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転移戦線異常有り!? 大海上都市群「兵庫」重歩兵中隊がワームと戦うようです 第5話

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irisjoker

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オルトロスは最終防衛ラインに達しようとしている。いくらでも来い。どいつもこいつも等しく地獄に送ってやる。片道切符の強制譲渡だ、拒否は許さん。
最終防衛ラインを越えたオルトロスは突然足である触手が崩壊し、前のめりに胴体が地面に激突する。そしてゴジラVSデストロイアの終盤のゴジラの如く、溶けて崩れ去った。
試製小型高出力振動熱発生装置。いつか役に立つ日が来ると信じて牽引式輸送車一両に満載していた、俺達の切り札。こいつを円を描くように周囲へ均等に配置したのだ。電力供給用の外付け電池の半分も一緒にして。
効果は絶大だった。効果範囲に侵入したオルトロスは塵一つ残さず消滅していく。奴らに耐振動熱防御能力が無くて本当に良かった。これが効かなかったら俺達は間違いなく「積んで」いた。
しかし、侵攻を防げたのは効果範囲に侵入したオルトロスのみ。試製小型高出力振動熱発生装置の数は限られており、全周囲を完全に覆う事は不可能だった。オルトロスは次々と安全な「抜け道」に「狙い通り」殺到していく。かかったな、アホが!
「とっくに」塹壕を出て抜け道の出口付近で待機していた二十人の突撃兵が攻撃を開始する。二十基の125mm重擲弾発射機から虎の子の125mm超振動極熱弾を抜け道目掛けて発射。
縦に並んで侵攻してくる十数匹のオルトロスを貫通し、消滅させ、爆発した。内蔵されていた大量の高性能炸薬によって周囲のオルトロスを文字通り消し飛ばし、正確無比に飛散した振動熱破片は大多数のオルトロスを死に追いやった。
125mm重擲弾発射機は後部に取り付けられた弾倉によって最大五連射が可能な兵器。切り札である125mm超振動極熱弾と、125mm振動熱榴弾、125mm振動熱散弾の三種類計15発、二十人合わせて計300発の、射程が短い代わりに大威力の砲弾を携行する。
今回は更に三種類一つずつ、一人30発、計600発の全弾を携行した大判振る舞い。出し惜しみ無しの全力攻撃だ。
125mm超振動極熱弾が尽きると、敵の密集している抜け道の入り口付近に125mm振動熱榴弾、125mm振動熱散弾を情け容赦無く叩き込み、一撃で十数匹のオルトロスをあの世へ旅立たせていく。
最初に長射程誘導砲弾を撃ち尽くしてから待機していた狙撃部隊が攻撃を再開する。全員、長距離狙撃用延長砲身を装着しての、過負荷出力射撃だ。
<その綺麗な角を吹っ飛ばしてやる>
本体5m、延長砲身5m、全長10mの超長距離狙撃形態の50mm狙撃砲から過負荷出力で放たれた50mm超振動極熱狙撃砲弾は、音速の十倍以上の速度で飛翔し先頭のオルトロス三型に巨大な風穴を開ける。
後方の十数匹を貫通した後、最大の被害を与えられるように亀裂を走らせて軟化した砲弾は空中で炸裂、再硬化し、一つ一つに誘導能力があるのではないかと思う程の精密さでばら撒かれた破片はオルトロスの急所を正確に貫く。
抜け道を越えるのが困難だと判断したオルトロスはそのまま進もうとして試製小型高出力振動熱発生装置によって分解蒸発させられ、抜け道を越えようとして突撃部隊の大火力攻撃に消し飛ばされ、どちらを行くか迷ったオルトロスに砲撃部隊の攻撃が雨霰と降り注ぐ。
多数の、大多数のオルトロスを屠った。圧倒的に優勢だった。しかし、長くは続かなかった。
突撃部隊、狙撃部隊、砲撃部隊が間接防御兵器以外の全ての弾薬を使い果たした。そして、遂にオルトロスは抜け道から最終防衛ラインを越えてきた。そのまま塹壕へと突き進もうとする。だが、オルトロスは次から次へと斬り裂かれ、骸と化す。
一発残らず撃ち尽くしていらなくなった125mm重擲弾発射機を放り捨て抜刀した突撃兵、二十人の鬼神が抜け道の出口で待ち構えていた。
実戦はゲームではない。弾薬は無限ではない。敵の砲弾を防ぐ為に間接防御としても大量に弾薬を消費する。半分以上の弾薬を消費した中盤以降の戦場に現れるのが彼ら、真の主力たる抜刀した突撃兵だ。
敵の喉笛に刃を突き立てる者、突き立てられる者。最前の矛と盾。鬼をも殺し腸を貪り食う、血に濡れた刃を振りかざす修羅が今、降臨した。
<行くぞ、命知らずの馬鹿野郎共、命要らずの糞野郎共。ただひたすら突き進み、粉砕し、殲滅しろ。突撃せよ、突撃せよ>
<了解>
突撃兵の一人が60cm振動熱投げナイフを指の間に両手合わせて八本挟み、五回連続で投擲する。放たれた四十の刃は正確無比に四十匹のオルトロスの急所に突き刺さった。
刀身から放出された振動波と特殊熱が細胞を分解、水分を蒸発させ、内側から全身を崩壊させていく。全ての死亡又は重傷を確認してから腕を振るう。
60cm振動熱投げナイフには伸縮可変鋼線が巻き付けられており、突き刺さっていたオルトロスの体を斬り裂き、腕の動きに合わせて弧を描きながら空を舞う。
伸縮可変鋼線が巻かれている手指、腕の微細な動作、伸縮可変鋼線自体の伸縮で60cm振動熱投げナイフの軌道、速度を一本一本調整し、周囲のオルトロスを次から次へ斬り裂いていく。その様はまるでナイフ自体に意思があり、自ら獲物を求めているかのようであった。
伸縮可変鋼線を収縮してナイフを手元に戻し、再び投擲。体を回転させながら、完璧に計算し尽くして手指を微細に動かし、ナイフの軌道を精密に変えながら大多数のオルトロスを骸に変えていく。その様は正に殺戮演舞。

