無限桃花~嵐の前に②~
「で、いきなり帰って来て突然出てくって訳?」
「だからゴメン」
「だからゴメン」
桃花は荷造りをしながら素っ気なく答えた。自分の荷物は少ないが、いざ部屋から出て行くとなると結構な量だ。大部分は捨ててしまわなければならない。
ルームシェアしている相手の男。家賃や光熱費は実際彼が出しているようなものだ。負担は変わらない。
しかし、突然の桃花の行動には明らかに不満そうだ。今までもふらっと出て行ってはしばらく帰って来ない事はあったが、今回ばかりはどうにも我慢がならない。
ルームシェアしている相手の男。家賃や光熱費は実際彼が出しているようなものだ。負担は変わらない。
しかし、突然の桃花の行動には明らかに不満そうだ。今までもふらっと出て行ってはしばらく帰って来ない事はあったが、今回ばかりはどうにも我慢がならない。
「いいけどさ‥‥勝手過ぎるだろ?一応ルームメイトだろ?」
「実質あなたの部屋みたいなもんじゃない。ほとんど居ないし私」
「そうだけどさ‥‥‥でも気になるだろ?いきなりだぜ?今まで夜中に血まみれで帰って来たり玄関まで変なオッサンに追い掛けられたりしてた奴がいきなり出て行くんだぞ?心配するなってほうが無理だ」
「今更ね。私そんな簡単に死なないから大丈夫だよ」
「お前な‥‥‥。一体何してんだ?ヤバイ事してるのはもう昔からイヤってほど解ってるよ。でもいくら何でも俺に何も言わないってのは卑怯だ」
「だからゴメンって‥‥」
「実質あなたの部屋みたいなもんじゃない。ほとんど居ないし私」
「そうだけどさ‥‥‥でも気になるだろ?いきなりだぜ?今まで夜中に血まみれで帰って来たり玄関まで変なオッサンに追い掛けられたりしてた奴がいきなり出て行くんだぞ?心配するなってほうが無理だ」
「今更ね。私そんな簡単に死なないから大丈夫だよ」
「お前な‥‥‥。一体何してんだ?ヤバイ事してるのはもう昔からイヤってほど解ってるよ。でもいくら何でも俺に何も言わないってのは卑怯だ」
「だからゴメンって‥‥」
彼とは古い付き合いだ。京都時代から顔見知りで、彼が東京へ来ると分かって桃花はさっさと彼の部屋へ転がりこんだ。
住所が無い桃花にとっては東京での重要な拠点だ。傍目からはただの居候にすぎないが‥‥‥
住所が無い桃花にとっては東京での重要な拠点だ。傍目からはただの居候にすぎないが‥‥‥
「‥‥‥もう戻らないのか?」
「多分ね。だから安心して女でも連れ込んで」「‥‥バレてた?」
「当然」
「参ったな‥‥‥」
「ば~か」
「多分ね。だから安心して女でも連れ込んで」「‥‥バレてた?」
「当然」
「参ったな‥‥‥」
「ば~か」
軽口を叩きながら、桃花は荷造りを終える。後は青森の英子と、京都の無限分家へ送ればいい。東京での活動はもう終わる。桃花はそう考えていた。
「‥‥次はどこ行くんだ?」
「わかんない‥‥‥」
「もう東京へは戻って来ないのか?」
「多分‥‥ね。もう東京に用無いし」
「そうか‥‥‥じゃあもし‥‥‥もしお前が目的果たしたら?何してるかは知らないけど、何か目的があんだろ?それがもし‥‥片付いたら、どうするんだ?」
「わかんない‥‥‥」
「もう東京へは戻って来ないのか?」
「多分‥‥ね。もう東京に用無いし」
「そうか‥‥‥じゃあもし‥‥‥もしお前が目的果たしたら?何してるかは知らないけど、何か目的があんだろ?それがもし‥‥片付いたら、どうするんだ?」
「わかんないよ‥‥‥。その時になってみないと‥‥」
「そっか‥‥‥。そうだよな」
「うん」
「じゃあさ‥‥‥。もしそうなったらまた来いよ。どうせ行くアテないんだろ?だったらまたここに住めばいい。どうせ今までも出掛けて何日も帰って来なかったりしてたんだ。今更しばらく部屋空けたって変わらねぇよ」
「そうね‥‥‥‥あなたの女グセが治るってんなら考えとく」
「‥‥勘弁してくれよ」
「昔っから変わらないもんね。私もよくあなたの部屋借りてたもんだ」
「‥‥昔の事まだ怒ってる?」
「絶対許さないけど?」
「マジで勘弁してくれよ‥‥‥」
「こっちの台詞だよねそれ。‥‥‥‥でも、ありがと」
「そっか‥‥‥。そうだよな」
「うん」
「じゃあさ‥‥‥。もしそうなったらまた来いよ。どうせ行くアテないんだろ?だったらまたここに住めばいい。どうせ今までも出掛けて何日も帰って来なかったりしてたんだ。今更しばらく部屋空けたって変わらねぇよ」
「そうね‥‥‥‥あなたの女グセが治るってんなら考えとく」
