冬木市の郊外には、知られざる城がある。
市街より西へ30キロ余り。国道沿いに生い茂る森林地帯の奥深くに建つ古城。
外界と隔絶された森を進む内に妖精に誑かされ異境の地に迷い込んでしまったと思うばかりの、壮麗な西洋の石造りの建築物。
無論、眉唾も同然の噂話である。その森自体、海外の名も知れぬ資産家の私有地であり、肝試し目的でもない限り訪れる機会もない。
21世紀に入り都市開発は刻一刻と進み森を切り拓く間も、土地の権利やらの問題でその一帯だけは遅々として進んでいないの現状だ。
結論から言えばこの噂話は事実である。
平衡感覚を失うほど深い森を進み続けると、ぽっかりと開けた場所に抜け、そこには御伽噺に登場するが如き城が人知れず静かに佇んでいる。
偶然迷い込んだ者なら目にしただけで気負ってしまう、王者のみが住まう事を許されるかのような威容だった。
そんな深遠な雰囲気を湛えた城の更に奧の、噂に昇りすらもしない朽ちた小屋。
元は物置か、城の使用人が住まう離れの宅だったのか。城の住人も去った今や中は廃墟も同然の荒れ具合だ。
星の明かりも届かない、人にも歴史にも見放され森に埋没した一室を玉座にして、座り込む男がいた。
「……」
埃とガラスが法則性もなく散乱した空間。
積もる埃。電灯が切れているのは当然、電線すら繋がっておらず夜を照らすのは僅かに外から差す月の木漏れ日のみ。
此処が既に、人が住まう環境でない事を示している。
「………………ク」
そんな中で。
漏れ出した声がする。
口に含めた笑いを堪えきれない男の声がする。
「クッハハハ、ヒヒヒヒ……!」
人間のみが持つ、生々しい激した感情の声が溢れ出していた。
―――それは果たして、現代の都市の人間の姿であるのか。
市街では滅多に見られぬ突起のある薄汚れた服装は無頼めいているが、身に染み付いているそれ以上の凶悪な雰囲気。
全身くまなく鍛えられた肉体は、単なる鍛錬やスポーツ目的で高められる域をとうに越えて、見掛け倒しでない事を強調する。
更に奇妙な、男が現代の都市に馴染めない最も大きい特徴が、顔をくまなく覆う骸骨の如きヘルメットであった。
獄卒もかくやな形相は如何にも恐ろしく。如何にも極悪。
余に争乱が止まぬ日々は無いといえど、日本の地方都市では似つかわしくない暴威の象徴として男は在った。
男は真実、暴力の化身だった。
その名を
ジャギ、という。
時空を越えて招かれた、聖杯戦争のマスターの一人。
そして一子相伝の伝説の暗殺拳、「北斗神拳」の伝承者の最終候補まで残った男である。
「面白えじゃねえか……聖杯戦争だと?殺し合って、勝ち残って、最強の力を手に入れるだと?。
突然こんな、核戦争の起きなかった場所に連れてこられてどうなるかと思ったが……この好機を逃す手はねえ!」
ジャギは歓喜していた。狂喜していた。我が世の春を見ていた。
そこに見知らぬ世界に拉致され殺し合いに巻き込まれたという、異常極まる事態への恐怖は、まるでない。
未だ英霊の一騎とも相対してない身でありながら、男は己が勝利を疑わないでいた。
しかしジャギには自信があった。少なくとも、自分の中では揺らがぬ絶対のものが。
ジャギが生きた世界。それはここではない過去、しかし現実に起こり得た未来。
199X年、世紀末に起きた終末核戦争。
核の炎は世界を包み、国家は崩壊し行政は停止した。
海は枯れ、地は裂け、全ての生物が死滅したかのように見えても―――しかし人類は死滅していなかった。
時代は逆行した。今日を生きるのに不足するのに明日を夢見て何になる。矜持も道徳も路傍に投げ捨てられた。
パンひとつの為に人を殺し、そのパンを求めて更に大量の人が死に、関係の無い他人にパンが行きつく。
手にするのは力ある者だ。より強い暴力で他人を傅かせ、支配していく人類の混迷期。
