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ガンダム総合スレ「蒼の残光3」

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「アイゼンベルグ、イノウエ、二名入ります」  ユウの執務室に二人の男が入ってきた。一人は赤毛の高い鼻が特徴的な長身の男で、制 服の胸のボタンを開けて着崩している。もう一人は黒髪の一見風采の上がらない中年男で、 表情から何かを読み取る事が困難なタイプであった。前者はルーカス・アイゼンベルグ、 後者をクロード・イノウエという。二人は共に大尉で、ユウ指揮下のMS隊の副隊長であ った。 「これを」  ユウは前置きを一切置かず、書類を二人に渡した。終戦記念式典のMS隊の配置と当日 の任務についての決定要綱である。  二人は各々書類に目を通していたが、同じ所で目を止めた。 「……これは」 「隊長は基地からの指揮なので?最初はパレードでデモンストレーション飛行を披露する という事でしたが」  ユウは記念式典での艦隊パレードにあって、ソロでのアクロバット飛行の命を受けてい た。AE社からの要望でもあり、ユウがテスト機として受領しているRAZ-107アー ツェットの性能宣伝という要素を持っていて、簡単には変更は認められないはずだ。 「式典とはいえこれは基地の全戦力が動員される作戦だ。駐留基地の警備・護衛任務につ いてもMS指揮については私が責任を持たねばならない。後方から全体を見渡す必要があ る」  それを聞いた二人はしばし無言であった。ユウが今言った事など最初からわかりきって いた事である。今更変更する理由にはならない。つまりは――。 「戦闘が予想されるという事ですな。それもMS戦闘が」  アイゼンベルグが指摘した。シェルーは彼が心なしか喜んでいるようにも見えた。  ルーカス・アイゼンベルグ大尉はエウーゴから連邦への編入兵である。エウーゴ参加前 の経歴には曖昧な部分が多く、元ジオン軍人との噂もあった。彼自身その噂を否定してい ないため、マシュー中佐などからは半ば本気で危険分子扱いされていた。  パイロットとしては優秀で、部下からの信頼もそれなりに厚いのだが、上官への敬意と いうものが欠落しており、ネオジオン抗争後一年足らずの間に任地を三度も変えていると いうのもその性格が影響しているのだろう。もっとも、ジオン残党との戦闘を予想しなが ら喜んでいるというのは、単なる戦闘狂かもしれない。  軍籍を信じるなら〇〇五二年生まれの三十七歳。リックディアスの改修機を愛機として おり、彼の機体はビームライフルとジムのシールドを使用している。 「その可能性に備えるというだけだ」  ユウはそれだけを言った。自分が統括指揮に回ると知れれば誰もが同じ事を考えるだろ うが、積極的にそれを肯定するつもりもない。 「それで、小官はコロニーの周辺宙域の警戒という事でよろしいのですかな?」 「そうだ。コロニーに直接何かをしてくるとは考えにくいが、仕掛けてくるとすれば少数 でのゲリラ戦でくる可能性は高い。貴官にはそれに対する備えとなってもらう。コロニー の内と外で連動して活動されるのが一番厳しい。それを阻止してもらいたい」 「承知しました」  慇懃に敬礼をしてみせる。ユウはイノウエに向いた。 「イノウエ大尉。貴官は宙域哨戒についてくれ」 「了解しました」  イノウエは表情を変えず答えた。  ユウと同じく日本をルーツに持つ彼は、一年戦争時から雷撃、即ち艦船への直接攻撃を 専門とするシップ・エースであった。その武装は常に一撃の破壊力を最優先に選定され、 ア・バオア・クー決戦ではバズーカ二門を携えて出撃し、空母ドロアの艦橋に直撃弾を撃 ち込み撃沈させるという武勲を立てている。MS撃墜数は生涯通算で四機のみと、いかに 母艦攻撃に特化した戦士かがわかる。  しかし年齢四十四歳とパイロットとしては限界が近づいており、母艦攻撃よりもMS同 士の制空権争いに主眼が置かれる戦術の変化もあって、最近では指導教官への転向を希望 していた。歴戦の勇士であることは間違いなく、基地内部でも階級以上の敬意を表される この大尉に対し、ユウは多少なりともリスクの低い、言い換えれば現実に戦闘になる可能 性の低い任務を与えたのである。  