジャンプを上回ります。
もちろん、簡単なジャンプのほうが出来栄えが良くなりやすいのですから、GOE加点も出やすいです。
そのような状況で、一部のトップ選手でさえ、リスクは高いのに大きく点数が稼げるわけでもないクワドを捨てるようになりました。
そしてバンクーバーにおいて、クワドレスの金メダリストが誕生しました。
――リスクを抑えて金メダルがとれるなら、とアスリート魂を無くし、簡単にクワドレスを選んで欲しくない。
そういう思いで、バンクーバーに、エフゲニー・プルシェンコは戻ってきました。
彼の復帰と試合結果は、クワドをめぐる状況を憂慮していた人々の懸念を、世界中の人々に印象付けることになったのです。
多くの名選手が携わったクワドの歴史を、以下、ご紹介致します。
長野五輪後は、ここに記載できないほど多くのクワドが跳ばれていますので、クワド黎明期から長野までです。
以下 「2ch 男子シングル4回転スレより引用」
- 4回転の歴史(Ver 1.4)
※1 単に「成功」「失敗」などとしてるのは全て4回転トゥループ(または不明)
※2 「転倒」「両足着氷」「ステップアウト」「大幅回転不足」「お手付」は失敗
1981~82年
全米 ワーゲンホーファーが挑むも失敗
1982~83年
ワールド ファディーエフが挑むも失敗
1983~84年
五輪 ファディーエフが挑むも失敗
1984~85年
GPNHK杯. サボフチックの練習での成功をNHKのアナが目撃
ワールド サボフチックの練習での成功を初めてカメラが収める
1985~86年
ユーロ サボフチックが公式練習で成功するも本番では両足着氷
ワールド ファディーエフが挑むも失敗
1986~87年
oberstborf Gala. ブラウニングが自身初めて観客の前で挑むも失敗
全米 ボイタノが挑むも失敗
ワールド ブラウニングが公式練習で成功
ワールド ボイタノが公式練習で成功するも本番では転倒
1987~88年
GPスケカナ. ブラウニングが挑むも失敗
五輪 ブラウニングが挑むも転倒
ワールド ブラウニングがオーバーターンながら公式戦世界初成功
ワールド ボイタノが挑むも失敗
1988~89年
カナダ国内 ブラウニングが公式戦2度目の成功
ワールド ブラウニングが挑むも両足着氷
ワールド バルナが公式戦2人目の成功
- 1989~90年
GPスケアメ ブラウニングが挑むも両足着氷
ユーロ バルナが挑むも失敗
ユーロ ボナリー(女子)が2度挑むも失敗(4S,4t)
ワールド バルナが挑むも両足着氷
1990~91年
Goodwill ブラウニングが挑むも両足着氷
ソ連国内. ウルマノフが3人目の成功
全米
チャックが回転不足両足着氷(ワンフット1Aからの4S)
ユーロ ウルマノフが成功
ワールド ストイコが4人目の成功(世界初4t-2t)
ワールド ウルマノフが成功
ワールド ボーマンが挑むも失敗
ワールド ボナリーが挑むも両足着氷
1991~92年
GPラリック. ウルマノフが成功
GPNHK杯. ボナリーが両足着氷
ユーロ ウルマノフが成功
五輪 バルナが挑むも両足着氷(自称成功)
五輪 ウルマノフが挑むも片手付
五輪 ボナリーが挑むも回転不足
ワールド バルナが挑むもオーバーターン
1992~93年
GPNHK杯.
コスチンが成功
ワールド コスチンが成功
ワールド ウルマノフが失敗
1993~94年 .
Piruette. ボナリーが失敗(4S)
GPNHK杯. ウルマノフが失敗
カナダ国内 ストイコが失敗
五輪 張民が五輪初成功
ワールド ストイコが成功(4t-3t最後ステップアウト)
ワールド ウルマノフが失敗
1994~95年
GPNHK杯. ストイコが成功
全米 ワイスが失敗
ワールド ストイコが失敗
その他 ハーディングがTexacoのCMで4loを披露
1995~96年
GPNHK杯. ストイコが失敗
Jr全日本 本田が失敗(4S)
ワールド 郭政新が予選で成功(4t-2t)
ワールド ストイコが成功(4t-2t)
ワールド ボナリーが4S失敗
- 1996~97年
GPスケカナ. ストイコが両足着氷
GPNHK杯. 郭政新が成功
GPファイナル ウルマノフが成功
GPファイナル クーリックが成功
GPファイナル ストイコが成功(世界初4t-3t)
全米 ワイスが失敗
ユーロ ウルマノフが失敗
ユーロ クーリックが失敗
ワールド クーリックが予選で成功
ワールド ウルマノフが予選で成功
ワールド 郭政新が世界初の1プログラムで2度成功(4t-2t,4t)
ワールド コスチンが成功
ワールド ストイコが成功(4t-3t)
1997~98年
オーストラリア国内
リュウが成功
GPロシア杯 ヤグディンが成功
GPラリック. ヤグディンが成功
GPラリック. 郭政新が失敗
GPボフロスト杯... ストイコが成功
GPボフロスト杯... ワイスが失敗
GPスケカナ. ストイコが成功(4t-2t)
GPスケアメ プルシェンコが失敗
GPNHK杯. 本田が失敗
ロシア国内 プルシェンコが両足着氷
Jrワールド. 李成江が予選とFSで成功(両方4t-3t)
GPファイナル ヤグディンが成功
GPファイナル クーリックが両手付
