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* 投下作品まとめスレ2-3〔2-193~291〕

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193 :創る名無しに見る名無し:2010/01/28(木) 20:55:06 ID:aA+LavB6 
【天国】 
「やあ、天国へようこそ」 
子供はそう言ってN氏を部屋に迎え入れた。 
その後ろには父親が座っていた。 
「びっくりしたでしょ、天国が本当にあるなんて。 
ぼくも最初は驚いた。 
だけどすぐに慣れちゃったんだ。 
だって死ぬ前の世界と何にも変わらないんだもの。 
じゃあ、おもてなしの果物を採りに行ってくるよ。 
とってもおいしいんだ」 
子供はそう言って外へ出て行った。 
すると父親がN氏のほうを向いて申し訳なさそうな顔をした。 
「すみませんね、さぞ驚かれたことでしょう。 
うちの子はここが天国だと思い込んでいるんですよ。 
それであまりに信じ込んでしまっているものですから、ここは天国なんかじゃない、とはなかなか言いづらくてですね、今まで言えずにいるんですよ。 
本当のことを教えてあげたほうがいいとは思っているのですが」 
子供はすぐに戻ってきた。 
「ほら、天国(ここ)にしかないフルーツ。 
りんごにすごく似てるけどこれはもっと甘いんだ」 
子供はそのりんごに似た果実をかじりながら、手に持ったひとつをN氏に渡した。 
同じようにかじってみるとやはりりんごの味であったが、確かにきわめて甘いようだった。 
父親は言った。 
「おいしいでしょう、“こっち”のものは。 
私も大好きなんですよ。 
あ、ちょっとすみません」 
父親は携帯電話を手に外へ出ていった。 
父親の影が見えなくなったのを確認すると、子供はN氏に再び話を始めた。 
「ふう。びっくりしたでしょ、天国だなんて言われて。 
そんなわけないもんね。 
ここが天国なわけないもん。 
お父さん、昔病気にかかって以来自分が天国にいるって思い込んでるみたいなんだ。 
“こっち”がどうとかいっちゃってさ。 
ぼくも話を合わせてここが天国のふりしてるんだけど、いつまでもそうはいかないだろうね」 
その後父親が戻るとN氏は用があると言ってこの家を出た。 
父親は、子供がここを天国だと思い込んでいると言う。 
子供は、父親がここを天国だと思い込んでいると言う。 
しかし、実際は二人とも天国だとは思っておらず、お互い相手に調子を合わせた結果、こうなっているのだ。 
N氏は、事務所に戻ると電話をかけた。 
「もしもし、奥様ですね。 
天国精神科のものです。 
先程お宅に上がらせて頂いて少しお話ししましたところ、やはり旦那様もお子様もここが本当に天国であるということがわかっていないようです。 
よくある症状ですので対処はすぐにできますよ。 
自分が死んだということを気づかせるお薬がございますので、明日にでも病院へ取りにいらしてください」 

204 :創る名無しに見る名無し:2010/01/31(日) 17:52:35 ID:ntg/Aso9 
「かみ」 

 N氏が仕事を終えようやく寝ようと一人の男がドアの近くに立っていた。 
「だ、誰だお前は!」 
 Nが問いかけると男はゆっくりと話し始めた。 
「私は神です」 
「何故、神がここに… そうか、願いを叶えに来たのか?」 
「いえ、そうではなく・・・」 
「では何だ? 何故私のところに来たんだ?」 
「ちょっと警告を…」 
「警告だと?!」 
「ええ、あなたはこのままだと亡くなりますよ」 
「亡くなるだと!ふざけるな!」 
 突然の死の宣告にN氏は激高し目の前の神を叩き始めた。 
 あまりの事に驚いた神はあっという間に消えてしまった。 
「まったく、私が死ぬとはとんでもない神だ!」 
 N氏は愚痴を溢しながら布団に入った。 

 翌朝、N氏は神が言った事が本当だった事を自覚した 
 鏡には肌色の頭がが写っており、布団には大量の髪の毛が死体のように転がっていた。 

217 :創る名無しに見る名無し ◆dJgJeKTnmE :2010/02/02(火) 23:08:58 ID:MxvbnB93 
 【歌声】 

「私達はレインボー星からやってきました。地球の皆さん仲良くしましょう」 

ある日、非常にかわいらしい宇宙人がやってきた。 
科学や文明は地球とは比べ物にならないほど発達しているらしく、奥歯に埋め込まれた万能翻訳機を使って色んな星の生物と交流を深めているのだそうだ。 

「この星の主導権を握っている、最も優れた生物の形に似せています。どこかおかしいでしょうか?」 

どんな姿にも変形できる彼女達は地球を支配している生物、すなわち人間の、それも運動性や外見、 
相手への印象も考慮した上で最も有効だと思われた"年頃の女の子"に姿を似せているらしい。人間の好みを調査しルックスも上々だ。 

「確かに私達の星の方が文明は進んでいますが、『歌』というものをこの星で初めて知りました」 

とても楽しいものなんですね、と微笑みながら彼女達は精力的に『歌』を集めて回った。 
地球で初めて知った『歌』がいたく気に入ったようで、地球に来てからというもの彼女達の間では 
歌がひっきりなしに歌われ、また歓迎してくれた人間達と宴を開き夜通し歌や踊りを楽しんだ。 