MS戦闘が中心とならざるを得ない艦隊護衛で彼のパイロットとしての手腕には期待で きないが、木星船団やパレード中の艦隊を襲撃された場合、対空防御に対しては一定以上 の指揮能力を期待できるという考えもあった。 「急な変更だが、この配置で対処してくれ。各中隊長には今日中に私から伝えておく。以 上だ」 「忘れ物はない、ユウ?」  マリーが言った。 「寝坊して学校に向かう子供だな、まるで」  ユウが苦笑する。 「少しうるさい位でないと。あなたは宇宙ではどうか知らないけれど地面の上では粗忽な んだから」 「君が準備してくれたんだ。問題はないだろう」 「施設使用のパスは?ちゃんと式典用の礼服に移した?」 「あ……」  マリーはため息を吐いた。 「やっぱり。IDパスは私の管轄じゃないわよ」 「すまん」  マリーがくすりと笑った。青い前髪が揺れる。 「本当にこれで連邦軍のトップエースなのかしらね」 「MSは必ず決まった所に置いてあるからな」 「パスもきちんと置く所を決めておけばいいのに」 「それより儀礼用と通常用の制服を別にデザインするなんて無駄をやめれば解決する問題 だ」 「もっと偉くなって規則を改正できるようになって下さいね」  マリーは相手にせず、ユウの頭に帽子を乗せた。  マリーは軍人ではない。グリプス戦役が始まる前、旧友であるサマナ・フィリス中尉が 任地であるグラナダでMS訓練指導中の事故で入院した際、実習に来ていた看護学生がマ リーだった。  今でも上手く説明できない感覚と共に二人は恋に落ち、わずか二ヶ月で結婚した。祝福 に来てくれたサマナは 『ドラマや小説なら、こういう時は入院していた僕と恋に落ちるものなんですが』  とぼやき、フィリップ・フューズ大尉は 『撃墜王ってなあ一番他人の獲物を横取りした奴がなるもんなんだよ』  と悪意なき毒舌で慰めていた――。  以来四年、子供はまだいないが、夫婦仲は良好である。 「何もなければ二十――午後八時には帰るよ」  ユウはそう言った。それを聞いたマリーは何か言いかけたが、思い直し、笑って 「行ってらっしゃい」  と送り出した。  ユウが出て行った後、マリーの紅い瞳が不安げに揺れた。ユウは口数の少ない男だが、 言葉の足りない男ではない。言う言葉にも、言わない言葉にも意味のある男だとマリー は思っていた。  ユウは帰る予定の時間を言った。しかし、いつもは言う言葉を今回は使わなかった。 「食事の用意をして待っていてくれ」  今までは必ずそう付け加えていたのである。  礼服を着て登庁したものの、ユウは式典には出席せず司令部で指揮を執っていた。  ルロワ提督は艦隊デモンストレーションのためヘンリー艦長と共に「ハイバリー」に乗 艦、ホワイト准将は共和国内の式典にゲストとして出席するため、警備体制の確認と指揮 はマシュー幕僚長とユウMS隊長という二人の中佐が中心となって行う事になっているの である。  ユウが礼服を着ているのは、広報部から式典の裏舞台と称して司令部にカメラを入れる 旨が伝えられていたからであり、ユウにしてみれば迷惑な事この上ない。 「カジマ中佐は若々しい軍隊をアピールするにはうってつけですからな」  マシューが皮肉交じりにそう評する。ユウは苦笑してやり過ごすしかない。 「アイゼンベルグ大尉、用意は?」  ユウがコロニー哨戒の隊長を呼び出す。 「万端です、中佐」 「哨戒ルートの確認は隊員に徹底されているな?不審物発見までのシークエンスはそれに 従うように。発見後の報告以降は貴官の判断を信じる。本隊が到着するまで持ち堪えてく れ」 「出来れば小官の判断が発揮される事態になって欲しいものですな」  ルーカスのあまりにも不穏当な発言にマシューが目を見開く。ルーカスは素早く敬礼し、 任務に戻ると言って回線を切った。  続いて宙域哨戒任務のイノウエを呼び出す。 「イノウエ大尉、作戦について質問はあるか?」 「いえ、特にありません」 「そうか、よろしく頼む」  最後に整備ドックに回線を繋ぐ。 「なあに、ユウ。何か注文?」 「ジャッキー、俺のアーツェットは頼んだ通りにしてくれたか?」 「BD-4」 「どっちでもいい」  ジャッキーはため息を吐いた。 