無限桃花~嵐の前に③~
「‥‥‥じゃ、もう黒丸さんは指令室に?」
「はい。あの馬鹿‥‥じゃない先輩ったら、今朝さっさと病院出てっちゃいました。まったく‥‥‥」
「はい。あの馬鹿‥‥じゃない先輩ったら、今朝さっさと病院出てっちゃいました。まったく‥‥‥」
理子の運転するセルシオは都内を走っていた。一見するとただの高級車だが、実態は装甲仕様の特別車だ。
常時戦闘体制を義務付けられている『ヤタガラス』には、一介の隊員にですらこの車が支給される。
桃花は助手席に座り理子の話を聞いていた。いつも明るく、どちらかと言えば脳天気な理子だったが、今日はすこし機嫌が悪そうだった。
無理も無いだろう。今朝病院を訪れた時には置き手紙を残して黒丸は消えていた。昨日あれだけ言った事にさっそく嘘をつかれた気分になっていた。
常時戦闘体制を義務付けられている『ヤタガラス』には、一介の隊員にですらこの車が支給される。
桃花は助手席に座り理子の話を聞いていた。いつも明るく、どちらかと言えば脳天気な理子だったが、今日はすこし機嫌が悪そうだった。
無理も無いだろう。今朝病院を訪れた時には置き手紙を残して黒丸は消えていた。昨日あれだけ言った事にさっそく嘘をつかれた気分になっていた。
「とりあえずあの馬‥‥先輩は指令室で待ってますよ。まともに歩けないクセにどうやって行ったんだか」
「黒丸さんらしいですね」
「身内には大変なんですよぉ~!」
「黒丸さんらしいですね」
「身内には大変なんですよぉ~!」
理子は愚痴っぽく喋っていた。薄々感じてはいたが、やはり黒丸は相当無茶をする男のようだ。
「聞いた話じゃ昨日の夜もずっと電話で怒鳴ってたらしいですし、指令室で何が待ってるやら‥‥あの馬鹿、加減知りませんから」
「‥‥今、馬鹿って言い切りましたね」
「え?ああ‥‥いいんですよ。もうアイツは馬鹿で‥‥」
「???」
「‥‥と、とにかく!先輩待ってますよ!」
「ははぁ‥‥‥。なるほど」
「な‥‥何ですか!?」
「はは。いいえ、何でも。」
「何笑ってんですか!」
「理子さん」
「な‥何です?」
「頑張ってね」
「ちょっと‥‥‥‥‥」
「‥‥今、馬鹿って言い切りましたね」
「え?ああ‥‥いいんですよ。もうアイツは馬鹿で‥‥」
「???」
「‥‥と、とにかく!先輩待ってますよ!」
「ははぁ‥‥‥。なるほど」
「な‥‥何ですか!?」
「はは。いいえ、何でも。」
「何笑ってんですか!」
「理子さん」
「な‥何です?」
「頑張ってね」
「ちょっと‥‥‥‥‥」
思わず理子のハンドル操作が雑になった。
車はそのまま指令室のあるビルへと吸い込まれて行く。地下駐車場に車を止め、あとはエレベーターで17階まで上がれば指令室は目の前だ。フロアの一角のこじんまりした小汚いスペース。そこがカラスの巣。
「よく来てくれました。待ってましたよ桃花さん」
「先輩‥‥先に私に言う事ありませんか‥‥?」
「え?ああ、すまん。どうしても急ぎの用事があったんでな。朝にタクシー呼んでここまで来たんだ」
「‥‥このバカ」
「先輩‥‥先に私に言う事ありませんか‥‥?」
「え?ああ、すまん。どうしても急ぎの用事があったんでな。朝にタクシー呼んでここまで来たんだ」
「‥‥このバカ」
「うるさい。謝ってんだろ」
「はいはい」
「‥ったく」
「はいはい」
「‥ったく」
黒丸は相変わらずだったが、脚を引きずり左手には痛々しく包帯が巻かれている。時折息をするだけで痛みが走るのか、話し方もなにやらぎこちなかった。
「それで‥‥‥私に話とはなんでしょう?」
「‥‥‥はい」
「‥‥‥はい」
桃花は淡々と、あの時の出来事を話した。出来る限り具体的に。
影糾が彼方である事。それを語った猿参と、桃花の謎の影。三種の神器であるはずの天叢雲剣。
そして‥‥己が感じる寄生達の行動。
影糾が彼方である事。それを語った猿参と、桃花の謎の影。三種の神器であるはずの天叢雲剣。
