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プラチナ・ガーネット

「ちょっと待って。白夜樹が危険な植物って、どういう事よ……?」
それまで事の成り行きを見守っていたシリウスちゃんが、ブレスくんへと問いかける。
ブレスくんは話すかどうか少し迷ったみたいだけど、シリウスちゃんへと向き合うと深刻そうな表情で言葉を続けた。

「……白夜樹の葉は、錬金術の材料によく使用するんだ」
「ええ、知ってるわ。翔から聞いていたもの」
「じゃあ、白夜樹の葉を使った薬がどんなものなのかは知ってるのか!?」

切羽詰ったようなブレスくんの言葉に、シリウスちゃんもボクも、何一つ答えることはできなかった。
白夜樹の葉を使った薬がどんな物か……? 考えたこともなかったけど――。

「毒薬、だよ」
「なっ……!」
暫しの沈黙ののち、苦い顔のままブレスくんはそう言い切る。予想もしなかったその事実にボク達は思わず息を飲み込んだ。
ブレスくんは自身のカバンから分厚めの辞書を取り出すと、白夜樹の葉の概要が書かれたページをボク達に見せた。……そこには先ほど彼が説明してくれた事と同じ事柄が記されてあった。

彼が言うには白夜樹の葉は毒薬の調合に必要不可欠の材料らしい。錬金術を悪用する連中が必ず探している葉なのだと、ボク達に本のページを見せながら説明してくれた。これならブレスくんが翔くんを警戒するのも納得できる。
全員がブレスくんの言い分を理解し――向かう視線は自然と翔くんの元。

「おいおい! これじゃまるで俺が悪者みたいじゃねーか」
「違うのか?」
慌てたように弁解する翔くんに疑いの眼差しを送り続けるブレスくん。一方の翔くんは面倒くさそうにため息を吐くが、なかなか本音を語ろうとはしない。
……ボクはなんだか嫌な予感がした。危険を察知してシリウスちゃんに視線を移すと、一向にらちの明かない二人の様子にイライラしだしたのか顔が引きつりだしている!

「しょ、翔くん! 翔くんはなんで白夜樹の葉を探していたのっ??」

シリウスちゃんの雷を恐れ、ボクは早口で翔くんにずっと疑問だったことを投げかけた。翔くんは相変わらず答えたくなさそうに目を逸らす。……が、逸らした先には爆発寸前のシリウスちゃんの鬼のような形相が……。
これには流石の彼も頭が上がらないようで「あ~~」と唸ると、面倒くさげに頭をかいた。
「毒薬だかなんだか知らねーけど、俺は白夜樹の葉には興味ねぇっての。俺が興味あるのはコ・レ・だ・け」
そう言うと翔くんは片手で「金」のマークを作る。そして懐から何やらメモを取り出すと、それを読み上げた。

「『新しい薬の開発にどうしても白夜樹の葉が必要です。白夜樹は『闇の洞窟』に分布しているようなので、取ってきていただけないでしょうか? 金8000からで、取ってきて頂ける枚数で報酬を上乗せします』……それがラナセルの依頼だったからな」
「ラナセル? ラナセルって、あの薬草学者のか!?」
「へぇ、知ってるのか?」
ラナセルと言う人の名前が出た瞬間、それまで翔くんを疑っていたブレスくんが反応した。ボクにはさっぱりピンと来なかったが、どうやら薬草学・錬金術方面では有名な人のようだった。

「それは分かったけど、『依頼』って何なのよ?」
「……俺はギルド所属の冒険者だ。ギルドに訪れる者の依頼を受け、金のために依頼を進行するって訳」
「ギルドか……なるほど。だからアンタはこんな洞窟に一人で来てたって訳ね」

やや流れが速いけど……一連の流れから分かったことは、どうやら翔くんの正体はギルドに所属する剣士だって事。
そしてこの洞窟に白夜樹を求め訪れていたのは、ギルドの依頼の為だという事。
ただ翔くん自身に白夜樹の葉についての知識はなく、ブレスくんの話を聞いてやや混乱したそうだ。

とりあえず、これでミステリアスな翔くんの謎が少しだけ解けた訳だけども――。
「毒薬……?? ギルド……?? 依頼……??」
ああ訂正。一人だけ何も分かってなさそうな子がいた。
茶髪のセミロングヘアをぐしゃぐしゃとかきながら、ルーラちゃんは頭にクエスチョンマークを浮かべ続けていた。
そう言えば元気なルーラちゃんがさっきからやけにおとなしいな、と思ってたら……展開に付いてこれてなかったんだね。

「みんなの話が難しすぎて何が何だか分かんないよぉ~~っ!! ラナセルさんって誰ぇえ!?」
「はぁ……ほんっとおバカなんだから」
「あ、あはは。ルーラちゃんには洞窟から出たら教えてあげるから、ね?」

頭を抱えながら叫ぶルーラちゃんにシリウスちゃんとボクは苦笑してそれを見守る。
一方のブレスくんはまだ翔くんの事を信用しきれないようで、険しい眼差しで彼を見つめていた。

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最終更新:2011年10月16日 13:51