「言われた通り、MAモードに変形させてブースターも取り付けてあるわ。これで想定宙 域内ならどこでも二十分以内に到着できるわよ」 「そうか、よし」 「でも、このGは完全にシートの許容範囲を超えてるわよ。だから今までテストしてなか ったのに本当に使う気?」 「出番が来ない事を祈っていてくれ」  それだけ言ってユウは回線を切った。  ユウは司令部のモニターに目を移した。警備範囲は大きく分ければコロニー内部、コロ ニー外壁、パレード中の艦隊及びズムシティに接近中の木星船団となるが、コロニー内部 の警護については共和国側主導で進めている。外壁についても本来なら共和国の戦力が主 力となるはずだったが、いかんせん装備が旧式すぎた。  そもそもジオン共和国には「軍隊」は存在しない。外敵として想定されるのは旧ジオン 残党のみであり、彼らの掃討は連邦軍が行うと言うのが前提となっているためである。自 衛戦力としては対テロ組織の名目で機甲警察(パンツァーポリッツェ)が結成されていた が、これはMSはハイザック、ジムⅡといった旧式が中心で保有数も少なく、ネオジオン 製のMSを相手には同数どころか、三体一でも勝てるかどうか怪しい。特に最重要ポイン トであるズムシティの外殻は、ユウ達が警備しなければ危険極まりない。  その為、決して多くはない戦力を二分し、ユウ自身、こうして司令部から全体を見渡す 位置に身を置かねばならないのである。 「これが無駄足に終わればいいのだが」  ユウは呟いた。 「もうすぐ式典開始だ。全員、スタンバっておけ」  ディレクターの声が響いた。 「回線の状態はチェックできてるか」 「レーザー通信、有線回線、共に良好」 「カメラは?」 「もう動いてます」 「音声状態」 「問題ありません」 「よーし、キムちゃん、アップから入るよ」 「よろしくお願いしまーす」 「3…2…1…Q!」  ディレクターの声で一斉に動き始める。  式典の開始は十五時からとされているが、実際の所はその五分前から開始されている。 中継はそれを十五時ジャストから録画放送するのだった。視聴者は五分前の映像をモニタ ー越しに視る事になる。  万が一不適切な場面がカメラに映りこんだ場合、スイッチングや編集によって視聴者の 目に届かないようにするための、まだ西暦を使っていた時代からの技術である。もっとも、 ディレクターに言わせれば 「自主的な検閲だ」  となる。  式典は厳かに始まった。人類の総人口を回復困難なレベルまで減らした有史以来最悪の 戦争だが、式典はその損害の大きさを必ずしも想起させるものではない。  モニター上では女性アナウンサーが原稿を読み上げ、それにズムシティのイベントや艦 隊による弔砲がカットインされていく。特別な事など起きるはずもない、毎年のセレモニ ーが少し大規模になっただけだ。 「十五時まで後三十秒だ、映像に問題はないな」 「ありません。このまま放送できます」  最悪の事態が起きた場合、前日の予行演習の映像を流す準備もしてある。ディレクター としては、報道の精神にかけてそこまで欺瞞に満ちた行為はしたくないと思っている。 「また行くぞ。3…2…1…Q!」  艦隊の映像にありえない閃光が奔ったのはその瞬間であった。 「何が起きた!?」  マシューが叫んだ。 「ルロワ艦隊に敵襲!『ラビッツフット』撃沈!」  通信士の声が上ずる。マシューの声が震えた。 「馬鹿な!?一切の反撃も出来ない内にか!?」  敵の接近をそこまで許すとは考えにくい。戦場慣れはしている連中である。  ユウは内心舌打ちしながら情報を求めた。 「他は?コロニー周辺や木星船団からなにか変化はないか?」 「ありません。攻撃を受けているのは艦隊のみです」 「救援の部隊を回せ!至急だ!」 「お待ち下さい、参謀長」  マシューの指示を即座にユウが撤回した。艦隊への奇襲は間違なく陽動である。一個艦 隊を攻撃するには相応の戦力を有していなければ返り討ちにあってそれまでである。そし て、それだけの戦力があるなら高々一個艦隊の戦力を削るよりするべきことがある。  だが敵は初撃で巡洋艦一隻を沈めた。陽動とわかっていても救援なしでルロワに任せる のは危険すぎる相手とも考えられる。 「――私が向かいます。救援はコロニーから出撃しつつ次の敵の動きに備えさせて下さい」 「カジマ中佐一人でか?