「どうなされたんですか? どうやら体調を崩されているようですが……」 

おりしもインフルエンザの季節。多くの人が同じような症状で苦しんでいる様子が彼女達には奇妙に映ったらしい。 
どこの誰かは知らないが、彼女達に詳しくインフルエンザのことを説明したようで、それを聞くや否や 
世界中に散らばっていた彼女達はやってきた宇宙船に集結し、何やら話し合いを始めたようだった。 

「どうやらこの星で最も優れていたのは、人間ではなかったようですね」 

生物に宿り、時に殺し、毎年その姿を変え、特効薬に対抗し、世界中に広がっているインフルエンザウイルスをこの星の支配者と断定したらしい。 
宇宙船から降りてきた彼女達は次の瞬間、その体を風化させたかのように外側から砂よりも細かく崩していくと、風に乗ってどこかへ飛ばされていってしまった。 
その年、世界中で新種のインフルエンザが大流行し人類は恐怖に怯えた。 
有効なワクチンなどもちろんなかったのだが、ある研究機関が感染に関してある奇妙な研究結果を報告した。 
それは"歌を歌う者に感染する"というものだった。大声はもちろんのこと、どんなに小さな鼻歌を歌った者にも。 
報告を瞬く間に世界中に広がり、地球から歌声が絶滅したのだった。 

218 :創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 20:18:35 ID:Dr2HoKBz 
みんなの飛行機 

「おとうさん。飛行機は何の力でとんでいるの」 
「そうだねぇ。エンジンの推進力とと翼の揚力でとんでいるんだよ。でもみん 
なの力がないと飛ばないんだよ」 
「ほら見てごらん。」 
 飛行機はハイジャックされ、進路方向を余儀なくされていた。 

「おとうさん鶴は何の力で飛んでいるの?」 
「そうだね、翼の揚力と推進力で飛んでいるんだよ。でもみんなの力がないと 
もう飛ばなくなるかもしれないんだよ」 
ほら見てごらん。 
航空会社の社員達が入れ替わり、進路方向を余儀なくされていた。 

219 :創る名無しに見る名無し:2010/02/04(木) 00:20:10 ID:wT8kxZx5 
【宇宙人】 

ある日、宇宙人が侵略してきた。 
早速防衛チームが出動したが、歯が立たない。 
すると例によって巨大ヒーローが現れて、何とか宇宙人を倒した。 
巨大ヒーローが宇宙人に「何のために侵略しにきたのだ?」と聞いた。 
宇宙人が「我々の星は環境破壊が進み、住めなくなったのだ」と答えた。 
「何という星だ?」 
「地球…」 

226 : ◆91wbDksrrE :2010/02/04(木) 21:51:21 ID:33nhp3d4 
 ある日、宇宙人が侵略してました。そして巨人によって撃退されました。 
 巨人が聞けば、その宇宙人は地球からやってきたと言いました。環境破壊 
が酷くなり、住めなくなったので、代わりに住む星を探しているのだと。 
 巨人はその言葉を聞いて驚きました。 
「地球が環境破壊? 何の冗談だ?」 
「え? でも、温暖化で気温は上がり、植物は死滅し、もう住める星ではなくなって……」 
「何を言っている。地球は緑溢れる楽園だろう」 
 今度は宇宙人が驚く番でした。 
「まさか、そんなはずは……」 
 巨人は私について来いと言いました。宇宙人達を、実際に地球へと連れて行って 
くれると言うのです。 
 宇宙人は、巨人の力で一瞬の内に太陽系までワープしました。 
 するとどうでしょう。そこには、かつての宇宙人達が失った、緑溢れる地球が、 
確かに在ったのです。 
「どうして……すっかり元に戻っている!」 
 宇宙人は、巨人に感謝しました。もうこれで他所の星を奪う必要も、長く辛い旅を 
する必要も、なくなったのだと、そう言って泣きました。 
「うむ、良かった良かった」 
 巨人は去って行きました。宇宙人は地球に降り立ち、再び故郷で生活を始めました。 
 文明は完全に失われていましたが、いまや地球人に戻った宇宙人達は、それを苦に 
する事なく、地球に文明を造り直しました。 
 そして、それから、長い時が経ち―――――― 