「‥‥勘弁してくれよ」
「昔っから変わらないもんね。私もよくあなたの部屋借りてたもんだ」
「‥‥昔の事まだ怒ってる?」
「絶対許さないけど?」
「マジで勘弁してくれよ‥‥‥」
「こっちの台詞だよねそれ。‥‥‥‥でも、ありがと」
荷物の送り札に記入事項を書き込み、それを貼った。もう自分が借りてた部屋には何も無い。居るのは桃花と昔の連れの男だけ。掃除をサボっていたせいか、部屋の隅には埃が溜まっている。
桃花はお気に入りのペットボトルのミルクティーを飲みながら、配送の業者が来るのを待った。それが来たらあとは出て行くだけだ。その後は、恐らく一気に事が進む。どれだけかかるかは解らないが、今までのようにゆっくりは出来ないだろう。
桃花の魂はそれを感じていた。遠いどこかで、別たれたもう一つの魂が画策する恐るべき計画。それを桃花も、桃花の魂の隅に居る存在も感じていた。
止めなければならない。そのために魂は再びこの世へ現れた。無限桃花として。
桃花はお気に入りのペットボトルのミルクティーを飲みながら、配送の業者が来るのを待った。それが来たらあとは出て行くだけだ。その後は、恐らく一気に事が進む。どれだけかかるかは解らないが、今までのようにゆっくりは出来ないだろう。
桃花の魂はそれを感じていた。遠いどこかで、別たれたもう一つの魂が画策する恐るべき計画。それを桃花も、桃花の魂の隅に居る存在も感じていた。
止めなければならない。そのために魂は再びこの世へ現れた。無限桃花として。
「いつもミルクティーだな」
「いいでしょ別に」
「昔っからだな」
「そうだっけ?」
「そうだよ。いっつもそれ。よく飽きないな」「いいじゃん。好きなんだもん」
「やっぱ変わんねーなお前」
「‥‥‥あなたもね。‥‥よく20年前の曲聴けるわね。いつまでかけてるつもり?新譜かけてよ」
「え?お前も好きだろコレ?!」
「サシャの曲かけて」
「お前ヴァイキー舐めんなよ!?」
「いいでしょ別に」
「昔っからだな」
「そうだっけ?」
「そうだよ。いっつもそれ。よく飽きないな」「いいじゃん。好きなんだもん」
「やっぱ変わんねーなお前」
「‥‥‥あなたもね。‥‥よく20年前の曲聴けるわね。いつまでかけてるつもり?新譜かけてよ」
「え?お前も好きだろコレ?!」
「サシャの曲かけて」
「お前ヴァイキー舐めんなよ!?」
二人きりの何でもない会話の内に時間は流れる。そしてインターホンが鳴り、荷物の回収に業者が訪れる。
終わりだ。もうこの時間には戻れない。あとは、闘いだけが待つ。
終わりだ。もうこの時間には戻れない。あとは、闘いだけが待つ。
「荷物送ったし‥‥‥。じゃあ、私行くね」
「ああ」
「さよなら、孝也」
「‥‥さよなら」
「じゃあね。」
「‥‥‥じゃあな」
「さよなら‥‥」
「ああ」
「さよなら、孝也」
「‥‥さよなら」
「じゃあね。」
「‥‥‥じゃあな」
「さよなら‥‥」
桃花は村正と少々の手荷物を抱え歩きだす。玄関まで見送りに来た孝也はそれ以上は何も言わずに桃花を送りだした。
桃花も言葉を出さずに靴を履き、玄関のドアノブに手をかける。今日はこの後、病院で黒丸達と会う予定だ。近くのコンビニまで理子が迎えに来てくれてるはずだ。
玄関のドアを開け、外に出る。外の風はやはり冷たかった。
ドアを閉めようとした時、ふいに孝也が口を開いた。
桃花も言葉を出さずに靴を履き、玄関のドアノブに手をかける。今日はこの後、病院で黒丸達と会う予定だ。近くのコンビニまで理子が迎えに来てくれてるはずだ。
玄関のドアを開け、外に出る。外の風はやはり冷たかった。
ドアを閉めようとした時、ふいに孝也が口を開いた。
「桃花」
「‥‥なに?」
「‥‥死ぬなよ」
「うん‥‥ありがと‥‥孝也」
「じゃあ‥‥気をつけてな」
「うん。じゃあね」
「‥‥なに?」
「‥‥死ぬなよ」
「うん‥‥ありがと‥‥孝也」
「じゃあ‥‥気をつけてな」
「うん。じゃあね」
桃花はゆっくりとドアを閉じる。部屋に残されたのは孝也と、部屋に響くHELLOWEENの『守護神伝』。
『守護神伝』ではこう歌われていた。
『守護神伝』ではこう歌われていた。
You're suffering pain
Only steal can stand
(鋼のみが耐え得る苦痛にさらされるお前)
Only steal can stand
(鋼のみが耐え得る苦痛にさらされるお前)
それはまるで、桃花の命運を暗示しているようだった。