地上は再び、戦国時代もかくやの乱世へと突入したのだ。
その中でジャギは図太く生き抜いてみせた。食うに困らず、支配者の気まぐれな暴力に怯える事なく日々を過ごせていた。
彼の粗暴な性根が時代に上手く適合できたのもあっただろう。
彼には従う部下がおり、後ろ盾になる強大な組織があった。それもある。
だが最も重要なのは、彼には力があったことだ。腕力だけの素人や生半な拳法家では到底敵わない、至高の武術の腕前が。
久しく味わってなかった泰平の世の中は過ごしにくく、大手を振って街に出れないのは厄介ではある。しかしそれだけに突発的な暴力には耐性のない者が非常に多いのだ。
ジャギにとって、いや、ジャギ達が生きてきた世界において「
ルールのある殺し合い」など生温い世界観でしかなかった。
「俺は!やるぞ!」
高揚と共に、決意が唇からこぼれる。
突起だらけのジャケット以外には何も着ていない、露わになった上半身は見事なまでに筋肉で隆起している。
その胸には七点の傷跡が刻まれている。戦いの過程で傷ついたというより、意図をもって刻まれたような並び。
夜空に浮かぶ天帝の星―――北斗七星を象って。
「勝ってやる、何を使ってでもなぁ!欲しいものは全て奪い取って!邪魔する奴らは全員ブチ殺して!
そして忌々しいケンシロウを!いや、トキやラオウの兄者達すらも超える力を手に入れる!俺が北斗神拳伝承者ジャギ様だ!!」
ジャギの願いは単純明快だ。
力。暴力。単なる力。
権力も金銭も、力があれば後からついてくる付属物でしかない。世紀末ではそれが許されるのだ。
余りに浅はかな願いであり、邪気に満ちており、穢れている。
しかしジャギにとってはそれが全てだ。己の「力の限界」を知るのを、ジャギは最も憤怒する。
他の北斗の拳士はみなジャギを凌ぐ腕を誇っていた。ラオウ、トキという隔絶たる差がある二人の兄。そして事もあろうに、自分の下の弟であるケンシロウにすらもだ。
ジャギは認めない。頑なにそれを認めない。
伝承者に選ばれなかった候補は拳を封じられ記憶を消される。そんな末路も御免だったが、尚の事末弟が伝承者となった事が許せない。
一度直に辞退を迫った時は、自分の油断もあり手痛い逆襲を受けた。仮面の奥に隠されている代償の傷が痛み度、憎悪を燃やしつのらせてきたのだ。
だからこそ、これはチャンスだとほくそ笑んだ。ケンシロウへの復讐の力に、更にお釣りがくるほどの絶大な力を一挙両得に得られる。
過程など問わない。拳士の誇りなどあの核が落ちた日から溝に捨てた。
「そうさ、勝てばいい!!それが全てだ!!」
喝采混じりの叫び。
声が暗がりの部屋を震わせる。
笑いの主以外に誰一人いない空間で、虚しく声は響き渡り。
「……煩いな」
「あ?」
一瞬で、空気が凍えた。
昼が夜に塗り替えられるように、街が大波に飲み込まれるように。荒々しく、当然のようにその声はこの空間の全てを支配した。
自分以外の声に振り返ったジャギは、男の姿を見咎めた。
後ろに流された長髪は黒。黒く、黒く、流れた血が凝固してるような、朱(くろ)。
纏う衣装はひと目で上等な造りをしているとわかる、紋様鮮やかな朱色の民族的衣装で、上に分厚い外套を羽織っている。
思わず目を惹くのが、首に提げられている掌大の赤い塊だ。宝石かと思ったがそれにしては妙に生々しく肉感的に見える。
まるで、生きた人間から引き抜いたばかりの心臓のようだ。
その男もまた、ジャギと同様の気配を全身に漂わせていた。他者を虐げて世界を荒らして回る暴力の香り。
だが純度が違う。濃度が違う。総量が桁外れに膨大だ。
背丈にしてはジャギも大柄であり大差はないのに、内より溢れさせる闘気が男の体躯をより巨大に映していると錯覚してしまう。
そんな男にジャギは覚えがあった。他ならぬ兄弟子の一人、北斗の教えに背反し天を握る覇王の道を選んだ『王』の姿だ。