                                             終わり 
230 :創る名無しに見る名無し:2010/02/05(金) 12:58:03 ID:6tFAxfoS 
穴 
「おーーい」 
「・・・・」 

「・・・・」 
「おーーい」 

「???」 

「時差かな?こだまかな?」 

「し~~~~~~ん」 

後ろから「ちょん!」 

「あわわわわわ~~~~」 

「落ちてくるぅあわわわわ~~~~」 

232 :創る名無しに見る名無し:2010/02/05(金) 19:00:21 ID:Vjw3+yaZ 
『数えかた』 

小さな工場の勤務員たちが一仕事を終え、帰り際 
ミーティング室へ行くと連絡版に数字が書いてあった。 

0,2 0,165 0,150 以降は0,1 

板の真ん中にわざわざ目立つように書いてある。 
これは、と思ったその勤務員たちは揃って工場長に聞きに行くことにした。 
彼らがこつん、こつんと工場長室のドアをノックすると、内側に向かってドアが開かれた。 
 「工場長」 「工場長」 「工場長」 「工場長」 「工場長」 「工場長」 「工場長」 
七人の声が同時に挨拶をした。呼んでいるだけにも聞こえるが、これでも挨拶なのだ。 
やあ、と挨拶を返す工場長。彼は七人の来訪の目的をわかっている。 
「連絡版の給料割合のことだろう?一番働いたものには0,2倍の給与を支払い、その次に働いたものには0,165倍の給与を支払う」 
だがそんなことの説明は聞かなくて良かった。彼らは連絡版を見た時点で意味がわかっていた。 
わかっていたから工場長に不満を伝え、ストライキ宣言を言い渡しに来たのだった。 
 「ストライキをする!」 「ストライキをする!」 「ストライキをする!」 「ストライキをする!」 「ストライキをする!」 「ストライキをする!」 
またも彼らは同時にしゃべった。 
しかし工場長からすればまさかのストライキ宣言だったので衝撃は十分だった。 
うろたえた表情のまま工場長は言う。 
「まさかお前達が給与の賃上げを求めてストライキまでするとはな・・・ 
 一週間ほど考えさせてくれ」 
 「ではストライキする」 「ではストライキする」 「ではストライキする」 「ではストライキする」 「ではストライキする」 「ではストライキする」 「ではストライキする」 
その翌日から一週間、いつもその工場で働く作業用ロボット七台が急に動かなくなった。 

233 :創る名無しに見る名無し:2010/02/05(金) 21:15:43 ID:6tFAxfoS 
 遠い遠い昔、晴天の霹靂か、隕石が落ちてきたのを合図にUFOまで降りてきた。 
考えてみればあの隕石は、まさに戦いの合図であった。 
 地球人に似た宇宙人は乱暴狼藉を繰り返し、地球人のなかに姿が殆ど同じからして 
われは、宇宙人だと名乗り、宇宙人に乗じるものもたくさん出てきた。 
 地球人も宇宙人もわからなくなった地球人はもしくは宇宙人は、休戦協定を 
結ばざる終えなくなった。休戦協定は長引き、やがて混血が進んで本当の異星人 
がお互いわからなくなってしまった。異星人よりも異性人。 

235 :創る名無しに見る名無し:2010/02/06(土) 14:40:58 ID:QbNzQ4mC 
地球環境税 

地球は平和だ。今朝は風もなくいい天気。隣の子供達の吹く、シャボン玉が一つ一 
つ大きい。そんなシャボン玉が、新聞を取りに出たF氏の近くを横切ったが、 
何か様子がおかしい。寝ぼけ眼のF氏は目をこすった。 
 大きなシャボン玉に写るのはテレビでよく見る宇宙人の顔。それが無遠慮にもずんずん 
近づいてきたかと思うとパチンと割れたやいなや、やはり宇宙人が現れた。 
「こんにちは宇宙人です」「いや、それはわかるのだが、どうしてこんなとこ 
ろへ」「あなたにお見せしたいものがございます」 

ふわ~~んと体が舞い上がった。「これが地球です」 
見てみると眼下にシャボン玉のような地球がふわりと浮いている。 
「あなたにこれを割っていただきたいのです」 
「でもなぜわたしが・・・」 
「宇宙の中では地球の歴史などシャボン玉のようなものですからお気になさらず」 
「でもなぜこのわたしが・・・」 
「ソウソウシテミンナセキニンヲカイヒシテホットケバドウナリマスカ」 
「コノハカナイチキュウヲウツクシイトオオモイニナリマセンカ?」 
「で、でもなぜこの私が・・・」 
「ミンナソウイイマス」 
そういい残して、宇宙人は去っていった。 

「地球環境税の徴収に参りました」 
しばらくすると、無機質な仮面を被った男の役人の声が響いた。 
「ハイハイ、ちょっとお待ちよ」 

新聞の一面には宇宙ゴミの問題が踊っていた。F氏はなにやらはっとしたが 
口をつぐんだ。 

237 :創る名無しに見る名無し:2010/02/08(月) 10:31:18 ID:NmoDlpeZ 
『大人へのクリスマスプレゼント』 

ある年のこと、サンタがこんな発表をした。 

「今年のクリスマスは子供だけが主役ではありません、大人にもプレゼントを配ろうと思います」 

なんでもサンタは欲しがる物がわかるのでプレゼントをイメージしておくようにとのことだった。 
それを聞いた大人たちは喜び、クリスマスまで各々が欲しい物品を考え続けた。 
宝石を欲しがった者、家を建てようとする者、中には物といわれたのに地位などを 
欲しがる者まで多種多様な願いがあった。 
それらの願いを聞いたサンタは考え、疑問系でもう一言発表した。 
「どうしてあなたがたはそうお金のかかる物ばかり欲しがるのですか」 

238 :aholizum:2010/02/08(月) 23:06:46 ID:cYsFw5PS 
まねき猫 

 失業中のk氏が歩いていると、一匹の猫に出会った。 
「おまえはいいなあ。まーるくなって眠ってるだけでいいんだから」 
猫はなんだか不機嫌そうで、なにかものいいたげだったがk氏はねこだから 
と気にせず歩を進めた。すると、後ろから声がかかった。 
「にゃあ。俺が何をしているか知ってる?」 
「なにをしてるというんだい。ねこちゃん」 
「つけもの樽の上で、漬物石のかわりをしていているんだよ」 
  
 k氏は突然猫がしゃべりだしてびっくりしたが、それより天職の意味が 
少しわかった気がして感慨にふけった。 
「仕事はゆっくり探せばいい。」 
 k氏は少し軽くなった歩を進ませた。 