そして‥‥己が感じる寄生達の行動。
「なるほど‥‥‥つまり桃花さんも我々同様、寄生の動きに変化を感じているんですね?」
「我々‥‥‥?」
「ええ。そこら辺は理子に説明して貰いましょう」
「我々‥‥‥?」
「ええ。そこら辺は理子に説明して貰いましょう」
「はいはい。桃花さんとそこの馬鹿が寝てる間も、監視ネットワークではずっと寄生の動きを記録してるんです。そしたら、過去には無いデータが出てきたんです」
「つまり‥‥‥寄生が居なくなっているんですよね?」
「そうなんです!‥‥‥よく解りますね‥‥‥。現在の私たちじゃ、その制度上都内しか監視出来ません。だから出ていった寄生達がどこへ行っているのか‥‥全く解らない状態です」
「つまり‥‥‥寄生が居なくなっているんですよね?」
「そうなんです!‥‥‥よく解りますね‥‥‥。現在の私たちじゃ、その制度上都内しか監視出来ません。だから出ていった寄生達がどこへ行っているのか‥‥全く解らない状態です」
理子はそう説明した。続いて、黒丸が口を開く。
「我々は都内以外にもどうしても監視の目を広げたい。だから昨日からちょっとだけ上の連中と話をして、少しだけ超法規的な活動の許可を貰いました。朝早くから私がここに来たのも直属の上司に事後承諾させるためなんです」
「先輩‥‥そっち方面でも無茶して‥‥」
「うるさいオバQ。さて、いくら活動の範囲を広げたといっても、許可されたのはほんの僅かです。東京を中心として、北と南に結界を張っただけです」
「それだけ‥‥なんですか?」
「ええ。でも、これで東京から出た寄生がどちらの方角へ移動しているかは解る。そして結果はすぐに出ましたよ。北の方角です」
「北‥‥」
「やはり‥‥‥感じていましたか。本当は桃花さんに聞けばこんな事は簡単にわかると思っていました。解っているとは思いますが、これは監視としては無意味だ。でも頭の堅い連中を動かすデータにはなる」
「先輩‥‥そっち方面でも無茶して‥‥」
「うるさいオバQ。さて、いくら活動の範囲を広げたといっても、許可されたのはほんの僅かです。東京を中心として、北と南に結界を張っただけです」
「それだけ‥‥なんですか?」
「ええ。でも、これで東京から出た寄生がどちらの方角へ移動しているかは解る。そして結果はすぐに出ましたよ。北の方角です」
「北‥‥」
「やはり‥‥‥感じていましたか。本当は桃花さんに聞けばこんな事は簡単にわかると思っていました。解っているとは思いますが、これは監視としては無意味だ。でも頭の堅い連中を動かすデータにはなる」
「上の連中は『ヤタガラス』の活動が大きくなるのを快く思っていません。昔からありますが、やはり化け物相手のオカルト集団というのが彼らの『ヤタガラス』に対する評価です。
だから確実なデータと、寄生の今後の計画を予想する必要がある。このままでは都内に寄生が居ないと言われ解散させられてしまう」
「なんで‥‥‥」
「はい?」
「なんで‥‥東京だけの監視なんですか?」
「それは‥‥‥我々は寄生の撲滅ではなく、時の政権の護衛のみを目的としているからです」「政権?」
「ええ。朝廷の時代から現在まで‥‥『ヤタガラス』は寄生が時の政権に入り込むのを防ぐ為に存在している。そして京都から大阪、東京と活動拠点を移し、そこでのみ生きている。つまり、たとえ寄生がよその土地で何をしようと、我々には手を下せないんです」
「そうなんですか‥‥‥」
「そんな残念そうな顔しないで下さい。勿論このままではいけないと思っている連中も居るんですよ。昨日から彼らともずっと話をして、外からの協力を取り付けました。あとは我々が内側から『ヤタガラス』を変えるんです」
だから確実なデータと、寄生の今後の計画を予想する必要がある。このままでは都内に寄生が居ないと言われ解散させられてしまう」
「なんで‥‥‥」