GPファイナル ストイコが失敗
全米 ワイスが両足着氷(4lz)
全米 エルドリッジが失敗
Finlandia Trophy. ヤグディンが両足着氷
Finlandia Trophy. プルシェンコがお手付
ユーロ ヤグディンが成功
ユーロ
プルシェンコが両足着氷(4t-3t)
ユーロ プルシェンコがGALAで両足着氷
ユーロ アブトが両足ステップアウト
五輪 郭政新が2度成功(4t-2t,4t)
五輪 クーリックが成功
五輪 ヤグディンが失敗
五輪 ワイスが失敗(4lz)
JrGPファイナル. ゲーブルが世界初の4S成功(4S-2t)
ワールド 郭政新が成功(4t-2t),2度目の4tは失敗
ワールド プルシェンコが2度失敗
ワールド ヤグディンが失敗
ワールド エルドリッジが失敗
ワールド 本田が予選で成功、FSで失敗
- 世界初クワド一覧
85-86 ユーロ 幻の世界初クワド ヨゼフ・サボフチック
87-88 ワールド 世界初クワド カート・ブラウニング
91-92 ワールド 世界初4-2 エルビス・ストイコ
96-97 GPファイナル 世界初4-3 エルビス・ストイコ
99-00 GPNHK杯. 世界初4-3-2 エフゲニー・プルシェンコ
02-03 GPロシア杯 世界初4-3-3 エフゲニー・プルシェンコ
97-98 JrGPファイナル. 世界初クワドサルコウ. ティモシー・ゲーブル
96-97 ワールド 世界初1プログラムでクワド2回. 郭政新
99-00 ネベルホーン 世界初1プログラムでクワド2種類... イリヤ・クリムキン
99-00 GPスケアメ 世界初1プログラムでクワド3回. ティモシー・ゲーブル
93-94 五輪 五輪初クワド 張民
98-99 四大陸 SP初クワド 張民
90-91 ワールド 旧ギネス公認女性初クワド. スルヤ・ボナリー
02-03 JrGPファイナル. 女性初クワド 安藤美姫
- 4-3-2成功一覧
エフゲニー・プルシェンコ
4t-3t-2lo
99-00 GPNHK杯
99-00 GPF第2FS
00-01 スパカッセン
00-01 GPNHK杯
00-01 ロシア国内
00-01 ユーロ
00-01 GPF第1FS
00-01 GPF第2FS
00-01 ワールド
01-02 Goodwill
01-02 スパカッセン
01-02 GPF第1FS
01-02 ロシア国内
02-03 ワールド
03-04 GPラリック
03-04 GPロシア杯
03-04 ロシア国内
03-04 ユーロ予選
03-04 ユーロ
03-04 ワールド
04-05 GPロシア杯
04-05 ユーロ
05-06 五輪
アレクセイ・ヤグディン
4t-3t-2lo
01-02 五輪
01-02 ワールド
マイケル・ワイス
4t-3t-2lo
01-02 五輪
田村岳斗
4t-3t-2lo
02-03 冬季アジア大会
アレキサンドル・シュービン
4t-3t-2lo
03-04 GPラリック
張民
4t-3t-2t
05-06 GP中国杯
馬暁東
4t-3t-2t
05-06 四大陸
ステファン・ランビエール
4t-3t-2lo
05-06 五輪
ケビン・レイノルズ
4s-3t-2lo
07-08 GPロシア
-
- 4-3-3成功一覧
エフゲニー・プルシェンコ
4t-3t-3lo
02-03 GPロシア杯
02-03 GPF第2FS
02-03 ワールド予選(
ケビン・レイノルズ
4t-3t-3lo
07-08カナダ国内
- 8 :氷上の名無しさん[sage]:2008/05/22(木)
05:32:07 ID:nIha84R30
- 4-3-3成功一覧
エフゲニー・プルシェンコ
4t-3t-3lo
02-03 GPロシア杯
02-03 GPF第2FS
02-03 ワールド予選(
ケビン・レイノルズ
4t-3t-3lo
07-08カナダ国内
- 9 :氷上の名無しさん[sage]:2008/05/22(木)
05:32:38 ID:nIha84R30
- 98年以降の4tと4s以外のクワドの挑戦リスト
99年ユニバ
リー・シァ(中国) 4Lz 一応成功したらしいが詳細不明
?年カナダの地方大会
本田(日本) 4F挑戦 転倒
- 10 :氷上の名無しさん[sage]:2008/05/22(木)
05:42:56 ID:nIha84R30
- ■以上の歴史とリストについての留意点
「跳べてなんぼ」スレ住人による男子フィギュアを愛してやまない歴年のオタ魂の結晶。
・SPにおいては、長野五輪後の1999年から4回転ジャンプが解禁された
(それ以前はSPで4回転ジャンプをすることは許可されていなかった)
・以後、最終グループに入ろうと思ったら「SPで4回転ジャンプを跳ぶのはいうまでもない当たり前」でした
・ロシアとカナダとアメリカと日本の近年の大会に関しては情報が入りやすいため
国内選手権も網羅されてるようだが(というかプルのためにロシア国内がカウントされてるかんじ)
時期・国・選手によっては情報がないもしくは少ないために完璧なリストではないかもしれません。
-
~ここまで引用~
最終更新:2010年03月13日 06:03