240 :創る名無しに見る名無し:2010/02/09(火) 13:29:55 ID:03CHoRBV 
既視感 

「あぁ何か真新しい出来事は無いものだろうか」 
エム氏はいつもの散歩道を歩きながら、だらしなく伸びた髭をなでながらつぶやいた。 
昔は周りに期待され輝かしい青春を送ったような気もするし、そうでも無い気もする。 
何か刺激的な事は無いだろうかと、漠然と考えて随分経ったような、スッキリしないどんよりとした気分だった。 

すると前から生物とも鉱物とも分からない、物体がゆっくりとエム氏に近付いてきた。 
「おや、これまた変わった事もあるもんだ。新しい宣伝手法か?または宇宙人であろうか?」 
エム氏は真新しい出来事に少しときめきを感じながらも、この物体には触ってはいけない、そう感じてとっさに近付いてくるその物体を飛び越えた。 
「むむ、こいつには触らない方がいい気がするな、それに私は以前この物体を見た事があるような。」 
エム氏はこの得体のしれない物体を知っているというより、今この体験を以前既にしている気がしてならなかった。 
「ふむ、これはデジャヴという奴だな」 
「確かこの後は…あぁ、あったあの箱だ」 
エム氏の感じた通りその先には小さな箱があり、開けると中には腹一杯贅沢な食事が出来る程度の金貨が入っている。 
「やはり以前体験している気がするな。はてこの後はどうなるのだったか?この金をとった事で因縁をつけられるのだったか?思い出せないが嫌な予感がするな。」 
エム氏は素早くその場を離れてしまおうと走り出した。 
「あっ」 
その時エム氏はその先を思い出したが、もう遅かった。エム氏の前には突然無限に続くかの様な穴が広がり、 
エム氏はその穴へ吸い込まれて行った・・・ 

「あーぁ、また死んじゃった」 
少年は父親の古いゲーム装置をまだ上手く使いこなせないが、楽しくて仕方が無い。 
この白と赤の装置が今の少年の全てだ。 
「ゲームばかりしてないで早く寝なさい」 

母親に促される少年の心はウキウキし、スッキリと晴れ渡っていた。 

251 : ◆9NwURknCIc :2010/02/11(木) 15:11:17 ID:aRZ94mV2 
 『リコール』 

 とある整備工場は大忙しであった。 
 突然のリコールの決定により、次から次にリコールの対象機種がやってくる。リコールとはいっても、コンピュータのプログラミングを書き換えるだけなのだけれども、その数は相当なものだった。 

「しかし、メーカーは何でこんな簡単なプログラミングのミスをしたんでしょうね」 

「さすがにユーザーがこんな使い方をするとは思ってもみなかったろだうからな」 

「ロボットに性別をつけなきゃならないなんて……」 
252 :創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 03:24:49 ID:g1JxLaeA 
『殺虫剤』 

「博士!ついにやりましたね!」 
某製薬会社の研究室では助手が大喜びをしていた。 
「うむ、長年の研究が功を奏した」 
「これで、我が社の殺虫剤が日本・・いや、世界一のシェアを獲得できるんですね」 
「そりゃそうだ。なにせ、他社の製品に比べてはるかに効き目が違うわい!」 
自信満々に博士は云った。 

しかし、確かに効果は絶大な製品ではあったが、ほとんど売れなかったのである。 
なぜなら効果が強すぎて、1度使用するだけで、その地域の害虫は全滅してしまったのだ。 

1年後 同研究室にて。 
「博士、大変な事になりました。我が社の製品のせいで世界中の害虫がいなくなり、生態系に大きな影響が出ている様子です」 
「わかっておるが・・困ったな、このままでは動物だけでなく、人間までもエサが取れなくなってしまう」 
「なんとかこの状況を打開する策は無いのですか?」 
「わかったわかった。わしがなんとかする」 
そう言って博士は虫カゴを持って裏山へと消えていった。 
「お願いだから繁殖してくれよ!」 
そういって実験用で保管してあった害虫のツガイを森へと放した。 

256 :創る名無しに見る名無し:2010/02/13(土) 21:55:42 ID:gsfmvH1F 
「隣り」 

 S氏の隣には必ず誰かがいた。 
 レストランの時も必ず相席になり、トイレに入れば必ず両隣は埋った。 
 例え他の席が空いていてもS氏の隣に誰かが来るのだ。 
 そんなある日、S氏の隣が空いていた。 
 レストランでもトイレでも最近は空いていた。 
 この事を不思議に思いS氏は同僚や家族を隣に座らせようとするが誰もS氏の隣に座りたがらない。 
 そしてS氏の隣が空いて三日後、残業をしていたS氏は終電で家に帰ることにした。 
 S氏が座席に座ると一人の酔っ払いが現れ、S氏の隣に座りそのまま眠ってしまった。 
 そして翌朝、S氏がニュースを見ているとあの酔っ払いが死んでいる事を知らされた。 
「なるほど、私の隣りにいたのは死神だったのか。道理で誰も座りたがらないわけだ」 

