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*「冥土の土産」



テンテンツクツンテンツクツン ジャーン

「…こら社長!!起きんかい!!」
「…い、痛い!?…あ、あんた誰だ!! こんな時間に一体…」
「うちは鬼寒梅の精や。ちょっと話があって来た。」
「そんな馬鹿な…って!? う、浮いてる!?」
「当たり前やアホ!! 商売の恩人の言うこと疑うんか!!」
「い…痛い!! し、信じます、信じましたから、頭突きはもう勘弁して下さい!!」
「…判ったらええねん。さて、大事な話や。あんた今日、『銘菓 鬼寒梅』の売り込みに都会のデパート行ったやろ?」
「は、はい…過疎の村唯一の観光スポットだった鬼寒梅さまが枯れておしまいになってから、饅頭もみやげ物も売り上げがガタ落ちでして…」
「アホ!! この村でしか買われへんから、あの饅頭は値打ちがあるんや!! どこでも買えたら、ますます村から観光客が離れて行くやろ!?」
「で、ですが、工場の存続も危うい現状なのです…」
「アホアホアホ!!そうやって只でさえ少ない村の働き口潰すんか!? 代々世話になった村を捨てるんか!?」
「あ…頭が…割れます…血が出てきました…」
「うちもおでこ痛いわっ!! とにかく街のデパートへ『名菓 鬼寒梅』卸す話は御破算や!!」
「し、しかしこのままでは首をくくるしか…」
「し、しかしこのままでは首をくくるしか…」
「…ええか社長、頭は生きてるうちに使わなあかん。そやからうちが村のために、こっそりあの世から里帰りして来たったんや。」
「…で、頭突き百連発ですか…」
「やかましい。ま…嫁に行ったうちの責任もある。ほんまは、もう半年くらい頑張れた。でもな、やっぱり結婚にはタイミングちゅうもんがあってな…」
「…そうでしたか…お亡くなりじゃなかったんですね。安心致しました。」
「…あんた意外とええ奴やな。まあええ、過疎や過疎やと愚痴ってても一銭にもならへん。うちが一発逆転のアイデアを授けたる。」
「と、おっしゃいますと?」
「…今の『銘菓 鬼寒梅』の包装紙、戦時中のカルタみたいな格好悪い図案やろ?」
「はい、先々代の頃からデザインは変えてません。」
「『…古えのロマン溢るる銘菓鬼寒梅を是非皆様で御賞味下さい…』コピーもダサい。」
「確かに…」
「…そこで『萌えキャラ』『萌えコピ』の出番という訳や!!」
「…萌えキャラ、ですか?」
「そうや。まずイラストの上手い人にやな、うちの可愛いイラストを描いてもらうんや。アニメっぽいタッチでな。ほんでそのイラストを…」
「あのう…」
「…なんや!?」
「…なんで『イラスト』っていうとこだけ、声がやたら甲高くなるんですか?」
「…気のせいや。とにかくそのイラストを包装紙に印刷して売る。来月『鬼寒梅を偲ぶ』ちゅうてテレビの取材来るやろ? そのときが新デザインお披露目のチャンスや!!」
「…上手くいきますかね…」
「アホウ!! 上手くいかすんや!! 先代のハゲ親父は偉かった。火事で工場丸焼けになっても、歯ぁ食いしばって今の新工場立てたんや。ええ機械と職人も揃えた。」
「ああ…あのとき私、小学生でした。親父は鬼寒梅さまの与えた罰や、言うて泣いてましたが…」
「…あのハゲ、解ってたんか。勝手に砂糖と小豆を安物に替えよったさかいに、ちょっと懲らしめたったんや。あはは。」
「…あのときの借金、私がまだ払ってます…」
「と、とにかく梅の木も商売も、いっぺん焼けてからが勝負ちゅうことや!! それより、うちの言うたこと判ったな?『萌え』や!!『イラスト』や!!」
「は、はい。なんか少し、希望が湧いてきました。」
「よっしゃ!!また様子見に来たるさかい、アドバイス料ちゅうことで店舗にある銘菓鬼寒梅、冥土の土産に全部持っていくで!!」

テンテンツクツンテンツクツン ジャーン

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