少なくともその蒼眼から放たれる隠しようのない覇気は、長兄ラオウが持つそれと同じ種類だった。
「群れからはぐれた痩せ犬の遠吠えかと思ったが、まさかお前が俺のマスターとでも言うのか?」
「な、なんだてめえは?」
思わず竦んだ声でそう問い返して、思い出した。
サーヴァント。この聖杯戦争という殺し合いで要となる英霊の化身を、ジャギは漸く認識したのだ。
「…………なに?」
だがそれより先に眉を顰ませたのはサーヴァントの方だった。
今にも餓死しそうな狼のようにギラついた目。
目につくものは肉があるかも構わず食らいつく剥き出しの本能だけが込められているような凶眼でジャギを睨めつけ。
「おいお前、俺の真名(な)を言ってみろ」
「は?」
そして次に、そんな言葉を投げかけてきた。
今度こそ、ジャギの思考は理解不能に陥った。
言葉としては単純な問いかけ。なのにそれを言う状況が脈絡ない。
「俺の顔を眼で見て、耳で声を拝聴しておきながら、誰だか分からないなどと言うつもりではないな」
一向に理解の進む気配のない状況に、苛立ちを湧き上がらせ詰るように言葉を吐いた。
「はっ知るかそんなもん!それよりてめえ、俺のサーヴァントだな。その態度はなんだ?それが主人に対する礼儀かあ?」
……奇しくもそれは、ジャギ自身が行ってきたやり取りと似たものだった
胸に七つの傷のある男―――憎悪極まる怨敵のケンシロウを貶める為に振り撒いた悪行。
道行く初対面の通行人に、ジャギはかつて男と同じように難癖ある言葉を吐き、手当たり次第に痛めつけていたのだ。
しかし今回の場合は、問いそのものの方が重大であったらしい。
未だクラス名すらも名乗らぬサーヴァントはあからさまな不快の色を表情に浮かばせ、失望の溜息を深くついた。
あるいはそれは、彼自身に向けられた感情だったのかもしれない。
「……どの時代になっても蒙昧はいるか。それともお前の学が足りんだけか?
どちらにせよ、まだこの地には刻みが足りなかったようだな」
「な……!」
鼻白むジャギを尻目に、なおも男は残酷に続ける。
「先に名を教えるのはお前の方だろうが。マスターであろうが王に対する不遜は許さん。ましてお前の如き屑星の差配など受けるに能わん」
「く―――屑星だとぉ……?」
屑星――――――。
己の価値を文字通りにまで貶める一言は、元より暴発寸前であったジャギの精神の逆撫でる。
契約者の厳然たる証である令呪の存在など忘れ、怒りのままに英霊へと走り出した。
「てめえ~~!!」
激憤と共に繰り出した拳は、人体を殺傷するに確かな速度と鋭さを有していた。
当たれば鉄骨が拳の形にへこむであろう威力、現代の拳法家には到底達しようもない高み。
並々ならぬ才能と血の滲む修練を積んできた事が今の拳打だけでも分かる、そういう一撃だった。
「ばわ!」
しかし、当たったのは相手の拳。
振り抜いたジャギの拳は哀れ脇を通り抜け、返しとばかりの裏拳がジャギの顔面を打ち抜いた。
サーヴァントの拳はまるで力のこもってない、蝿を叩くような軽い動作だったのだが、それに反してジャギの全身を地面を離れ、数メートル先の朽ちかけた椅子と衝突した。
霊体で構成されるサーヴァントに、魔力や神秘のない攻撃は通用しない。
この結果は基本則というべき原理を把握していなかったジャギにこそ完全な非がある。
しかし例えその枷が無かったとしても、やはり結果は同じだったであろう。
絶対的な力の差を皮肉にも確証させたのは、ジャギの無謀な突撃だった。
「ぐぐぐ!くそ……ハッ!?」
分厚いメット越しとはいえ顔を強打しながらもすぐに立ち上がれたのは、腐っても北斗の薫陶を受けた男だろう。
怒り覚めやらぬまま再び男を睨みつけようとして――――――研ぎ澄まされた戦闘本能は察知した。
地に浮かぶ男の影、服の僅かな隙間や皺から覗き見る、自身を射貫く無数の『眼』を。