257 :どっかのななし:2010/02/14(日) 21:18:16 ID:zJpclHar 
例の薬 (中学校時代に書いたもの。現在高校生) 

 町はあるうわさでもちきりだった。いや、この町だけではなく世界中があるうわさ一色になっていた。 
 それは、しばらく前に、ある博士がテレビでこんなことを言ったのが始まりだった。 
「私は今、ある薬を研究しています。この薬が完成すれば、たくさんの人が苦しみから解放されるでしょう」 
 それはすぐにラジオ、新聞などでも取り上げられた。 
 博士は、薬についてはなにも言わなかったので、人々はその薬を、例の薬と呼んだ。 
 ある人は、 
「あらゆる病気を治すことのできる薬かも」 
 と言い、すこしひねくれた人は、 
「助からない病人を苦しまずに安楽死させられる薬では」 
 と言った。 
 このような議論はどこでも起こったが、それぞれが自分の説を主張し、結局わけの分からないまま終わる。 
 まあ、なんにしても分かるわけはないのだが。 
 ある人は博士の過去を調べたりもした。博士の体験したことから、例の薬について知ろうというのだった。しかし、新しい研究は、その人の過去とは関係ないため、これまた分からなかった。 
 そんな中、博士は新たにこう発表した。 
「もう少しで薬が完成しそうです。そうですね、今日から三日後ぐらいでしょうか」 
 これにより、人々の期待と不安は一段と高まった。 
 その二日目の真夜中。研究所で博士は時間の経つのも忘れ、一人作業を続けていた。 
「……よし、完成したぞ。これで人々はあの苦しみから解放される」 
 すると、後ろから声がした。 
「おっと、動かないでもらおうか。妙なまねはするなよ」 
「さては泥棒だな。この薬を盗みにきたのか」 
「その通り。さあ早く例の薬を渡してもらおうか」 
「そ、それだけはやめてくれ」 
「いやだね。さあ、早く渡せ」 
 博士はカプセル状の薬を指差した。相手は銃を持っていたので逆らえなかったのだ。 
「さあ、これはなんの薬だ」 
「この薬は人類にとって重要な薬だ。死の苦しみから解放される」 
「すると長寿の薬か」 
「まあ、そんなところだ」 
「よし、ならば作り方を書いた紙も渡せ。これは俺が飲んで、後は金儲けに使わせてもらう」 
「紙ならそこだ。しかし、お前さんが飲んでしまうのなら必要ないと思うが」 
「なにをわけの分からないことを言っている。大量に作って、高値で売れば簡単に大金が……」 
 しかし、全てを言うことはできなかった。なぜなら、薬の効果で、泥棒は喋れない赤ん坊になってしまったのだから。 
「だから必要ないといったであろうに。これは確かに長寿の薬だ。若返りという名の。もっとも、言ってももう分かるまいがね」 
 銃や服など、泥棒の持ち物を処分しながら、博士はこう言った。 
「この薬には一つだけ欠点があってな、若返る歳を調節できんのだ。それにしても、君は運がよかったな。もう少し若かったら……」 

260 :どっかのななし:2010/02/15(月) 20:34:03 ID:8Mo1ZRkm 
感想ありがとうございます。例の薬は、メモ帳に書いたのを加筆修正しながら書いたものです。文体もできるだけ星さんに似せています。 
最近はもっぱら長編ばかり書いていたので、あまりショートショートは書いてないです。それでもアイディアが浮かんだので、書いてみました。 

一杯の水 

 ある男がいた。仮にエヌ氏と呼んでおく。 
 彼は会社員だった。勤めている会社は大きいとは言えず、かといって小さいとも言えない、つまりはごく普通の規模の会社だった。 
 特に優秀ともいえなかったので、なかなか昇進しなかった。そのため、給料も少なかった。 
 また、彼には妻がいた。妻はエヌ氏に、給料が少ないだの、昇進が遅いだのと毎日のように文句を言い、それがエヌ氏の悩みでもあった。 
「あなた、お隣さんは、もう部長になったそうよ。あなたも早く昇進して、もっとお金を稼いでちょうだい」 
 今日も、いつものように妻の文句が始まった。 
「それくらい言われなくても分かっている」 
「分かっているなら、あなたも昇進してみせてよ」 
 なぜこんな女と結婚したのだろうと、エヌ氏は妻の文句を聞くたびに思った。 
 そんなある日のことだった。 
「もうあなたには愛想が尽きました。別れてちょうだい」 
 これを聞いて、エヌ氏は内心で喜んだ。これでうるさい妻から逃れられる。 
 それっきり、妻はエヌ氏の前に現れることはなかった。 
 それからのエヌ氏は、妻の文句を聞かなくてすむようになったからか、仕事に集中できるようになった。決して早いとはいえなかったが、課長になり、部長になり、ついには社長となった。 
 といっても、エヌ氏が社長を継いだのではなく、エヌ氏が新たに事業をおこしたのだ。 
 金回りも良く、順調そのものだった。 
 のんびりと、休日を自宅で過ごしていたある日。家のチャイムが鳴った。誰か来客が来たようだった。 
「ふむ。誰だろう。こんな日に」 
 玄関を開けると、そこには、別れた元妻が立っていた。 
「なんだ、君か。まあいい。立ち話もなんだから、あがりなさい。僕の自慢の屋上庭園を見せてあげよう」 
 エヌ氏は、元妻を屋上に招待した。 
 この土地不足の時代、庭は全て自分の家の屋上に作るのが当たり前だった。 
「どうだい、この庭」 
 さまざまな種類の植物が生えており、それが、エヌ氏の財布の豊かさを示していた。 
「あの時はついかっとなってしまって、ごめんなさいね。よかったら、わたしとよりを戻してくださらない」 
 エヌ氏は、彼女が自分の財産が目当てだと分かっていたので、少しいじわるをした。 
 エヌ氏は、コップに汲んだ水を屋上庭園にこぼした。 
「こぼした水をコップに戻すことができたら、また一緒になろう」 
 元妻は、しばらく考えこむと、コップを持って家の中へ入っていった。しばらくすると、元妻は水の入ったコップを持って、戻ってきた。 
「水道でくんできたんだろう。だめだ。それは僕がこぼした水じゃないじゃないか」 
 エヌ氏は言ったが、元妻は、こう言い返した。 
「ごぞんじなかったの。屋上庭園にまいた水は、ろ過されて水道水として再利用されるのよ」 
 以後、エヌ氏は妻に頭が上がらない。 