両腕に装備される、重歩兵の基本装備である伸縮可変鋼線射出機。本来の一本と違い、二本射出可能な特別仕様の伸縮可変鋼線射出機を装備した突撃兵が、150cm振動熱斬刀二本の柄に伸縮可変鋼線を絡めて投げた。
離れた敵を刺殺し、腕を振るい弧を描きながら二本の150cm振動熱斬刀は更に多くの敵を斬り、敵との距離を詰めて両手の150cm振動熱斬刀で斬殺する。近付いてきた敵、離れた距離の敵を全て等しく計四本の150cm振動熱斬刀で斬り裂き地獄へ送る。
攻撃する為にやってきたオルトロス一型と針弾を撃ってきたオルトロス二型を真横から斬り裂き、近くまで来たオルトロス一型二匹に手元の150cm振動熱斬刀を投げてブッ刺すと同時に柄へ伸縮可変鋼線を絡めて収縮して引き抜き、
横から挟むように撃たれた針弾を回避しながら腕の動きを調整してオルトロス二型二匹を斬り、背後から襲ってきたオルトロス一型二匹を手元に戻ってきた150cm振動熱斬刀二本で振り向きもせず斬り捨てる。
突撃兵の技量は高いが、敵の全てを止められはしなかった。彼らが対処出来ない敵は近接部隊の射撃で確実に仕留めていく。振動熱斬刀だけで良く戦ってくれる。しかし、それも限界が近付いていた。振動熱斬刀は威力が高い分、電力の消費が激しい。
少しでも長く攻撃が可能なように装甲兼用の外付け電池を装着してはいたが、巨大生物を次から次へ斬り裂いてはいくら電力があっても足らなくなる。それに何よりも……
「本当に良く戦ってくれたな。もう時間だ」
<そうか、もう時間か。後退する>
二十人の突撃兵は攻撃を中止して全速で塹壕へ戻ってくる。その後を追うようにオルトロスが「全周囲」から攻め寄せてくる。試製小型高出力振動熱発生装置の電力が完全に尽きたのだ。最早こちらからの直接攻撃以外、オルトロスの侵攻を押し留める手段は無い。
まともに弾薬が残っているのは近接部隊のみ。残った全火力を叩き込めば大多数のオルトロスを屠れるだろう。だが、「それだけ」だ。滝を逆流させるような行為、どんな手段を用いたとしてもオルトロスの全てを殲滅する事は出来ない。
弾薬が尽きれば振動熱斬刀だけで戦うしかないが、電力はすぐに尽きるだろう。厳密には光、熱、空気中の成分、水分を電力に変換する複合自然発電によって半永久的に動作し電力は尽きないが、発電量は多くない。
電力が底を尽き消費量が供給量を上回った状態だとスローモーション映像のようにゆっくりとした動作しか出来なくなる。当然、戦闘など不可能だ。防御用振動熱を発生させられず、遮蔽も発動出来ない。そうなれば待っているのは死、中隊の全滅だ。
(どう足掻いても無理か)
恐怖は微塵も無い。小さな子供が泣き喚くような、そんな無様な姿を曝け出す生温い鍛え方はしていない。この中隊の、俺の部隊の誰一人として。
死ぬ事に恐怖は無い。だが殺される事には納得いかない。奴らに、オルトロスに「負ける」のが心底腹が立つ。「死ぬ」より「負ける」事の方が数千倍も数万倍も重大な事柄だ。
俺達はまだ死ねない。俺達はまだ奴に勝っていない。仮想訓練において、二世代も旧式の三式重装甲強化服を改造した代物で、たった一人で俺達重歩兵中隊を全滅させた守備隊の民兵、民間人。あの清水静をまだ一度もブチ殺していないのに、死ねるか!
いきなり転移して、いきなり大量の敵と戦わされて。少しはボーナスとかサービスとか、そんなもんがあってもいいじゃないか。
例えば他の重歩兵部隊がナイスタイミングで再転移して助けに来てくれたり、爆弾を満載した戦略爆撃機の編隊がやって来てオルトロスに爆弾の雨を降らせたり。今なら槍でも爆弾でも何でも来いって気分だ。まぁ、取り敢えずは。
「全力で戦うだけだな」
オルトロスに残った全火力を叩きつける。それだけだ。


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