それが現実で構える武器であったのなら、今頃ジャギの体には新しく穴の傷が空いていただろう。
急所であるなしに関わらない、痛覚を目的とした嗜虐の矢が。
草木に覆われる暗がりから、獲物に飛びかかる機を窺う肉食獣。ジャギの脳裏にはそんな幻影が投影されていた。
英霊の目配せ一つで飛びかかり、四肢に骨に食い込むまで噛みつかれ、そのまま無残にも胴体から引き千切られていく光景が勝手に映し出される。
それが当然の摂理、弱肉強食なる自然の法則であるというように。
「ばば、化物め……!」
そう、忌々しく漏らすのが精一杯であった。
既に、ジャギの闘志は折れかかっていた。邪智暴虐で限りを尽くした男が小さな餌になるほど、潜む獣の気配は絶望的な殺意に濡れていた。
「知るのが遅いぞ。英霊とは欲するものを死の寸前まで止まらず喰らい続ける獣の名だ。生きるために食い殺す人間とは、流す血の量が違う。
お前が抱える暴勢も、俺(モンゴル)の指一本分にも満たない末端に過ぎん」
人との隔絶された格差を見せつけた英霊は、膝をついたジャギを冷淡に見下ろす。
虫か、路傍に転がる石でも見るような眼差しだった。障害ではない。だが気紛れで踏み潰してしまいたくなる程度の存在への視線。
それだけでもジャギには十分に屈辱的だが、迂闊に動けばどうなるかも身に染みて理解していた。
「……が、適合はできるようだな。それぐらいの血の気の多さがあるなら、及第点ではあるか」
ふ、と息をついた途端、部屋全体を支配していた殺意が急速に収まっていった。
それでもなお、目の前の男の存在感は微塵も衰えてはいなかったが。
「本来はすぐに四狗の餌にでもしているところだが、特例だ
俺を呼び、俺を再び大地に招いたマスターよ。我が真名を教える。脳髄から心臓に至るまで、魂の全てに刻み込めよ。
いずれ、俺のものになるのだからな」
暴力という概念が人の形になっているとしか見えなかった男の言葉が、今は不思議と威厳に満ちて聞こえた。
民を率い、国を統べ、世界をその手に握りしめる『王』のように。
「ライダーのサーヴァント、
チンギス・ハン。『覇極王』の名の下に、お前に天(テンゲリ)を掴ませてやる。
俺の血肉、俺の爪牙、俺の掌としてな」
夜空にて一筋の煌めく星が流れる。
この地に堕ちるのは果たして、誰の星か。
【クラス】ライダー
【真名】チンギス・ハン
【出展】史実(11世紀・モンゴル)
【性別】男性
【身長・体重】186cm・81kg
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力C 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運A 宝具A++
【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。
【固有スキル】
カリスマ:A
大軍団を指揮する天性の才能。
Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望といえる。
チンギスのカリスマは「この者と一体となりたい」という魅力を相手に与える。
軍略:B
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具や対城宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具、対城宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。
騎乗の蹂躙者:A
遊牧の民であるチンギスは馬の上でこそ真価を発揮できる。
騎乗中の間、全てのステータスと判定に有利なボーナス補正を与える。
神性:C
神霊適正を持っているかどうか。