走り書きレベルで申し訳ない。 

266 :創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 22:18:47 ID:7jvwDgtb 
 美人 

 ある晴れた日、私が街を歩いていると一人の女性に出会った。 
 彼女はとても美しく、そして優雅であった。 
 私は彼女がどこかへ行くまでずっと見つめていた。 
 後日、私は友人と共に街を歩いているとまたあの美人とであった 
 私が友人を肘で突付き、彼女のほうに向かせた。 
「どうだ? 美人だろう?」 
「そうか?」 
 私がうっとりしながらその美人のほうを見ていると友人が眉をひそめた。 
「何だ、彼女が美人じゃないとでもいうのか?」 
「いや、美人は美人だが・・・」 
 友人は再び彼女のほうを向き、私の顔をじっと見た。 
「平安美人じゃないか」 

268 :灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/02/24(水) 19:12:22 ID:V+zHaXyh 
『魔法のような壺』 

デザイン性がすばらしいわけではなく、価値のある金属でできているわけでもないその壷に王様は見惚れていた。 
壷は赤銅色をしており、脚から注ぎ口まででこぼこしている代わりに取っ手は付いていない。 
壷から王様は目を離し前に控える家臣から片手で覆えるぐらいの黄金を受け取った。 
受け取った黄金を壷の中に落とす。 
黄金は底にぶつかる音をたてずにどこかへ消えた。 
続けて丸めて縛った手紙を滑り込ませる。 
そして壷の底に何も残らず消えているのを確認し、後は報告を待つ。 
この壷は中にあるものをどこかへと消してしまう、そんな性質があるのだ。 
壷に入ったものはひっくり返しても二度と出てこない。どこかへ送られるようだ。 
これは壷の中に消えた物がどこへ行くのか確かめるために王様が考えた計画だった。 
その結果民からの報告により、山岳近くの民家の杯から黄金と手紙が飛び出したことがわかった。 
早速王様はその杯を持ってこさせ、褒美を手渡し代わりに杯を手に入れた。 
「この杯から壷の中のものが出るのだな」 
「そのようです。まさか杯から出てくるとは以外でした」 
王様は家来と会話をした後、あることを思いついた。 
「この壷に水を注いで杯から出た水を再び壷に注いでみよう。 
 それが出来るなら注いだ水は終わりなく壷と杯の間をいったり来たりすることになる」 
それを試みようと王様は杯を壷の上で逆さまにする。そして壷の方に水を注いだ。 
その時だった。壷の注ぎ口がばっと広がり王様の手から杯が一瞬で吸い込まれた。 
一度壷に入ったものは杯から出るはずだ。しかし壷の中に入ったものを出す杯自身が壷の中に入ってしまった。 
それを見ていた王様とその家臣たちは、あらゆる方法で壷から杯を取り出そうとしたが結局、取り出すことは出来なかった。 
そのことがあってからも王様は時々暇になると壷に適当なものを落としてみては退屈そうな顔をする。 
王様いわくこの壷は魔法で作られた壷らしい。 
しかし壷に入れたものが壷から出てくる魔法の壷と普通の壷はいったい何が違うと言えるだろうか。 

271 :灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/02/26(金) 19:03:14 ID:SXa9Qrxa 
『壮大な時代』 

世界各国が宇宙開発を推し進めるようになってどれぐらい経っただろう。 
地球上を人類が完全征服し、ようやく、誰もが地球から出られるようになった。 
ジャングルはもとより、昔は謎そのものと云われていた海底でさえ、今や曇りガラス程度の存在でしかない。 
そんな時代を生きる人類の関心は宇宙に向けられていた。 
それでも、実際に地球の外に関心を持ちながらも、多くの人々は宇宙に行ける可能性を持つに留まっている。 
技術が進んでいても、まだまだ宇宙には謎だらけだ。行くにも莫大な費用が掛かる。 
だから結局人々の夢はまだ叶っていない・・・ 