しかし――」 「どちらにせよ全速力なら私のアーツェットに追いつける足はここにはありません。それ よりも艦隊に救援隊と主力が一箇所に集合してしまう方が危険です」 「そうは言うが……」 「提督を死なせはしません」  ユウは断言した。MS一機で出来る事など限界がある事は承知しているが、これ以上議 論している時間もない。 「わかった、頼むぞ、カジマ中佐」  RAZ-107の変形機構はベースであるAMX-107と同様、分割可変型である。 上半身と下半身が分離し、上半身とバックパックで戦闘攻撃機形態、下半身が無人随行機 となる。アーツェットはバックパックを超大型に換装しているため、上半身は往年の名機、 コアブースターを連想させるフォルムとなる。通常航行時はバックパックに下半身パーツ を半格納するようにして固定できるようになっている。もっとも、これは下半身が全くの デッドウェイトとなる欠点となった。この戦闘攻撃機形態をアナハイムではGチェイサー と呼び、追撃機としての運用を想定していた。長距離迎撃任務のためのシュツルム・ブー スターはこの形態専用の増加装備で、デッドウェイトとなっている下半身パーツのジェネ レーターを推進に使用する事でバックパックのジェネレーターの負荷を高めないよう配慮 されている。  従来スラスター用のコジェネレーターしか持たなかった下半身にジェネレーターが増設 され、腰部にビームキャノン兼用ビームサーベルを装備して下半身に攻撃力が与えられて いる。その分上半身のジェネレーターを小型化し、重量バランスがかなり改善されている。  バウにはバイオセンサーの一種が装着されていた。機体制御と同時に準サイコミュとし て分離した下半身の操縦にも使用していたと思われるが、ユウはこれにリミッターをかけ て使用していた。  ユウはノーマルスーツに着替えるとハンガーに向かい、真直ぐ愛機に乗り込んだ。 「ジャッキー!」  ユウの声を合図にブースターを着けられたGチェイサーがカタパルトに移動される。 「ユウ、これだけは覚えていて。もしブースターで加速中にデブリ(ごみ)が見えたら、かわすより破壊する事を考えて。視認してからじゃ多分避けられない」 「覚えておく」 「スタンバイOK。中佐、発進可能です」  オペレーターの声が報せる。ユウは頷いた。 「操作権限受領。ユウ・カジマ、アーツェット……」  そこでモニターに映るジャクリーンを見た。 「……BD-04、出撃する!」  カタパルトが作動し、ユウとBD-04を宇宙(そら)に向けて射出した。 ノート RAZ-107 アーツェット(BD-04)① 全高 23,5m(頭頂高19,0m) 本体重量54.4t(全備重量88.2t) 主スラスター推力141,600kg ジェネレーター出力計4,600kw 特徴: アクシズ内から鹵獲したAMX-107バウの実機及びデータを下に、アナハイムが再設計した実験機。 Ζガンダムの量産化試験としての一面も担っているが、表向きAEはバウとΖ計画の関連性をを否定して いるため、ユウにそのような説明はない。 しかしながら形式番号のAZは「アナザー・Ζ」の略であり、いかにこの機体の完成度にAEが嫉妬して いたかが窺われる。 バウの改造機といいながら、60%以上を新規設計され、シルエットは共通でも内部機構はかなりの変更が 加えられており、ベース機との互換性はほぼない。 バウでは下半身はミサイル弾頭としての運用が想定されていたため、ジェネレーター等は搭載されておら ず、その為上半身に不自然なレイアウトで複数のジェネレーターが積まれていたものを下半身に一部を移 設、機体バランスを整えると共にバックパック部にも大型のジェネレーターを搭載、合計出力は第四世代 機並の大出力となった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ コンセプトとしては、「変形するとコアブースター」です。ΖΖが「変形するとGアーマー」だった ので、こんなコンセプトもありかなと。不器用なので造ることも絵にかくことも出来ないのが悲しい……

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