「はい?」
「なんで‥‥東京だけの監視なんですか?」
「それは‥‥‥我々は寄生の撲滅ではなく、時の政権の護衛のみを目的としているからです」「政権?」
「ええ。朝廷の時代から現在まで‥‥『ヤタガラス』は寄生が時の政権に入り込むのを防ぐ為に存在している。そして京都から大阪、東京と活動拠点を移し、そこでのみ生きている。つまり、たとえ寄生がよその土地で何をしようと、我々には手を下せないんです」
「そうなんですか‥‥‥」
「そんな残念そうな顔しないで下さい。勿論このままではいけないと思っている連中も居るんですよ。昨日から彼らともずっと話をして、外からの協力を取り付けました。あとは我々が内側から『ヤタガラス』を変えるんです」
黒丸は堂々とした口調で語った。やはり身体が痛むのか時折呼吸が乱れていたが。
「先程お話いただいた、桃花さんが感じたという影糾の計画‥‥おそらく間違っていない。そうでなければ寄生を一カ所に集める意味が無い。理子が推測した事よりは過激だが現実味があります」
「彼方の‥‥‥軍隊‥‥」
「ええ。協力を取り付けた連中はどちらかといえば我々に友好的な連中です。人員のやりとりがありますから。彼らはきっと役に立つ」
「でも‥‥彼方が手にいれようとしているのは寄生の軍隊じゃない‥‥現実に実体を持った、正真正銘の‥‥軍隊‥‥。いくら黒丸さん達でも‥‥」
「昌です」
「え?」
「忘れましたか?私の名前は昌です。明日もう一度おいで願えますか?桃花さんに合わせたい人達が居る」
「私にですか?」
「ええ。例の協力を取り付けた連中です。」
「彼方の‥‥‥軍隊‥‥」
「ええ。協力を取り付けた連中はどちらかといえば我々に友好的な連中です。人員のやりとりがありますから。彼らはきっと役に立つ」
「でも‥‥彼方が手にいれようとしているのは寄生の軍隊じゃない‥‥現実に実体を持った、正真正銘の‥‥軍隊‥‥。いくら黒丸さん達でも‥‥」
「昌です」
「え?」
「忘れましたか?私の名前は昌です。明日もう一度おいで願えますか?桃花さんに合わせたい人達が居る」
「私にですか?」
「ええ。例の協力を取り付けた連中です。」
「‥‥解りました。じゃあ、また明日」
「大丈夫ですよ。きっと寄生達を止められる」「はい‥‥ありがとうございます。‥‥昌さん」
「では、また明日。理子、送っていってやれ」「あ‥‥いえ‥‥いいんです。歩いて行きますから」
「え?遠慮しなくても‥‥」
「いや‥‥今は‥‥大丈夫です」
「‥‥そうですか?では、また明日」
「ええ」
「大丈夫ですよ。きっと寄生達を止められる」「はい‥‥ありがとうございます。‥‥昌さん」
「では、また明日。理子、送っていってやれ」「あ‥‥いえ‥‥いいんです。歩いて行きますから」
「え?遠慮しなくても‥‥」
「いや‥‥今は‥‥大丈夫です」
「‥‥そうですか?では、また明日」
「ええ」
桃花は手荷物を持ち部屋を出た。今は帰る家は無い。一晩はどこかで過ごさねばならなかった。送っていって貰おうにも目的地が無いのだ。
「桃花さん‥‥大丈夫なんですかね?」
「なんだいきなり」
「だって、なんか悲しそうなんで‥‥」
「‥‥そりゃあな。仇が探し続けた妹なんだ。」
「あと先輩‥‥やっぱり無茶して‥‥‥」
「そんなでもないだろ。電話しただけだ」
「協力取り付けたって‥‥誰なんですか?」
「まだ秘密さ。明日になりゃ解る。‥‥失礼の無いようにな」
「気になりますよ。教えて下さいよ昌さん」
「先輩と呼べ」
「なんだいきなり」
「だって、なんか悲しそうなんで‥‥」
「‥‥そりゃあな。仇が探し続けた妹なんだ。」
「あと先輩‥‥やっぱり無茶して‥‥‥」
「そんなでもないだろ。電話しただけだ」
「協力取り付けたって‥‥誰なんですか?」
「まだ秘密さ。明日になりゃ解る。‥‥失礼の無いようにな」
「気になりますよ。教えて下さいよ昌さん」
「先輩と呼べ」