夜空を見上げて「あの星が僕んちの星」 
と子供が父親に尋ねた。これは子供が適当に決めたのとは違う。 
尋ねられた父親は昨日、自分が打ち上げた星を見上げる。 
「あのピンク色のお星様がそうだよ」そう言って指を伸ばす。 
「見せて」、と子供が父親の前にある家庭用電波望遠鏡で宇宙を眺める。 
レンズを覗く息子を見て、自分が子供だった頃との違いをしみじみと父親は感じた。 
 昔は流れ星に願いを込めたり星の並びが持つ神話をわくわくして聞いたなあ、 
 子供の頃はどこかの星に行きたいと何度と無く思ったものだが地球にいながら夜空に星を浮かべられる時代が来るなんて・・・ 
そう思いながら、どこの家庭でも誰もが自分が宇宙行ったかのように感じ、また夜空を見上げるのだった。 

276 :灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/03/03(水) 18:50:28 ID:7AbDPWho 
『偏り』 

機械工学の研究所で、ブイ氏がロボットの対話テストを始めた。 
ブイ氏は適当に「元気かい」、とよくある当たり障りのない話しかけ方をした。 
しかし、実はロボットにとってこの手の質問に答えることが一番難しい。 
機械の体に生命はなく、そのため時によって体調が左右されないのでいつも元気ともいえるし、その逆だとも言える。 
こんな場合、ロボットでも人間の様に変化のある返事が出来るとよいとされていた。 
「ハイ 元気です」 
だが今回もこのロボットはそう答えた。 
今日のテストでブイ氏がロボットに体調を尋ねるのは10回目になる、 
そして尋ねた回数と等しい回数、ロボットは元気、とだけ回答していた。 
他にもいろいろな回答を入力してあるはずなのだが。 
ブイ氏はロボットの頭脳を作った研究員に回答が偏っていることについて聞いてみた。 
「ロボットに体調を尋ねる質問をした場合なんだが、どうも元気と答える確立が高いようだ」 
「それはおかしいですね。同じ質問をしてもロボットの反応は毎回変わるはずなんですが。 
 少し機械の検査をして見ますね。」 
研究員はロボットを連れ工具のある部屋へ移動し、ロボットの検査を始めた。 
それから大して時間をかけずに一人でブイ氏の所に戻ってきた。 
「少し部品が外れていました。もう直りましたよ。」 
「修理が必要だったんだな。しかしこんなに早く見つかるのならこれまで検査されたときに 
 見つかっていてもよさそうなものだ」 
研究員はそういえば、と思いだしたようにつぶやいた。 
「前に検査したのはいつだったかな。そういえば入力ばかりしてて検査をすることはほんとに少なかったな・・・」 

277 :創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 08:46:48 ID:aFQMF6vZ 
少し未来の人類と地球は滅亡の危機に瀕していた。 
人間の発達した科学が、余りにも破壊的な爆弾を生み出し、 
人間の突き詰められた思想がその使用を促していたのだ。 
2つの対立する宗教で、争う人類。 
そしてついにその時はきた。 
「今こそ神の意向のままに!」 
その言葉が人類の最後の言葉になった。爆弾のスイッチが押されたのだ。 
両陣営から相手陣営に向けて、発射された互いの爆弾は、強烈な閃光のあと地球という存在を完全に消しさってしまった。 
人類は消える間際に思った。神はなんのために我々を創ったのか? 
一方の宗教を信仰するものは、神は愛を体現させるため人間を創ったのだと信じた。 
もう一方の宗教を信じたものは、神の望みは人間が自らの欲望に従うことだと信じた。 
互いに共通して思うことは、神は望みを貫き通した自分達を見て、満足してくださるということ。 

確かに神は満足していた。地球が消滅する瞬間の閃光を見て、思わずこう言わずには入られないほどに 
「たーまやー!!」 

284 :創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 19:59:36 ID:10EV9uI6 
 その日もエフ博士は研究をしていた。 
うまくいけば歴史的な大発明に至るであろう研究だ。 
なんとしても成功させたい。 
エフ博士は夢中になって取り組んでいた。 
この研究のことは誰にも話していない。 
自分の研究の成果を人に知られ、完成の前に真似をされては困るからだ。 

 そして、とうとうエフ博士は求めていた結果にたどり着いた。 
やったぞ、これで私も偉大なる発明家の仲間入りだ。 
エフ博士は喜んだ。 
と、後ろのほうから視線を感じた。 
振り返ってみたが、人の姿は見当たらなかった。 
あるのは計算式の書かれた反故ばかりだ。 
しかし確かに見られているという感覚は続いている。 
どこかから覗かれているのは間違いない。 
視線はそれほど強く認められた。 
博士は研究の結果を慌てて隠し、視線のする方に向かってこう言った。 

「誰だ!」 

 返事はなかった。 
間もなく、その見られている感覚は無くなった。 
気のせいだったのだろうか。 

 エフ博士が取り組んでいたのは、タイムマシンの設計だった。 
そして遂にその原理に至る数式を導き出したのだ。 
タイムマシンが実現するのならば、それは間違いなく世紀の大発明となろう。 

 数日後、エフ博士はタイムマシンを完成させた。 
しかし、タイムマシンとはいっても、エフ博士が作ったのはいつでも好きな時代へ「行く」ためのものではなかった。 
それは、いつでも好きな時代の様子を「見る」ことができるというマシンであった。 
エフ博士は実際に使ってみることにした。 
人類史上初のタイムマシン起動である。 

