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利根4日目・No.3

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私のやんごとなき王子様












「昨日は買い物手伝ってくれてありがとう。すごく助かったよ」


 乗船して担当ごとに集まった部屋の中、大量の荷物のチェックをしていると利根君が話しかけてきた。

 何だか私と利根君って一緒に数を数えるのが慣例化してない?


「ううん、こっちこそ! 素敵なお店教えてもらったし、危ない所も助けてもらったし。ありがとうございました」


 深々と頭を下げると、利根君が小さく笑った。

 もう、笑う仕草までいちいち優雅で綺麗なんだよな、利根君って。


「また一緒に買い物行ってくれないかな?」

「えっ? 私と?」

「小日向さんにお願いしてるんだから、もちろん君とだよ?」

「あ、そ、そうだよね。あはは……」


 嘘っ?! これってもしかしてデートのお誘い!?

 緊張する私を他所に、利根君はデザイン画とその担当者のチェックをしながら続けた。


「実はちょっと気になるお店があるんだけど、一人だと入りづらいんだ。だから小日向さんが一緒に来てくれると助かるんだけど」


 ああ、なんだ。そう言う事か。あはは、緊張しすぎちゃった。格好わる~。


「あ、うん。もちろん! 私でよければいつでも行くよ!」

「本当に? 助かるよ。あ、そうだ。はいこれ」

「ん? これ?」


 利根君に手渡されたのは衣装などのデザイン画数点だった。


「小日向さんが担当する分だよ」

「えっ!? こんなにたくさん?」


 そう、想像以上に作る物が多くて、私は驚いたのだ。


「ごめん。1年生が思った以上に出来なさそうで、2、3年の仕事が少しずつ増えたんだ」

「そ、そうなんだ……」


 私の方が出来なかったらどうしよう……。

 そんな事を考えたら、どんどん考えが悪い方へと落ちて行った。

 そこでちょうどチェックも終わり休憩することになり、私は自分がチェックし終えた分をリーダーに渡すと、重い足取りで船室を出た。


















「はあ……」


 デッキに備え付けてあるお洒落なベンチに腰掛け、ため息を吐く。

 本当に私に出来るのかな。利根君の役に立ちたいって思って選んだのに、逆に迷惑にならないかな。


「小日向さん」

「―――あ、利根君」


 一人暗い顔でいると、利根君がやって来た。


「何だか疲れた顔してるけど、どうしたの? 船に酔った?」


 隣りに腰掛けながら尋ねられ、私は首を横に振った。


「ううん、違うの……なんだか私、ちゃんと出来るか不安になっちゃって」

「仕事が増えたから?」

「う~ん、というか、少しくらい裁縫出来るからって、大して器用でもない私が上手に出来るかなあって」

「上手に出来なきゃどうしてダメなの?」

「どうしてって……やっぱり皆の足を引っ張りたくないし」


 利根君に役立たずだなんて思われたくないんだもん。


「完璧に何でも出来る人間なんて、この世にはいないよ」


 ああ、優しいな。利根君は……こんなに励ましてくれてるのに、私ってば自分の事ばっかりで最低だ。


「小日向、華月」


 そこで声を掛けられ顔を戻すと、風名君が心配そうにこちらへやって来た。


「あれ、風名君、どうしたの?」

「いや、ちょうど休憩で外に出たら小日向と華月が一緒にいるのが見えたから」


 そう言って風名君も私の隣りに座った。


「何か悩み事? 小日向すごい眉間に皺が寄ってる」

「えっ? 嘘っ!」


 慌てて眉間を指で左右に伸ばすと、風名君が笑った。


「ははっ、冗談。でもさ、背中が暗かった。もしかして華月にいじめられた?」

「ええっ?! 利根君はいじめたりしないよ! むしろ優しすぎるっていうか、お世話になりっぱなしっていうか……」

「小日向は華月の本性を知らないから。こいつ、怒るとすっごい怖いんだぜ? 子どもの頃なんて喧嘩で華月に勝った事ないもん、俺」


 小声で言う風名君に、私は驚いた。


「利根君喧嘩なんてするのっ!?」

「するする。すっげー強いし」

「へえ~、へえ~!」


 好奇心たっぷりの目で利根君を見ると、利根君は少し困ったような顔で風名君を見た。












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