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ケモ耳桃花になるまでの経緯 - (2011/05/09 (月) 00:39:08) の編集履歴(バックアップ)
ケモ耳桃花になるまでの経緯
作者:DS世界観の人 ◆a5iBSiEsUFpN
投稿日時::2011/04/30(土) 23:40:46.73
投稿日時::2011/04/30(土) 23:40:46.73
それは疾風だった。
寄生と呼ばれる獣の隙間を通り抜け、右腕と一体化したかのような鉄の加工物をふるっては斬り殺す。
迷いもなく、躊躇もなく、戸惑いもなく、敵の横っ腹に刻む、刀という凶器で。
それは電光だった。
両足は右へ左へ不規則な歩を運び、あたかも稲妻が如く。
突風が駆け抜け、彼女の髪の毛を後ろから薙ぐ。落ち着いた色合いの着物の裾を揺らし、かぐわしく新鮮な空気の匂いを運んだ。姿勢を戻し、刀を一振りすると、指を誘導役とし鞘に戻す。
――キンッ。
彼女――麗しい少女――に一太刀浴びせかけられた寄生達が、遅れて崩れ落ち、体躯が瞬く間に“文”へ還元されるや、『消』『終』『無』『死』の意味のない文字に変化して、やがて霧のように空間に溶けていった。
寄生を討伐した無限桃花は、フンと鼻で息を吸うと、何気なく振り返った。
世間一般でいうポニーテールにした頭髪がはらりと傾ぎ、重力に従いうなじの位置に戻る。
「な、なんだこれは」
思わず声をあげてしまう桃花。
地面に何かが落ちていた。一つは、湯呑みだ。もう一つは、獣の耳をかたどったかぶり物だ。
多くの寄生を葬ってきた彼女だが、倒したあとにアイテムが出るなんて話は聞いたこともなかった。
こんな彼女でもゲームはやるし、RPGも好きだったりするのだが、実際に遭遇すると面食らうのだ。
慎重に慎重を重ねるつもりでそろそろと近寄り、愛刀を腰から抜くと、鞘におさままった状態で二つの相手を交互につっついてみた。
湯呑みは転がり、獣の耳の被り物はつつかれるがままだった。
桃花は、地雷処理に初めて挑む新兵のように刀でつついて確かめると、周囲に誰もいないことを目で確認し、おもむろに湯呑みを握った。
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ざんねん! とうか は ござい に なってしまった!!!!!
おちゃ は うーろん か!!??
「………ハッ!!!???」
慌てて湯呑みを地面に放り投げる桃花。
一瞬意識が飛んで二頭身くらいの体になってた気がする。
悪いジョークだと自分に言い聞かせ、湯呑みを思い切り蹴っ飛ばす。世界を狙える右足がジャストミート。あさっての方向にかっとんで消えた。
その湯呑みをアホ毛を生やしたダウナー系な女の子が拾ったというのは別の話。
「もう騙されるものか! どうせこの変な耳あても装備即状態以上を起こすようになってるんだろ!」
軽くキレながら、ケモノの(以下略)を蹴っ飛ばす、否、刀に纏わせた力で地面ごと金星あたりまで吹っ飛ばしてやろうと抜刀した。
地鳴り。刀に集合した力は強大で、今にも爆発してしまいそうなほどに蒼く輝きだす。
必殺の太刀である。
彼女は刀を中腰に構え片足を引き吐息の間隔を揃えた。
こんなアイテムになにまじになっちゃってるの という突っ込みは無粋であるので、やめて頂きたい。
「消えろーーーッ!!!」
力が解き放たれ、斬撃に乗せて目の前の地面とキツネの耳あてを光の洪水のさなかへと消し去った。
膨大な衝撃波が生じあたり一帯を蹂躙する。
「フ……」
息も荒い桃花は、地面ごとキツネ耳あてが消え去ったのを目視で確認すると、刀を鞘に戻した。
ひゅーーーーーぽと、すぽん。
そしてお約束のようにキツネ耳あてが桃花の頭にすっぽりと収まった。
唖然も唖然、してやったり顔の桃花は顔を強張らせる。
汗がたらりと流れた。
/''i_/''i
[ニl ヽ
ノl l ノ'''ヽ !
`! l|;゚ヮ゚ノ| ←こんな
(ヽj,.ム ハソノ>っ
━U╋=(
くノノノムゝ
「ばかな……ばかな………と、とれないぞこいつ。このっ、このっ! とれろこのっ!」
必死にキツネ耳を引っ張って取ろうとする桃花であったが、接着剤で張り付けられたように一ミリも動いてくれない。
桃花は顔を真っ赤にして引っ張るが、耳はあざ笑うかのようにこれっぽっちも動かず。
「く、ぐぐぐぐぐぐぐぐ………いったたたた痛い痛い! こいつ、くっついてる……」
何を思ったか、桃花は耳を上に引っ張った体勢で叫びだした。
キツネ耳がみょーんと伸びる。
「ディスペル! リカバー! とr」
「姉さーん! 何やってんのー?」
「あわわわわわわわ」
「こっちかなぁ………」
草むらをがさがさやって近づいてくるのは、無限彼方。彼女の妹である。
仕事を終えたであろう姉が帰ってこないので、心配して見に来たのだ。
桃花は、頭を使った。見られたくない。キツネ耳の姉など笑われるし恥ずかしいではないか。とれればいいのにとれない。
残された時間は一分とない。
桃花は決断した。
ポニーテールを解く(もったいない)。刀を手ごろな草むらに隠す。着物の袖を目いっぱいまでまくる。
コンマ数秒後、胸の乏しい少女彼方が姿を見せた。
「んーお姉ちゃんの声がしたのになぁーんでいないんだろ? あ、スイマセン、私のお姉ちゃんみませんでしたー?」
「いえ、見ませんでしたね」
「んぅ……わかりましたー」
すまし顔で応対する桃花。
不思議なことに、彼方は桃花を桃花と気が付かずに立ち去った。
説明しよう! 桃花や桃花は特徴こそ彼女自身なので容姿上の特徴を無くしてしまうと別人として認識されるのである!
ンなことねぇよって? しらんがな。
「やれやれ」
汗を拭くポニーテールじゃない桃花。
一安心だと彼女が髪の毛を結おうとした次の瞬間、驚くべきことが起きた。
『問おう、あなたが私のマスターか』
「!? キツネ耳あてが喋った!!??」
すごくオッサンの声で。
次回、【尻尾もサービスでつきますよダンナ】お楽しみに!!