 電源をいれると、マシンの液晶画面が光った。 
画面は博士の研究室を映していた。 
そこには、手を挙げて喜ぶエフ博士の姿があった。 
画面上の博士は怪訝な顔で辺りを見回すと、数式の書かれた紙を素早く引出しの中に入れ、こっちを向いて言った。 

「誰だ!」 

286 : ◆PDh25fV0cw :2010/03/08(月) 23:37:27 ID:deoCLali 
久々に書いたせいで、星さんらしさが薄いな 
「少年の言葉」 
ある小さな国の小さな村に、動物と話せる少年がいた。 
少年はとても純朴で、動物にも村の人にも、愛されていた。この少年のおかげで、村の家畜は皆おとなしく、野犬も、家畜を襲うこと無く、大変平和だった。 
ある日、少年の力に目を付けた大きな国の人間がやってきた。 
小さな村の人たちは、必死に抵抗したが、敵うはずもなく、少年は無理矢理つれていかれてしまった。 
大きな国についた少年は、鉄でできた施設に入れられ、外に出ることも許されなかった。無機質な施設の中、少年は故郷を思い、ひどく落ち込んでいた。 
そんな少年の心を感じた動物たちは、少年のいる施設の前で、鳴き続けた。その動物達の悲痛な叫びに、少年の解放を望む人々もでてきた。 
しかし、意固地になった大きな国の上層部は、無慈悲にも動物達の殺害を命じた。 
次々と消えていく、動物達を感じながら、少年はひどい怒りを感じていた。 
しかし、少年にはどうすることもできない。 
無力感を感じながら、窓を眺めていると、一匹の虫が張り付いた。 
虫の声は聞いたことがないが、少年はありったけの思いで、その虫に念じた。 
(この酷い国の人たちを、こらしめてください) 
そんな思いを、知ってか知らずか虫はどこかに飛んでいってしまう。 
翌日、その国に黒い影が覆った。 
蜂や蝶、バッタにムカデ、ありとあらゆる虫たちが、少年のいる施設に集まり始めた。 
それだけではない、他の場所にも虫は大量に現れた。田舎では畑は食い荒らされ、町では仕事場に虫が現れ仕事もできない。 
恐怖を感じ、少年を解放するべきだと言う人もいた。しかし、ほとんどの人は少年にした仕打ちを棚にあげ、被害をもたらした少年に処罰を望んだ。 
そうして、少年は国を乱した罪により、死刑になってしまった。 
国は処罰の日まで、また悪さをしないように、施設は大きな壁に覆われ、虫も一匹のこらず殺してしまった。 
耳をすましても、なにも聞こえない。すがるものがなくなった少年は、神に祈る。 
(私が何をしたのでしょう、私はただ静かに暮らしていただけです。この国の人達は、世界で一番自分達が偉いと思っています。あなたの力で、この国の人たちを懲らしめてください) 
しかし、そんな思いも虚しく、少年は次の日殺されてしまった。 
だが、少年の願いはある形で実現する。 
大きな国の人々が、次々と病気で死に始めたのだ。有効な対処法も見つからぬまま、病気は爆発的な勢いで広まり国の人口は激減し始めた。 
人々は神に祈った。しかし、細菌に思いが通じる人間は、誰一人いなかった。 

290 :創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 14:37:23 ID:RlIUOwVG 
「薬」 

エフ氏は遂に長年研究し続けてきた薬を完成させた。 
「これでやっと私も楽になれる……」 
その時、強盗が入ってきた。 
「話は聞いた。その薬を俺によこせ。俺は病気なんだ。話を聞く限りその薬を飲むと楽になれるそうじゃないか」 
エフ氏は恐怖のあまり声が出せなかった。 
「薬は頂くぜ」 
強盗は乱暴に薬を盗り、飲み始めた。 
「何だ、これは」 
男は急に眠りだし、しばらく経つと強盗は死んでしまった。 
強盗が死に、喋られるようになったエフ氏が呟いた。 
「私は楽に死にたくて薬を開発したのに、これじゃまた振り出しだ」 

291 :創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 17:20:32 ID:lkl8otij 
「ははははは」 

 はは、ははははは! 
 おや、なんですか? 
 これが何かって? 
 いやいや、そんな目で見られても困ります、あげませんからね。 
 はは、ははははははははははははは! 
 いやしかし、これはたまりませんな。この舌触りと音が、はは、ははははははは! 
 はは、ははは、もの欲しそうに、ははは、してもだめです。これ一つだけなので、 
ゆずったら私のぶんがなくなってしまいます。 
 はは、ははははは! いやはやこのせつない食感がまた、ははははははは! 
 いやあ、こんなすごいものは初めてだ。はははは。 
 おや、なにをするのですか。やめてください。やめてください。あっ、なにを、やめなさい! 
 ……ほらみたことか、ははは、やめてくださいと言ったでしょう。ははははは! 
 ははは、これは持ち主を守ってくれる機能も備えているのですよ。はは、ははははは! 
 しかしこれは素晴らしい。ははは、こんな素晴らしいものに出会えていなかったなんて、 
ははははは、今までのぼくはなんて不幸だったのでしょう。ははははは! 
 これは実に素晴らしいなあ。ははははは…… 

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