神である蒼き狼と青白き鹿の遠い末裔。
その血は殆ど薄れていたが、チンギスは先祖返り的に一部を取り戻している。
また死後帝国では神として讃えられている。
文明侵食:EX
手にしたものを自分にとって最高の属性に変質させる。
最高とは「優れている」意味ではなく、チンギス本人のマイブーム的なものを指している。
世界最大の侵略者であるチンギスはこのスキルを意図的に発動できる。
【宝具】
『四駿・蒼魄具足(ノコル・ドルベン・クルウド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:20人
『四狗・白魂牙鏃(アルギンチ・ドルベン・ノガス)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:200人
チンギス・ハンの側で絶えず潜む八つの影。
影ごとに役割が異なり、主の護衛と攻撃を担う。
『四駿』は王の危機を自動で察知し、防具となってその身を守り、
馬の魔獣として実体化することで王の騎乗物となり戦場を自在に駆ける。
『四狗』は矢等の武器を射出、あるいは武器そのものへと変わり、
狗の魔獣として実体化することで王の尖兵となり敵を食い散らす。
複数を融合させ、より巨大な魔獣を作り出す事も可能。
この宝具の原型は、生前チンギス・ハンに付き従った最も信任厚い八人の側近。
本来全員が掛け値なしの英霊となれる器だが、死後においても彼らは王にその魂を捧げ従属する事を選び、
単一のサーヴァントと化さず、王(ハーン)の宝具として昇華された。
魔獣というが英霊が変化した獣であり、一騎が幻獣クラス以上の戦闘力を誇る。
軍団長であった生前から斥候を放つ芸当も可能。
『餓狼・死天覇極道(イェケ・モンゴル・ウルス)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
史上最大の帝国を築いたモンゴルの大虐殺の歴史。ワールシュタットに築きし死山血河。
『人祖の落涙(ボルジギン)』 を握り潰し、地面に落ちた飛沫からは血が滲み出して間欠泉の如く噴出、
「モンゴル帝国が流してきた全ての敵民族の血」に等しい大波濤『死の河』を起こす。
死の河は灼熱にして極寒の地獄で、氾濫に呑み込まれた全ての生命を殺戮する。
全ての血を吐き出し終わった後、戦場で流された血は空いた穴へと吸い込まれていく。
チンギス・ハンは天空神エセゲ・マラン・テンゲリとしばしば同一視されている。
この宝具がもたらす光景は、さながら穴の奥に潜む荒ぶる神(チンギス)が腹に溜め込んだ血を吐き出し、
そしてまた流れた血を残らず嚥下していくかのよう。
【weapon】
『人祖の落涙(ボルジギン)』
チンギスが生まれた時手に持っていたという血の塊。
氏族であるボルジギンの始祖、ボドンチャルの原液。
神である蒼き狼と青白き鹿の子孫の妻は子を授からぬうちに夫を失うが天の光を受けて受胎、
そうして生まれた3人の子の末子がボドンチャルである。
合成弓 (コンポジット・ボウ)の他、宝具と合わせてモンゴル軍で使用された武装を顕現させられる。
【人物背景】
幼名をテムジン。
世界最大の帝国モンゴルを作り出した偉大なる始祖。
彼の死後の帝国はユーラシア大陸を席巻し、最終的な征服範囲は地球上の陸地の約25%に及ぶ。
世界最高の征服者アレクサンドロス大王(イスカンダル)すらも超える領土を広げた、誇張抜きに世界征服に最も近かった帝国である。
しかしその生涯の前半期は苦難に満ちていた。
父を毒殺され一族の大半に離反された窮地を生き延びる少年期を過ごし、一族を立て直した後も娶った妻ボルテを敵に奪われ子を孕まされた。
部下も、肉親も、愛する者も、ほんの一滴の水が落ちる間に全てを奪われるという絶望を糧に、テムジンは覇王を志すようになる。
