新採点には問題が多々あります。
まず一番の問題点として、新採点は複雑すぎる、ということが上げられます。
新採点には様々な決まり事があり、全てを頭にたたき込むことは非常に困難です。
また、ジャッジの出す採点に対し、観客の感覚とはかなりズレが生じています。
それには、以下の問題点があるためと考えられます。
<新採点システムの問題点>
・匿名ジャッジ(国籍・氏名全て非公開。国際試合においてこのようなジャッジシステムはフィギュアスケートのみ)
・操作のしやすい点数ランダムカット(機械により、9名のジャッジの内7名の採点をランダムに選ぶこと。)
・DG(ダウングレード)の二重減点
・高すぎるGOE(出来ばえ点のこと。クリーンに着氷すれば加点、オーバーターン、転倒などで減点)の配点
・難易度を無視したコンビネーションジャンプの足し算
・レベル認定の不明瞭さ(ステップなど)
初心者の方には、これだけを読んでも、なかなかピンとこないかもしれません。
この後の文を読むことで、少しだけその問題点が見えてくると思います。
以下の前提をもとに、二つの構成を比べてみて下さい。
・4回転は非常に体力を使い、3A(3回転半)との間に大きな難易度の差が有ります。
・コンボに3回転以上が2つある(4-3や3-3、4-3-2、3-3-2など)のと1つだけ(3-2、3-2-2)なのでは全く労力が違います。
・3Aは、男子では当たり前とはいえ、結構難易度が高いです。
例1) 4回転は勝てない
・プルシェンコの構成
4T-3T 3A 3A-2T 3Lo 3Lz 3Lz-2T 3S 2A (8個目から後半 基礎点59.33)
・ライサチェクの構成
3Lz-3T 3A 3S 3A-2T 3Lo 3F-2T-2Lo 3Lz 2A (5個目から後半 基礎点58.23)
プルシェンコは4回転があり、ライサチェクはありません。
3Aが2回あるのは2人とも同じです。プルシェンコのプログラムの場合、4回転をこなした上で2回の3Aを行うことになります。
しかし、基礎点の差はわずか1.1。加点減点幅は-3から3と広いので、この点数次第では簡単に逆転できます。
もちろん、下のほうが完璧にこなすのは簡単なので、加点も出るでしょう。
4回転を3回転並みに綺麗に着氷するのは、並大抵のことではありません。
でも3回転並みに軽々と、美しく着氷しなければ、加点は出ないのです。
加点減点の結果、技術点は下のほうが高い点数になる可能性が高いのです。
例2) 4回転からの連続ジャンプは損なだけ
「4T-3T-2Lo」 3A 3A-2T 3Lo 3Lz 3Lz-2T 3S 2A
4T 3A 3A-2T 3Lo 3Lz 3Lz-2T 3S 「2A-3T-2Lo」
この2つのプログラム、ジャンプの構成は全く同じで、
違うのは、「3T-2Lo」を4回転につけるか、2回転につけるかという部分です。
当然4回転のほうが見栄えがしますし、難易度もずっと高いです。
2回転2回、3回転1回の連続ジャンプは、女子でも軽々跳べる構成です。
しかし、ジャンプの点数は単純な足し算なので、普通に足せば基礎点は全く同じになります。
その上、下の構成は上の構成より体力に余裕が出るので、疲労のたまる後半に多くジャンプを入れられます。
すると、後半のジャンプは自動的に1.1倍されるので、下の構成のほうが高い基礎点が出ます。
また、下のほうが完璧に跳ぶのは簡単なので、加点も出やすいでしょう。
しかし、かつては連続ジャンプと言うのは難易度の高いジャンプにつけるものでした。
冒頭の大技に、観客は息をのみ、成功に感嘆したものです。
女子でもないのに、2A-3-2を見せられて、あなたは「すごい」「格好いい」と思えますか?
4-3-2と2A-3-2、あなたはどちらを見たいですか?
例3)3A1つでもプルシェンコに迫れます。3Aなくても加点、PCS次第で逆転可能です。
xは後半のジャンプを示します。1.1倍の点数になります。
3A 3Lo 3S 3Lz+3Tx 2A+3T+2Lox 3Lzx 3Fx 2A+2A+SEQx
計57.41
3Lo 3S 2A 3Lz+3Tx 3F+2T+2Lox 3Lzx 2A+2A+SEQx 3Fx
計51.94
3Aすらなくてもプルシェンコと
基礎点は10点も変わりません。3A1つで十分プルシェンコと戦えます。