それから部族を統一し帝国を築くまでのテムジンの戦いは、己の血を繋ぐ為にあったといってもいい。
奪う側に回らない限りは永遠に奪われ続ける。
それは獣の摂理。捕食者はより上位の捕食者に食われる定めでしかない。
チンギスはその上を目指した。世界の総てを自身の手に。否、自身を世界に治める、神の摂理を。
凄絶にして迅速な戦術の組み立て。非道外道を厭わない残虐性。
自国の民を身を捧げて救う理想などない。
世界と己とを同一化させる超越性とは程遠い。
遙かな夢に駆け走る冒険者でもない。
「別に、世界が俺のものでないのが許せないだけだ。だから奪う。それだけの話だろう。
お前達こそなぜそれを許したままでいられる。この世で自分以外のものが存在しているなぞ、死を超える屈辱なのに」
それは欲望というより根源に根ざした衝動に近く。
こうして世界中の覇王の頂点―――覇極王は誕生した。
世界征服を目指す、ステレオタイプな悪の大魔王。血も涙もあるが冷血。有能な者は引き入れようとし、逆らう者は殺す。
「男の最大の快楽は敵を撃滅し、駆逐し、所有物を奪い、親しい人々が嘆き悲しむのを眺め、馬に跨り、敵の妻と娘を犯すことにある」とまでのたまう。
意外にも為政者としては真面目で律儀に治世をこなす。
国と自分を同一化しているので、いわば体調管理のようなものである。
【特徴】
蒼い瞳、血が固まったような黒色の長髪と朱色の民族装束。マントを羽織ったアジアンマフィアの大頭目といった雰囲気。年齢は30歳前後。
どれだけ満足したと言っていても、眼だけは常に満たされてない餓狼の如き光をたたえている。
普段は軽装だが宝具によって、狼の趣向を持つ全身鎧を身に纏う。
【聖杯にかける願い】
世界征服。受肉にしろ力の獲得にしろチンギスの全てはそれに帰結する。
【マスター】
ジャギ@北斗の拳
【マスターとしての願い】
ケンシロウへの復讐。全てを支配する力を手に入れる。
【Weapon】
ショットガンの他、含み針等の隠し武器を所持。生憎冬木では拳銃以上の火器を入手することは難しいだろう。
【能力・技能】
腐っても北斗の男。他の兄弟には遠く及ばないとはいえその力量は並の拳法家を凌駕する。秘孔の使用ぐらいわけもない。
途中で破門されることなく伝承者候補に最後まで残っており、僅かな期間に南斗聖拳も習得したりと(ケンシロウ曰く「スロー」「付け焼き刃」だが)、才能自体は確かなものがあったようだ。
「勝てばいいんだ何を使おうが」の言の通り、武器や地形など利用できるものは全て利用する。
さりげに、ケンシロウの不意をついて銃を突きつける場面がある等、暗殺者としての適正はあったのかもしれない。
【人物背景】
一子相伝の暗殺拳、北斗神拳の伝承者候補。
しかし実力は義兄弟である他の伝承者候補達には大きく水を開けられており、精神も粗暴で邪気に満ちていると伝承者に足る資格を有してはいなかった。
上の兄弟二人ならまだしも、末弟のケンシロウが伝承者に選ばれた事に納得がいかず直に抗議・恫喝。
怒るケンシロウの逆襲で顔面の骨格が変形するレベルの傷を負う。非情に徹しきれぬ当時のケンシロウに見逃され、以後ケンシロウへの憎悪を糧に世紀末を生きていく。
恋敵のユリアをちらつかせ南斗弧鷲拳のシンを唆しケンシロウを襲わせ、南斗水鳥拳のレイの妹アイリを攫い貶める等、主要人物に起きた多くの悲劇の原因。
ヘルメットで隠した顔はプレートで矯正しチューブを通した悍ましい姿で、継続的に痛みも起こしていた模様。
原作では「北斗3兄弟」と解説されたりと北斗の男として見られていない扱い。
公式からの発言などで「伝承者候補に破れたことで破壊者に落ちた」「ケンシロウ達を競わせる毒として当て馬にされた」と推測されている。
最終更新:2017年06月24日 18:38